2022年 4月 の投稿一覧

☆「虎穴」に入り、「墓穴」を掘る

☆「虎穴」に入り、「墓穴」を掘る

   「虎穴に入らずんば虎子を得ず」という言葉は今でもマスメディアの記者がよく使っている。権力の内部を知るには、権力の内部の人間と意思疎通できる関係性をつくらならなければならない。そこには取材する側とされる側のプロフェッショナルな仕事の論理が成り立っている。その気構えがなければ記者はつとまらない、という意味だと解釈している。

   その事例として、2020年5月、新型コロナウイルス禍の緊急事態宣言のさなかに東京高検の検事長と産経新聞記者2人と朝日新聞社員(元司法担当記者)が賭けマージャン問題がある。検事長の定年延長問題が国会などで問題となっていた時期で、渦中の人物と賭けマージャンをする行為は報道の独立性や公正性に疑念を抱かせるなどとして記者と社員は停職処分を受けた。では、このケースはどう考えるべきか。

   きのう7日付の朝日新聞は「本社編集委員の処分決定 公表前の誌面要求『報道倫理に反する』」との見出しで、編集委員の記者47歳を停職1ヵ月とする懲戒処分を決め、編集委員の職を解いたと報じている。記事によると、3月9日に「週刊ダイヤモンド」の副編集長が安倍元総理に外交や安全保障についてインタビュー取材した。翌日9日、記者はすでに顔見知りだったダイヤモンド社の副編集長の携帯電話に連絡し、「安倍(元)総理がインタビューの中身を心配されている。私が全ての顧問を引き受けている」「とりあえず、ゲラ(誌面)を見せてください」「ゴーサインは私が決める」などと語った。副編集長は断り、記事は3月26日号(同月22日発売)に掲載された。

   ダイヤモンド社編集部は朝日新聞社に対して、「編集権の侵害に相当する。威圧的な言動で社員に強い精神的ストレスをもたらした」と抗議し、朝日側は社内調査を進めていた。質問書を送った安倍事務所からは「ダイヤモンド社の取材を受けた際、質問内容に事実誤認があり、誤った事実に基づく誤報となることを懸念した」「(記者に)事実の誤りがないかどうかについて確認を依頼した」などと回答があった。

   この流れを読めば、記者は安倍事務所側の意向をくんで、かねてから知り合いだったダイヤモンド社の副編集長に、事前にゲラを見せるよう促した。安倍氏の代理人のような感覚だったのか。それにしてもダイヤモンド社に誤解や反感を頂かせたのは、「顧問を引き受けている」「ゴーサインは私が決める」という上から目線の言葉だろう。記者は「私が安倍氏の顧問をしている事実はない。ゲラは安倍氏の事務所に送るように言った」と社内調査で説明した。

   記者はネット上で「朝日新聞社による不公正な処分についての見解」と題して、「私は、最大の政治トピックの一つになっているニュークリアシェアリング(核共有)について、重大な誤報記事が掲載されそうな事態を偶然知り、それを未然に防ぐべく尽力し、幸いにして、そのような誤報は回避されました」「私は、安倍氏から過去にいかなる金銭等も受領していません。安倍氏からは完全に独立した第三者として専門的知見を頼りにされ助言する関係であった」と経緯を説明している。また、今回の処分の不当性については法的にも明らかにしていくと述べている。

   他紙も含めて記事を読んで思うことは一つ。インタビューとは関係のない第三者、それも別の報道機関の記者が安倍元総理の「代理人」のごとく事前チェックを要求する理由はどこにあったのだろうか。誤報が心配ならば、事務所の広報担当が電話して事前にゲラをもらい、それをチェックするのが筋ではないだろうか。「虎穴」に入り、「墓穴」を掘った。

⇒8日(金)午後・金沢の天気      はれ   

★のどかな花見日和に けん騒の春選挙

★のどかな花見日和に けん騒の春選挙

   金沢では桜、ソメイヨシノが満開になっている。自宅近くの桜の名所でもある神社の境内に行くと、青空にピンクの花が咲き誇り、絶好のコントラストを描いていた=写真・上=。「花見日和」とはこのことを言うのだろう。きょうは金沢市内の小学校の入学式もあり、親子連れで桜の木をバックに記念写真を撮るなど、楽しんでいる様子が見られた。

   うららかな春の本番の中で、石川県ではまた選挙戦が始まった。参院石川県選挙区の補欠選挙がきょう7日告示され、立候補を表明していた4人が届け出を済ませた。選挙は前職である山田修路氏が知事選(3月13日)の出馬で辞職したことに伴うもの。投開票日は今月24日。立候補したのは、比例代表からのくら替えを狙う自民党公認の宮本周司氏51歳、行政書士で立憲民主党公認の小山田経子氏43歳、共産党公認で県委員会書記長の西村祐士氏67歳、実業家秘書で「NHK受信料を支払わない国民を守る党」公認の齊藤健一郎氏41歳の4人。

   午後1時ごろ、近所に設置されているポスター掲示板の写真を撮影に行く。斎藤氏のポスターがまだ貼ってなかった。それもそうだろう、立候補を表明したのはきのう6日のこと。県内に活動拠点はなく、いわゆる「落下傘候補」だ。肩書は実業家秘書となっているが、実業家とはあのホリエモンこと、堀江貴文氏とメディア各社は紹介している。ただ、本人は選挙運動は告示日だけで、選挙期間中はほとんどを都内で過ごすようだ。供託金300万円は誰が払ったのかとふと考えた。午後6時ごろ、はがきを出し郵便局行く途中、ポスター掲示板を見るとようやく貼ってあった=写真・下=。

   参院石川県選挙区の補欠選挙とは言え、岸田政権の評価も問われ、立憲民主党が新しい代表に変わってから初めての国政選挙でもある。地元メディアなどは、与野党の対立構図が描かれていて、この夏に予定されている参院選の前哨戦だと位置づけている。17日間の戦いぶりが見ものだ。そこで一句。「国会の 桜ふぶきは 誰に舞う」

   春満開の風情で正午ごろは気温も19度と、4月下旬並みの暖かさだった。ただ、夕方からは日本海から低気圧が接近して、雨が降りそうとの天気予報だ。雨で桜が散らねばよいが。

⇒7日(木)夜・金沢の天気     あめ

☆国連安保理の機能不全を問いただしたゼレンスキー演説

☆国連安保理の機能不全を問いただしたゼレンスキー演説

   ついに、ウクライナのゼレンスキー大統領が国連安保理でオンライン演説を行った。メディア各社の報道によると、安保理に対して強烈なメッセージを発した。「”Are you ready to close the UN? And the time of international law is gone? If your answer is no, then you need to act immediately,” he said, adding that “accountability must be inevitable”.」「”We are dealing with a state that turns its veto at the UN Security Council into the right to [cause] death,” he said.」(6日付・BBCニュースWeb版)=写真=。

   国連の果たす役割は終わってしまったのか、国際法の時代は終わったのか、もし答えがノーなら、直ちに行動をとってほしいとゼレンスキー氏は述べた。安保理の拒否権が『死の権利』とならないよう、国連のシステムは直ちに改革されなければならないと語った。

   国際法や国連憲章の違反を無視してウクライナ侵攻を続けるロシアだけでなく、香港やウイグルにおける人権弾圧問題で国際批判を浴びている中国も常任理事国だ。常任理事国の座にあれば問題を起こしても国連では問われない。拒否権を発動すればよいだけだ。これが「世界平和の番人」安保理の現実の姿だ。

   機能不全に陥っている国連安保理を痛烈に批判したゼレンスキー氏に対し、拍手を送った日本人も多かったのではないだろうか。ウクライナ侵攻以前の調査だが、アメリカの世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」は、創設75年の国連の実績について世論調査(2020年6-8月)を行った。調査対象国は日本、韓国、オーストラリア、アメリカ、カナダ、デンマーク、ドイツ、オランダ、イタリア、スウェ―デン、ベルギー、フランス、スペイン、イギリスの14ヵ国で、その中で日本は国連に対する好感度が最も低かった。「好感を持つ」は29%で、「好感を持たない」が55%と半数を占めた。CNNは「Americans think the UN is doing a good job. Japanese people disagree.」と伝えた(2020年9月22日付・Web版)。

   日本人には解せないもう一つ国連の姿がある。国連憲章(第53、107条)の「敵国条項」だ。日本はいまだに第二次世界大戦の「敵国」だ。ある国を攻撃する場合は国連安保理の承認が必要だが、「敵国」に再侵略の企てがあるとみなせば先制攻撃が可能で、安保理の承認は不要という規定だ。ロシアや中国はいつでも日本に対する先制攻撃が可能なのだ。 

   ゼレンスキー氏の演説に戻る。ロシアに対して猛烈に非難した。前日にみずから訪れた首都キーウの北西の町ブチャについて、「ロシアが犯した第2次世界大戦後、最も恐ろしい戦争犯罪だ。ロシア軍と彼らに命令を下した者に直ちに法の裁きを下さなければならない」。そして市民の遺体だとするおよそ1分間の映像が、スクリーンに映し出された(6日付・NHKニュースWeb版)。

  このあと各国からもロシアの責任を厳しく問う声が相次ぎ、このうちアメリカの国連大使は「ロシアがいかに人権を尊重していないかが日々明らかになっている」と述べ、ロシアの国連人権理事会の理事国としての資格を停止すべきだと呼びかけた(同)。さらなる制裁の発動が重要だ。

⇒6日(水)午後・中能登町の天気   くもり

★西田幾多郎の「円相」オブジェ

★西田幾多郎の「円相」オブジェ

        先日、石川県かほく市にある「西田幾多郎記念哲学館」を見学した。西田幾多郎は哲学書『善の研究』で知られる。実在とは何か、善とは何か、宗教とは何か、人間の存在をテーマに考え抜いた哲人である。記念哲学館は生れ故郷の地に2002年6月に開館した。これまでツアーの見学コースの一つとして2度訪れた程度だった。

   1階の展示室「哲学へのいざない」に入ると、いきなりガツンと来る言葉があった。「いまだ研究もせない前にまずその利益を知ろうとする好奇心ほど有害なるものはない」(「哲学のアポロジー」より)。「カントの言った如く」と前置きをし、これを述べた。「近代哲学の祖」とも言われるイマヌエル・カントの言葉の引用なのだが、哲学にとどまらず、研究者たる者への心構えのように響く。

   展示室で一つだけ、アレッと感じるコーナーがあった。西田幾多郎はよく「円相」を書いていたという説明があった。中国・唐代の禅僧である盤山宝積の漢詩である「心月孤円光呑万象」(心月  孤円にして、光 万象を呑む)をイメージして描いた円相図がオブジェになっている=写真・上=。

   自身は茶道を習っているが、床の間に円相の掛け軸をかけ、眺めながら茶を点てる。満月のようにも見える円相は絵なのか、それとも文字なのか分かりにくいが、禅宗の教えの一つとされる。円は欠けることのない無限を表現する、つまり宇宙を表現している、と解釈されている。千利休の口伝書とされる『南方録』には「水を運び、薪をとり、湯をわかし、茶を点てて仏に供え、人に施し、吾ものみ、花をたて香をたく、皆々仏祖の行いのあとを学ぶなり」とある。雑念を払い、ひたすら無限の境地で、自らの心を円相とせよ、それが茶の道の心得であると教えている。

   「心月」は月のように澄みきって明らかな心、悟りを開いた心を澄んだ月にたとえた禅語とされる。ふと、前述の「いまだ研究もせない前にまずその利益を知ろうとする好奇心ほど有害なるものはない」を思い出した。雑念を払い、ひたすら無限の境地で研究に励むこと、と。

   ちなみに自身が床の間の掲げる円相の掛け軸は「人間万事 一場 夢(じんかんばんじ いちじょうのゆめ)」=写真・下=。世の中に起きる良し悪し全ては、はかない夢であり、動じることはない。そんな意味だろうか。作者は曹洞宗管長を務めた板橋興宗・大乗寺住職だった。西田幾多郎が円相をイメージしていたこと、そして自身も円相の掛け軸を好んでいることに、少しだけ接点が見いだせた思いだった。

   では、哲学者として円相を模索したきっかけは何だったのだろうか。ひょっとして、茶道をたしなんだのだろうか。そんなことを想いめぐらしながら、90分ほど館内を見学した。

⇒5日(火)午後・金沢の天気    くもり時々はれ  

☆能登の風力発電とトキの放鳥を考える

☆能登の風力発電とトキの放鳥を考える

     前回のブログの続き。では、再生可能エネルギーはどこまで可能なのか、問題点を含めて考える。たとえば風力発電だ。石川県内には既存の風力発電は74基で、能登地方に73基が集中している。能登半島は風の通りよく、面積の7割が低い山と丘陵地であることから、大規模な風力発電の立地に適しているとされる。

   能登半島の尖端、珠洲市には30基の風車がある。2008年から稼働し、発電規模が45MW(㍋㍗)にもなる有数の風力発電の地だ。発電所を管理する株式会社「イオスエンジニアリング&サービス」の許可を得て、見学させてもらったことがある。ブレードの長さは34㍍で、1500KWの発電ができる。風速3㍍でブレイドが回りはじめ、風速13㍍/秒で最高出力1500KWが出る。風速が25㍍/秒を超えると自動停止する仕組みになっている。風車1基の発電量は年間300万KW。これは一般家庭の8百から1千世帯で使用する電力使用量に相当する。(※写真・上は珠洲市提供)

   カーボンニュートラルの政府方針を受けて、東北や北海道で風力発電所の建設ラッシュが続く。能登半島でもさらに12事業、170基の建設が計画されているという。ここで気がかりになってきたことがある。バードストライク問題だ。

   国の特別天然記念物のトキについて、環境省は野生復帰の取り組みを進めている新潟県佐渡市以外でも定着させるため、2026年度以降に本州でも放鳥を行うことを決めた(2021年6月13日付・NHKニュースWeb版)。 これにさっそく名乗りを上げたのが、石川県だ。ことし2月1日の県議会本会議で当時の谷本知事は「能登地域は放鳥にふさわしい」と述べ、関係市町や団体などと受け入れの協議を始める意向を示した(2月3日付・毎日新聞Web版)。

   能登半島は本州最後の1羽のトキが生息した場所。オスのトキで、能登では「能里(のり)」の愛称があった。1970年1月に捕獲され、佐渡のトキ保護センターに送られた。佐渡にはメスの「キン」がいて、人工繁殖が期待されたが、能里は翌1971年に死んでしまう。環境省は1999年から同じ遺伝子配列である中国産のトキで人工繁殖を始め、2008年9月から放鳥を行っている。石川県は全国に先駆けて2010年に分散飼育を受け入れ、増殖事業に協力してきた。県が能登での放鳥に名乗りを上げた背景にはこうした思い入れがある。

   佐渡では野生のトキが480羽余り生息しているが、1500KWクラスの風力発電はなく、これまでバードストライクの事例は報告されていない。しかし、能登半島で今後、現在の73基に加えてさらに170基が稼働し、トキが放鳥されるとバードストライクの懸念は高まるのではないか。再生可能エネルギーの切り札としての風力発電、そして生態系の再生のシンボルとしてのトキの共生は可能なのか。日本野鳥の会は事業会社にバードストライクについて調査し公表するよう求めている。(※写真・下のトキは1957年に岩田秀男氏撮影、場所は輪島市三井町洲衛)

⇒3日(日)夜・金沢の天気      くもり

★石油に依存しない未来社会へ 退路を絶つという発想

★石油に依存しない未来社会へ 退路を絶つという発想

   ロシアによるウクライナへの侵攻、それにともなうロシアへの経済制裁は国内でもじわりと影響が出ている。日常生活でその影響が分かりやすいのは原油高によるガソリン価格の値上がりかもしれない。金沢市内のガソリンスタンドで目につくのは「1㍑173円」の看板。能登半島ではさらに輸送コストがかさんでいて「1㍑179円」となっているようだ。

   政府が石油の元売り会社に「価格抑制補助金」を支給しているにも関わらずこの価格だ。ともとも、ガソリン価格は新型コロナウイルスのパンデミックで上昇傾向だった。それに、ロシアによるウクライナ侵攻が追い打ちをかけたかっこうだ。ガソリン価格の上昇の背景にはもっと根本的な問題がありそうだ。それは円安。かつて国際紛争などが起きると、「有事の円買い」が起きて、円高状態になった。ところが、今回のロシアのウクライナ侵攻では、「円安ドル高」が一気に進んで一時125円という値動きになった(3月28日)。

   むしろ「有事のドル買い」が一方的に進んでいる。「有事の円買い」はいつの間にか忘れ去られたのか。むしろ貿易赤字が問題なのだろう。財務省が発表した2022年1月の貿易統計速報では、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆1910億円の赤字だった。2014年1月の2兆7951億円に次いで過去2番目の大きさだった。2月の速報では、赤字は6682億円と縮小したものの、原油などエネルギー価格の高騰と円安で貿易赤字は止まらず7ヵ月連続の赤字となった。

   話は冒頭のガソリン価格に戻る。アメリカはガソリン高騰に思い切った手を打った。BBCニュースWeb版日本語(1日付)によると、バイデン大統領は今後6ヵ月間にわたって備蓄石油を最大1億8000万バレルを放出する。1974年以降で最大規模の放出となる。ロシアのウクライナ侵攻で、世界2位の原油輸出国ロシアからの輸出が西側の制裁対象となり、原油の供給不安が起きている。アメリカ政府は今回の放出で状況を改善したい考え。

   日本政府もIEAと協調して備蓄石油750万バレルを放出する方向で動いているが、この際、大幅に放出してはどうか。石油の元売り会社に「価格抑制補助金」を支給するより買わせる。同時並行で岸田総理が去年11月のCOP26で世界に表明した「2030年までに温室効果ガス46%カット」「2050年にカーボンニュートラル」の宣言を進めるチャンスにする。石油に依存しない未来社会をどう構築するか、退路を絶つことで、まさに真剣勝負で考える時期が到来したようだ。

⇒2日(土)夜・金沢の天気     はれ

☆これは噛みそう ウクライナ地名の呼称変更

☆これは噛みそう ウクライナ地名の呼称変更

          「キエフ」を「キーウ」に、「チェルノブイリ」を「チョルノービリ」に。政府は文書で使用、あるいは発表するウクライナの地名について呼称を変更すると発表した。これまで使っていた地名はロシア語の発音に基づく表記だったことから、ウクライナ語の発音に基づくものへと変更する。

   外務省公式ホームページをチェックすると、「報道発表」のページ(3月31日付)に「ウクライナの首都等の呼称の変更」と題して経緯の説明が記載されている。それによると、「ロシアによる侵略を受け、日本政府としてウクライナ支援およびウクライナとの一層の連帯を示すための行動について幅広く検討を行ってきたところです」「適切な呼称についてウクライナ政府の意向について照会を行っていたところ、今般、ウクライナ側から回答が得られた」と。

   地名の呼称変更をニュースで知って、当初はゼレンスキー大統領やウクライナ政府からの要望によるものかとも考えたが、どうやら日本側からの提案のようだ。そして、外務省の報道発表では「決意」のようなものも述べられている。

「ロシアによる侵略は、明らかにウクライナの主権および領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法の深刻な違反であり、国連憲章の重大な違反です。我が国は、引き続きウクライナおよびウクライナ国民に寄り添い、事態の改善に向けてG7を始めとする国際社会と連携して取り組んでいきます」

   外務省とすれば、ゼレンスキー大統領がアジアで初めての国会演説(オンライン、3月23日)を日本で行ったことの意義を重く受け止めているのかもしれない。日本側のこの動きに関して、ゼレンスキー大統領はさっそくにツイッター=写真=で反応している。

私たちの都市の名前について、時代遅れのソビエト音訳を廃棄して、正しいウクライナ語の形式を受け入れる時が来た。 日本と岸田総理には感謝する。呼称変更については、私たちも他の国の人々が日本に続くことを勧めていく」(グーグル翻訳をもとに意訳)

   ロシアによるウクライナ侵攻の一連の動きをたどってみると、表現は適切ではないかもしれないが、ゼレンスキー氏やプーチン氏という役者が立ち振る舞う、勧善懲悪のドラマのようだ。話は冒頭に戻るが、きょうの紙面によると、「オデッサ」は「オデーサ」、「ドニエプル」は「ドニプロ」となる。「チェルノブイリ原発」の呼び方は脳裏に焼きついているので、「チョルノービリ原発」とすらすらと口元から出るまでは時間がかかる。いらぬ心配だが、国会論戦で政治家が、ニュース番組でアナウンサーやキャスターがけっこう噛む(言い間違える)のではないか。

⇒1日(金)と午前・金沢の天気   くもり時々はれ