2022年 7月 の投稿一覧

★乱世に突入するのか日本

★乱世に突入するのか日本

   安倍元総理が射殺されて世の中が騒然となって、そして一夜が明けた。ブログで振り返ってみると、安倍氏の写真で印象に残っているのはこれかもしれない(2020年8月31日付)。 

   この写真を見て感じたことは、お笑いコンビのようだ、と。写真は総理官邸のツイッター(2019年5月26日付)で公開している。安倍氏(右)とトランプ大統領(左)が千葉県のゴルフ場で自撮りした写真だ。とくに、安倍氏の顔がなんとなく、芸能人っぽく見える。アメリカのCNNニュース(日本版)は「外務省によれば、昼食は米国産の牛肉のダブルチーズバーガーだった。トランプ大統領は相撲観戦も行った。優勝した力士にはトロフィーの上部に翼を広げたワシをあしらった『トランプ杯』も贈呈した」と。安倍氏のきめの細かな外交のテクニックが懐かしく思える。

   不謹慎な表現かもしれないが、今回の事件で日本は乱世の様相を呈してきたのではないかと、ふと思った。銃規制がきびしい日本の社会にあって、専門知識があれば銃や弾を自作できる。それも無尽蔵にだ。これから銃がはびこるのではないか。そして、世の中ではモラルの崩壊が起きている。税金を役人が詐取する事件が横行する。東京国税局の職員が国の持続化給付金をだまし取ったとして6月に詐欺罪で逮捕・起訴されている。去年7月には経産省のキャリア官僚2人が国の家賃支援給付金を詐取して逮捕・起訴されている。学校の教師が児童・生徒に猥褻な行為するという不適切な事象が後を絶たない。

   そして天変地異だ。「いつ起きてもおかしくない」と言われ続けている巨大地震がある。南海トラフ地震だ。四国や近畿、東海地方の広い範囲でマグニチュード8から9クラスで震度6強や6弱の激しい揺れが生じ、死者32万人、負傷者62万と想定されている。この30年の間に70%から80%の確率で起きる(国の地震調査研究推進本部)。さらに、東京の都心南部でマグニチュード7.3の地震が起きた場合、死者は最大で6100人、負傷者は同じく9万3400人、帰宅困難者は453万人、揺れや火災による建物被害は19万4400棟に上ると推計されている(5月25日・東京都防災会議)。

   地震はいつやってくるか分からない。80%の確率だとしても30年後も地震は起きない可能性もある。20%の確率だとしても、あすやってくるかもしれない。

   リアリティがあるのは隣国のリスクだ。ロシア流強奪の論理は日本でもまかり通る。極東の石油天然ガス開発事業「サハリン2」の運営をロシアが新たに設立する法人に移管し、現在の運営会社の資産を無償譲渡するよう命じる大統領令が下された。この事業に参画している三井物産や三菱商事などは経営の枠組みから排除されることになるだろう。そして、ロシア政府は6月7日、北方四島周辺水域での日本漁船の安全操業に関する日ロ政府間協定の停止を表明し、スケソウダラやホッケの刺し網漁ができなくなる。

   さらに、ロシアの政党「公正ロシア」のミロノフ党首が4月1日に「一部の専門家によると、ロシアは北海道にすべての権利を有している」と党公式サイトを通じて見解を述べた(4月8日付・時事通信Web版)。さまざまな憶測を呼んでいる。中国は尖閣諸島は中国の領土として主張し続けている。8日未明にも、中国海警局の船2隻が尖閣諸島の沖合で、日本の漁船を追いかけるように日本の領海に侵入。7日夜にも64時間余りにわたって領海に侵入した(8日付・NHKニュースWeb版)。

   大量の難民問題も起こりうる。北朝鮮に有事が起これば、大量の難民が発生し、船に乗って逃げるだろう。リマン海流に乗って日本海側に漂着する。そうした難民をどう受け入れるのか、中には武装難民もいるだろう。

   乱世というさまざまなリスクを抱えた時代にこのまま突入するのか。世の中の乱れ、天変地異、隣国のさまざまなリスク・ファクターが集中する日本。安倍氏だったら、どう乗り切るだろうか。

⇒9日(土)夜・金沢の天気    あめ

☆安倍元総理、テロに死す

☆安倍元総理、テロに死す

              テロリストにより元総理が狙撃される。これで日本への国際的な信頼がガタ落ちだ。NHKニュースによると、きょう午前11時半頃、奈良市の大和西大寺駅近くで演説をしていた安倍元総理大臣が背後から男に銃で撃たれた。安倍氏は心肺停止の状態で救急車で搬送されたあと、ドクターヘリで橿原市にある奈良県立医科大学附属病院に移されて治療を受けていたが、午後5時3分に亡くなった。67歳だった。

   警察は現場にいた奈良市に住む職業不詳の山上徹也容疑者(41)をその場で逮捕した。押収された銃は手製の銃だとみられる。山上容疑者は2005年まで3年間、海上自衛隊の広島県呉地区の部隊で勤務していた。

   安倍氏の演説が始まってから1分から2分ほどたったあとに2発の銃声が聞こえた。そのあと安倍氏が倒れ、意識がない様子だった。安倍氏には警視庁の要人警護を専門とする警察官(SP)が1人ついていた。

   治療にあたった奈良県立医大病院は午後6時すぎからの会見で、「頸部に2ヵ所の銃創があり、弾丸によるものとみられる傷は心臓にまで達していて、心臓および大血管の損傷があった」と説明した(関西テレビニュースWeb版)。

   海外メディアもトップニュースで伝えている。アメリカのCNNニュースWeb版は「FORMER JAPANESE PM ASSASSINATED」(日本の元総理 暗殺)の強烈な見出しだ=写真=。イギリスのBBCニュースWeb版も銃撃をいち早く速報で伝えていた。「Japan ex-PM Abe injured after reported gunshot attack」。NHKのニュースを引用し、その中で、「心肺停止状態」という用語は、日本で死亡が正式に確認される前によく使用される。拳銃が禁止されている日本では、銃による暴力事件は稀であり、政治的暴力事件はほとんど前代未聞。2014年の日本での銃による死亡事件はわずか6件で、米国では3万3599件だった、と報じている。

⇒8日(金)夜・金沢の天気   くもり

★侮辱罪の厳罰化とテレビ視聴率の因果関係~参院選まで3日

★侮辱罪の厳罰化とテレビ視聴率の因果関係~参院選まで3日

   きょう7日から改正刑法の一部が施行され、公然と人を侮辱した行為に適用される侮辱罪に、「1年以下の懲役・禁錮」と「30万円以下の罰金」を加えられ、SNS上での誹謗中傷など、悪質な行為への対処がこれまで以上に厳しくなる。

   侮辱罪の厳罰化に向けてこれまで法務省は去年4月、匿名の投稿者を迅速に特定できるように改正プロバイダー責任制限法を成立させ、裁判所が被害者からの申し立てを受けて、SNSなどプラットフォーム事業者に投稿者の氏名や住所などの情報開示を命じることができるようにするなど着々と準備を進めていた。

   この厳罰化のきっかけとなったのが、フジテレビのリアリティ番組『テラスハウス』(2020年5月19日放送)に出演していた女子プロレスラーがSNSの誹謗中傷を苦に自死した事件(同5月23日)だった。

   この事件では、警視庁は侮辱罪の公訴時効(1年)までに、ツイッターで複数回の投稿があったアカウントの中から2人の男を書類送検した。このうち、大阪府の20代の男は女子プロレスラーのツイッターに「性格悪いし、生きてる価値あるのかね」「いつ死ぬの?」などと投稿を繰り返した。東京区検は去年3月、この男を侮辱罪で略式起訴し、東京簡裁は男に科料9000円の略式命令を出した。即日納付され、男はこれ以上罪を問われることはなかった。侮辱罪の罪の軽さが問題視されていた。

   SNS上のこうした侮辱は厳罰化すれば治まるのだろうか。煽った側のメディアの責任は問われないのだろうか。放送より先の3月31日にフジテレビは動画配信サービス「Netflix」で番組を流し、SNS上で炎上した。この日、女子プロレスラーは自傷行為に及んだ。ところが、5月19日の地上波放送では、問題のシーンをカットすることなくそのまま流した。これが、SNS炎上をさらに煽ることになり、4日後に自ら命を絶った。つまり、結果的にSNS上の誹謗中傷を煽ったはテレビ局側ではなかったか。

   これはテレビ業界全体に言えることだが、よいにつけ悪いにつけSNS上での反響の大きさが視聴率のアップにつながると勘違いしている節がある。表現の自由や報道の自由に水を差すつもりは一切ない。侮辱罪が厳罰化したことの意味を捉えて、テレビ業界は番組によるSNS上での誹謗中傷を相互にチェックする、あるいは情報を共有する組織・システムを構築する必要があるだろう。

(※写真は2020年5月23日付のイギリスBBCニュースWeb版で掲載された女子プロレスラーの死をめぐる記事)

⇒7日(木)夜・金沢の天気    はれ

☆難題超えてアートで過疎脱却の心意気~参院選まで4日

☆難題超えてアートで過疎脱却の心意気~参院選まで4日

   震災や台風など被災地の復興というと、なんとか現状を回復したいとの思いが被災した人たちの願いでもある。これまで被災地へボランティア支援に行って感じたことだ。でも、目標を高く掲げながら「みなさんいっしょに頑張りましょう」というアクティブな自治体はそう多くはない。先月19日に震度6弱、20日も震度5強の群発地震に見舞われた能登半島の珠洲市では、3年に一度開催している「奥能登国際芸術祭」の次回開催を来年9月から51日間行うことを決めた、という。

   地元紙によると、きのう同市で芸術祭の実行委員会総会が開かれ、名称を「奥能登国際芸術祭2023」とし、期間を9月2日から10月22日までとすることを決めた。実行委員長の泉谷満寿裕・珠洲市長は「来年秋に3回目を開催することで、珠洲市の活性化につなげたい」と述べ、総合ディレクターの北川フラム氏も同席しあいさつした。また、開催にあたっては、来年秋に31年ぶりに石川県で開催される国民文化祭(10月14日ー11月26日)と連動した企画するとすることにした(6日付・北國新聞)。

   記事を読んで、去年の新型コロナウイルスの感染拡大で、東京オリンピックの開催の是非が問われたことを思い出した。結局、無観客で開催を実施したものの、世論が割れたことで、オリンピックの大口スポンサーであったトヨタは関連のテレビCMを見送らざるを得なかった。リスクがある中での、大型イベントの開催は判断が難しい。

   来年の開催を判断した珠洲市はどのような工夫を凝らせば、震災のリスクを回避しながら芸術祭の開催が可能か、そのような知恵と経験則を行政と住民が共有しているに違いない。去年9月5日に一年遅れで開催した「奥能登国際芸術祭2020+」は石川県にまん延防止等重点措置が出されていて、当初は屋外の作品のみの公開だった。珠洲市民のコロナワクチンの接種率は県内の自治体でトップだった。そして、9月16日には震度5弱の地震に見舞われた。幸い人や作品へ影響はなかったものの多難な幕開けだった。後半の10月以降は屋内外の作品が公開され、来場者は63日間で総数4万9千人を数えた。

   難関を乗り切ったという達成感があっだろう。閉会式で泉谷市長は「芸術祭は『さいはて』の珠洲から人の時代を流れを変える運動であり、芸術祭とともに新たな動きを産み出していきたい」と述べていた。それに再度、チャレンジする泉谷氏はことし5月22日の市長選で5選を果たし、信任を得ている。

   珠洲市は令和2年(2020)国勢調査で人口1万2900人、増減率はマイナス11.6%、平均年齢は59.8歳と、典型的な過疎・高齢化の地域でもある。ただ、若い人たちの移住者が年々増え、昨年度は85人だった。その背景にあるのは国際芸術祭の開催地という「アートの光」かもしれない。コロナ禍と被災を超えて過疎地をどう再生し、「人の時代を流れを変える運動」へと展開するのか。体を張って過疎脱却を目指す政治家の心意気を感じる。

(※常設展示されている山本基氏の作品『記憶への回廊』=写真・上=と、塩田千春氏の作品『時を運ぶ船』=同・下=)

⇒6日(水)夜・金沢天気     はれ 

★隣国の「武力ハラスメント」に具体策を~参院選まで5日

★隣国の「武力ハラスメント」に具体策を~参院選まで5日

   参院選挙まであと5日、与野党が論戦を繰り広げている。物価高への対策にはボルテージが上がっているようだが、どうしても気になるのは、日本海側などの安全保障環境だ。

   中国軍とロシア軍の爆撃機4機が日本海や東シナ海などで長距離にわたって共同飛行している(5月24日)。そして、ロシアの駆逐艦5隻が日本海など列島を周回し、中国の駆逐艦3隻も日本列島に沿う形で航行するなど不気味な動きを繰り返している。北朝鮮のICBMの連続発射、さらに核実験と新たな核兵器開発も懸念される。隣国のこうした武力ハラスメンにどう対抗していくのか。参院選では防衛費の増額については聞こえてくるが、間近に迫っている危機については具体案が聞こえてこない。

   中でも気になるのが北朝鮮による核実験だ。北朝鮮の北部の日本海側にある豊渓里(プンゲリ)の核実験場では、核実験の準備がすでに進んでいると国際原子力機関の事務局長が発表している(6月6日付・IAEA公式サイト)。いつ核実験を行うのかと世界は注視していた。しかし、いままでのところ音沙汰はない。

   その理由として考えられるのは、核軍拡競争に終止符を打ち核戦争を防止することについて話し合う国連軍縮会議。北朝鮮はこの会議の議長の座にあった。議長は持ち回りの1ヵ月間で就任は5月30日付、6月25日までだった。議長の座にある間はいくらなんでも核実験はしないだろうと自身も読んでいたが、その座を降りてからすでに10日経つ。そろそろ動き出すのではないか。

   前回2017年9月の核実験(6回目、160kiloton=キロトン)では、北朝鮮はICBM用の水爆実験に成功と主張していた。キロトンは原爆や水爆の爆発力を表す単位で用いられ、1キロトンは火薬1000㌧に匹敵する爆発力とされる。その160倍の爆発力だった。これはアメリカが1945年8月、広島に落とした原爆の10倍、そして長崎の8倍に相当するもので、当時、世論は騒然となった。

   再開するであろう北朝鮮の新たな核実験の規模はさらに大型化する可能性もある。そして、核兵器を搭載した弾道ミサイルで日本と韓国を攻撃する軍事力をすでに有している、と考えても不自然ではない。隣国の脅威は着実に高まっているにもかかわらず、政治は具体策を示せないのか。

⇒5日(火)午後・金沢の天気     くもり時々あめ

☆「デジタル田園都市」移住のチャンス~参院選まで6日

☆「デジタル田園都市」移住のチャンス~参院選まで6日

   「デジタル田園都市構想」は政府が掲げる目玉の政策だ。「地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めていくことで、世界とつながる『デジタル田園都市国家構想』の実現」(内閣官房公式ホ-ムページ)を掲げている。

   その兆候はすでに起きている。総務省が発表した「住民基本台帳人口移動報告」(1月28日付)の報道資料によると、東京23区では2021年の年間の転出者は38万2人、転入者は36万5174人で、初めて転出が転入を上回った。若者を中心に大都会から農山漁村への移住がすでに起きている。

   身近な事例で言えば、能登半島へも「田舎暮らし」を求めて大都会からさまざまな感性や技能を持った若者たちがやって来ている。その顔ぶれは東京など大都会などからのIT企業の社員が多い。能登半島の尖端にある珠洲市では昨年度84人の移住者がやってきた。最近では企業そのものが本社機能を一部移転するカタチでやって来る。東証一部の医薬品商社「アステナホールディングス」は去年6月に本社機能の一部を東京から同市に移転している。同社は珠洲にテレワークの拠点を置き、人事や経理を中心に社員の希望者が移住している。   

   都会からの田舎暮らしは今に始まったことではない。第一波が2011年にあった。東日本大震災の後だった。そのときもITエンジニアやITデザイナーなどの技能を有する人たちが能登に移住してきた。彼らに移住の動機を尋ねると、「パーマカルチャー」という言葉が返ってきた。パーマカルチャー(パーマネント・アグリカルチャー、持続型農業)は農業を志す都会の若者たちの間で共通認識となっている言葉だった。天変地異が起きたとき、人はどう生きるか、それは食の確保だ。それを彼らは「農ある生活」とよく言う。

   現在のこのトレンドは、新型コロナウイルスの感染拡大で、テレワークの働き方の概念が普及して、生活を地方に移す社員が増えたことが影響している。さらに、副業を認める会社では、社員が地方でやってみたいことにチャレンジするという副業型移住も増えている。

   政府も本気で「デジタル田園都市構想」を進めるのであれば、地方移住を社員に奨励する企業への優遇税制などの具体策を提示すべきではないか。政策が実現するチャンスが訪れている。

⇒4日(月)夜・金沢の天気     はれ

★風力発電と里山景観をめぐる懸念の声~参院選まで7日

★風力発電と里山景観をめぐる懸念の声~参院選まで7日

   能登で何かと話題になっているのが、風力発電の増設計画だ。ブレイド(羽根)の長さ34㍍の風車は風速3㍍で回りはじめ、風速13㍍/秒で最高出力1500KWが出る。風車1基の発電量は年間300万KW。これは一般家庭の1千世帯で使用する電力使用量に相当する。能登半島には同規模の風車が73基あり、ざっと7万3千世帯分となる。能登地区の9市町の世帯数は7万2千世帯(令和2年国勢調査速報集計)なので、風力発電でほぼ賄えていることになる。(※写真・上は能登半島の尖端、珠洲市に立地する風力発電=同市提供)

   岸田政権は2030年に温室効果ガスの46%削減、2050年までのカーボンニュートラルの実現を目指していて、風力発電の増設計画が全国で加速している。政府の方針を受けて、能登半島でも新たに7地域で12事業、171基が計画されている。能登半島で風が強く、海に面した細長い地形が大規模な風力発電の立地に適しているとされる。

   そこで議論が起きているのが、「今でも賄えているのに、これ以上の風力はなぜ必要なのか」といった問題提起だ。能登には風力のほか七尾市に火力発電所、現在は運転停止となっている志賀町には原子力発電所がある。電力エネルギーがなぜ能登に集中しなければならないのか、電力の地産地消に向けてそれぞれの地域が取り組むべきではないのか、と言った声を聞く。

   声の背景にあるのが景観と自然保護だ。環境省は先月14日、海岸線が中心だった能登半島国定公園(1968年指定)を内陸部の里山を含め広げる拡張候補地として選んだと発表している。候補地は2030年度をめどに決める。一方で、環境省の「国立・国定公園内における風力発電施設の審査に関する技術的ガイドライン」(2013年改定)では、「展望する場合の著しい妨げ」「眺望の対象に著しい支障」に該当するものの設置を認めていない。つまり、12事業171基の設置は国定公園が里山に拡張する前の、駆け込み需要ではないかと。

   能登半島は2011年6月に国連食糧農業機関により、世界農業遺産(GIAHS)「Noto’s Satoyama and Satoumi(能登の里山里海)」が認定されている。その認定要件に景観がある。今後、さらに171基も増えると里山の景観に違和感が出て、GIAHSの認定要件を満たすのかという疑問の声もある。

   自然保護の声は、バードストライクを懸念している。石川県は環境省が進めている国の特別天然記念物のトキの本州などでの放鳥について、すでに名乗りを上げている。能登には本州最後の1羽のトキがいたこともあり、県はトキの放鳥を能登に誘致する方針だ。ところが、能登に風車が244基も林立することになれば、トキには住みよい場所と言えるのかどうか。同じく国の特別天然記念物のコウノトリのひな3羽が能登半島の中央に位置する志賀町の山中で生まれ、8月には巣立ちする。コウノトリが定着することになれば、やはり懸念されるのはバードストライクだろう。(※写真・下は豊岡市役所公式サイト「コウノトリと共に生きる豊岡」動画より)

   能登の里山里海をめぐる外部環境の動きは急だ。自身は政府が進めるカーボンニュートラルの推進に反対ではない。ただ、過大な投資には上記の地域の反発や懸念があることを無視してはならない。

⇒3日(日)午後・金沢の天気     あめ後くもり

☆物価上昇と年金カットのダブルパンチ~参院選まで8日

☆物価上昇と年金カットのダブルパンチ~参院選まで8日

   能登半島の尖端、珠洲市に住む知り合いから「ガソリンが1㍑180円を超えた」とメールが届いた。添付の写真を見ると、「182円」となっている=写真=。金沢市内もこのところじわりと高騰していて、自宅近くにある同じ系列のスタンドでは「173円」だ。この9円の差は、JR金沢駅から珠洲市の中心街までは走行距離にして130㌔くらいなので、その分、輸送コストが上乗せされているのだろう。車の運転をはじめて45年ほどになるが、ガソリン価格には敏感になるものだ。

   それにしても、政府が石油の元売り会社に「価格抑制補助金」を支給しているにも関わらずこの価格高騰だ。もともと、ガソリン価格は新型コロナウイルスの感染拡大で上昇傾向だった。それに、ロシアによるウクライナ侵攻が追い打ちをかけたかっこうだ。さらに、円安ドル高が進んでいて、135円(1日午後8時現在)。報道によると1998年10月以来の23年8カ月ぶりの「円安」水準だ。

   ガソリンの元となる原油は、ペットボトルや食品トレー、レジ袋などさまざまな製品に使われている。先日、利用しているクリーニング店で話を聞くと、クリーニング工場では石油系の溶剤が使われ、アイロンやプレス機で使う蒸気は重油ボイラーで。さらに、衣類を包むビニールカバーなど、さまざまなものに石油製品が使われていて、原油価格はクリーニング料金に直結している、という話だった。確かに、この店ではかつてワイシャツの料金(ハンガー)は1枚180円だったが、いまでは240円となっている。

   さらに、エネルギー価格の高騰に追い打ちをかけるようなニュースがあった。NHKニュースWeb版(1日付)によると、日本の大手商社も出資してロシア極東サハリンで進められている石油・天然ガスの開発プロジェクト「サハリン2」についてロシアのプーチン大統領は、事業主体をロシア企業に変更するよう命じる大統領令に署名した。ウクライナ侵攻を続けるロシアに対して制裁を強める日本側に揺さぶりをかける狙いもあるとみられる。サハリン2が産出するLNG(液化天然ガス)は、日本では都市ガスの原料や火力発電の燃料として使われている。

   ガソリンをはじめエネルギー価格が上がれば、いろいろと価格に波及する。直撃を受けているのは、高齢者のうち3割といわれる年金生活者だろう。全国消費者物価指数(総合)は去年9月から前年同月比で上昇に転じ、この4月にはプラス2.5%になった。この状況下で、今年度の年金額は前年度と比べて0.4%の減額となっている。年金生活者にとって、物価上昇と年金カットのダブルパンチだ。今月10日は参院選の投開票だ。おそらく、シニア世代は黙ってはいない。

⇒2日(土)午前・金沢の天気     はれ