2023年 10月 の投稿一覧

★「ほったらかしの柿」を求めてクマやサルが出没する頃

★「ほったらかしの柿」を求めてクマやサルが出没する頃

   金沢地方気象台はきょう8日、石川・岐阜両県などにまたがる白山(2702㍍)で初冠雪を観測したと発表した。白山は平年より13日、昨年より17日早かった。例年10月に入ると、クマの出没が多くなる。金沢市内だけでも、今月に入って2回、9月以降で11回の目撃情報などが寄せられている。

   金沢市公式サイト「ツキノワグマ目撃痕跡情報」によると、直近で今月6日午前6時ごろ、同市末町にクマ1頭が出没。やぶに入っていくのが目撃された。近くには小学校や中学校、高校、大学があり、朝の登校時間だっただけに注意が呼びかけられた。

   ふだんは山奥にいるクマが人里に降りてくるのは、ドングリなどのエサ不足が主な原因とされる。とくに冬眠前になるとクマも必死にエサを探し求めて人里に降りてくる。ことし石川県自然環境課が8月中旬から9月上旬にかけて実施した「ツキノワグマのエサ資源調査」では、ブナ科植物(ブナ・ミズナラ・コナラ)は加賀地方の一部地域で「凶作」ではあるものの、全体として「並作」としている。「大凶作」や「凶作」が多かった去年に比べると、ことしはクマの出没回数は減るかもしれない。  

   山から人里に下りてくるのはクマだけではない。金沢の住宅街にサル、イノシシ、シカが頻繁に出没するようになった。こうした野生動物は本来、奥山と呼ばれる山の高地で生息している。ところが、エサ不足に加え、中山間地(里山)が荒れ放題になって、野生動物が奥山と里山の領域の見分けがつかずに人里や住宅街に迷い込んでくる、とも言われている。あるいは、野生動物が人を恐れなくなっている、との見方もある。

   その事例として知られるのが実りの秋の柿だ。クマやサルは柿が大好物だ。一度食べたら、また翌年も同じところに柿を食べにくると言われる。かつて里山や人里には柿が栽培され人々は食した。ところが、里山に人が少なくなり柿の実をもぎ取る人がいなくなった。そんな「ほったらかしの柿」をクマやサルが柿の木に登って食べに来るようになった。

   金沢市の近郊では、クマやサルの出没を恐れて、柿の木を地域ぐるみで伐採するところも増えているようだ。

(※図は石川県生活環境部自然環境課が作成している「令和5年ツキノワグマ出没マップ」。出没は能登、金沢、加賀と広範囲におよんでいる)

⇒8日(日)午後・金沢の天気   くもり

☆ジャニー問題で露見した報道姿勢と企業ガバナンス

☆ジャニー問題で露見した報道姿勢と企業ガバナンス

   ジャニー喜多川の性加害の問題が連日報道されている。ジャニーズ事務所本社では、61年の歴史に幕を下ろすため、看板の撤去が行われたようだ。事務所側はこれまで「ジャニー喜多川の痕跡をこの世から一切なくしたい」とコメントしていたので、社名変更と看板撤去はその手始めなのだろう。

    きょうのTBS番組「報道特集」もジャニーズとテレビ局、広告代理店、そしてスポンサーの相関関係を報じていた。その中で、TBSの報道や制作、編成の担当者80人におよぶ社内調査の結果を公表した。そのポイントの一つだったのがこの問題だった。

   週刊誌「週刊文春」は1999年10月から14週にわたってジャニー喜多川社長の性加害問題を告発する連載キャンペーンを張った。記事に対して、ジャニーズ事務所とジャニー社長は発行元の文藝春秋社を名誉毀損で提訴。二審の東京高裁は2003年5月、性加害を認定。ジャニーズ側は上告したが、最高裁は2004年に上告を退け、記事の真実性を認める東京高裁の判決が確定した。ところが、TBSなどマスメディアは判決を報道せず、判決後もジャニー社長による性的搾取が続いていた。報道しなかったことは、ジャニーズ事務所とジャニー社長への忖度だったのか。

   TBSの社内調査では、「忖度があったという証言は出てこなかった」とした。報道しなかった理由として、報道目線では、週刊誌ネタや芸能ネタを軽んじる傾向があり、ニュースとして取り上げる判断をしなかったのだ。当時の社会部デスクだった番組のキャスターは「伝えるべき事を伝えなかったのは一種の職務怠慢で、その結果、人権被害が広がったことを忘れてはならない」と話していた。「ビジネスと人権」の報道目線が欠如していた。さらに、編成の目線では、「圧力を感じたことは一度もない。忖度を強要されたこともない」との証言がある一方、「なぜ、忖度するかというと番組出演をなくされるのを恐れていたから」という現場の生々しい声が紹介された。

   番組の中で、スポンサー企業の事例も紹介していた。日本の企業はこの性加害をなぜ長年放置してきたのか。利益追求を優先するメディアと広告代理店、スポンサー企業が一体化して、売上げ至上主義にまい進していた。その中で、ネスレ日本はジャニーズ喜多川の性加害の噂を耳にした段階で、所属タレントを起用しない判断をした。ネスレ日本の前社長は「企業のガバナンス」という言葉を使い、取引先のグレーな噂や情報を得た段階で動くことが、「転ばぬ先の杖」として企業には大切、ネットの時代だからなおさら、とコメントしていたのが印象的だった。

   スピード感をもった企業のガバナンスが問われている。「君子(企業のガバナンス)危うきに近寄らず」のことわざを思い浮かべた。

(※写真は、ことし3月7日に放送されたBBCのドキュメンター番組「Predator: The Secret Scandal of J-Pop 」の紹介記事。この放送がなければ、ジャニー問題は日本で白日の下にさらされることはなかった)

⇒7日(土)夜・金沢の天気     くもり 

★持続可能な事業継承とは何なのか 茶道・天然忌の教え

★持続可能な事業継承とは何なのか 茶道・天然忌の教え

   茶道・表千家には「天然忌(てんねんき)」という行事がある。茶道を習っている社中でも、きのう5日に行われ、表千家の中興の祖といわれる七代・如心斎(1705~51)の遺徳をしのんで、お茶を供えた=写真=。如心斎は9月に亡くなったので本来は同月の稽古で天然忌を行うが、今回、参加者が多く集える日を優先して10月となった。如心斎が工夫し制定されたとされる七事式の一つ、「且坐(さざ)」と呼ばれる稽古をするのが習いとなっている。

   茶道の先輩諸氏から話を聴くと、如心斎は「求道者」のイメージがわく。その典型的なエピソードの一つが、大徳寺に毎日のように坐禅に通ったことだ。書物にもこう描かれている。「如心斎は、千家の伝統に従って、茶の湯は究極において禅に通ずる、と考えた。彼にとって、稽古は単に芸ごとの習練ではなく、悟りに達する自己鍛錬の道であった」(千宗左著『茶の湯 表千家』)。そして、死後も自分の肖像画を掛けることを禁じたという。ここから察するに、名誉欲をもたず、禅と茶道を極めた家元だった。

   このイメージが表千家では代々共有されて、天然忌では「円相」の掛け物を飾る。中国・唐代の禅僧である盤山宝積の漢詩である「心月孤円光呑万象」(心月  孤円にして、光 万象を呑む)をイメージして描いたのが円相と言われる。円は欠けることのない無限を表現する、つまり宇宙を表している、とされる。茶の道も同じで、物事にとらわれず、純粋に精進することが茶の湯の道である、と。その心の宇宙の象徴が満月、円なのである。

   如心斎が生きた江戸時代の中期は将軍家ほか大名も茶をたしなみ、茶道人口が増加したころだった。と同時に、茶の湯が遊芸化へと傾きつつあった時代ともいえる。そこで、原点回帰を進めた。茶道の祖といわれる千利休の150年忌を機に元文5年(1740)に利休像をまつった祖堂を建立。家元の一子相伝を明確にすることで、茶の湯の継承争いを避けることに苦心した。趣向に偏りがちな茶の湯の世界に禅の教えと厳しい作法を導入することで、その後、明治、大正、昭和と表千家の伝統が連綿と受け継がれることになる。   

   きのうの天然忌では、円相の掛け軸「人間万事 一場 夢(じんかんばんじ いちじょうのゆめ)」を掛けた。曹洞宗管長を務めた板橋興宗氏が金沢の大乗寺住職だったときの筆だ。そして、花は如心斎が好きだったとされる白い芙蓉を本来は飾るが、季節が少しずれたので白いムクゲを飾った。

⇒6日(金)夜・金沢の天気     くもり

☆ジャニーズ事務所の会見 メディアの質問なぜ荒れた

☆ジャニーズ事務所の会見 メディアの質問なぜ荒れた

           ジャニー喜多川の性加害の問題をめぐりジャニーズ事務所が今月2日に記者会見を開いた際、会見の運営を任されていたコンサル会社のスタッフが、質問の指名をしないようにする記者やフリージャーナリストの名前や写真を載せた「NGリスト」を会場で携えていたことが問題となっている。メディア各社が報じている。「NGリスト」と聞くと報道の自由を阻害するかのような印象なのだが、冷静に考えれば会見の運営をスムーズに運ぶための必携のペーパーだったのだろう。ところが、生中継で会見を視聴していたが、それでも、この会見は荒れていた。

   記者会見はジャニーズ事務所側が開催。一通りの説明を終えたあと、記者からの質問タイムとなった。質問に関しては「1社1問」で司会者が手を挙げた記者を指名した。ところが、指名を受けた記者が1社1問の原則にもかかわらず複数の質問をしたり、まるで説教のように長々と質問をする、など雰囲気が荒っぽくなり、司会者も「1問1社でお願いします」「質問は1つだけでお願いします」とルールを無視する記者に困惑していた。

   さらに、指名を受けていない記者が質問を乱発する場面もあった。司会者が「発言が求められてないので静かにお願いします」と注意を促したものの、それでも発言を続ける記者もいた。過熱する会見にジャニーズ事務所側のスタッフが「みなさん、落ち着いていきましょう」と呼びかけるほどだった。NGリストそのものが無意味だった。

   では、なぜこのような荒れた会見になったのか。以下、憶測だ。記者側には「締め切り」という時間的な制約がある。これはよくあることなのだが、記者はすでに記事を想定しているので、質問では事前説明をして最後に「これについてどう思いますか」と質問相手に振り、「その通りです」というコメントさえもらえば記事が書ける。そのために長々とした事前説明になったり、複数の質問になったりする。今回、司会者から指名を受けた記者がジャニーズ事務所側に求めた質問もそのような形式の内容だった。

   一方、会場には300人ほどの記者、フリージャーナリストがいたようだ。すると1社1問では記者側すべてに質問の順番は回ってこない。そこで、順番待ちに苛立った記者が不規則に質問をすると、一気に会見の雰囲気が荒れる。

   本来、記者会見はメディア側、たとえば記者クラブが設定するものだ。事前に事務所側と打ち合わせをして、司会者もメディア側で人選する。身内なので、長々と質問する記者には「手短に」と催促したり、不規則な質問を注意する。ジャニーズ事務所の会見が次回もあるとすれば、メディア側に設定を委ねてもよいのではないか。そうすれば、会見は荒れることもない、NGリストも必要ない。

(※写真はジャニーズ事務所の記者会見=10月2日付・NHKニュースWeb版)

⇒5日(木)夜・金沢の天気    くもり

★金沢人の「おでん」好き その季節がやってきた

★金沢人の「おでん」好き その季節がやってきた

   きょうの金沢は晴れ間が広がり、昼過ぎには25度以上の夏日となったが、夕方になるとずいぶんと涼しくなってきた。この時節に友人たちと話していて何かと話題に上るのが、「おでん」だ。「そろそろ、源助だいこんやガンモの季節だね」とか、「ことしは、かに面が食えるかな」などと。そして、家庭の食卓にガンモドキなどおでんが出るようになるのがこの季節だ=写真・上=。

   金沢人のおでん好きは、「金沢おでん」の言葉もあるくらいだ。季節が深まるとさらにおでん好きが高じる。「かに面」だ。かに面は雌の香箱ガニの身と内子、外子などを一度甲羅から外して詰め直したものを蒸し上げておでんのだし汁で味付けするという、かなり手の込んだものだ=写真・下=。季節限定の味でもある。資源保護のため香箱ガニの漁期が毎年11月6日から12月29日までと設定されている。

   漁期が限定されているため、価格が跳ね上がっている。なにしろ、金沢のおでん屋に入ると、品書きにはこれだけが値段が記されておらず、「時価」としている店が多い。香箱ガニの大きさや、日々の仕入れ値で値段が異なるのだろう。去年1月におでん屋で食したかに面は2800円だった。それまで何度か同じ店に入ったことがあるが、数年前に比べ1000円ほどアップしていた。   

   値段が急騰したのは2015年3月の北陸新幹線の金沢開業のころだった。金沢おでんが観光客の評判を呼び、季節メニューのかに面は人気の的となり、おでんの店には行列ができるようになった。極端に言えば、「オーバーツーリズム」だ。

   この現象で戸惑っているのは金沢人だけではない。能登や加賀もだ。金沢おでんが観光客の評判を呼び、季節メニューのかに面は人気の的となった。すると水揚げされた香箱ガニは高値で売れる金沢に集中するようになる。それまで能登や加賀で水揚げされたものは地元で消費されていたが、かに面ブームで金沢に直送されるようになった。

   かに面をめぐるぼやきを上げればきりがない。季節に一度食することができるかどうか。できれば幸せ、それだけのことだ。

⇒4日(水)夜・金沢の天気    くもり時々あめ  

☆「ジャニーズ事務所」は廃業へ マスメディアは沈黙か

☆「ジャニーズ事務所」は廃業へ マスメディアは沈黙か

   ジャニー喜多川の性加害問題をめぐって、ジャニーズ事務所はきょう記者会見を行い、現在の社名を「SMILE-UP.」に変更し、この会社で被害者への補償を行ったうえで、将来的には廃業すると発表した。そして、タレントのマネージメントなどを行う新たな会社を設立し、社名はファンクラブで公募するとした。創業者であるジャニー氏の名前を完全に消去することで、この問題にけじめをつけるようだ。さらに詳しく会見内容をチェックする。

   ジャニーズ事務局の会見内容は公式サイトで掲載されている。以下、記事を抜粋。【社名について】 ジャニー喜多川の氏名に由来している以上、社名を変更する必要があるとの結論に達しました。新しい社名は、2018年7月に弊社が立ち上げた社会貢献活動「Smile Up!Project」に由来するものです。この活動は、常日頃応援してくださる皆様のために、どのように社会的責務や使命を果たすことができるかについて、タレント、社員が一丸となって考え、多くのファンの皆様のご支援の元に行動に移すことができたものです。

   【新会社の設立】 弊社は同族経営の弊害を排するとともに、ジャニー喜多川及び過去の弊社との完全な決別をするべく、今後新会社を設立の上、所属タレント(ジャニーズJrを含みます。)及び社員については希望者全員が新会社に移籍し、新会社がエージェント会社となり弊社は補償に特化することを想定しております。新会社には藤島家の資本は入れず、また藤島ジュリー景子は新会社の役員とはならず、経営に一切関与しません。

   【被害者救済】 9月13日付で「被害者救済委員会」を設置の上、同月15日に被害補償の受付窓口を開設いたしました。9月30日時点で478人の方からご連絡があり、そのうち被害を申告して補償を求めているのは325人です。現在、弊社に在籍されていたかどうかの確認を進めながら、被害者救済委員会による補償額の算定のための聞き取り等の手続を進めております。支払開始時期は11月を予定しております。

   この問題がクローズアップさせたのは国連の動きだった。各国の人権状況を調査する国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会の専門家チーム(2人)が7月24日から8月4日にわたり、省庁や地方自治体、企業の代表、労働組合、市民団体、人権活動家などと会談し、人権上の義務と責任にどう取り組んでいるかを聞き取りした。その中で、ジャニー喜多川の性加害問題について被害者から聞き取りを行ったことから、にわかにクローズアップされることになった。

   最終日の4日に日本記者クラブで記者会見した専門家チームは、エンターテインメント業界に「性的な暴力やハラスメントを不問に付す文化」があると言及。その事例として、ジャニー喜多川氏の性加害問題が2003年の東京高裁の判決で「性加害がある」と認定されたにも関わらず、事実を伝えてこなかったメディア業界、とくにテレビ、新聞などは「その罪は大きい」と指摘した。

   ジャニーズ事務所の会見内容は、「崖っぷち感」が伝わる改革案で本気度が見て取れる。では、一方の当事者でもあるマスメディアはどうするのか。改革案を示すのか。このまま沈黙を続けるのか。(※写真はWikipedia「ジャニーズ事務所」より)

⇒2日(月)夜・金沢の天気    はれ

★「能登サザエ」シーズン終わり アートな「サザエハウス」

★「能登サザエ」シーズン終わり アートな「サザエハウス」

   能登半島の真ん中に位置する志賀町で開催されるシンポジウムの事前打ち合わせのため、昨夜は町内のホテルに宿泊した。けさは午前7時30分に朝食を予約していたので会場に行いくと、バイキング料理がずらりと並んでいた。その中でも、思わず手を出したのがサザエのつぼ焼き=写真・上=。肝の先と貝柱と身の部分がうまい。そして名残惜しさも感じた。能登のサザエの漁期は7月1日から9月30日までの3ヵ月だ。きょう出されたサザエはきのう「9月30日」に採られたものだろう。あすから消えるメニューに違いない。

   能登ではサザエの貝殻の尖った部分を「ツノ」と呼んでいる。ただ、サザエにはツノのあるものと、ないものもある。さらに、そのツノは同じ長さではない。長いものと短いものがある。海流が速いところで採れるサザエのツノは長いと能登では言い伝えられているが定かではない。遺伝的な長さもあるのではないかと考えてしまう。ただ、ツノが長いほうが見栄えがいいので、ホテルでのサザエもつい、長いツノのものを選んで皿に入れた。

   サザエを芸術に仕込んだアーティストを思い出した。2017年の奥能登国際芸術祭で出品した、村尾かずこ氏作『サザエハウス』=写真・下=。珠洲市の海沿いの一軒の小さな小屋の壁面を膨大な数のサザエの貝殻で覆ったものだ。以下、このブログの2017年10月16日付「さいはてのアート<上>」の再録。

   「サザエハウス」の壁面をよく見ると、サザエだけでなく、アワビや巻貝の殻もある。また、同じサザエでも貝殻のカタチが違う。殻に突起がいくつもあるもの、まったくないもの、それぞれにカタチの個性がある。サザエそのものがその生息地(海底の岩場の形状など)に適応して形づくられた、完成度の高いアートなんだと改めて思えるから不思議だ。靴を脱いでハウスの中に入ると今度はサザエの貝殻に入ったような白色の曲がりくねった世界が広がる。

   入り口にいたボランティアガイドに、サザエの殻はどこから集めたのかと尋ねた。すると「全部で2万5千個、全部市内からですよ」と少し自慢気に。聞けば、アーチストの村尾氏との地元の人たちの打ち合わせで、今年(2017)6月から一般家庭や飲食店に呼びかけて集め始めた。貝殻の貼りつけ作業は7月からスタートし、作品のカタチが徐々に見え始めると、集まる数も増えた。当初から作品づくりを見守ってきたというボランティアガイドは「サザエの中身は食べるもの、殻は捨てるものですよ。その殻が芸術になるなんて思いもしなかった。殻を提供しただけなのに地元は参加した気分になって、(芸術祭で)盛り上がってますよ」とうれしそうに話した。

   「サザエハウス」の外観は全体に白っぽい。カメラを向けていると、赤いスカートの女性が通り過ぎたのでシャッターを押した。赤と白のコントラストが鮮やかに映った。半島の先端、さいはてのアートがまぶしい。

⇒1日(日)夜・金沢の天気   はれ