★国連安保理はドロ沼状態から這い出せるのか
ロシアによるウクライナ侵攻がドロ沼化している。ニュースでよく聞かれるようになったのは「偽旗(にせはた)」という言葉だ。英語で「false flag」。偽の国旗を掲げて敵方をあざむいたり、被害者を装ったり、降参したふりをして相手のスキを突いたりと相手方を騙す意味で使われる。こんな言葉がまかり通る世界そものが危うい。
今月11日にロシアの要請で国連安全保障理事会の緊急会合が開かれ、ロシアの国連大使は「ウクライナで渡り鳥やコウモリ、シラミなどを利用した生物兵器開発計画があり、テロリストに盗まれ使われる危険性が非常に高い」「生物兵器の開発にはアメリカが関与している」「同様の研究は悪名高い旧日本軍731部隊も行った」と一方的に主張した(12日付・時事通信Web版)
これに対し、国連で軍縮部門のトップを務める中満泉事務次長が「国連としてはいかなる計画も把握していない」と報告。各国からはロシアを非難する発言が相次ぎ、イギリスの国連大使は「うその情報を広げるために常任理事国の立場を悪用するロシアを許してはならない」、アイルランドも「国際社会の平和と安全を守る安保理の役割をおとしめる有害な行為だ」と述べた。さらに、アメリカは「うその背後にあるねらいは明白だ。ロシアこそが生物兵器や化学兵器を使用するのではないかと深刻な懸念を持っている」と述べた(同・NHKニュースWeb版)。
国連安保理の役割は「国連の原則と目的にしたがって国際の平和と安全を維持する」、そのために「理事会の決定を実施させるために、制裁など、兵力の使用を伴わない措置を採るよう国連加盟国に要請する」(国連広報センター公式ホーページ日本語)。つまり、安保理は「国際平和の番人」なのだ。その場で、こうしたロシアの偽旗がまかり通ることに不信感を抱いてしまう。「国連は何をしているのか」「これでよいのか」と。
ロシアのプーチン大統領に対して国際社会が非難の声明を出しているが、その声は届いていない。さらに、プーチン氏は核兵器の使用に前向きとなる可能性があるとの見方も出ている(3月11日付・ロイター通信Web版日本語)。ロシアの暴挙に対抗する手立てはないのか。
写真は国連安全保障理事会の会議室(国連広報センター公式ホーページ日本語より)。バックの壁画はノルウェーの画家、ペール・クロフが描いた「灰から飛び立つ不死鳥(Phoenix aus der Asche)」。大戦の焼け跡から抜け出して飛び立つ不死鳥が描かれている。よりよい未来への希望を象徴した絵とされる。果たして現代のドロ沼状態から世界はいつ這い出せるのか。
⇒15日(火)夕方・金沢の天気 くもり時々はれ