2023年 6月 の投稿一覧

★レーダー照射問題で日韓の未来志向外交は視界不良に

★レーダー照射問題で日韓の未来志向外交は視界不良に

   2018年12月21日、当時の岩屋防衛大臣は緊急記者会見を行った。能登半島沖の日本のEEZ内で、韓国海軍の駆逐艦が20日午後3時ごろ、海上自衛隊のP1哨戒機に対して火器管制レーダーを照射した。P1は最初の照射を受け、回避のため現場空域を一時離脱した。その後、状況を確認するため旋回して戻ったところ、2度目の照射を受けた。P1は韓国艦に意図を問い合わせたが、応答はなかった。照射は数分間に及んだ、と公表した。いわゆるレーダー照射事件だ。

  岩屋大臣の会見から7日後の28日、防衛省はP1が韓国駆逐艦を撮影した動画をホームページで公開した=写真=。レーダーの電波を音に変換してヘッドホンで聞いているP1の操縦士たちが「出しています」と電波を感知すると、「避けた方がいいですね」「めちゃくちゃすごい音だ」と緊迫した会話が録音されている。その後、P1から駆逐艦に向けて、「KOREAN NAVAL SHIP, HULL NUMBER 971, THIS IS JAPAN NAVY, We observed that your FC antenna is directed to us. What is the purpose of your act ? over.」とレーダー照射の目的を無線で3度問い合わせている=写真・防衛省ホームページより=。問い合わせに対する駆逐艦からの応答はなかった。テロップは付けてあるものの、画像の編集はなく、13分7秒の実録である。

   「事実上の攻撃着手」であり、日本側は証拠を示して重ねて抗議してきた。これに対し、韓国側は当初、「海自哨戒機が低空飛行で威嚇した」と反論していたが、ことし3月の韓国国会では国防大臣が「照射はしなかった」と発言するなど、事件自体を認めない姿勢に転換した。

   このような状況にありながら、きょう4日、浜田防衛大臣は訪問先のシンガポールで、韓国のイ・ジョンソプ国防大臣と会談した。日韓大臣会談が行われるのは2019年11月以来、およそ3年半ぶりとなる。会談で、両大臣は日韓の防衛当局間の協力を進展させる必要性を確認したものの、レーダー照射問題については両国の事務レベルで再発防止策を含めた協議をすることにした(4日付・NHKニュースWeb版)。

   日本側とすれば「けじめ」をつけて、次なる日米韓の軍事協力に会談のステージを上げたいのだが、韓国側が国会で「照射はしなかった」と発言している以上、事務レベルで解決の糸口が見いだせるとは思えない。今後の展開がますます見通せなくなってきた。

⇒4日(日)夜・金沢の天気    はれ

☆「日々好日」薄茶を一服

☆「日々好日」薄茶を一服

    きのうから開催されている「金沢百万石まつり」のイベントの一つとして市内の各地で茶会が催されている。その一つの旧中村邸の茶席に赴いた。床の間には「日々好日」の掛け軸が下がっていた=写真=。「にちにちこうにち」と読む。四字熟語では「日々好日」だが、いわゆる禅語では「日々是好日」。有名な言葉だ。   

   掛け軸には「金獅峯 興宗」の署名と落款がある。「金獅峯」は金沢にある曹洞宗の寺院、大乗寺のこと。「興宗」は住職だった板橋興宗氏だ。興宗氏は大乗寺の住職を経て、大本山總持寺(横浜市)の貫首や曹洞宗管長を務められた。晩年は「猫寺」で知られる御誕生寺(福井県越前市)の住職に。2020年7月に93歳で亡くなられた。大乗寺の住職をされていたころ、自身は新聞記者として何度か取材に訪ねたことがある。新米の記者だったが、いつも笑顔で丁寧に対応いただいた姿が印象に残っている。
 
   説法も聴いたことがある。「人間だけが勝手に迷って悩んで右往左往している。成功や失敗は人生を彩る風景のようなもの。起こった出来事に目くじらをたてるより、ひと呼吸、ひと呼吸に命(いのち)を実感する生き方のほうが、はるかに自由で豊か」「ゆったり、のんびり、遠回り。渋柿もいつかは熟すものです」と。冒頭の「日々好日」を語った説法だったかもしれない。

    そんなことを思い出い起こしながら、茶席で薄茶を一服いただいた。外ではメインイベントの百万石行列が動き出し、獅子舞や加賀とびはしご登りのにぎやかな演技が始まっていた。

⇒3日(土)夜・金沢の天気     はれ

★株高33年ぶり、出生率最低1.26、子ども自殺最多512人

★株高33年ぶり、出生率最低1.26、子ども自殺最多512人

           政府の少子化対策の推進とは裏腹に出生率は確実に減っている。厚労省の公式サイト「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」(2日付)によると、出生数は77万747人で、前年の81万1622人より4万875人減少(率換算で5%減)となった。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.26だった。低下は7年連続で、新型コロナウイルス禍での婚姻数の低迷などが影響した。

   さらに暗い統計がある。厚労省がことし3月の「自殺対策強化月間」にあたって、全国の自治体首長にあてたWeb版メッセージ「いのちを支える自殺対策の推進のために」によると、令和4年の年間自殺者2万1843人のうち、小中高の児童・生徒の自殺者は512人で過去最多だった。

   この事態を受けて、ことし4月に発足した「こども家庭庁」は各都道府県に専門家による対応チームを設置するなど対策の強化に向けた取り組みを行う(2日付・NHKニュースWeb版)。

   話を変える。きょう2日の東京株式市場の終値は1日より376円高い3万1524円となり、バブル期以来33年ぶりの高値を更新した。メディア各社の分析によると、アメリカの議会上院が債務の上限を一時的になくす法案を可決し、アメリカ国債の債務不履行が回避されたことを受けて買い注文が広がったようだ。アメリカのダウ平均株価も一時、200㌦を超える値上がりとなるど活気づいている。

   この背景には、アメリカの債務不履行の回避と同時に、FRBがアメリカの経済指標から景気の先行きへの警戒感が和らいだと判断して、今後、利上げを一時的に停止するとの見方が広まっているようだ(2日付・NHKニュースWeb版)。

   それにしても、日本の株価は上がれども、少子化は止まらず、子どもの自殺者数が増えている。これが日本の現実かと思うと暗たんたる気分に陥る。

⇒2日(金)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

☆拉致問題めぐる日朝首脳会談が実現したとして・・・

☆拉致問題めぐる日朝首脳会談が実現したとして・・・

   このところ気になるニュースを。岸田総理は今月27日に開かれた「拉致被害者の即時帰国を求める国民大集会」で、「現在の状況が長引けば長引くほど、日朝間の実りある関係を樹立することは、困難になってしまいかねない。日朝間の懸案を解決し、共に新しい時代を切り開いていく観点から私の決意をあらゆる機会を逃さず伝え続けるとともに、首脳会談を早期に実現すべく、私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」(27日付・NHKニュースWeb版)と述べ、条件を付けずに会う意思を明らかにした。

   この報道を受けて、北朝鮮外務省のパク・サンギル副首相は「もし日本が過去にとらわれず、変化した国際的な流れと時代にふさわしく、お互いをありのままに認める大国的な姿勢で新たな決断を下し、関係改善の道を模索しようとするのであれば、朝日両国が会えない理由はないというのが共和国政府の立場だ」と談話を発表した(29日付・韓国中央日報Web版)。

    冒頭の「このところ気になる」と述べたのは、万が一、日朝の首脳会談が実現した場合、どうなるのだろうか。韓国の尹錫悦大統領は日米韓の連携強化と北朝鮮への対抗姿勢を軸に外交を展開している。北朝鮮とすれは、その中で拉致問題を重視する日本に揺さぶりをかけ、日米韓の連携に亀裂を入れる意味で、「両国が会えない理由はない」と述べたのではないだろうか。首脳会談が実現した場合に、北朝鮮側が「日本がすべての制裁を解除すれば拉致した日本人を即刻帰国させる」と述べた場合、日本側はどう対処するのか。これに日本側が応じれば、間違いなく日米韓の同盟に亀裂が入る。そして、日本の国内世論も割れるだろう。

   拉致被害者の家族会は今年の新しい活動方針に「親世代が存命のうちに被害者全員の帰国が実現するなら、政府が北朝鮮に人道支援を行うことに反対しない」と明記した。家族会が北朝鮮への「支援」に踏み込んだのは初めてのことだ。拉致問題から46年がたち、今も健在な親は横田めぐみさんの母親の早紀江さん87歳と、有本恵子さんの父親の明弘さん94歳の2人となり、家族会として焦燥感があるのかもしれない。

   国論を割るような交渉を進めるべきではない。このような北朝鮮側の条件を拒否すべきだろう。そこで、日本側から条件を付ければよい。「弾道ミサイルの発射を即時停止するれば制裁解除は可能だ」と。ここから改めて交渉が始まるのではないだろうか。もちろん、仮定の話だ。

⇒1日(木)夜・金沢の天気   あめ