★踏めず歩めず、桜舞い散る花道 「世の中は三日見ぬ間の桜かな」
満開の桜が散り始めている。金沢市内の桜の並木道を行くと、花びらがひらひらと舞っていた。淡いピンクの花びらが積もり、桜の花道になっている=写真=。並木路を前に進もうとしたが、二の足を踏んだ。これまで楽しませてくれた花を靴で踏むことになんとなく躊躇したのと、ひらひらとはかなく散る姿が我が人生のようにも思えて、踏んで歩くことにためらいを感じた次第。踏めず歩めず、結局、回り道をした。
「世の中は三日見ぬ間の桜かな」は江戸時代の俳人・大島蓼太の句だが、桜は三日見ないと変わるように世の中も移り変わりが早いことのたとえとしてよく引用される。この1週間で世の中が大きく動いたことと言えば、「トランプ関税」ではないだろうか。
アメリカのトランプ政権による相互関税は、カナダとメキシコを除くほぼ全ての国・地域に適用する一律10%の基本税率と、そのうちアメリカの貿易赤字が大きい約60ヵ国・地域に適用する上乗せ税率で構成される。相互関税は日本時間の9日午後1時すぎに発動した。ところが、発動からわずか13時間で、トランプ大統領は相互関税上乗せ分を中国を除いて90日間停止すると発表した。ただし、一律10%の基本税率は実施される。発動した直後に急ブレーキ、この背景にいったい何が。
取り沙汰されているのが、株式や通貨に加えて安全資産とされたアメリカ国債まで売られる「トリプル安」が発生したこと(メディア各社の報道)。とくに米国債の売却が加速することはトランプ政権にとって予想外のことだった。そこで金融市場の動きをいったん落ち着かせる意味で、中国を除いて90日間停止の措置に出た。その後、さらに米中の報復関税が激化する。トランプ政権は10日、中国に対する相互関税の税率を84%から125%に引き上げた。中国からの合成麻薬の流入を理由に課している20%と合わせて、追加関税は累計145%になる。これに対し中国は11日、アメリカに対する追加関税を125%に引き上げるという報復措置を発表、きょう12日に発動させている。
相互関税について各国は今後、トランプ政権と個別交渉に入る。日本は今月17日、赤沢経済再生担当大臣がアメリカ側との直接交渉に出向く。トランプ大統領はアメリカにおける大量の輸入車について、日本を「最大の輸入元の国の一つ」と名指し、「日本にはアメリカ車がない」「日本はアメリカ車を受け入れない」とやり玉に挙げている(3月12日・ホワイトハウスで記者団に)。踏めず歩めずの厳しい交渉になるのだろうか。
⇒12日(土)午後・金沢の天気 はれ