2023年 12月 の投稿一覧

★「能登かき」は生育不良、「かきまつり」中止の衝撃

★「能登かき」は生育不良、「かきまつり」中止の衝撃

   ちょっと日本海の魚介類の様子が変だ。能登半島の穴水湾はカキの養殖が盛んで、例年2月には「雪中ジャンボかきまつり」が開催されている。自身も家族で何度もカキを食べに行ったことがある。地元メディアによると、カキの生育不良のため例年並みの数量を確保するのが難しいとして、来年予定していた「かきまつり」は中止となった(7日付・北國新聞)。

   かきまつりは、毎年2月10日と11日に町営の広場で延長400㍍の炭火焼きコーナーにコンロを並べ、採れたてのカキを焼いて味わう=写真=。例年数万人が訪れる町の一大イベントだ。それが開催中止となった。

   報道によると、カキの殻が例年の出荷サイズになっておらず、先月下旬から主催者の町観光物産協会と生産者の間でかきまつりの開催をめぐって協議してきた。まつりで用意する8万個余りのカキが確保できないと判断し、中止を決めた。猛暑などで半分ほどのカキが死滅しているという。コロナ禍で中止はあったものの、生育不良による中止は1988年にかきまつりが始まって以来初めてのこと。

   能登半島の養殖カキは「能登かき」と呼ばれブランドになっている。里山の栄養分が川を伝って流れ、湾に注ぎこむ。その栄養分が植物プランクトンや海藻を育み、海域の食物連鎖へと広がり、カキもよく育つとされる。とくに、里山の腐葉土に蓄えられた栄養分「フルボ酸鉄」が豊富にあるとされる。

   ところが、ことしは夏から秋にかけての猛暑がたたり、石川県水産総合センターの9月時点の調査で、湾全体の深度10㍍の水温は過去5年の平均と比較して2.6度高くなった。海水温が高い影響で死滅するカキが激増した。さらに、もう一つの原因として指摘されているのが、クロダイによる「食害」だ。2年ほど前から湾内でクロダイが増え始め、カキの稚貝をクロダイが食べることが問題となっていた。クロダイは釣り人に人気で、「遊漁船業」を営む業者が稚魚を放流している。

   能登の名物のカキをめぐる問題は複雑だ。優先順位としてはまず、少々の海水の高温に耐える、高温耐性の種苗生産の準備が必要ではないだろうか。能登のカキ養殖の再生を願う。

⇒8日(金)夜・金沢の天気     はれ

☆「撤回している」発言を繰り返す馳知事の大あくび

☆「撤回している」発言を繰り返す馳知事の大あくび

   最近、会話の中で「デジャブ」を使うようになった。フランス語の「déjà-vu」で、既視感という意味で使う。以前どこかで見たような風景やテレビのシーンを思い出して、「デジャブやな」と言ったりする。

   そのデジャブを思い起こすのが、馳浩石川県知事が東京オリンピック招致のために官房機密費を使ってIOC委員105人にそれぞれアルバムを作成して配ったと述べた問題。11月17日の講演での発言だが、問題視されると、本人は「五輪招致に関する発言は全面撤回する。今後一切発言しない」と繰り返している。

   きのう6日の石川県議会12月定例会でも、代表質問に立った自民党の議員から問われ、「誤った事実が報道を通じて拡散することは本意ではないことから、その日のうちに全面撤回したものです」と答えていた。その後もこの質問に関しては「全面的に撤回をしております」と繰り返していた。(※写真は石川県庁公式サイト「知事のホームページ 」より)

   この議会での知事と議員のやりとりで、デジャブ感が脳裏に漂ってきたのが、あのロッキード事件での国会での追及だ。1976年、アメリカの航空機メーカー「ロッキード」社への発注をめぐって日本国内で汚職事件が表面化した。この事件で国会に召喚され、「記憶にございません」を連発していたのが、当時、日本財界のドンと言われた小佐野賢治氏(1917-1986)だった。「記憶にございません」はこの年の流行語大賞にもなっている。

   この議会での「記憶にございません」と、馳氏の「全面的に撤回しております」が妙にダブって感じるのは自身だけだろうか。ちなみに、小佐野氏の国会での証言は偽証罪(議院証言法違反)に問われ、翌年77年に起訴され、81年には懲役1年の実刑判決を受けている。

   話はずれるが、きのうの県議会本会議で馳知事が大あくびを繰り返したことが地元紙のコラムに掲載されている。議員の質問中での大あくびだ。記者のぶら下がり取材で質問されると、「きょうはかみ殺していたつもり」とばつが悪そうに答えたという(7日付・北國新聞)。本人は毎朝4時に起きるそうだ。これにアルバム発言の議会での追及が重なって心労が重なったのか。

⇒7日(木)夜・金沢の天気   くもり

★季節外れの「黄砂」、的外れの「政治資金」

★季節外れの「黄砂」、的外れの「政治資金」

   あす7日は西日本と沖縄などの広い範囲に黄砂が飛来する見込みで、9日には北日本にも黄砂が飛来するとの予想が出ている。北海道に流れ込んだ後、東北や北陸にも黄砂が飛来するようだ(6日付・日本気象協会「tenki.jp」)=黄砂予報図=。

   日本から3千kmも離れた中国北部のゴビ砂漠やタクラマカン砂漠を低気圧が通過することで黄砂が発生し、偏西風に乗って日本にやってくる。植物が砂漠の地表を覆わない2月から5月にかけて黄砂が発生するといわれてきたが、中国北部で乾燥化が一段と進んでいるのか、「季節外れ」の黄砂が頻繁になっている。

   黄砂は何かと悪者扱いされがちだが、黄砂にはミネラル成分が含まれていて、それが日本海に落ちて植物プランクトンの発生を促し、それを動物プランクトンが食べ、さらに魚が食べる食物連鎖が生まれて日本海の漁業資源は保たれているとの研究もある。

   話は変わる。メディア各社の報道によると、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題について、岸田総理は政府与党連絡会議で、「各政策グループの活動に国民から疑念を持たれていることは遺憾だ。政治の信頼を回復するため、党としても強い危機感を持って、この問題に一致結束して対応していく」と述べた(6日付・NHKニュースWeb版)。

   その後、岸田総理は麻生副総裁や茂木幹事長、それに世耕参議院幹事長ら党幹部7人と会談し、対応を協議。会談のあとの記者会見で茂木幹事長は「パーティーなどの自粛が根本的な解決だとは思っていないが、二度と問題が起こらないための対応策がとられるまでは自粛をする」と説明した。また、政治資金規正法を改正する必要性についは、「現行法に問題があるのか、現行法が守られていないことに問題があるのかによっても対応策は変わってくる。いずれにしても透明性を高めることが極めて重要だ」と述べた(同)。

   このニュースで率直な印象は「的外れ」だ。自民党の派閥のパーティーは自粛するとの幹事長の話だが、その前にやるべきことは金がどう還流しているのか、実態をつまびらかにすべきだろう。まずは、説明責任を果たすべきだ。

⇒6日(水)夜・金沢の天気   くもり

☆ワクチン接種死を「コロナで」と報道、BPO「放送倫理違反」

☆ワクチン接種死を「コロナで」と報道、BPO「放送倫理違反」

   このブログで何度か書いたが、新型コロナウイルスのワクチン接種後に「アナフィラキシー症状」とおぼしき副反応に一時的だったが見舞われたことがある。2022年8月に4回目のワクチン接種を金沢市内の病院で受けた。接種した右腕の付け根だけでなく、左腕のほぼ同じ個所もじんわりとした痛みが続いた。恐怖を感じたのは接種2日目の午後、小刻みに体が震える症状が出た。パソコンのキードボードを打つことができなかった。数分して震えが治まった。

   アナフィラキシー症状は薬や食物が身体に入ってから起きるアレルギー反応で、気道閉塞(喉の奥の空気の通り道が塞がれること)や不整脈、ショックなどで死に至る事例もある。コロナウイルス感染とワクチン接種による副反応はまったく別なものだ。自身は医者と相談し、5回目を受けたのはことし1月だったが、これ以降は副反応は出ていない。

   この話を再び持ち出したのは、ことし5月15日放送のNHK『ニュースウオッチ9』で、ワクチン接種後の副反応で亡くなった人の遺族3人のインタビューをコロナに感染して亡くなったと誤認させる伝え方したとして、報道の有り様が問われている問題。きょう5日、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会は報道の経緯を文書でまとめ公表した。以下、抜粋。

「コロナウイルスに感染して亡くなった人とワクチン接種後に亡くなった人の違いは分かっていたものの、広い意味でコロナ禍で亡くなった人に変わりはないだろうと考えた、と(担当者は)説明している。にわかに信じがたい説明だが、仮にそう考えていたのならば、こうした認識は、ニュース報道の現場を担う者としてあり得ない、不適切なものであったと言わざるを得ない」

   放送は「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常」というテーマで、およそ1分間の映像だった。担当者は記者やディレクターの部署ではなく、映像編集を業務とするセクションに所属。自ら現場に出て取材・制作を行ったのは今回が初めてだった。にもかかわらず担当者は、職場内では特に助言やサポートを受けていなかった。明らかに死因が異なるにもかかわらず、タイトルに合わせて強引に映像を構成したのではないだろうか。

   この問題を遺族側がBPOに訴えていた。BPO放送倫理検証委は文書の中で、「人の死」という人間の尊厳にも関わる情報を扱う放送であるにもかかわらず、取材の基本をおろそかにした行為はあまりにも軽率だったと指摘し、「事実を正確に伝えるというニュース・報道番組としての基本を逸脱し、視聴者の信頼を裏切り遺族の心情を大きく傷つける結果を招いた」と述べ、放送倫理違反とした。

   BPOの意見を受けてNHKは、「ジャーナリズム教育の徹底など現在進めている再発防止策を着実に実行し、視聴者の信頼に応えられる番組を取材・制作してまいります」(5日付・NHK報道資料)とコメントを出した。この問題でNHKは放送後に番組で謝罪し、編集責任者を減給、編集長をけん責の懲戒処分としている。

⇒5日(火)夜・金沢の天気    くもり

★「自由に生きたい」香港民主化の周庭氏が亡命宣言

★「自由に生きたい」香港民主化の周庭氏が亡命宣言

   香港の民主化運動で活躍した周庭(アグネス・チョウ)氏へのインタビューがきょうニュース番組(4日付・テレビ朝日)で流れていた。「カナダにきて大学院の勉強をして、(香港に)帰らないことを決断しました。私はただ自由に生きたいと思っています」。番組は、周氏が留学先のカナダで事実上の亡命宣言を発表したと報じた。

   周氏は2014年のデモ「雨傘運動」に初めて参加してから、20年8月までに香港国家安全維持法の違反容疑などで4度逮捕されている。4度目の逮捕の保釈後に、日本のメディアに対し、香港警察から証拠の提示もなく、パスポートも押収され、「なぜ逮捕されたのか分からない」と流暢な日本語で答えていた。そして、拘束中に「欅坂46」のヒット曲『不協和音』の歌詞を心で口ずさんでいたという。秋元康が作詞して2017年4月にリリ-スされた曲。「絶対沈黙しない」「最後の最後まで抵抗し続ける」。こうした歌詞が民主活動家としての彼女の心の支えになったのだろう。(※写真は、周氏が保釈後に配信したユーチューブ動画から)

   その後、無許可集会を扇動した罪で7ヵ月にわたり収監され、2021年6月に出所。出所後は沈黙を貫いていた。ただ、SNSでは再び警察に逮捕され連行されることの不安などに駆られ、恐怖におびえる日々が続いたと明かしていた。

   日本のメディアによると、周氏が香港からカナダのトロントに向かったのはことし9月。パスポートは出発の1日前に受け取った。 12月末には香港に戻るつもりで航空券も購入していた。警察への報告義務があったためだ。しかし、今回番組で語ったように、「帰らないことを決断しました。私はただ自由に生きたいと思っています」。

   中国・香港から亡命するのは周氏だけではない。NHKニュースWeb版(7月22日付)によると、メキシコ国境からのアメリカへの「亡命」を目指し摘発され中国人はことしに入って5月までに1万人を超えた。去年の同じ時期の17倍に上っている。今回の周氏の亡命宣言はさらに中国人の亡命に拍車をかけるのではないか。

⇒4日(月)夜・金沢の天気     はれ

☆岸田総理が手を差し伸べるべきは海外の被災地ではないか

☆岸田総理が手を差し伸べるべきは海外の被災地ではないか

   このニュースで岸田内閣の支持率はさらに下落するのではないだろうか。中東を訪れた岸田総理大臣はエジプトのシシ大統領と会談し、エジプトはロシアのウクライナ侵攻による食料や燃料価格の高騰に加え、イスラエルとハマスの衝突の影響で、厳しい経済・財政状況にあるとして、最大でおよそ2億3000万㌦の財政支援を検討する考えを伝えた(2日付・NHKニュースWeb版)。その後、岸田総理をヨルダンを訪れ、アブドラ国王と会談し、イスラエルとハマスの衝突で影響を受けているヨルダンにおよそ1億㌦の財政支援を行う方向で準備を進めていくと伝えた(同)。

   岸田総理はアラブ首長国連邦のドバイで開かれていたCOP28(国連気候変動枠組み条約締約国会議)に出席し、イスラエル、エジプト、ヨルダン、カタールの中東各国の首脳らと会談すると予め述べていた(30日付・総理官邸公式サイト)。その4ヵ国のうちの2ヵ国に3億3000万㌦にも及ぶ「財政支援」を伝えた。財政支援は本来ならば各国がIMFに支援要請を行うべきであって、日本が単独で行う必要がどこにあるのだろうか。(※写真は、COP28でスピーチをする岸田総理=総理官邸公式サイト)

   そもそも、COP28に岸田総理が行く必要はあったのか。前年のエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されたCOP27に国の代表として出席したのは西村環境大臣だった。COP26はイギリスのグラスゴーで開かれ、アメリカのバイデン大統領が出席したので岸田総理も参加した。スペインのマドリードでのCOP25は小泉環境大臣,ポーランドのカトヴィツェでのCOP24は原田環境大臣だった。つまり、COPはおおまかには環境大臣の所管だ。

   それが、わざわざ岸田総理がエジプトとヨルダンに行き、財政支援を行う必要がどこにあるのか。むしろ、目を向けるべきは被災地への支援ではないだろうか。フィリピンでミンダナオ島付近を震源とするマグニチュード7クラスの地震が2日から相次いでいる。震源地に近い離島では64㌢の津波が観測されている。また、インドネシアのスマトラ島のマラピ火山で3日に大規模な噴火が起きている。被害の状況はこれから全容が明らからになってくる、手を差し伸べるべきはこうした被災地ではないだろうか。

⇒3日(夜)金沢の天気   くもり時々あめ

★キッシンジャー氏の「外交遺産」は次に繋がるのか

★キッシンジャー氏の「外交遺産」は次に繋がるのか

   前回ブログの続き。キッシンジャー氏逝去をめぐる中国の対応はどうか。TBSニュースWeb版(30日付)によると、中国外務省の汪文斌・報道官は定例会見で、「キッシンジャー博士は長い間、中米関係の発展に関心を持って支持し、中国を百回以上訪問して、中米関係の正常化に歴史的な貢献をしてきた」 「中国の人々の古くからの友人であり、人々は中米関係への重要な貢献を忘れないだろう」と述べ、習近平国家主席がバイデン大統領に弔電を送り、哀悼の意を表したことを明らかにした。

   また、汪報道官は「キッシンジャー博士は生前、中米関係を非常に重視し、中米関係が両国と世界の平和と繁栄に重要だと認識していた」と述べ、「中国とアメリカはキッシンジャー博士の戦略的ビジョンを受け継ぎ、中米関係の健全で安定的な発展を推進すべきだ」と指摘した。

   前回ブログでも述べたが、1971年7月にキッシンジャー氏が密かに中華人民共和国を訪れ周恩来首相と会談し、その後、翌年2月にニクソン大統領が訪中すると発表し、世界をアッと驚かせた。このことがきっかけで、中華人民共和国にも大きな転機が訪れた。ニクソン大統領の訪中を公表すると、国連がにわかに動いた。当時の国連の常任理事国は中華民国だった。その年の10月にいわゆる「アルバニア決議」が国連で発議され、中国の代表権は中華人民共和国にあると可決され、常任理事国を引き継いだ。アルバニア決議にはアメリカも日本も反対はしたものの、この流れのきっかけをつくったのはまさにキッシンジャー氏であり、中国にとっては大恩人だろう。

   この中国の恩人のアメリカ国内での評価はどうか。ウォール・ストリート・ジャーナルWeb版は「キッシンジャー氏が開いた中国への扉」と題して動画で特集を組んでいる=写真、1973年・毛沢東主席とキッシンシャー氏の会談=。その論調はキッシンジャー氏はアメリカ史上、最も影響力があると同時に、最も評価が分かれる外交官の一人だったとも述べている。つまり、中国を利しただけの外交だったとの評価もあるようだ。

   キッシンジャー氏はことし7月にも、米中の対立が続く中、北京を訪問して習近平国家主席と会談、11月15日に行われた米中首脳会談に向けた根回しをしたとされる。過去50年で100回以上も中国を訪れ、まさに米中関係の架け橋だった。いま米中関係が悪化している中で、キッシンジャー氏の「外交遺産」は次に繋がるのか、関係を再構築できるのか、どうか。

⇒2日(土)夜・金沢の天気    くもり時々あめ