2025年 1月 の投稿一覧

☆報道した週刊誌なぜ排除  企業ガバナンスが問われたフジ社長会見

☆報道した週刊誌なぜ排除  企業ガバナンスが問われたフジ社長会見

  テレビ業界の用語で、映ってはいけないものが映り込んだりすることをバレルと言う。このところテレビ業界は不祥事や違反が相次ぎ、まさにバレバレの状態ではないだろうか。メディア各社の報道によると、きのう(17日)午後、フジテレビ社長による定例記者会見が開かれた。フジテレビ社長の定例会見はもともと2月28日に予定されていたが、記者会から前倒しでの会見の要望があり、フジテレビ側は前日の16日にこの日での開催が決めた。定例会見というより「緊急会見」のような様相だった。

  タレントの中居正広氏の女性とのトラブルをめぐる週刊誌報道がにぎやかだ=写真=。とくに、フジテレビの編成部長が絡んでいると週刊文春(12月26日号)で報道され、さらに最新号(1月23日号)では、フジテレビの女性アナも被害者として証言していると報じられている。フジテレビ社長の会見はこれを受けてのもので、会見内容は全国紙や経済紙なども報道している。冒頭でバレルと述べたが、まさにこの会見はテレビ局らしからぬ側面が見えている。

  会見は、冒頭で述べたように記者クラブ加盟社の記者のみが参加できる定例記者会見の前倒しとして設定され、主催者はフジテレビだった。このため、出席は全国紙やスポーツ紙が加盟するラジオ・テレビ記者会、参加が認められたNHKと民放テレビ局などに限定された。さらに、フジは定例記者会見であることを理由にカメラによる動画撮影を許可せず、週刊誌やインターネットメディアなどの参加も認めなかった。

  そもそも、記者会がフジテレビ社長の定例会見の前倒しを要望したのは、タレント中居正広氏の女性とのトラブルでのフジテレビ編成部長の関わりについて、法人トップの見解を求めるものだった。会見で社長は「多大なご心配、ご迷惑をおかけし、説明ができていなかったことをおわびします」と謝罪し、外部の弁護士を中心とした調査委員会を立ち上げると述べた。第三者から見ても、これは実質的な謝罪会見だ。つまり、会見を通じて視聴者や国民におわびをするということになる。ならば、定例会見という枠を設けずに、動画撮影を許可し、週刊誌やインターネットメディアなどの参加を認めるべきではなかったのか。むしろ、今回の会見で問われたのは企業統治、ガバナンスの問題だろう。

  もう一つ。テレビ東京の番組「激録・警察密着24時!!」をめぐり、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会は2023年3月の放送分について、実際の密着は2日間のみで、1年にわたって密着取材したかのように誤解させる表現をしていて、放送倫理違反に当たるとの意見を公表した(1月17日付・BPO放送倫理検証委決定第46号)。一方で委員会は、制作会社スタッフの過酷な勤務状態による「ひっ迫する制作体制」に問題があると述べ、制作を委託したテレビ東京側にも責任があるとしている。

⇒18日(土)夜・金沢の天気    くもり

★能登の文化遺産の保護訴え 世界に広げるレジリエンス支援の輪

★能登の文化遺産の保護訴え 世界に広げるレジリエンス支援の輪

  歴史的建造物などの保存に取り組むアメリカの非営利団体「ワールド・モニュメント財団」(WMF・本部ニューヨーク)は16日付の公式サイトで、緊急に保存や修復が求められる「ウオッチ」(2025年版)のリストに能登半島地震で被災した能登地域の文化遺産を掲載している。その主旨をこう説明している。

「After a devastating earthquake in January 2024, restoring historic buildings in this hard-hit region can spur cultural, social, and economic recovery. Inclusion on the 2025 Watch will support the Noto Peninsula Heritage Sites’ transformation into a model for community resilience.」(意訳:2024年1月に発生した壊滅的な地震の後、この大きな被害を受けた地域の歴史的建造物を修復することで、文化的、社会的、経済的回復に拍車をかけることができます。ウオッチ2025への掲載は、能登半島の遺産がコミュニティのレジリエンスのモデルへと変貌するのを支援するものです)

  ウオッチ2025では世界各地の25の文化遺産に支援が必要と訴えていて、「Noto Peninsula Heritage Sites, Japan」はその一つ。能登のページに掲載している写真は、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定されている輪島市門前町の黒島地区。被災した古民家が崩れかけている。黒島地区は江戸時代に北前船船主が集住した地区で、貞享元年(1684)に幕府の天領(直轄地)となるなど歴史ある街だ。幕府から立葵(たちあおい)の紋が贈られたことを祝い始まった祭礼とされる「黒島天領祭」(8月17、18日)は連綿と続いていて、自身が大学の教員時代に学生たちを連れて何度も祭りに参加した。

  元日の震災後、現地を見たのは去年2月5日だった。黒島の中心にあった旧・角海家住宅(国の重要文化財)などは全壊の状態だった。かつて北前船が寄港した黒島の港は海岸が隆起して陸地となっていた。WMFが世界に呼びかけ、寄付金を募って危機にひんする能登の文化遺産を保護する支援するプロジェクトだ。被災地の文化遺産は時間とともにさらに劣化していく。世界に復興支援の輪が広がることを期待したい。

⇒17日(金)夜・金沢の天気     くもり

☆予断を許さない能登半島地震 犠牲者は500人超え

☆予断を許さない能登半島地震 犠牲者は500人超え

       連日すさまじい量と内容のニュースがあふれているが、その中からいくつかをピックアップ。地元石川県に関するニュースから。15日に開催された政府の地震調査委員会は委員長見解を公表した。能登半島地震について「活発な地震活動が当分継続する。加えて時々大きな地震が発生し、さらに活発になることもある」「(こうした地震は)日本ではこれまで観測されたことはない」「いつまで続くのかなど見通すことが難しい」「周辺には影響を受けた活断層があることに留意が必要」と。確かに能登では2020年12月から活発な地震活動が続いていて、去年元日のマグニチュード7.6に続き同6規模の地震がこれまで何度も発生していて、「千年に一度、数千年に一度の地震」とも称されている。地震はまだ続くというニュースを被災地の人たちはどう受け止めただろうか。(※写真は、まだ至るところで震災の爪痕が残る輪島市内=ことし1月9日撮影)

  今月14日に能登半島地震による災害関連死の審査会が開かれ、新たに10人が認定されることになった。県内の関連死はこれまでと合わせ280人に上り、直接死228人と合わせ508人となる。関連死は避難所などでの生活で疲労やストレスがたまったことが原因で持病などが悪化して亡くなるケースで、この認定については遺族からの申請を受けた自治体が医師や弁護士ら有識者による審査会を開いて判断する。また、直接死は地震によって家屋の下敷きになるなどして亡くなるケースだ。関連死については、石川県のほかにも隣接する富山県で2人、新潟県で5人が認定されていて、3県合わせた犠牲者は515人となる。

  内乱の首謀者として身柄を拘束された韓国の尹大統領に対して、世論は大統領支持に転じているようだ。韓国の朝鮮日報ネット版日本語(16日付)によると、12月3日に戒厳令を出した直後の与党「国民の力」の支持率は急落したものの、直近の世論調査では上昇しており、最大野党「共に民主党」の支持率とは誤差の範囲内まで狭まっている。戒厳令直後の世論調査会社リアルメーターの調査(12月12、13日)では26.7ポイント差(共に民主党52.4%、国民の力25.7%)だったが、その後は次第に狭まり、直近の同社調査(1月9、10日)では1.4ポイント差(共に民主党42.2%、国民の力40.8%)に縮まった。韓国ギャラップの調査(1月7-9日)でも共に民主党は36%、国民の力は34%と接近している。

  韓国はもともと保革対立が激しい。さすがに今回の政治の混乱に有権者も落としどころを探り始めたのだろうか。世論調査の数字を見る限りでは、混乱の収拾に乗り出すどころか党派的利益を優先している野党に対し批判が強まり、一方で危機感を背景に与党支持層が結束を固めていることがうかがえる。

  ちなみに日本でよく取り上げられる内閣支持率はどうか。NHKの直近の世論調査(1月11-13日)によると、石破内閣を「支持する」は去年12月の調査より1ポイント上がって39%、「支持しない」も2ポイント上がって40%となっている。支持しない理由は、「政策に期待が持てないから」35%、「実行力がないから」22%と続く。果たしてこの内閣支持率で与党は7月に予定される参院選を乗り切れるかどうか。

⇒16日(木)夜・金沢の天気     あめ時々あられ

★韓国大統領が「反乱」の容疑で身柄拘束 どう読むこの国のカタチ

★韓国大統領が「反乱」の容疑で身柄拘束 どう読むこの国のカタチ

  韓国の公共放送KBSはネットニュースで「[속보] ‘내란 수괴 혐의’ 윤 대통령 체포…헌정 사상」(【速報】尹大統領が「反乱」の容疑で身柄を拘束…憲政史上初めて)と報じている=写真・上=。尹大統領による「非常戒厳」の宣布を巡り、高官犯罪捜査庁と警察でつくる合同捜査本部はきょう15日午前10時半過ぎ、内乱容疑で尹氏を身柄を拘束。大統領は憲法で不訴追特権が保障されているが、内乱罪は例外となっている。捜査当局は今月3日にも身柄の拘束を試みたが失敗していた。韓国で現職大統領が身柄拘束はこれが初めて。合同捜査本部は拘束期限である48時間以内に逮捕状を請求する。

  尹氏は独裁者になろうと決意したのか、あるいは野党に対する脅しだったのか。去年12月3日深夜の演説には正直驚いた。「非常戒厳」を宣布すると発表した。韓国の憲法では、非常戒厳は戦時やそれに準じる国家非常事態に陥った際に大統領が宣言するものなので、世界は朝鮮戦争を再開するのかと身構えた。ところが、尹氏は戒厳令をその後、6時間で解除した=写真・下=。あれはいったい何だったのかと、混乱を招いた。ソウルでは大規模な市民による抗議行動と支持行動が連日のように起きていた。

  そもそも、尹氏を支える与党「国民の力」は2022年の政権発足時から少数与党だったが、それが去年4月の総選挙で大敗を喫した。このため、国会運営がままならない状態に陥っていた。追い詰められ、衝動的に戒厳令を発したのだろうか。その後は裁判所が出した拘束令状の執行を拒否し、公邸で籠城を続けていた。

  冒頭に戻る。報道によると、合同捜査本部は捜査員1000人余りを動員し、午前4時半ごろから大統領公邸前で大統領の警護側と捜査側が3時間にわたって対峙した。公邸では尹氏の弁護士と捜査員が協議を続けた。弁護側は自ら出頭すると提案したが、捜査側は拘束令状の執行で譲らなかった。7時半ごろから捜査員らが築かれた壁にはしごを架けるなどして続々と敷地内に入った。合同捜査本部は「午前10時33分、尹氏の拘束令状を執行した」と発表した。尹氏は拘束前に映像メッセージを公開した。「流血の事態を防ぐため、不法捜査だが、高官犯罪捜査庁の出頭要請に応じることにした」と述べた。午前10時半過ぎ、大統領を乗せたとみられる車両が公邸を出て、ソウル近郊の高官犯罪捜査庁の庁舎に向かった。午前11時から取り調べが始まっている。

  戒厳令から2ヵ月足らずで大統領拘束という激震が走った韓国。歴代大統領では李明博氏や朴槿恵氏が離任後に有罪判決を受けて収監されている。この国のカタチをどう表現すればよいのだろうか。

15日(水)午後・金沢の天気     あめ

☆阪神淡路大震災から30年、能登地震1年 被災地との心のギャップどう埋める

☆阪神淡路大震災から30年、能登地震1年 被災地との心のギャップどう埋める

  「1995年1月17日」、いまから30年前のことだ。午前5時46分、金沢の自宅で睡眠中だったが、グラグラと揺れたので飛び起きた。テレビをつけると最大震度7に見舞われた神戸の悲惨な映像が映し出されていた。当時民放テレビ局の報道デスクで、着の身着のままで出勤した。テレビ朝日の系列局だったので、同じ系列のABC朝日放送(大阪)に記者とカメラマンを応援に出すことを決め、取材クルーを現地に向かわせた。見送りながら、無事を祈ると同時に、日本の安全神話が崩壊したような無念さが込み上げてきたことを今でも覚えている。「いよいよ日本沈没か」と。

  この阪神淡路大震災をきっかけにテレビ局系列の研修会や仲間内での勉強会で災害報道の在り様について議論するようになった。キーワードは2つ、「風化」と「既視感」だった。テレビ局の役割として、この震災を風化させてはならない。ニュース特集やドキュメンタリー番組などを通じて、復興の問題点など含めて取り上げて行こうという主旨の発言が相次ぎ、研修会は熱くなった。(※写真は、黒煙が上がる阪神淡路大震災の災害の様子=写真提供・神戸市役所)

  一方で既視感という、視聴者や読者が有するハードルについても議論になった。「いつもいつも同じ映像シーンを流している」「以前に視聴した番組と同じ」「以前どこかで読んだ記事」などと、視聴者や読者から指摘されることをメディアは嫌がる。なので、新たな映像や、これまでとは別の視点でのニュース特集や番組に取り組むことになり、ディレクターや記者、カメラマンは懸命になった。が、時間の経過とともにネタ切れとなり限界も見えてきた。

  この風化と既視感は情報化社会の特性のようにも指摘されることがあるが、むしろ人間の特性だとの指摘は昔からあった。266年も前にイギリスの経済学者アダム・スミスは著書『道徳感情論』で、災害に対する人々の思いは一時的な道徳的感情であり、人々の心の風化は確実にやってくる、と述べている。日本人に限らず、災害に対する人々の心の風化や記憶の風化は人としての自然な心の営みと説いている。18世紀中ごろのイギリスはまさに産業革命のただなかで、都市部への人口集中や資本家と労働者の対立など激動の世紀の中で、平静さを求める人々の心情を読み解いたのだろうか。

  ただ、被災地の人々の心情は変わらない。「忘れてほしくない」という言葉に尽きるだろう。被災地の復旧や復興は一般に思われているほど簡単には進まない。最近では、被災者への「共感」、あるいは「意識の共有」という言葉がよく使われるようになってきた。また、クラウドファンディングというネットを通じた支援もあるが、被災地の人々と一般の人々の意識のギャップをどうしたら埋めることができるのか。阪神淡路大震災から30年、能登半島地震から1年、いろいろと考えさせられる。

⇒14日(火)夜・金沢の天気     あめ

★北陸「晴れもつかの間」 暗雲漂う・・・「関税男」がアメリカ分断、「戒厳令」対立の韓国

★北陸「晴れもつかの間」 暗雲漂う・・・「関税男」がアメリカ分断、「戒厳令」対立の韓国

  けさ午前8時過ぎに自宅2階から撮影した金沢の東の空の様子。青空が広がって、北陸の冬とは思えない光景だ=写真=。ただ、この晴れ間も続かず、日本気象協会 tenki.jp によると、日本海側を中心に雲が多く、北陸は昼頃まで雨や雪で、雷を伴う所があるとのこと。確かに、窓から外を眺めていると、徐々に雲が覆ってきた。晴れもつかの間、これが北陸の本来の天気なのかもしれない。         

  ニュースを見ていると、世界が「晴れもつかの間」状態に陥っているようだ。アメリカ大統領選で共和党のトランプ前大統領が返り咲き、あと1週間もすれば大統領の座に就く。「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ氏の再来は、国際社会にどのような影響をもたらすのか。「Tariff. It’s the most beautiful word in the dictionary.」(関税。辞書のなかで最も美しい言葉だ)と、関税男を自称するトランプ氏は執着深い。関税にこだわるのは、海外製品を締め出し自国の製造業を守るとの姿勢が有権者の支持を得ているからだ。ただ、関税をかけられたメキシコやカナダ、中国などは報復関税をかけることになり、世界経済に混乱をもたらしかねない。

  さらに世界に物議を醸したのが、トランプ氏がデンマーク領のグリーンランドを購入したいと発言したことだ。ロシアに近い世界最大の島で、軍事的な要衝でもある。買収発言はこれが初めてではなく、政権1期目の2019年にも買収計画を提案し、デンマークと外交摩擦を引き起こしていた。さらに、トランプ氏は不法移民を全部追い出すと言っている。こうなると労働者不足でコスト高となり、インフレとなって跳ね返ってくるのではないか。トランプ氏の執着心が自国や世界に暗雲をもたらすのか。

  もう一つ暗雲が見えるのは隣国の韓国だ。12月3日、尹大統領の深夜の演説には正直驚いた。「非常戒厳」を宣布すると発表した。韓国の憲法では、非常戒厳は戦時やそれに準じる国家非常事態に陥った際に大統領が宣言するものなので、世界は朝鮮戦争が再開するのかと身構えた。ところが、尹氏は戒厳令をその後、6時間で解除した。あれはいったい何だったのかと、混乱を招いた。ソウルでは大規模な市民による抗議行動と支持行動が連日のように起きている。

  そもそも、尹氏を支える与党「国民の力」は2022年の政権発足時から少数与党だったが、それが去年4月の総選挙で大敗を喫した。このため、国会運営がままならない状態に陥っていた。追い詰められ、衝動的に戒厳令を発したのだろうか。その後は裁判所が出した拘束令状の執行を拒否し、公邸で籠城を続けている。ことしは日本と韓国の国交正常化60周年にあたる節目の年なのだが。

⇒13日(月・祝)午前・金沢の天気    くもり 

☆輪島市の成人式アニメポスタ- 永井豪記念館の再建を復興シンボルに

☆輪島市の成人式アニメポスタ- 永井豪記念館の再建を復興シンボルに

  先日、輪島市のショッピングセンターに立ち寄ると、掲示板にアニメのポスターが2枚貼ってあった。なんだろうと近いづいて見ると、右の一枚は「令和6年 輪島市 二十歳の集い」とあり、左は「令和7年 輪島市 二十歳の集い」とあった。成人式を開催するポスターだった。去年は元日に能登半島地震があり、成人式は中止となっていたので、ことしの開催となり、ことしの成人式と重ねて開催するという意味で並べて貼ったのだろう。場所は輪島市立輪島中学校アリーナで同じだが、令和6年の成人式は1月11日、令和7年の成人式は1月12日とあり、それぞれ開催する日が異なる。  

  それにしてもアニメを用いたポスターは、少々派手で楽しい雰囲気を醸し出している。アニメそのものが素人ぽくない。ポスターを制作したのは輪島市教委の生涯学習課で、SNSで話題になり、参加者が増えるように仕掛けたのかもしれない。

  輪島市でアニメと言えば、朝市通りには人気スポットの「永井豪記念館」があった。あの『マジンガーZ』や『キューティーハニー』などの漫画家・永井豪氏は同市出身で、2009年に行政が記念館を創り、永井氏は名誉館長を務めていた。日本のアニメが海外でも大ブームとなり、永井氏の『UFOロボ グレンダイザー』などがヨーロッパで人気を博すと、記念館へのインバウンド観光の見学者も増えていた。そして、永井氏は2019年、フランス政府から芸術文化勲章「シュバリエ(騎士)」が贈られた。記念館も絶好調だった。

  その記念館は能登地震で朝市通り一帯が焼けて、ビルも焼け焦げた。展示してあった原画や一部のフィギュアなどの展示物などは無事だった。その後、ビルは公費解体で撤去された。永井氏と所属プロダククションは輪島市と石川県にそれぞれ1000万円、計2000万円の義援金を贈っている。永井氏は「漫画はつらいときこそ、力になって希望を満たすことができる。漫画を描くことで『前に進もう』というメッセージを伝えたい」と語っていた(2024年1月25日付・読売新聞オンライン)。

  去年5月29日、永井氏は石川県の観光大使の委嘱を受けた。「復興支援も続けていきたい」と述べ、永井豪記念館の再開にも意欲を示した(同6月1日付・同)。震災でふるさと愛がふつふつとわいてきたのだろうか。能登復興の先進事例として、永井豪記念館の再建でその役割を果たしてほしいと願う。

⇒12日(日)夜・金沢の天気   くもり

★能登・二重被災地の冬景色~下~

★能登・二重被災地の冬景色~下~

  輪島市を巡ると去年元日の能登地震(同市で最大震度7)、そして9月の奥能登豪雨(同48時間で499㍉)の爪痕がいたるところで見えてくる。輪島漁港に近い丘の中腹にある住宅街では、倒壊した民家が駐車場の車に覆いかぶさっている現場があった=写真・上=。周辺の家々も軒並み全半壊の状態だった。現場とすぐ横の同市鳳至町では震度6強が観測されている。震度7の地区を含め同市全体では181人が亡くなり(関連死80人含む)、住家6237棟が全半壊となった(2025年1月7日時点・県危機対策課調べ)。

  復旧道半ばも復興プロジェクト始動へ 雪と波と雲の白さが醸す風景 

  240棟が焼け、東京ドームの広さに匹敵すると広さといわれる4万9000平方㍍が焼失した朝市通りの周辺地域。ここは公費解体による撤去作業がほとんど終わっていた。復旧・復興に向けて動きも始まっている。地元メディアの報道によると、震災からの復興計画を進めている行政の復興まちづくり計画検討委員会は先月20日に計画案をとりまとめ、市長に提出した。目玉となるプロジェクトに「朝市通り周辺再生」を掲げ、商店街や住まいの共生を目指して市街地整備を行う。行政は市民から意見を求め、ことし2月中に正式決定する。復興は10年計画で、上下水道などのインフラ整備などを進める「復旧期」、朝市通り周辺の新たな街づくりを進める「再生期」、地域資源を活用した新たな観光や産業を創出する「創造期」を段階的に定め、復興プロジェクトを推進していくという。

  この検討委員会には地元の若手経営者らも出席し、朝市通りの「にぎわい創出」の提案を行っている。市内外の新たな事業者を受け入れる賃貸型店舗を整備することや、建物の高さや色に制限を設け朝市通りの外観を統一すること、海産物の共同加工場を併設した公設市場を整備することなどを要望している。じつに具体的なプランではないだろうか。

  朝市通りをめぐって、海岸線に向かった。袖ヶ浜は例年夏になるとキャンパーでにぎわうところだ。今回、面白い景色に気が付いた。雪が積もった砂浜は白く、そこに打ち寄せる冬の波は白波だ。そして、海の向こうには白雲が覆っている。陸と海と空が 一体となった「白銀の風景」のように感じた。

⇒11日(土)夕・金沢の天気    くもり

☆能登・二重被災地の冬景色~中~

☆能登・二重被災地の冬景色~中~

  強い冬型の気圧配置の影響できょうも北陸など日本海側で雪が積もりそうだ。午後6時までに予想される降雪量は多いところで石川県加賀地方で20-30㌢、能登地方30-40㌢となっている(気象庁)。前回ブログで取り上げた金沢と能登を結ぶ自動車専用道路「のと里山海道」の大雪では、道路を管理する国交省が昨夜午後9時から一部26㌔を通行止めとして集中除雪を行うようだ(地元メディアの報道)。ただ、地震で損壊した道路は車が通れるようになったものの、左右や上下の蛇行状態になっていて除雪もそう簡単ではないかもしれない。

   降雪の中で進む「豪雨仮設」の建築作業 テント村でくつろぎ 

  きのう見て回った二重被災地・輪島市の積雪の様子の続き。雪のため住宅などの公費解体の現場では作業を中止しているところが多くあった。逆に、作業があわただしく行われている現場もあった。同市杉平町でアパートのような木造2階建ての建築が進められていた。数えると12棟ある。工事看板を見ると、「西ノ草仮設住宅」とある。西ノ草はこのあたりの地名だ。そこで、現場を見守っていた作業スタッフに「雪の中たいへんですね」とさりげなく尋ねると、「能登豪雨の仮設住宅です」と答えてくれた。工事看板をさらに見ると、完成が「2月下旬」とあるので、あと50日ほどだ。着手したばかりの現場もあり、作業をはやく進めなければとの緊張感が現場に漂っていた。

  石川県危機対策課のまとめによると、9月の奥能登豪雨で輪島市、珠洲市、能登町を中心に1600棟余りの住宅が全半壊や床下・床上浸水の被害を受け、現在も140人が避難所での生活を送っている(10月7日時点)。さらに、豪雨で金沢などへ移った家族なども多くいるとみられることから、輪島市と珠洲市では「豪雨仮設」の設置を進めている。県の資料によると、輪島市では上記の西ノ草仮設住宅を含め4ヵ所で264戸、珠洲市では1ヵ所22戸、合わせて286戸の設置を準備している。

  輪島の市街地を抜けて千枚田の方向に向けて走行すると、「テント村」のようなものが見えてきた。旧「深見小学校」の校庭にインスタントハウスが8棟=写真・下=。中をちらりとのぞくと、畳が敷かれ、ダンボールベッドがあった。公費解体の作業員やボランティアらしき人たちが出入りしていた。地域の人たちが旧小学校と校庭のインスタントハウスを使って宿泊施設としていて、夕朝食もあるのようだ。テント村の近くには仮設の「居酒屋」もあった。近くにある「ねぶた温泉」という民間施設もことし7月から日帰り入浴を再開している。車の気温計に目をやると外気温は1度だ。体を温める方法はいくつかありそうだ。

⇒10日(金)午後・金沢の天気   くもり

★能登・二重被災地の冬景色~上~

★能登・二重被災地の冬景色~上~

  積雪は5㌢ほどだったが、けさ今季初めての「雪すかし」をした。水分を含んだザラザラの雪だったのでスコップを地面にあててそのまま側溝に持っていく。「雪すかし」は「雪かき」のことで、同じ北陸でもいろいろな言い方がある。そして、雪の状態によって、「すかし」方が異なる。これは雪文化なのだろうか。

   大雪で雪崩が懸念の土砂崩れ現場 仮設住宅も通路が確保できるか

  奥能登では平地で20㌢余り積もっているとニュースで知って、去年元日の能登地震、そして9月の奥能登豪雨の被災地はどうなっているのかと思い、きょう現地の様子を見に、二重被害が大きかった輪島市に向かった。金沢と能登を結ぶ自動車専用道路「のと里山海道」は多いところで30㌢ほどの積雪だった。路面は除雪されていたが、道路の両サイドが雪で覆われていて=写真・上=、時折吹く強風でその雪が車のフロントガラスに吹き付ける。

  輪島市街地の入り口に当たる熊野トンネル周辺では地震による土砂崩れが起きた。このため、落石から通行する車を守る屋根「プロテクター」が設置されている。プロテクターの上をよく見ると、土砂崩れの跡がスコップの底のようにわん曲になっていて=写真・中=、今後さらに雪が積もると雪崩が発生し、道路を塞ぐのではないだろうかと案じた。

  さらに進み、市街地の手前にある河原田小学校グラウンドの仮設住宅(44戸)に行くと、20㌢ほどの積雪だった=写真・下=。住宅と住宅の間隔が2.5㍍ほどあり、この程度の雪だったら住宅の出入りに問題はなさそうだ。が、1㍍くらいの大雪になるとどのように除雪すればよいのか。小型除雪車は入れるかどうか。さらに雪捨て場をどこに設定すればよいか。他人事ながら心配になる。

  金沢地方気象台によると、あす10日にかけて警報級の大雪となる恐れもあるとして交通障害などへの警戒を求めている。輪島市内をめぐったが、積雪による二次災害を案じてか、全半壊の住宅などの公費解体の作業がストップしているところもあった。

⇒9日(木)夜・金沢の天気    くもり