2025年 4月 の投稿一覧

☆高値の地物タケノコ 産地で見えた風景

☆高値の地物タケノコ 産地で見えた風景

前回ブログの続き。それにしても、地物のタケノコが高い。いくら裏年とはとは言え、3割高はどうなんだろうとふつふつと疑問がわいてきた。そもそも金沢はタケノコの産地でもある。そこで、近江町市場を出て、「別所のたけのこ」として知られる金沢市の山手の別所町に向かった。

ここのタケノコは、鮮度がよいものはアク抜きをせずに食べられると定評がある。シーズン中には沿道にタケノコの販売所が並び、市内から買いに訪れる人が大勢いる。「たけのこ市」は季節の風物詩にもなっている。きのう別所町に行くと2軒の販売所が開いていた。タケノコの出荷は始まったばかりで5月の連休が本番の忙しさなので、こんなものかと思ったが、それにしても2軒は少ない。シーズンにこの地を訪れるのは10数年ぶりだが、閑散とした印象だ。

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そして、ある意味で愕然としたのが竹林だ。モウソウ竹の林が荒れている=写真=。もちろん管理された竹林は多くあるが、それにしても雑木が生え、折れたままの竹がそのままになっている竹林が目立つ。言葉は適切ではないかもしれないが、まさに「耕作放棄林」だ。これがタケコノの産地かと目を疑った。

ここから見えることは、金沢の山地の過疎・高齢化だ。竹林を管理する人が高齢化し、後継者も少なくなっているのだろう。その結果、放置された竹林の荒廃が広がっている。裏年によるタケノコの減少もさることながら、生産者そのものが減り出荷量も減っている。これが「地物1本2800円」の背景ではないだろうか。以上は自身の憶測だ。

竹林の荒廃問題は金沢だけでなく全国的で起きている。竹林を放置すれば、地域によっては年間6㍍のペースで広がるとの説もある。根が浅い竹林では豪雨による土砂崩れの事例もある。一方で、荒廃した竹林を環境問題ととらえ、竹を積極的に活用する動きもある。北陸のパルプメーカーは国産の竹を紙原料として使い商品化している。竹林の荒廃をどう防ぐか、まさに里山保全が問われている。

⇒25日(金)午前・金沢の天気  はれ時々くもり

★これじゃ「たけのこご飯」が食べられない

★これじゃ「たけのこご飯」が食べられない

自宅の庭先にヤマシャクヤク(山芍薬)とイチリンソウ(一輪草)が競うように白い花を咲かせている=写真・上=。山芍薬の白い花は丸いボール型に咲く、「抱え咲き」の花で、3日か4日で散ってしまう。花の命が短いだけに、けなげで清楚な感じがする。名前の由来の通り、もともと山中に自生している。根は生薬(鎮痛薬)として利用されることから、乱獲された時期もあった。今では環境省のレッドリストで準絶滅危惧種に登録されている。花言葉は「恥じらい」「はにかみ」。日陰にそっと咲く。

イチリンソウ(一輪草)は「スプリング・エフェメラル(春の妖精)」と称されるように、早春に芽を出し、白い花をつけ結実させて、初夏には地上からさっと姿を消す。一瞬に姿を現わし、可憐な花をつける様子が「春の妖精」の由来だろうか。1本の花茎に一つ花をつけるので「一輪草」の名だが、写真のように群生する。可憐な姿とは裏腹に有毒で、むやみに摘んだりすると皮膚炎を起こしたりする。

庭の花を横目に、きょう(24日)午前中、久しぶりに近江町市場を歩いた。季節ごとに行きアワビやサザエの夏、マツタケの秋、ズワイガニの冬、そしてタケノコの春の4回。市場内をめぐり、食して季節感を味わうこともあれば、手提げ袋が膨らむほど買う、あるいは空気だけ吸って帰ることもある。

青果店をのぞくと「地物」の札が付いたタケノコがずらりと並んでいる=写真・下=。大きなもので1本2500円や2800円などの値札がついている。正直「高い」と思って眺めていると、店主らしき人が話しかけてきた。「ことしはタケノコが採れない年で去年より3割ほど高くなっているんです」と。収穫量が少ない裏年でしかも旬の値段となれば、それも仕方ないかと思いつつも、「コメの値段もずいぶんと高くなっているし、タケノコもこれだけ高いと、たけのこご飯は食べられませんね」と言うと、店の人は苦笑していた。きょうは値札だけ見て帰ることにした。

⇒24日(木)午後・金沢の天気   くもり

☆能登の千枚田、田植えを前に広がる水鏡 ことしは200枚余り

☆能登の千枚田、田植えを前に広がる水鏡 ことしは200枚余り

季節は移ろい、そろそろ田植えのシーズンだ。輪島の名所「白米(しらよね)千枚田」の様子が気になり、きのう(22日)現地を訪れた。気になると言うのもの、去年元日の能登半島地震で田んぼに無数の亀裂が入り、地元の農家やボランティアの人たちが懸命に修復作業を行い、120枚で耕作が行われた。ところが、稲刈りを終えた9月には48時間で498㍉という「記録的な大雨」に見舞われ、棚田に土砂が流れ込むなどの被害が出た。ことし3月には生産者やボランティアによる土砂の除去作業などが行われている。

現地に到着したのは夕方、午後5時過ぎだった。白米千枚田は4㌶の斜面に1004枚の棚田が広がり、2001年に文化庁の「国指定文化財名勝」に指定され、2011年に国連食糧農業機関(FAO)から認定された

世界農業遺産「能登の里山里海」のシンボル的なエリアでもある。現地を見渡すと、すでに一部の棚田に水が引かれ、田植えの準備が始まっていた=写真=。くもり空だったが、水鏡のように空を映す棚田の光景はこの時期だけに見られる絶景でもある。

では、ことしは何枚が耕されるのかと、水が引かれた田んぼの枚数を数えようとしたが、4㌶にもおよぶ広さと凹凸がある地形なので簡単には数えられない。そこで、公益財団法人「白米千枚田景勝保存協議会」の事務局がある輪島市観光課に問い合わせた。すると、「ことしは200枚余りを耕したい」との返事。田植えは5月10日と11日の土日を予定しているとのことだった。二重の被災に見舞われながらも、コメ作りを続ける地元の農家やそれを支援するボランティアの人たちには敬服する。

千枚田を見渡す高台には、国文学者で歌人の土屋文明(1890-1990)の歌碑がある。『一椀にも足らぬばかりの田を並べ継ぎて来にける国を思ふも』。解説板によると、土屋文明が昭和15年(1940)、万葉の歌人・大伴家持が能登を旅した足跡調査にこの地を訪れたときに詠んだ歌とある。一枚の田から一椀の米も収穫できそうにない極めて小さな数々の棚田を今日まで営々と耕し続けてきた能登人の心を思う、との歌意のようだ。

この千枚田を眺めて能登の風土と粘り強い人柄を感じ取るのは、85年前に訪れた歌人も、いま観光で訪れる人々も時を超えて同じ思いかもしれない。

⇒23日(水)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

★「探検型」クルーズ船 金沢港で座礁する 

★「探検型」クルーズ船 金沢港で座礁する 

今月8日付のブログで金沢港がクルーズ船でにぎわっていると紹介したが、今回はトラブルのことに触れる。地元メディア各社が第9管区海上保安本部の発表を伝えている。今月18日午後5時10分ごろ、金沢港の五郎島岸壁近くで、金沢海上保安部の職員が身動きが取れなくなっているクルーズ船を確認した。ニュージーランドの会社が所有する「ヘリテージ・アドベンチャラー」(8445㌧)で、金沢港から出港しようとしたところ、港内の浅瀬に乗り上げた。

金沢海上保安部が海難救助用のタグボートでクルーズ船を離礁させ、同6時53分に同港五郎島岸壁に接岸した(※写真は、20日午後1時30分ごろ撮影)。乗客126人と乗員86人にけがはなかった。船体に目立った損傷はなく、また、油の流出などは確認されていない。金沢港内でのクルーズ船の事故は初めてという。金沢海上保安部は、フランス国籍の60歳の男性船長から話を聞くなどして、当時の状況を調べている(メディア各社の報道)。

それにしても、これまで入港したクルーズ船に較べると、コンパクトサイズの船だ。幅は全長は123㍍となっている(一般社団法人「金沢港振興会」公式サイトの資料より)。今月8日付で紹介したクルーズ船「MSCベリッシマ」(17万1598㌧・乗客定員4386人)は全長316㍍だった。そして、寄港地もじつにコンパクトだ。大阪から広島、長崎、蔚山(韓国)、境などをめぐり金沢に。そして、金沢から境、萩、蔚山、広島、大阪へと逆戻りするルートだ。運航するのはニュージーランドの「ヘリテージ・エクスペディションズ社」。

ネットで調べてみると、このヘリテージ・アドベンチャラーは「本格的な探険クルーズで比類のない基準を設定」とあり、北極の最北端と南極の最南端への航行も行っているようだ。きのう20日に撮影した写真をよく見ると、船の上には黒いゴムボートや小型船などが搭載されているようにも見える。探検型のクルーズ船なのでコンパクトサイズに、そして小型船でさらに奥地まで入って探検するというコンセプトなのだろうか。

クルーズ船にもいろいろ個性があって面白いと思った次第。それにしても、もし南極や北極で今回のように座礁したらどうなるのだろうか。タグボートが駆けつけてくれるのだろうか。

⇒21日(月)午後・金沢の天気     はれ

☆見納め桜と、祭りの季節告げる曳山巡行を能登で堪能

☆見納め桜と、祭りの季節告げる曳山巡行を能登で堪能

能登半島の尖端、奥能登に春の訪れを告げる能登町宇出津(うしつ)地区の「曳山祭」を見学に行ってきた。毎年4月の第3土曜日と日曜日に催され、ことしは19日と20日に曳山が街を練り歩いた。金沢から車で出かけ、自動車専用道路「のと里山海道」を走行し、のと里山空港ICで県道「珠洲道路」に乗り換え、能登町に行く。

途中、道の駅「桜峠」がある。桜峠の名称通り、道路の左右に桜並木が並び、満開の時季を迎えていた=写真・上=。この周辺では2㌔にわたって春は桜、夏(6-9月)にはサルビアの真っ赤な花が沿道両サイドを飾り、ドライバーの目を楽しませてくれる「能登のフラワーロード」でもある。

夕方午後5時ごろに同町宇出津地区に到着。チョーサ、チョーサと先導する掛け声とともに、人形で飾り立てた2基の曳山(高さ6㍍、全長8㍍)が街中を練っていた=写真・下=。宇出津の酒垂神社、白山神社の両社の春祭りで、そろいの法被を着た大勢の老若男女が威勢よく綱を引いていた。去年の曳山祭は元日の地震で道路が歪むなどの損傷が出たため、曳山が街を練ることができなかった。ことしは2年ぶりの巡行となる。

沿道で見学していて、「お見事」と感じたのは、交差点や狭い路地で山車の方向を一気に転換する辻廻しだ。470年の歴史があるとされる祭りだけに、木遣り(きやり)歌と引手の呼吸の合った動作はさすがだと感服した。能登で耳にする言葉がある。「盆や正月に帰らんでいい、祭りの日には帰って来いよ」、「1年365日は祭りの日のためにある」。能登の祭りは地区や集落、町内会での単位が多く、それだけ人々が祭りに関わる密度が濃い。祭りの伝統は絶やさない。能登の人たちの意地をこの言葉から感じる。

能登半島では5月4、5日に七尾市で高さ12㍍、直径2㍍の車輪の「でか山」(山車)が街を練る「青柏祭」が、そして7月4、5日には能登町宇出津で40本余りのキリコが勇壮に街を練る「あばれ祭り」が催されるなど、能登の祭りはこれから本番を迎える。曳山祭は能登の祭りのシーズンの幕開けを告げるファンファーレなのかもしれない。

⇒20日(日)夜・金沢の天気   くもり時々あめ

★ことしも能登にコウノトリがやってきた、4年連続 

★ことしも能登にコウノトリがやってきた、4年連続 

きのう(18日)国の特別天然記念物のコウノトリの日本の最北端の営巣地といわれる能登半島の志賀町富来にコウノトリを見に行ってきた。電柱の巣に一羽のコウノトリがいた=写真、午後1時ごろ撮影=。ことしも能登にやってきた、と正直うれしくなった。例年ペアでやって来るので、もう一羽が飛んでくるのをじっと待った。エサを探しに行っているのか、30分待ったが現れなかったのでそっと場を離れた。

ここにやってくるコウノトリのペアは足環のナンバーから、兵庫県豊岡市で生まれたオスと福井県越前市生まれのメスで、ことしも同じペアだとすれば、4年連続で能登にやってきたことになる。この地で初めてコウノトリを観察したのは2022年6月24日だった。かなり成長したヒナ鳥と親鳥がいた。1ヵ月後の7月24日に再度訪れたとき、ヒナ鳥が羽を広げて飛び立とうとしている様子を観察できた。これがきっかで毎年、観察に訪れている。

去年1月31日に現地を訪れたときはコウノトリの姿はまだ見えなかった。元日の最大震度7の地震で、電柱の上の巣は無事だったが、揺れたせいで巣の下に大量の枝が落ちていて、巣そのもの小さくなっていた。見た目で2分の1ほどになっていた。6月6日に訪れたときは、巣は1月に見たときより大きくなっていた。枝を加えて補修したのだろう。このとき、親鳥のほかにヒナ鳥が1羽がいて、合わせて3羽が見えた。コウノトリの3年連続での営巣を確認した。

コウノトリのダイナミックな動きも観察されている。2022年7月中旬、志賀町で初めて生まれた3羽のヒナに、兵庫県立コウノトリの郷公園といしかわ動物園が協力して、個体識別用の足環を装着した。その後、8月5日に巣立った3羽のうちの1羽(オス)が10月31日に台湾の屏東県車城(海沿いの村)で、11月8日に同じく台湾の雲林県台西郷蚊港村(養殖池)でそれぞれ確認された(兵庫県立コウノトリの郷公園の公式サイト)。屏東県は台湾の最南端で、能登半島から飛んで渡ったとすれば、2000㌔にもおよぶ。

サイトによると、日本生まれの個体が台湾で確認された初めてのケースだった。いまも台湾の空を飛んでいるのか、ペアリングは成功したのかとつい能登生まれのコウノトリに想いを寄せてしまう。

⇒19日(土)夜・金沢の天気   はれ

☆インバウンド観光客が「サムライ寺」で剣道や太鼓を体験 金沢に新たなスポット

☆インバウンド観光客が「サムライ寺」で剣道や太鼓を体験 金沢に新たなスポット

ふと思ったことだが、トランプ大統領に大阪・関西万博に来てもらうよう、石破総理は誘ったらどうだろうか。アメリカのパビリオンは、「宇宙探査」を体験することができることが目玉で、「月の石」が人気で行列ができているとメディア各社が報じている。月の石は1970年の大阪万博でも人気だった。石は同じものではない。前回の万博で展示された石はアポロ12号(1969年)の宇宙飛行士が持ち帰ったもの。今回の万博の石はアポロ計画の最後の有人月面着陸が行われたアポロ17号(1972年)が持ち帰ったもの。55年を経たいまも月の石は輝きを放ち、人々の関心を誘っている。トランプ氏にはぜひ万博を訪れ、アメリカの偉業を語ってほしいものだ。相互関税ではなく、月の石をテーマに。

話は変わる。きょう午前、金沢市の妙立寺(通称「忍者寺」)の前を通ると、エイ、ヤーッと声が聞こえた。忍者寺の向かいにある承証寺という寺の境内でインバウンド観光客の数人が竹刀を振り上げ降ろして剣道を体験していた。寺の前にポスターがあり、「Morning activities at the temple! Kendo Practice Experience」と書いてある=写真・上=。インバウンド向けの剣道体験のようだ。夕方の体験ブログラムもあり、「Japanese Drum」(和太鼓)や「Matcha green tea」(抹茶)、「Listening to incence」(聞香)などのメニューがあるようだ。金沢ではこのほかに兼六園近くの弓道場で、弓道や合気道の個人向け体験ツアーも実施されている。

金沢城や武家屋敷などの観光名所から、金沢は「サムライ」のイメージがインバウンドの観光客には印象に残る。そして、俳優の真田広之氏主演の映画『SHOGUN 将軍』 がゴールデン・グローブ賞など獲得していて、サムライ文化を求めるニーズが金沢で高まっているのだろう。

それにしても、忍者寺の前にサムライ寺があるとは、インバウンド観光にとっては絶好のロケーションではないだろうか。

⇒17日(木)夜・金沢の天気    はれ

☆桜散らす春の嵐 トランプ関税は「終わりの始まり」なのか

☆桜散らす春の嵐 トランプ関税は「終わりの始まり」なのか

金沢で風雨が吹き荒れている。気象庁によると、寒冷渦がきょう15日にかけてに西日本から東日本に進み、この時期としては強い寒気が流れ込んでいる。近所の神社ではこの風雨で桜の花が舞い散り、境内は桜の花びらの絨毯のようになっていた=写真は金沢市の地黄八幡神社、午前11時ごろ撮影=。まさに桜散らす春の嵐だ。きょうが桜の見納めとなりそう。

話は変わる。どこか似たようなストーリーだ。韓国の尹錫悦大統領が発した「非常戒厳」の宣布(2024年12月3日)とアメリカのトランプ大統領が発した「相互関税」のことだ。似たようなストーリーのその1は「いきなり」と「急ブレーキ」だ。尹氏は政府の方針に反対し続ける最大野党「共に民主党」を国政をマヒさせる「反国家勢力」と指弾し、戒厳令を出して国会などに軍や警察を投入した。国会が2時間半後に戒厳令の解除を要求する決議案を可決し、その後に解除された。

トランプ大統領が仕掛けた相互関税という「貿易戦争」もいきなりで、世界的にショックを与えた。カナダとメキシコを除くほぼ全ての国・地域に適用する一律10%の基本税率と、アメリカの貿易赤字額が多い60ヵ国・地域に適応する上乗せ税率で構成される関税で、日本時間の9日午後1時すぎに発動した。ところが、発動からわずか13時間で、トランプ氏は上乗せ税率を中国を除いて90日間停止すると発表した。当面はベースラインの10%を適用する。それにしても、発動した直後に急ブレーキだ。この背景には、アメリカ国債の投げ売りなど、金融市場が不安定になったことが理由とみられる。この関税をめぐって、アメリカだけでなく各国の株式市場が乱高下するなど世界経済は大混乱に陥った。

似たようなストーリーのその2は「終わりの始まり」だ。尹錫悦氏の非常戒厳の宣布をめぐり、憲法裁判所は今月4日、弾劾訴追された尹氏の罷免を8人の裁判官の全員一致で決定した。憲法裁は、戒厳令は違憲で国会に対する軍の投入などについても違法かつ重大だと認めた。尹氏は即時失職し、60日以内に大統領選が行われる。大統領が弾劾・罷免されたのは2017年3月の朴槿恵氏以来2人目となった。

トランプ氏の「終わりの始まり」は国民の信頼を失ったことだ。今月2日に相互関税をかけると公表したとき、トランプ氏は「2025年4月2日はアメリカの『Liberation day(解放の日)』として永遠に記憶される」と演説し、関税実施の大統領令に署名した。それが90日間の停止となった。アメリカの政治的評価とすれば、これは「ブリンクマンシップ(brinkmanship)の失策」と映るだろう。ブリンクマンシップは「瀬戸際外交」と訳され、たとえば核兵器の使用も辞さないという印象で圧力をかけて外交交渉などで優位に立とうとする政治手法を指す。今回の貿易戦争ではブリンクマンシップで強気に出たトランプ氏が「いったん中止します」と振り上げた拳(こぶし)を下したのだから、アメリカ政治としては失策と映る。

関税措置をめぐり、今月17日から日本とアメリカの交渉がワシントンで始まる。トランプ氏が仕掛けた貿易戦争、これからどう展開していくのか。春の嵐は当分やみそうもない。

⇒15日(火)午後・金沢の天気    風雨

★高値続いたコメ価格一服 「物価の優等生」一転、卵のブランド化進む

★高値続いたコメ価格一服 「物価の優等生」一転、卵のブランド化進む

近所のスーパーに行くとつい気になり覗くのがコメ売り場。きょう(14日)行くと、地元石川県のブランド米「ゆめみずほ」が5㌔袋3580円(税込み3867円)だった=写真・上=。「500円も安くなっているじゃん」、ふと言葉が出た。5日前の9日に来たときは4080円(税込み4407円)だった。このときは、「ぜんぜん安くなってないじゃん」と少々怒りのようものが込み上げていた。なにしろ、全国的なコメの高値は「令和のコメ騒動」とメディアで騒がれ、政府は備蓄米21万㌧を放出を始め、3月下旬から店頭に並び始めた。にもかかわらず、高値止まりしていたからだ。きょうの「3580円」の値札を見て、ようやく備蓄米の放出効果が出てきたのかと思った次第。

NHKニュース(4月8日付)によると、店頭に並んでいる備蓄米は複数の品種を混ぜたブレンド米で、5㌔袋は税込み3600円台から3700円台で販売されている。全国のスーパーの平均価格と比べると500円程度安い水準とのこと。これにともなって、ブランド米も値下がりしている、とのこと。

それにしても、今後コメの値段はさらに下がるのか、あるいは再び上がるのか。そもそも、「5㌔袋3580円(税込み3867円)」でも高い、と言える。去年8月25日付のブログで書いたとき、同じスーパーで購入したブランド米の新米は5㌔で2290円だった。あれから8ヵ月で50%以上、1300円ほど高くなっている。コメの値段は一律ではないが、消費者は5㌔袋3580円を「まだ高い」と思うか、「500円安くなったので、まあいいか」と思うか。そして、不思議なことに金沢のスーパーの棚には備蓄米が並んでいない。備蓄米のブレンド米は金沢では売れないとの店側の判断なのか。

同じスーパーの卵売り場を覗いた。「店長おすすめ品」が10個入りで299円(税込み323円)。一方で、6個入り1パック489円(税込み529円)という高級品が目にとまった=写真・下=。1個80円余り。パックを見ると、能登の養鶏業者の卵で、チラシには「これぞ本物の玉子 自然養鶏手作り乳酸発酵飼料」などと記されている。

卵が「物価の優等生」であったのは、いわゆるケージ飼いによる大量生産で卵が供給されてきたからだと言われている。これに対し、狭いケージにニワトリを閉じ込めて生産性を上げる従来の養鶏・鶏卵のシステムは、「アニマルウェルフェア(Animal Welfare、動物福祉)」に反するとして、欧米ではケージフリー・エッグ(平飼いの卵)が主流になっている。上記のチラシからは手作りの乳酸発酵飼料のエサをやり、平飼いでおいしい卵をつくる業者の想いが伝わってくる。物価の優等生から一転して、卵のブランド化が進んでいるようだ。

⇒14日(月)午後・金沢の天気     はれ

☆「いのち輝く未来社会のデザイン」大阪万博で鼓動する「心筋細胞シート」

☆「いのち輝く未来社会のデザイン」大阪万博で鼓動する「心筋細胞シート」

バンパクという言葉を初めて聞いたのは15歳のころ。当時、歌手の三波春夫がテレビで歌っていた、あの歌はいまでも覚えている。「こんにちは こんにちは 世界のひとが こんにちは こんにちは さくらの国で 1970年のこんにちは こんにちは こんにちは 握手をしよう」。あれから半世紀余り、55年が経つ。

きのう(12日)大阪・関西万博の開会式が催され、NHKで視聴していた。今回の万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。歌舞伎役者の尾上菊之助の出演など伝統芸能を織り交ぜたステージの演出は、まさに過去から現在をつないで未来を創造するというコンセプトなのだろう。(※写真は、大阪・関西万博の開会式の模様=NHK中継番組から)

今回の万博は10月13日までの半年間。日程はまだ決めていないが、ぜひ見学に行きたいと思っている。その目的はAIやロボットではなく、「心筋細胞シート」が動いている様子を見るために。メディア各社の報道によると、この心筋細胞シートは大阪ヘルスケアパビリオンで展示されている。iPS細胞(人工多能性幹細胞)でつくられた心筋細胞をシート状にしたもので、大きさは5㌢ほどで、1分間に約50回ほどびくびくと鼓動するように動いているという。

この心筋細胞シートの開発を手掛けたのは、大阪大学の澤芳樹特任教授を中心とするベンチャー企業。このシートを心筋梗塞や狭心症などが原因で心臓の筋肉がうまく機能しなくなった「虚血性心筋症」の患者の心臓に貼り付けることで、心臓の機能が回復することが期待されている。これまで8人の患者にシートを移植する臨床試験を行い、いずれも経過は良好だという。 澤教授らのベンチャー企業は今月8日、心筋細胞シートについて厚労省に製造・販売の承認申請を行ったと発表している (4月10日付・TBSニュースweb版)。

iPS細胞は「万能細胞」とも言われ、体をつくるあらゆる細胞に成長する能力を持つとされる。京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞の作製に初めて成功し、2012年にノーベル医学生理学賞を受賞。これをきっかけにiPS細胞が広く知られるようになった。iPS細胞は再生医療への応用が期待されているだけに、心筋細胞シートは「いのち輝く未来社会のデザイン」を掲げる大阪・関西万博のシンボルではないだろうか。

⇒13日(日)夜・金沢の天気    あめ