2022年 1月 の投稿一覧

☆「不幸を待つ」ような報道の倫理について

☆「不幸を待つ」ような報道の倫理について

   首都圏では6日に4年ぶりに10㌢ほどの雪が積もり、7日朝には氷点下3.5度の冷え込みで路面が凍結し、車のスタック(立ち往生)や玉突き事故が相次いだと新聞・テレビメディアが報じていた。テレビを視聴していると、人々が道路などで転倒する映像シーンが全国ニュースで繰り返し放送されていた。転倒によるケガで7日午前中だけで500人余りが病院に搬送されたというから驚きだった。

   ニュースを見ていて違和感も持った。ノーマルタイヤの乗用車やバス、トラックが凍結した路面を走行すれば必ずスリップ事故が多発する。関東や首都圏でスタッドレスタイヤに冬備えする個人や会社は少数だろう。路面凍結が予想された段階で首都高速道路などをなぜ封鎖しなかったのだろうか。そして、映像的に違和感があったのは、人が転倒するシーンだった。あるテレビ局の映像は都内の同じ場所で人々が靴を滑らせて一人また一人と転ぶシーンだった。確かに衝撃的な映像ではあるものの、カメラマンが同じポイントで時間をかけて次々と人が転ぶのを待っていたということだろう。カメラマンの目の前で起きたことではあるが、転倒を待っていたとなれば報道の倫理上の問題はないのだろうか。  

   この違和感は実際の報道カメラマンたちのシーンを思い出したからだ。2007年3月25日に能登半島地震(震度6強)があり、翌日、学生による復旧ボランティアの計画を立てるために現地を訪れた。輪島市門前町は全半壊の街となっていた。街の一角でテレビ局のカメラマンたち3組ほどが半壊の家屋が壊れるシーンを撮影しようとスタンバイしていた=写真=。余震で揺れるたびにカメラを構えていた。「でかいのがこないかな」という言葉が聞こえた。「でかいの」とは大きな余震のこと。余震で家が倒壊する瞬間を狙っていたのだ。

   確かに、報道カメラマンとすれば、大きな余震で家屋が倒壊するシーンを狙うのはプロとして当然なのだろう。しかし、「でかいのがこないかな」と倒壊を待つカメラマンたちの姿は被災地の人たちにはこのカメラマンたちの姿はどのように映っただろうか。また、餓死寸前のスーダンの少女にハゲワシが襲いかかろうとする写真〚ハゲワシと少女』。報道カメラマンのケビン・カーター氏が1993年にNYタイムズで発表し、ピューリッツァー賞を受賞した。受賞後、カーター氏が「ハゲワシがもっと翼を広げてくれれば、迫力ある写真になるのに」と話したことがきっかで、「写真を撮影する前に少女を助けるべき」と非難が殺到。その後、カーター氏は自死した。

   報道として衝撃的な画像や映像であっても、不幸な出来事を待つような撮影のプロセスが感じた視聴者は違和感を持つ。冒頭の転倒にしても、滑って転ぶのをカウントするかのような映像ははたして報道と言えるのかどうか。

⇒8日(土)午後・金沢の天気      はれ

★「かに丼」と「かに面」 オーバーツーリズムの相関関係

★「かに丼」と「かに面」 オーバーツーリズムの相関関係

   北陸の冬の味覚はカニに勝るものはない。きょう能登半島の尖端の珠洲市で評判の「かに丼」があると聞いて、会合の帰りに店に立ち寄った。かに丼というのは初めてだった。この店は10数年前から季節メニューとして出している。注文すると、ご飯と海藻の入った丼の上にズワイガニの雌の香箱ガニの甲羅が2つ乗って出てきた=写真・上=。

   机の上には「かに丼の召し上がり方」というマニュアルがあった。それを見ながら、甲羅から身と外子(卵)、内子(未成熟の卵)をかき出す。2つ分の甲羅からの分量はけっこう多く、丼の表面がカニの身でいっぱいになった。それをご飯とかき合わせる。ワサビを入れた皿があり、しょうゆを少々注ぐ。わさび醤油を丼にかける。

   さっそく食べる。これまで、丼の上にブリやイカ、カニの身が乗っている海鮮丼は能登で何度か食べたことがある。香箱ガニだけの丼となると贅沢な気持ちになる。細く刻んだ海藻、そしてご飯は少々酸味がつけてあり、これがカニの身と合う。さらに、わさび醤油がアクセントとなって、カニのうまみを引き立てる。勘定は税込みで2750円。満足感が勝り、高いとは思わなかった。

   カニの話をもう一つ。先日、金沢のおでん屋に入った。「かに面」を注文した=写真・下=。このかに面は香箱ガニの身と内子、外子などを一度甲羅から外して詰め直したものを蒸し上げておでんのだし汁で味付けするという、かなり手の込んだものだ。この店のだし汁は昭和30年代の創業以来ずっと注ぎ足しながら今にいたるものなので、半端な味ではない。カニの身とおでんのだし汁がミックスして独特の食感がある。

   金沢のおでんの中ではかに面は季節限定の高級品だ。品書きにはこれだけが値段記されておらず、「時価」とある。香箱ガニの大きさや、日々の仕入れ値で値段が異なるのだろう。勘定をしてもらうと、2800円だった。これまで何度かこの店に来たことはあるが、数年前に来た時よりも1000円ほどアップしていた。

   金沢や能登では香箱ガニは庶民の味だったのだが、最近は高級品となっている。その原因の一つは資源保護のため香箱ガニの漁期が毎年11月6日から12月29日までと設定されていることだ。冒頭の能登の店でも漁期に買い求めたものを冷凍で保存し、漁期外は冷凍ものを出していると、店のマスターが話してくれた。店では10数年前にメニューとして初めて出したときは1280円だった。「むしろ値段が上がったのは金沢のかに面のせいなんです」と少々渋い顔で話してくれた。

   資源保護の政策で香箱ガニの値段は徐々に上がってはいたものの、それが急騰したのは北陸新幹線の金沢開業(2015年)以降だったという。金沢おでんが観光客の評判を呼び、季節メニューのかに面は人気の的となり、おでんの店には行列ができるようになった。すると水揚げされた香箱ガニは高値で売れる金沢に集中するようになる。それまで能登で水揚げされたものは地元で消費されていたが、かに面ブームで金沢に直送されるようになった。この店がかに丼を値上げせざるを得なくなったのもこのころからだったという。香箱ガニの地元素通りと値段高騰。能登の「かに丼」と金沢の「かに面」の値段の相関関係がオーバーツーリズムから見えてくる。

⇒7日(金)夜・金沢の天気  

☆「極超音速ミサイル」をどこに向けているのか

☆「極超音速ミサイル」をどこに向けているのか

   北朝鮮がきのう5日に打ち上げた弾道ミサイルは「極超音速ミサイル」だったとメディア各社が報じている。この型のミサイルは去年9月28日にも日本海に向けて撃ち込んでいる。再録になるが、このブログで当時のことをこう記した。

                   ◇

   労働新聞Web版(2021年9月29日付)によると、打ち上げたのは新開発の極超音速ミサイルだと写真付きで掲載している。「국방과학원 새로 개발한 극초음속미싸일 《화성-8》형 시험발사 진행」の見出しの記事=写真=によると、極超音速ミサイルの名称は「火星-8」。北部のチャガン(慈江)道から発射した。金正恩党総書記の側近のパク・チョンチョン党政治局常務委員らが立ち会った。

   記事では極超音速ミサイルについての詳細な記載はない。「令和2年版防衛白書」によると、アメリカや中国、ロシアはすでに開発していて、弾道ミサイルから発射され、大気圏突入後に極超音速(マッハ5以上)で滑空飛翔・機動し、目標へ到達するとされる。弾道ミサイルとは異なる低い軌道を、マッハ5を超える極超音速で長時間飛翔すること、高い機動性を有することなどから、探知や迎撃がより困難になると指摘されている。

   また、記事では極超音速ミサイルの開発について、2021年1月5-12日で開催した朝鮮労働党第8回党大会で提案された戦略兵器開発(5ヵ年計画)におけるトップ5の主要なタスクの一部と位置付けている。確かに、この8回党大会で金総書記は、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼び、より高度な核技術の追求などを通じて、アメリカの脅威に対する防衛力を絶えず強化する必要があると述べた。核兵器の小型・軽量化と大型核弾頭の製造推進、1万5000㌔射程内の戦略的目標に命中させ破壊する能力の向上を目指す方針も表明。固体燃料を用いる大陸間弾道ミサイル(ICBM)と原子力潜水艦の開発、衛星による情報収集能力強化にも言及していた(2021年1月9日付・BloombergニュースWeb版日本語)。

   北朝鮮は各地の代表からなる党最高人民会議を9月28日からピョンヤンで開催している。ということば、打ち上げた極超音速ミサイルは、同月11・12日の長距離巡航ミサイル、15日の移動式ミサイルの発射と合わせて、戦略兵器開発は順調に進んでいるとの党幹部向けのアピールの狙いもあるのかもしれない。

   それにしても、日本の防衛システムは北朝鮮が次々と開発を進める戦術兵器に対応できるのか。弾道ミサイルは楕円軌道を描きながら標的の上に落ちてくるので迎撃が可能とされている。が、極超音速ミサイルは上下左右に飛び方を変えながら標的に向かうので迎撃が困難とされる。極超音速ミサイルの実用化までには時間がかかるとしても、日本の防衛システムが翻弄されることだけは間違いない。

                  ◇

   今回の極超音速ミサイルは音速の5倍の速さで飛行したと報じられている。去年9月の火星-8は音速3倍だったとされるので、技術を高めているとも言える。国連食糧農業機関(FAO)と国連児童基金(UNICEF)がまとめた報告書「2021アジア・太平洋地域の食糧安保と栄養概観」によると、北朝鮮は住民の42.4%が栄養不足と集計されている。極超音速ミサイルはどこに向けているのか。

⇒6日(木)夜・金沢の天気      はれ時々くもり

★「日本海の脅威」ロシアの軍用船漂着、北の弾道ミサイル

★「日本海の脅威」ロシアの軍用船漂着、北の弾道ミサイル

   前回のブログの続き。きのう4日午前8時30分ごろ、能登半島の尖端、珠洲市真浦町の海岸に船体の全長が50㍍ほどある鉄製の船が海岸に流れ着いているのを住民が見つけ、海上保安庁に連絡した。船体にはロシア語が書かれている。能登海上保安署では、ロシアで射撃訓練の際に「標的船」として使われる船に似ているという(4日付・朝日新聞ニュースWeb版)。きょう漂着船を実際に見に行ってきた。

   現地に到着したのは午前11時45分ごろ、金沢から2時間ほどかかった。現場は車が通行できない旧道のトンネルの近くにある。通行禁止の柵が設けられ、警察パトカー2台が見張っていた。そこで、トンネルの反対側の道路から入ることにした。その道路はがけ崩れ現場で、車は入れない。パトカーは配置されていなかったので、車を近くに置いて徒歩で現場に向かった。

   途中で道は土砂崩れで陥没していた。引き返そうかとも思ったが、思い切って山積みになった土石を登ってみた。すると、100㍍ほど先に漂着船が見えた=写真・上、5日午後0時5分ごろ撮影=。船体は岩の入り江のようなところにあり、高波で船体が岩に打ち付けられている。前日の新聞写真の船体よりもかなり崩れていて、船体そものが2つに折れているようにも見えた。この鉄製の漂着船の処分費用にはどれほどかかるのか。木造船とは違って、相当な税金が使われるのだろう。日本海のごみ問題を考えてしまう。

   きょうはこの海の向こうでも大変なことが起きていた。北朝鮮が日本海に向けた弾道ミサイルを発射したのだ。防衛省公式ホームページによると、北朝鮮はきょう午前8時7分ごろ、内陸部から弾道ミサイルの可能性があるものを東方向に発射した。落下地点は排他的経済水域(EEZ)外と推定される。航空機や船舶からの被害報告などは確認されていない。去年10月19日にも北朝鮮は潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)を、9月には11・12日に長距離巡航ミサイル、15日に鉄道線路での移動式ミサイル=写真・下、朝鮮中央テレビ動画=、28日に極超音速ミサイルを発射している。

   その脅威は狙いを定めて発射していることだ。弾道ミサイルを撃ち込む標的の一つが能登半島だ。2017年3月6日、北朝鮮は「スカッドER」と推定される弾道ミサイルを4発発射し、うちの1発を能登半島から北に200㌔の海上に着弾させた。半島の先端・輪島市の高洲山(567㍍)には航空自衛隊のレーダーサイトがある。その監視レーダーサイトの目と鼻の先にスカッドERが撃ち込まれた。

   ロシアの軍用船の漂着も北朝鮮の弾道ミサイルも海の向こうからの脅威だ。これらをなぜ外交問題としないのか。

⇒5日(水)夜・金沢の天気     くもり

☆地震と漂着船 漂う不気味さ

☆地震と漂着船 漂う不気味さ

   きょう新年の初詣に白山比咩神社(白山市)に行ってきた。「ことし1年、無事でありますように」と祈った。このところ地震と漂着ごみの不気味な動きが続いている。5日前の大晦日の午後2時時52分ごろ、能登半島の尖端を震源とする震度3、マグニチュード4.2の揺れがあった。金沢地方気象台によると、2021年1月から12月までの1年間で震度1以上の地震が70回以上も発生している。9月16日には震度5弱の地震もあった。不気味だったのは、9月29日に能登半島沖が震源なのに太平洋側が揺れた「異常震域」の地震があった。震源の深さは400㌔、マグニチュード6.1の地震に、北海道、青森、岩手、福島、茨城、埼玉の1道5県の太平洋側で震度3の揺れを観測した。

   これは人為的な原因によって誘発される「誘発地震」か、と考え込んでしまった。というのも、北朝鮮が同じ9月の15日正午過ぎに弾道ミサイル2発を発射、その1発が能登半島沖の舳倉島の北約300㌔のEEZに落下した(同月15日・防衛大臣臨時会見「北朝鮮による弾道ミサイル発射事案」)。この落下地点と29日の震源が近かった。不気味だ。

   そして、寒風吹きすさぶ冬の日本海から漂着船が流れ着いている。きょう4日午前8時30分ごろ、珠洲市真浦町の海岸で、船体の全長が50㍍ほどある鉄製の船が海岸に流れ着いていると住民から海上保安庁に連絡があった。船体にはロシア語が書かれている。能登海上保安署では、ロシアで射撃訓練の際に「標的船」として使われる船に似ているという(4日付・朝日新聞ニュースWeb版)。では、ロシアは日本海でなぜ、どのような理由で射撃訓練をしたのか。これも不気味だ。

   このほかにも、先月だけでも輪島市、かほく市、珠洲市、志賀町の海岸に木造船や船の一部が相次いで漂着している。ハングルで数字や文字が書かれていて、北朝鮮の木造船の可能性があると報じられている。不審な人物や遺留品などはいまのところ見つかってはいない。

   能登半島の沖合には北朝鮮の木造船がよく流れて来る。大陸側に沿って南下するリマン海流が、朝鮮半島の沖で対馬海流と合流し日本の沿岸に流れてくる。ロシアや北朝鮮の沖合で難破した船や、海に廃棄された産業や生活ごみなどが漂着する。日本海に突き出た能登半島は近隣国の漂着ごみのたまり場の一つなのだ。

⇒4日(火)夜・金沢の天気     あめ

★経済と環境が同時に同等に語られる時代

★経済と環境が同時に同等に語られる時代

   石川県内の繊維産業に関わる人から聞いた話だ。繊維をヨーロッパに輸出する際に、現地の繊維加工会社からいろいろ問い合わせがある。繊維の素材(綿など)はどのような労働環境でつくられているのか、さらに、繊維機械はバイオ燃料で動いているのか、あるいは化石燃料を利用しているのかなど細かく聞いてくるそうだ。「そのうち、使用している電力は石炭火力か原子力か再生可能エネルギーかと尋ねてくるだろう」と少々困惑した顔つきだった。

   ヨ-ロッパの企業は、環境・社会・企業統治に配慮した、いわゆる「ESD投資」を得るために生産元をチェックているのだという。話を聞いたのは、イギリスのグラスゴーで開催されていた国連の気候変動対策会議「COP26」が終わった去年の11月終わりごろだった。COP26では、世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5度に抑える努力を追求すると成果文章で明記された。世界全体の温室効果ガスの排出量を2030年までに2010年比で45%削減し、さらに2050年にほぼゼロに達するまで排出量を削減し続ける。今後、石炭火力などが主な電力の国の生産品は敬遠されるのかもしれない。

   経産省がまとめた第6次エネルギー基本計画(2021年10月2日・閣議決定)によると、2030年度の電力構成を火力42%(LNG20%、石炭19%、石油2%、水素・アンモニア1%)、原子力20-22%、再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、水力、バイオマス)が36-38%となっている。第5次基本計画(2018年7月)では2030年度の火力の電源構成が56%だったので、14ポイント削減している。日本は「カーボンニュートラル先進国」としての国際的評価を高めるために舵を切ったようにも思える。

   日本だけでなく、脱炭素化の動きは世界的な潮流だろう。ところが、いくつか矛盾点や議論すべき課題が世界各地で起こり始めている。NHKニュースWeb版(3日付)によると、EUの執行機関にあたるヨーロッパ委員会は1日、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標の実現に向け、一定の条件のもとで天然ガスに加え、原子力発電についても持続可能なエネルギー源として位置付ける方針を明らかにした。これに対して脱原発を進めるドイツは反発し、経済気候保護担当大臣は「リスクの高い原子力を持続可能とするのは間違っている」とメディアに対して述べた。一方、フランスはエネルギー価格の高騰などを理由に、原発を持続可能なエネルギーと認めるべきだと主張している。「Decarbonization(脱炭素化)」をめぐる論点が鮮明化してきた。

   さらに、バイオ燃料の確保のために森林伐採が世界規模で行われている現実がある。その事例として引き合いに出されるのが、熱帯雨林のアマゾンの3分の2を有するブラジルだ。森林を伐採してサトウキビ畑を広げ、石油の代替燃料としてバイオエタノールを生産している。地球環境と開発の問題に取り組む「WRI」公式ホームページによると、ブラジルでは農地開発だけでなく森林火災も含め、2020年に170万㌶の森林が失われている。ちなみに、コンゴやインドネシアを含めて世界では420万㌶だった。これはオランダの国土面積、日本では九州に相当する。

   ブラジルの森林の消失面積は世界で最も多い。BBCニュースWeb版日本語(202年11月19日付)によると、ブラジルはCOP26で2030年までに森林破壊を終わらせると約束する文書に署名した。アマゾンの熱帯雨林には300万種の動植物が生息し、100万人の先住民族が暮らしている。地球温暖化を引き起こしている炭素を吸収する重要な場所でもある。

   新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退への対策で、環境を重視した投資などを通して経済を浮上させる「Green Recovery(グリーン・リカバリー)」が国際的なトレンドになっている。冒頭のESD投資を含め、経済の動きは環境問題と同時に同等に語られる時代に入ってきたのだろう。

⇒3日(月)夜・金沢の天気      くもり  

☆「T・K生」と「安江良介」のこと

☆「T・K生」と「安江良介」のこと

   メディア各社が韓国の軍人出身政権時代に岩波書店の月刊誌『世界』で民衆への弾圧を告発する「韓国からの通信」の記事を書いた「T・K生」こと、池明観(チ・ミョングァン)氏が1日、97歳で死去したと報じている。学生時代に『世界』の編集長だった安江良介氏に「T・K生は誰ですか」と無謀なインタビューをしたことを思い起こした。

   東京の大学の部活では弁論部に所属していた。国政や国際的な時事ネタをテーマに10分ほどにまとめて弁舌する。論理と調査と統計に裏打ちされた弁論の手法をたたき込まれた。当時、自身のテーマの一つが韓国の政治情勢だった。きっかけは弁論部に入る1年前の1973年の8月8日に起きた金大中拉致事件。千代田区のホテルにいた韓国の民主活動家、金大中氏が拉致されて5日後にソウルの自宅で軟禁状態に置かれていたことが発覚した。「韓国からの通信」は、当時の韓国の民主化を求める知識人の動きや民衆の声をリアルに伝えていた。

   大学2年か3年のころだった。弁論部出身の先輩の新聞記者からのアドバイスで、安江良介氏にインタビューを電話で申し込んだ。安江氏は金沢市の出身で、金沢大学卒業後に岩波書店に入社という経歴だったので、自身も金沢から東京にやってきたと伝えると、大学の講演会の講師に招かれているのでその時に面談しようと快く応じてくれた。日時は記憶にないが、講演の終了後に講師控室に行き、冒頭の質問をした。立ち話でのインタビューだったが、安江氏は「匿名だから記事が書ける。それ以上は話せない」との趣旨の返事だった。

   「韓国からの通信」は1973年5月号から88年3月号までの15年間掲載された。安江氏はその間の編集長だった。「韓国からの通信」の連載が始まって間もなく金大中事件が起き、当時の韓国政権に対する日本の批判世論が高まっていた。安江氏は別の顔をもっていた。1967年から70年まで当時の美濃部東京都知事の特別秘書も務めていた。68年に東京都は朝鮮学校を各種学校として全国で初めて認可するが、それを知事に進言したのは安江氏だった。

   池氏がT・K生だったことを明かしたのは2003年だった。1970年から韓国の女子大学で教授を務め、民主化運動を進めるが、72年に日本に来てその後20年間亡命生活を送ることになる。朝日新聞Web版(1日付)によると、「韓国からの通信」のもとになった手記や資料は、日本のキリスト教関係者らの協力で韓国から秘密裏に持ち出されたもので、これをもとに池氏が執筆したとされる。

   安江氏と池氏との極秘の連携プレーで世に出されたドキュメントだった。一気に読める流れるような文体で、自身はT・K生は韓国人ではなく、日本人ではないかと思ったほどだった。池氏は1993年に帰国し、金大中政権の対日政策のブレーンとして、韓日文化交流会議委員長を務め、日本文化の開放に貢献した。安江氏は90年に岩波書店4代目社長に就任。いわゆる進歩的知識人に対して影響力を持ち続けたが、98年1月に62歳で逝去した。

★2022年の吉凶を読む

★2022年の吉凶を読む

   金沢は雪の正月を迎えた。自宅周囲で20㌢だろうか。「白銀の世界」と言うほどの積もりではない。初日の出を拝むことはできなかったが、「2022年」はどのような年になるのだろうか。「2022」という数字を見ていると、まるで白鳥3羽が池を泳ぐ姿のようにもイメージする。このブログ『自在コラム』も書き続けて17年目に入るが、これまで「2226」回を数えている。ことしは白鳥が舞うような良き年になるのだろうか。

   経済の動きを占ってみる。日経平均株価の年末の終値(12月30日)は2万8791円で前年と比べて1347円値上がりし、年末の終値としては32年ぶりの高値だった。しかし、経済を取り巻く高揚感はあっただろうか。日常生活では、1㌦=115円の円安ドル高で近所のガソリンスタンドの価格が一時1㍑169円になった。円安ドル高はことしも続きそうだ。

   明るい兆しも感じる。日本や中国、ASEANなど15ヵ国が参加するRCEP(地域的な包括的経済連携)がきょう1日発効する。日本にとって中国との初めての経済連携協定で、貿易の拡大による経済の押し上げ効果が期待される。とくに、自動車や鉄鋼、化学などの分野で関税の撤廃が進み、日本製品の輸出が増える。NHKニュースWeb版(12月31日付)は、RCEP発効で域内の貿易が2019年の実績より1.8%押し上げられ、金額で418億㌦増える。増加分のうち、日本は202億㌦と半分近くを占めるとのUNCTAD(国連貿易開発会議)の試算を引用して報じている。

   政治状況はブレが少ないのではないか。7月にも予定される参院選。去年10月の衆院選では、野党共闘(立憲・共産)で政権交代を目指すと野党側は声高に有権者に訴えたが惨敗した。岸田内閣によほどの失政がない限り、与党の過半数維持は継続するだろう。ただ、「窮鼠返って猫を噛む」のたとえがあるように、野党が共闘して「国会議員数が多すぎる。半分に削減する」などと訴えると、シンパシーを感じる有権者が相当数いるに違いない。

   身近な選挙もある。石川県知事選が3月13日にあり、まだ確定していない金沢市長選もそのころになりそうで、「ダブル選挙」ではないかと地元紙が報じている。現在7期目の谷本知事は不出馬を表明していて、自民党の国会議員2人が職を辞して出馬を表明。保守分裂選挙の様相を呈してきた。さらに、現職の山野金沢市長も知事選への出馬が判断待ちの状態となっている。石川では春一番ではなく、選挙の嵐が起こりそうだ。

   隣国の動向を占う上でこの言葉をどう解釈すればよいのか。NHKニュースWeb版(1日付)によると、中国の習近平国家主席は31日夜、国営テレビなどを通じて国民に向けた新年の祝辞を述べた。その中で、「祖国の完全な統一の実現は、台湾海峡両岸の同胞の共通の願いだ」と台湾の統一に重ねて自信を示した。

   台湾の「完全な統一」は中国にとって香港に次ぐ国家戦略だろう。それを強行するのは北京オリンピック・パラリンピックの後。パラの最終日が3月13日なので、14日以降だ。台湾有事となれば、在日米軍が介入する。日本も安全保障関連法に基づき、アメリカ軍の後方支援を行うことになる。ひょっとして2022年は緊張感が漂う年になるのか。

⇒1日(土)午後・金沢の天気      あめ