2022年 4月 の投稿一覧

☆言葉はリアルタイムに動く

☆言葉はリアルタイムに動く

   「言葉の独り歩き」は今でもよく使われる言葉だ。言葉の本当の意味や前後の文脈が省略されて、言葉のある部分があたかも全体を象徴する言葉として広まる。言葉を発した本人は良くも悪くも「独り歩き」のワンフレ-ズで評価されることになる。この言葉の事例としては悪い意味で使われることが多い。

   朝日新聞Web版(19日付)によると、早稲田大学で16日開かれた社会人向け「デジタル時代のマーケティング総合講座」で、講師を務めた牛丼チェーン「吉野家」の常務取締役企画本部長が、若い女性の誘客を「生娘をシャブ(薬物)漬け戦略」と称して、「田舎から出てきた右も左も分からない若い女の子を無垢(むく)、生娘なうちに牛丼中毒にする」などと述べた。この発言がネット上で公開され、吉野家ホールディングスはメディアの取材に「そういった趣旨の発言をしたのは事実」と認め、不適切な発言として謝罪した。

   吉野家公式サイトは「当社役員の不適切発言についてのお詫び」(18日付)を掲載し、「当該役員が講座内で用いた言葉・表現の選択は極めて不適切であり、人権・ジェンダー問題の観点からも到底許容できるものではありません。当人も、発言内容および皆様にご迷惑とご不快な思いをさせたことに深く反省し、主催者側へは講座開催翌日に書面にて反省の意と謝罪をお伝えし、改めて対面にて謝罪予定です」と述べている。

   「シャブ漬け」ではなく「虜(とりこ)にする」という表現だったら言葉が独り歩きをすることもなかったに違ない。おそらく本人はサービス精神が旺盛で、分かりやすい言葉を使ったつもりだったのだろう。社会人向け講義なので少々荒っぽい言葉も許されると勘違いしたのかもしれない。自身の経験知でもあるが、講義をしていてモチベーションが高まってくるとつい余計な言葉が頭に浮かんで使ってしまうことがある。上記のお詫びでは「対面にて謝罪予定」とあるので、記者会見を予定しているようだ。

   同じ石川県出身の森喜朗元総理の発言もこれまで何度か物議を醸してきた。直近だと去年2月3日。東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長だった森氏はJOC臨時評議員会で、「女性っていうのは競争意識が強い。誰か一人が手を挙げて言われると、自分も言わないといけないと思うんでしょうね。みんな発言される」と述べた。メディア各社はこの発言を女性差別であり、理事会への女性参画の流れにも逆行すると、世界に向けてニュースを発信した。森氏にはあの「神の国」発言(2000年5月)もある。

   言葉は本人が込めた想いとは裏腹に誤解を生みやすい時代環境になっている。価値観の多様化や、とくに人権意識に富んでいる。語る場にもよるが、政治家や経営者が聴衆に面白く話せば話すほど誤解を生むことにもなりかねない。

   今、NHKニュース速報Web版(12時26分)が入ってきた。「吉野家HD 不適切な発言の役員を解任 都内の大学で女性蔑視の言動と判断」。言葉は独り歩きするだけではない。リアルタイムに動く。

⇒19日(火)午後・金沢の天気    はれ

★車座で語り、すしに舌鼓 岸田総理の「能登時間」

★車座で語り、すしに舌鼓 岸田総理の「能登時間」

   今月24日に投開票の参院石川選挙区の補欠選挙は選挙戦も終盤に入り、各候補者の訴えもボルテージが上がってきた。立候補しているのは自民党の宮本周司氏、立憲民主党の小山田経子氏、共産党の西村祐士氏、NHK受信料を支払わない国民を守る党の齊藤健一郎氏の4氏。きのう日曜日は岸田総理ほか、立民の泉代表や共産の市田副委員長、N党の立花党首らそうそうたるメンバーが応援に駆け付けたと地元メディア各社が報じている。

   ニュース番組で流れた4人の党首らの演説で異様だったのは立花氏だった。「彼(齊藤候補)は立候補しているが選挙活動は一切しません。みんな選挙に行かなくていいです。もっと言うと齊藤候補に入れなくていいです。今回なぜ齊藤氏が立候補したかというと練習です。2ヵ月後に選挙(参院選)があるのでポスターをどれだけの人に貼ってもらえるのか、政見放送をどんな形でできるのかといった練習なので(投票に)行かなくていいです」(17日付・石川テレビ)。まるで「石川の選挙は来る参院選の練習、供託金300万円は授業料」と言わんばかりの自虐的なコメントだった。映像で見る限り、会場にはそこそこ人は集まってもいた。

   岸田総理の動きはまるで「能登・金沢・加賀」の縦断ツアーのような日程だった。朝日新聞の「首相動静(17日)」によると、午前9時5分に羽田空港発、同46分に能登空港着。10時3分、輪島市の「里山まるごとホテル」のレストラン「茅葺庵 三井の里」で地元企業関係者らと意見交換。11時56分、七尾市の公園「湯っ足りパーク」前で街頭演説。午後0時49分、道の駅「能登食祭市場」を視察。1時7分、市内の印鑰(いんにゃく)神社で祭りの山車「でか山」の制作風景を見学。同18分にすし店「松乃鮨」で、西田自民党衆院議員らと食事。同47分、報道各社のインタビュー。2時32分、かほく市の「のと里山海道高松サービスエリア」で休憩。以上が能登での動き。

   さらに、午後3時12分、金沢市の「いしかわ四高記念館」前で街頭演説。4時31分、能美市の根上総合文化会館前で街頭演説。5時16分、小松市のうどん店「中佐中店城南店」で佐々木同党衆院議員と食事。5時53分に小松空港に到着。宮橋小松市長らと。6時25分、同空港発。7時14分、羽田空港着。

   時間の配分を見ると、能登では輪島と七尾で4時間も費やしている。ちなみに金沢は1時間、加賀は2時間。以下憶測だ。能登での遊説は、補選の応援もさることながら、先の知事選(3月13日)の「後遺症」を払拭する狙いもあったのかもしれない。知事選では能登地区の国会議員、首長、JAやJFなど団体が馳浩氏と対抗した山田修路氏を支援した。岸田総理ほか自民の幹部は馳氏の応援に駆け付けた。党を巻き込んだ保守分裂選挙だった。今回の補選を機にその分裂の溝を埋めたいと、あえて能登での時間配分を考慮したのではないだろうか。

   地元紙によると、岸田氏は輪島の古民家で囲炉裏を囲み車座で地域の人たちと語り、七尾の神社では祭りの準備をする若い衆の木遣り歌で出迎えられ、すし店では七尾湾特産のトリガイなど11貫に舌鼓を打った(18日付・北國新聞)とある。この心憎いほど内容の濃い「能登時間」を演出したのは誰か、むしろその人物の方が気になった。

⇒18日(月)午後・金沢の天気     くもり 

☆「一度あることは二度ある」「二度あることは三度ある」

☆「一度あることは二度ある」「二度あることは三度ある」

   皇室関連のニュースにはつい振り向てしまう。秋篠宮家の長女・眞子さんは民間人と結婚されて現在、ニューヨークに住んでいる。夫の小室圭氏はニューヨーク州の司法試験にチャレンジしているが、日本で勤務していた弁護士事務所の奧野善彦弁護士あてに15日電話し、今回の司法試験の結果について「残念ながら落ちました。合格点に5点足りず、とても無念です」と不合格を伝えたという。ことし7月に3度目の挑戦をするようだ(15日付・NHKニュースWeb版)。

   「5点足りず」という表現には悔しさがにじんでいるが、今回は合格する自信があったのだろう。ただ、資格試験は合格か不合格かの判定なので、点数評価は入らない。1点差であろうが、5点差であろうが不合格は不合格だ。「言い訳がましさ」を感じる。

   小室圭氏の司法試験については海外メディアも報じている。イギリスの「Daily Mail Online」(15日付)は「Will it be third time lucky? Princess Mako’s ‘commoner’ husband Kei Komuro fails bar exam for a SECOND time – as his wife takes job as unpaid volunteer at the Met after quitting her royal life to move to the US with him」の見出しで、「三度目の正直」はあるのかと伝えている=写真・上=。

   皇室関連のニュースでもう一つ気になったのが、秋篠宮家の長男・悠仁さまが中学2年の時に書いた作文が、「第12回子どもノンフィクション文学賞」の佳作を受賞したものの、文章の一部はコピーペーストではないかと指摘を受けていた問題。宮内庁は今月8日の記者会見で、悠仁さまが参考文献などを追記して、主催者の北九州市に送付したと発表した(同日付・時事通信Web版)。

   「週刊新潮」(2022年2月24日号)でこの問題が報じられ、実際に「第12回子どもノンフィクション文学賞」の公式サイトで掲載されている作品を読ませてもらった。報道では、ガイドブック『世界遺産 小笠原』(JTBパブリッシング、2012年刊行)と一部文章が似ていて、コピペではないのかと問題が指摘がされた。自身の手元にこのガイドブックがないので比較はできなかったが、悠仁さまの作品を読んで「はたして中学2年生の文章だろうか」との感想は持った。

   たとえば、受賞作品集の77㌻にある、「あるものは海流に乗って運ばれ、あるものは風によって運ばれ、翼をもつものは自力で、あるいはそれに紛れて、三つのW、Wave(波)、Wind(風)、Wing(翼)によって、海を越えて小笠原の島々にたどり着き、環境に適応したものだけが生き残ることができました」という下り。海流、気象、生物に熟知したプロ表現の印象だ。

★Jアラート訓練再開へ 日本海「今そこにある危機」

★Jアラート訓練再開へ 日本海「今そこにある危機」

   ことし1月4日に能登半島の尖端、珠洲の海岸に船体の全長が50㍍ほどある鉄製の船が海岸に流れ着いているのを住民が見つけ、海上保安庁に連絡した。船体にはロシア語が書かれていて、海上保安庁では、ロシアで射撃訓練の際に「標的船」として使われる船に似ていると公表した(1月4日付・朝日新聞ニュースWeb版)。このニュースは今にして思えば、ロシアが日本海で軍事訓練を繰り返していることの証左なのだろう。

   共同通信ニュースWeb版(4月14日付)によると、ロシア太平洋艦隊の潜水艦2隻が14日、日本海で巡航ミサイル「カリブル」の発射演習をした。2隻は最新ディーゼル潜水艦の「ペトロパブロフスクカムチャツキー」と「ウォルホフ」で、ミサイルは敵の船を模した海上の標的に命中したとしている。

   日本海では今月11日からアメリカ海軍の原子力空母「エイブラハム・リンカーン」と駆逐艦「スプルーアンス」、海上自衛隊の護衛艦「いなづま」などが共同訓練を行っている。日本海での共同訓練は、北朝鮮が核実験やICBMの発射を繰り返した2017年11月以来のこと(13日付・NHKニュースWeb版)。そうした日米の動きを牽制するかのように、ロシアの潜水艦による巡航ミサイルの発射演習を行った。日本海に緊張感が漂う。  

   総理官邸公式サイトによると、松野官房長官は14日の記者会見で、読売新聞の記者が15日に北朝鮮の金日成主席生誕110周年にあたる「太陽節」を迎えることについて質問した。それに松野氏はこのように返答している。「北朝鮮は、国際社会に背を向けて、核・弾道ミサイル開発のための活動を継続する姿勢を依然として崩していない。今後もさらなる挑発活動に出る可能性も考えられる」。(※写真は3月24日に北朝鮮が打ち上げた新型ICBM=同月25日付・労働新聞Web版)

   こうした政府の見解がベースにあるのだろう、きょうのNHKニュースWeb版(15日付)によると、政府は北朝鮮の弾道ミサイルの発射を想定して、国民保護法に基づいて、自治体と共同で住民も参加して実施する避難訓練を4年ぶりに再開させる方向で調整を進めるという。この避難訓練とは、北朝鮮からミサイルが発射され、日本の国土に到達することを想定し、政府が全国瞬時警報システム(Jアラート)で速報する。それを受けて住民がコンクリの建物などに避難する訓練だ。2017年から日本海側などの自治体で行われていたが、2018年6月に米朝首脳会談が行われて以来、実施されていなかった。

   自身もこの「Jアラート」訓練に参加したことがある。2017年8月30日に能登半島の輪島市で実施された。この年の3月6日、北朝鮮は弾道ミサイルを4発発射し、うち1発を輪島市の北200㌔の海上に着弾させた。同市には航空自衛隊の監視レーダーサイトがある。避難訓練はリアリティがあった。9時ちょうどに防災行政無線の屋外スピーカーから「これは防災訓練です」と前置きして、Jアラートの鈍い警報音が流れた。その後「ミサイルが発射された模様です」「ただちに頑丈な建物や地下に避難してください」とアナウンスが流れた。防災行政無線による避難の呼びかけは10分間ほど続いた。輪島市文化会館では住民による避難訓練や、市内の小学校では机の下に入り、身をかがめて頭を守る訓練も行われた。

   ロシア潜水艦によるミサイル発射、北朝鮮のICBMなどはまさに「今そこにある危機」でもある。危機のステージが日本海側にシフトしている。

⇒15日(金)午後・金沢の天気    くもり

☆熊本地震から6年、城下町の被災現場に金沢を重ね思う

☆熊本地震から6年、城下町の被災現場に金沢を重ね思う

   きょうは「4月14日」。6年前の2016年のこの日、熊本地方を震源とする最大震度7の地震が発生した。その28時間後にも再び震度7の地震が起きた。2度の激震で、熊本のシンボルでもある熊本城は天守閣や石垣などが崩れた。震災から6ヵ月後の10月8日に被災地を訪ねた。

   地震の被災地をこれまで何度か訪れている。そのきっかけは新聞記者時代に体験した津波だった。1983年5月26日に秋田沖を震源とする日本海中部沖地震が起きた。輪島支局に勤務していて、震度3の揺れだった。津波が日本海沿岸に押し寄せた。輪島漁港に大きな渦がまき、漁船が沈没した。その様子をカメラのシャッターを1回だけ切って高台に避難した。足元に波が来てさらわれそうになったからだ。それ以降、被災地を訪れ、被害の状況をこの目で確かめるようにしている。

   新幹線熊本駅に到着して向かったのは熊本城だった。当時テレビで熊本城の被災の様子が報じられ、「飯田丸五階櫓(やぐら)」が震災復興のシンボルにもなっていた。石垣が崩れるなどの恐れから城の大部分は立ち入り禁止区域になっていて、飯田丸五階櫓を見学することはできなかった。ボランティアの説明によると、櫓の重さは35㌧で、震災後しばらくはその半分の重量を一本足の石垣が支えていた=写真、熊本市役所公式サイトより=。まさに「奇跡の一本石垣」だった。崩れ落ちた10万個にもおよぶ石垣を元に戻す復旧作業が行われていた。

   熊本を訪れたこの日、阿蘇山の中岳で大噴火があり、36年ぶりの「爆発的噴火」だった。熊本城の被災状況を見た後、チャーターしたタクシーで阿蘇山行きを検討したが、熊本市内と阿蘇を結ぶ国道57号は4月の地震で寸断されていて、迂回路は慢性的な交通渋滞になっていた。噴火で渋滞に拍車がかかっていることが予測され、断念せざるを得なかった。次ぎに益城町に向かった。震度7で揺れた益城町では3万3千人の町全体で5千棟の建物が全半壊した。道路添いに倒壊家屋があちこちにあり、痛々しい街の様子が間近に見えた。そして、田んぼには断層の亀裂が走っていた。

   熊本城、そして益城町の当時の様子を思い出して、1799年6月29日に起きた金沢地震の被害を想像することがある。言い伝えでは、10万人の城下町で5千余りの住宅や土蔵が全半壊し、金沢城の石垣が崩れ落ちたとされる。まさに、熊本で見た被災地の光景だ。金沢市の公式サイトに掲載されている「平成24年度(2012)被害想定調査結果」によると、金沢の平野部を走る森本・富樫断層帯で中心部直下の地震が起きた場合、マグニチュードは 7.2、最大で震度7、建物被害は3万1700棟を予測している。

⇒14日(木)午後・金沢の天気    くもり時々あめ

★日本海で日米共同訓練 地政学的リスクはないのか

★日本海で日米共同訓練 地政学的リスクはないのか

   防衛省・自衛隊の公式ツイッターによると、ことし1月17日から5日間、沖縄南方の海空域でアメリカ軍の原子力空母などを交えて日米共同訓練を展開していた。2021年度で8回の共同訓練のようだ。では、この共同訓練は今年度初めてとなるのだろうか。

   きょう13日付のNHKニュースWeb版によると、NHKはアメリカ海軍の原子力空母「エイブラハム・リンカーン」が11日正午ごろ、対馬海峡を東の方向に通過する様子を上空のヘリコプターから確認した。空母周辺では、アメリカの駆逐艦「スプルーアンス」や自衛隊の護衛艦「いなづま」が航行していた。アメリカ海軍の空母が日本海に展開したことが明らかになったのは、北朝鮮が核実験やICBMの発射を繰り返した2017年11月以来のこと(同)。

   日本海側に住む一人として、このようなニュースに接するとそれなりに緊張する。北朝鮮は先月3月24日に新型のICBMを発射し、北海道の渡島半島の西方約150㌔の日本海(EEZ内)に落下させている。全長23㍍と推測されるこの大型化したICBMを「モンスター・ミサイル」とメディア各社は報じた。このとき、岸防衛大臣は記者会見で「アメリカの東海岸を含む全土が射程内ではないか」「我が国、そして国際社会の平和と安全に対する深刻な脅威だ」と語った。ホワイトハウスの報道官も国連決議に反する「brazen violation」(恥知らずな違反)と不快感をあらわにした(3月25日付・BBCニュースWeb版)。

   日米のこの憤りが北朝鮮に対する強いメッセージとして、日本海での共同訓練になったことは想像に難くない。さらに、北朝鮮にとって今月15日は「建国の父」である金日成主席の生誕110周年の節目にあたることから、国威発揚を目指してのICBMの発射や、7回目となる核実験につながる可能性も想定されるのだ。日米の軍事情報筋は衛星画像などを解析して北朝鮮の軍事的な動きを読み取ったのかもしれない。

   今回の日本海での日米の共同訓練は北朝鮮への牽制となりうるのかどうか、突発的な紛争は起こらないだろうか。対岸のことなので気にかかる。自身のこの妙な緊張感は地政学的なリスク感覚なのかもしれない。

(※写真は空母「エイブラハム・リンカーン」、Wikipedia「エイブラハム・リンカーン(空母)」より)

⇒13日(水)午後・金沢の天気     くもり

☆「リアルタイム配信」でテレビ業界はどう変わる

☆「リアルタイム配信」でテレビ業界はどう変わる

   笑福亭鶴瓶が楽屋で「テレビは変わると何年言うてんねん」とつぶやく番宣=写真=が面白い。ようやく、民放テレビの「リアルタイム配信」が動画配信サービス「TⅤer」で始まった。きのう11日からいわゆる「ゴールデンタイム」や「プライムタイム」と呼ばれる、午後7時から11時の高視聴率の時間帯での番組を放送と同時にインターネットでも視聴できるようになった。去年10月2日から日本テレビのリアルタイム配信はスタートしていたが、今回はテレビ朝日、TBS、フジテレビ、テレビ東京の4局に加え、大阪の準キー局の5局も加わって、10局のリアルタイム配信が楽しめるようになった。

   「ようやく」と述べたのも、放送とネットのリアルタイム配信は、NHKが先行して2020年4月1日から「NHK+(プラス)」で始めているので、民放の新サービスはNHKに比べれば2年遅れでもある。

   民放とすれば、タイミングがよかった。新型コロナウイルスの感染拡大による「巣ごもり」や「在宅ワーク」でテレビの広告需要が高まっている。電通の「2021年 日本の広告費」によると、2021年「テレビメディア広告費」の地上波テレビは1兆7184億円で、前年20年に比べて11%も増えている。また、ネット上の「テレビメディア関連動画広告」も249億円とこれも前年比46%と大きく伸長している。リアルタイム配信はPC、スマホ、タブレットのアプリで視聴できるので、ネットの広告需要を今後さらに取り込むチャンスなのかもしれない。

   おそらく番組そのものもネットユーザーを意識したものに変化していくだろう。これまで地上波の番組は、年代を問わず視聴できる最大公約数のような番組づくりだが、ネットユ-ザーを意識するとターゲットに向けて付加価値をつけていくという番組づくりに傾斜していく。そのうち、シニア世代はこうした番組からは視聴者として意識されなくなるかもしれない。

   さらに、ローカル局は「ポツンと一軒家」化するかもしれない。そもそも、ローカル局には放送法で「県域」という原則があり、放送免許は基本的に県単位で1波、あるいは数県で1波が割り与えられている。1波とは、東京キー局の系列ローカル局のこと。しかし、リアルタイム配信によって地方や県境を超えて、PCやスマホ、タブレットで東京キー局のゴールデン番組を視聴する時代になった。同じ番組を放送しているローカル局の視聴率は大幅にダウンするだろう。

   これについて、総務省は救済策を講じている。一つのテレビ局が多数の放送局に出資し、経営支配することを避ける「マスメディア集中排除原則」を緩和する方針で動いている。これによって、東京キー局が系列ローカル局を経営の傘下に収めることになる。これによって、地域ごとにローカル局の経営統合も進むかもしれない。たとえば、北陸3県にそれぞれ同じ系列のテレビ局が存在する必要はない。3つの局を1つに統合して、ゴールデンタイムに独自の番組づくりをするテレビ局を新設してもよい。

   リアルタイム配信でテレビ業界は番組コンテンツ、そして経営の新たな転換点に立ったと言えるのではないか。冒頭の鶴瓶のつぶやき通り、テレビは本気で変わってほしい。

⇒12日(火)夜・金沢の天気     はれ

★「M6.0±0.5」地震が20日頃までに北信越で起きるのか

★「M6.0±0.5」地震が20日頃までに北信越で起きるのか

    週刊誌『週刊ポスト』(4月15日号)が「4月12日までに北陸で巨大地震」の地震予測の記事を書いた。このブログ(3月30日付)でも取り上げてから10日余り。いよいよ「4月12日」が近づいてきた。記事では、3月16日の福島県沖地震を発生7時前に予測、的中したとされる東大名誉教授、村井俊治氏の分析を基に警告を発している。村井氏は測量学が専門で、国土地理院が全国約1300か所に設置した電子基準点のGPSデータを使って地表の動きを捉え、基準点の1週間ごとの上下動の「異常変動」、長期的な上下動の「隆起・沈降」、東西南北の動きの「水平方向の動き」という3つの主な指標を総合的に分析している。

  記事によると、「(3月)23日午前9時23分頃に石川県能登地方で震度4の地震が発生したが、それを凌ぐ地震発生の可能性があります」「この半年、新潟県南部、富山県、石川県、岐阜県北部などで、〚異常変動』が集中しています。『隆起・沈降』では、北陸3県の広い範囲が沈降する一方、石川県の能登半島先端が隆起し、その境目にある電子基準点『輪島』や『穴水』周辺に歪みが溜まっていると考えられる」「北信越は、最新のAIによる危険度判定で東北に次ぐ全国2位で、衛星画像の解析でも地震の前兆と思われる異常が観測されている」

   能登半島では2007年3月25日の能登半島地震(マグニチュード6.9、震度6強)があった。2020年12月ごろから、能登半島の尖端を震源として再び揺れが多発している。震度1以上の揺れは去年は年間70回、ことしに入りすでに42回観測されていて、3月は8日=写真=と23日に、4月は4日と8日にはそれぞれ震度4の揺れだった。

   先日、村井氏らの地震分析チームが発信しているメールマガジン「週刊MEGA地震予測」を購読している知人から、「北陸の地震は4月12日までに」が「4月20日までに」と修正されたようだとメールが届いた。それによると、「(富山県、石川県、福井県、長野県、新潟県)ピンポイント予測を発出していましたが、新たに前兆を観測したため、エリアと期間を修正します。 警戒を怠らないでください」「北信越地方周辺でM6.0±0.5の地震が4月20日頃までに起きる可能性があります」という内容だった。

  「北信越地方周辺でM6.0±0.5の地震が4月20日頃までに」と修正予測されたことで、さらに不安が広がる。これまでの「北陸地方」から「北信越地方」と広範囲になった。最大で震度6強クラスの地震だ。警戒したい。

⇒11日(月)夜・金沢の天気     はれ時々くもり

☆「柳緑 花紅」そぼろきんとん

☆「柳緑 花紅」そぼろきんとん

   きょう午後から自宅庭の草むしりをした。4月の暖かさを超えて、夏日のような暑さだった。雑草は例年、桜のソメイヨシノの満開が過ぎたころから勢いが増す。ドクダミ、チドメグサ、スギナ、ヨモギ、ヤブカラシが顔を出していた。無心に雑草を抜き取り、そして、落ち葉を掃く。 

   草むしりを終え、心地よかった庭の風を連想して、床の間に『柳緑 花紅』の掛け軸を出した=写真・上=。「やなぎはみどり はなはくれない」と読む。ネットで調べると、11世紀の中国の詩人・蘇軾の詩の一部のようだ。柳は緑色をなすように、花は紅色に咲くように、それぞれに自然の理があるという意味のようだ。四文字の掛け軸は詩的であり哲学的でもある。そして、淡い二色が春の美しい景色が描き出す。ありのままの姿が真実だということ。

   夕方から金沢市内の茶席に出向いた。知人たちが趣味で始めている茶道の会の招きだった。そこで、お菓子が出された。名前は『都の春』という、市内の和菓子屋がつくったもの。よく見ると、緑とピンクの2色のそぼろを付けたきんとん=写真・下=。この季節に、予約してつくってもらった上生菓子という。

   思わずエッと口にした。家の床の間に掛けてきた掛け軸『柳緑 花紅』の和菓子と同じイメージだ。知人に尋ねると。にっこりと説明をしてくれた。お菓子の薄紅色は桜の花を表現している。緑色は若葉というより柳の葉を表している。京都の高瀬川などでは両サイドに桜の木と柳の木が並んでいて、この季節は重なり合うように咲く。『都の春』という生菓子は銘も含めて京都の和菓子文化なのだという。

   そして、知人は和歌を詠んだ。「見渡せば 柳桜を こきまぜて 都ぞ春の 錦なりける」。10世紀初頭の平安時代につくられた『古今和歌集』で、素性法師が詠んだ。『都の春』という銘もこの和歌が由来だとか。

   この後、濃茶の一服を楽しんだ。季節の自然は『柳緑 花紅』、菓子は『都の春』、ちょっとした旅気分に包まれた。

⇒10日(日)夜・金沢の天気     はれ

★甲府「特定少年」事件 「実名報道はしません」

★甲府「特定少年」事件 「実名報道はしません」

   この4月から施行された改正少年法では、事件当時18歳と19歳の「特定少年」が正式に起訴された場合、検察は実名を公表し、新聞・テレビなどメディアも実名報道が可能となる。ただ、日本新聞協会は少年保護を重視する法の趣旨を踏まえ、一部の場合を除き実名報道はすべきでないとの基本的な考え方は維持しており、実名報道は「各社の判断で行う」としている(2月16日付・公式ホームページ)。特定少年の実名公表の初めての事例がきのう8日、甲府地検であった。メディア各社の実名報道について対応が分かれた。

   まず事件が概要を。去年10月、甲府市の住宅で50代の夫婦がナイフで殺害され住宅が放火された。定時制の高校に通っていた19歳の少年が逮捕された。夫婦の長女と面識があり逮捕後の調べに対し「好意があったが思いどおりにならず、本人やその家族を殺害するつもりだった」などと供述した。3月、少年は家裁に送られたが、「凶器を計画的に準備し証拠を隠滅するために放火した。資質や成育過程の問題が影響を及ぼした可能性もあるが反省や謝罪の態度は見られず結果は重大で、刑事処分が相当だ」として検察に逆送された。甲府地検は、精神鑑定など行い、刑事責任を問えると判断して起訴し実名を公表した(8日付・NHKニュースWeb版)。

   けさ朝刊各紙をチェックしたが=写真=、実名報道をしていなかったのは北陸中日新聞のみだった。同系の中日新聞、東京新聞も同じだろう。その理由について、「本紙は匿名報道を続けます」の2段見出しで記載している。「中日新聞社は、事件や事故の報道で実名報道を原則としていますが、二十歳未満については健全育成を目的とした少年法の理念を尊重し、死刑が確定した後も匿名で報道してきました。少年法の改正後もこの考えを原則維持します。社会への影響が特に重大な事案については、例外的に実名での報道を検討することとし、事件の重大性や社会的影響などを慎重に判断していきます」

   一方、実名報道をした朝日新聞は「おことわり」として「改正少年法を受け、本社は甲府市で2021年に起きた放火殺人事件について、事件の重大性などを考慮し、起訴された少年を実名で報じます」としている。読売新聞も「おことわり」として、「読売新聞はこの事件について、これまで容疑者を匿名で報道してきましたが、2人の命が失われた事件の重大性や社会的影響などを検討した結果、実名で報じることが適切と判断しました」と記載している。各紙も事件の重大性を考慮して実名報道を判断したとしている。

  さらに、顔写真を掲載したのは産経新聞と北國新聞の2社。「公共の利益にかない、国民の『知る権利』に答えるものと判断した」(産経)、「実名で報じる必要性があると判断しました」と述べている。

   テレビメディアではNHKほか民放も実名での報道を行っている。ただ、顔写真を使うかどうかの判断は分かれている。NHK岐阜放送局のニュースをチェックすると顔写真は使っていないが、日本テレビ系列のNNNニュースでは顔写真を入れている報道している。判決が出たときは新聞・テレビの各社は顔写真を使うのだろうか。

   世論は実名報道に賛成が多い。共同通信Web版(3月20日付)によると、18歳以上を対象としたインターネット意識調査で、実名報道について「賛成」50%、「どちらかといえば賛成」30%を合わせ賛成は89%に上った。賛成理由は「民法上成人であり、大人と同じ扱いをするべきだ」が49%と最多だった。それにしても、中日新聞にこだわりの強さを感じる。

⇒9日(土)午前・金沢の天気      はれ