2022年 1月 の投稿一覧

☆「さいはての地」という特異点に迫るアートと起業

☆「さいはての地」という特異点に迫るアートと起業

   「アートとSDGsはつながるのか」、そんな思いをめぐらしながら参加したシンポジウムだった。きょう21日、能登半島の珠洲市で始まった「創造都市ネットワーク日本(CCNJ)現代芸術の国際展部会シンポジウム」。国際芸術祭を開催している自治体が開催している勉強会でもある。

   珠洲市で昨年秋に開催された「奥能登国際芸術祭2020+」の総合ディレクターの北川フラム氏=写真・上=が「持続可能な地域社会と国際芸術祭」と題して基調講演。「厳しい地域ほど魅力的で、珠洲は地政学的にも特異点がある。芸術祭で大いに変わる可能性がある。ぜひ10年で最低3回の芸術祭をやってほしい」と述べた。珠洲の特異点として、「この地には日本で失われた生活が残っている。そして、国と人がつながる日本海を望む『さいはての地』であり、鉄道の消滅点でもある。地域コミュニティーの絆が強く、里山里海の自然環境に恵まれている。アートはこうした特異点に迫っていく」とアーチスト目線で珠洲の魅力と可能性を強調した。

   珠洲市の国際芸術祭は2017年と2021年の2回。北川フラム氏が地域が大きく変化するには「10年、最低3回」と述べたが、すでに珠洲市には変化が起きている。移住者数で見てみる。芸術祭開催前の5年間(2012-16年度)と開催後の5年間(2017-21年度12月末)との比較では開催前が135人に対して、開催後は255人と1.9倍も増えている。また、今年度の上半期(4-9月)は転入者が131人、転出者が120人で、転入が初めて転出を上回った。この社会動態の変化はなぜ起きているのか。北川フラム氏が述べたように、半島の先端という地理的な条件や過疎化といったハンディはアーチストにとって「厳しい地域こそ魅力的」に感じ、移住者も共感するという現象なのか。 

   その社会的な背景には、若者世代を中心として都市の人口集中、一極集中とは一線を画して、地域の新たな価値を見出す動きが活発化しつつある。そんな時代とマッチしたのかもしれない。事例を一つ上げる。去年3月に東京のIT企業に勤める男性が珠洲市に移住してきた。テレワークを通して本社の仕事をしながら、副業ビジネスとして、能登でクラフトジンを開発するためだ。ジンの本場・イギリスのウェールズにある蒸留所に行き、能登のユズやクロモジ、藻塩など日本から送りそれをベースにジンの生産の委託契約を結んできた。勤務先の会社が副業を解禁としたタイミングだった。将来は小さな蒸留所を能登でつくる計画も抱いている。能登の地域資源であるボタニカル(原料植物)を探して夢に向かって進む姿と、アーチストたちの創作の姿を重なって見える。「のとジン」=写真・下=は来月から通信販売が始まる。

   冒頭の「アートとSDGsはつながるのか」の問題提起は次回で。

⇒21日(金)夜・珠洲の天気    くもり時々ゆき

★「あさま山荘事件」から50年 現場を行く~下~

★「あさま山荘事件」から50年 現場を行く~下~

   スマホのグーグルマップで南軽井沢の「あさま山荘」を探す。前回のブログで述べた「あさま山荘事件顕彰碑」の向こう側と方向が一致する。車で向かう。ゴールまでは道が複雑だった。そして坂道は急で積雪があり、気温はマイナス3度。この日はいったん宿に引き返し、翌日に出直すことにした。

     まるで要塞のような造り 機動隊突入から逮捕まで8時間のナゾ

   そして、きょう18日の午前中、「あさま山荘」がある山を再度上った。気温はマイナス5度だった。積雪の坂道を車で上るのはタイヤのスリップなどで難しくなくなり、車を降りて徒歩で上った。300㍍ほど歩くとグーグルマップの「あさま山荘」に着いた=写真・上=。友人たちと「これだ」と確かめ合った。

   1972年2月28日、連合赤軍が立てこもってから10日目に人質となっていた管理人の女性の人命が危ういと判断し、警察機動隊は救出のために強行突入した。午前10時、酷寒の山地での機動隊と犯人との銃撃の攻防、血まみれで搬送される隊員、クレーン車に吊った鉄球で山荘を破壊するなど衝撃的なシーンがテレビで生中継された。逮捕された犯人の引き回しの映像の中継されたのは午後6時すぎ。周囲は暗くなっていた。テレビ業界で今でも話題に上るのは、このあさま山荘事件は放送史で89.7%という驚異的な視聴率だった。

   現地に来て気づいたことだ。当時なぜ機動隊は強行突入から逮捕まで8時間余りもかかったのか、その理由がなんとなく分った。山荘の入り口は階段状で狭く、道路の下にある=写真・下=。そして、山荘そのものは切り立ったがけ地に建設されたものだ。まるで要塞のようだ。機動隊にとって、いわゆる突入による包囲は簡単ではないのだ。そして、連合赤軍がここから撃ったライフルの銃声はおそらくやまびこのように鳴り響いていたに違いない。連合赤軍側の威嚇射撃に対する警戒心は相当だったろう。それが同時に機動隊の動きを鈍らせたのかもしれない。

   そこで使われたのがクレーン車に吊るした鉄球で山荘の一部を破壊するという犯人たちへの威嚇攻撃だったに違いない。威嚇射撃と威嚇攻撃でにらみ合いが続いた。

   もう一つはテレビ報道について。元日本テレビのアナウンサー、久能靖氏の著書『浅間山荘事件の真実』(河出文庫)によると、逮捕された犯人の引き回しの映像の中継に成功したのは玄関の近くでカメラを構えていたフジテレビだけだった。当時の中継はマイクロ波を小型パラボラアンテナで何段にもつないで現地と東京を結ぶやり方だ。このため、犯人の引き回しを撮影する場所を予め固定する必要があった。NHKや日本テレビは高所から俯瞰した映像を狙っていた。ところが、逮捕は午後6時過ぎになり、中継映像は暗くなった。移動しようにも玄関前の道路は狭く、警察関係者や新聞・雑誌メディアなどが道路を埋め尽くしている。日中であれば問題はなかったが、逮捕の時間が遅れて移動と設定が間に合わなかったのだろう。

   半世紀前の事件現場であり報道現場でもあるこの地に立って、なるほどそうだったのかとナゾが解けたような気がした。あくまでも推測だ。

⇒18日(火)夜・金沢の天気    くもり

☆「あさま山荘事件」から50年 現場を行く~上~

☆「あさま山荘事件」から50年 現場を行く~上~

   高校・大学時代からの友人と軽井沢に来ている。きょうの天気は晴れで、浅間山もはっきり見えたのでドライブに出かけた。目指したのは、1972年2月、銃を持った連合赤軍の若者が長野県南軽井沢の企業保養所に押し入り、管理人の女性を人質に立てこもり警察と銃撃戦となった「あさま山荘事件」の現場だ。

     殉職警官2人の顕彰碑の向こうに前代未聞の銃撃戦の現場が

   この事件があった50年前、高校2年生だった。キューバ革命のチェ・ゲバラを崇拝し世界同時革命をめざす赤軍派と、毛沢東理論で一国革命を唱える京浜安保共闘が連携したゲリラ組織だ。群馬、長野の冬の山中を警察に追われながら逃げ延び、ついにあさま山荘に人質を取って立てこもる。ライフル銃や猟銃のほか実弾2千発余り、手投げの爆弾も持っていた。強行突入の様子には自身もテレビにくぎ付けだったことを覚えている。

   グーグルマップで「あさま山荘」をめがけて走行する途中に、「浅間山荘事件顕彰碑」という看板があった。車を降りて顕彰碑に向かった。顕彰碑には「治安の礎」と書かれてあった=写真=。顕彰碑の裏の添え書きを読むと、事件の翌年の1973年にあさま山荘を後方に臨む道路の入り口に建てられた。事件の教訓と犯人の凶弾に倒れ殉職した2人の警察官の功績を称えた文章が刻印されている。

    犯人が立てこもってから10日目の2月28日、いよいよ人質の生命が危ういと警察側は判断し、強行突入し救出作戦に入る。人命尊重を第一に慎重な態度を崩さない警察に対し、「警察のやり方は手ぬるいのではないか。だから過激派がはびこる」というような批判もわき起こっていた。警察は午前10時に突入、この様子は生中継でアナウンサーが逐一リポートした。

   元日本テレビのアナウンサー、久能靖氏の著書『浅間山荘事件の真実』(河出文庫)に当時の報道陣の視線で現場が描いている。午前10時の突入のシナリオはすべて警察とメディアの「報道協定」で取り決めがなされていた。雑誌を含む新聞、テレビ、ラジオなど52社との協定は当時とすれば「史上空前の報道協定」だった。犯人を射殺した場合、射殺した警察官の氏名は公表しない、事件解決後のムービーカメラによる現場撮影は3分(100フィートのフィルム1本分)といった内容まで協定で細かく決められていた。

   ところが、警察隊は催涙ガスと放水をしながらもなかなか前に進めない。午前中には終えると思われていた警察側のシナリオが狂う。そして、警官2人が射殺された。生の衝撃的な画面が視聴者の目の前で9時間にわたって展開されるという、前代未聞のテレビ中継となった。

  亡くなった2人の警察官の顕彰碑に手をあわせ、事件の現場に向かった。

⇒17日(日)夜・軽井沢の天気   くもり

★「敵基地攻撃能力」は無力化するのか

★「敵基地攻撃能力」は無力化するのか

   正気の沙汰ではない。また、きのう(14日)北朝鮮が弾道ミサイルを打ち上げた。ことしに入って3回目だ。防衛省公式ホームページには、「北朝鮮は、本日(14日)14時50分頃、北朝鮮北西部から弾道ミサイルを少なくとも1発、東方向に発射しました。詳細については現在分析中ですが、最高高度約50km程度で、距離は通常の弾道軌道だとすれば、約400km程度飛翔し、落下したのは、北朝鮮東岸付近であり、我が国の排他的経済水域(EEZ)外と推定されます」と記載されている。

   NHKニュースWeb版(15日付)は、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」を引用してして以下報じている。「鉄道機動ミサイル連隊が14日、発射訓練を行い、2発の戦術誘導弾が日本海に設定された目標に命中した」と発表した。公開された写真ではミサイルが、線路上の列車からオレンジ色の炎を吹き出しながら上昇していく様子が写っている。また発射訓練について、「任務の遂行能力を高めることを目的に行われた」としていて、国防科学院の幹部らが立ち会い、「全国的な鉄道機動ミサイルの運用システムを整えるための課題が議論された」としている。

   当初、アメリカへの威嚇を込めた発射だと思った。北朝鮮外務省報道官はこの日午前6時、国営の朝鮮中央通信を通じて談話を発表し、「アメリカがわが国の合法的な自衛権行使を問題視するのは明らかな挑発であり、強盗的な論理だ」「アメリカはわが国の正当な活動を国連安保理に引き込んで非難騒動を起こせなかったので、単独制裁まで発動しながら情勢を意図的に激化させている」と述べていた(15日付・朝鮮日報Web版日本語)。

   ところが、先のNHKニュースからは、鉄道機動ミサイルを戦略兵器として着々と開発を進めていることが分かる。鉄道機動ミサイルが初めて確認されたのは、2021年9月15日に発射した弾道ミサイルだ=写真、2021年9月17日付・朝鮮中央テレビ動画から=。このときは、能登半島沖350㌔のEEZ内に着弾した。あれから4ヵ月で戦術誘導弾を搭載した鉄道機動ミサイルを開発したことが分かる。戦術誘導弾は弾頭の重量を2.5㌧に改良した兵器システムで、核弾頭の搭載が可能となる。これを「全国的な鉄道機動ミサイルの運用システム」へと展開したらどうなるか。つまり、移動式ミサイル発射システムが完成すれば、北朝鮮のいたるところから発射が可能で、日本で議論されている「敵基地攻撃能力」そのものが意味をなさなくなってくる。

   北朝鮮の弾道ミサイル開発はすでに完成形に近いのではないか。去年9月28日発射した極超音速ミサイルはマッハ3とされていたが、今月11日に発射したものはマッハ10と推定されている(12日・岸防衛大臣の記者会見)。日本の弾道ミサイルへの防衛は、イージス艦の迎撃ミサイルで敵のミサイルを大気圏外で撃ち落とし、撃ち漏らしたものを地対空誘導弾「PAC3」で迎撃するという二段構えの防備体制といわれる。日々進化していると思われる北朝鮮の弾道ミサイルにまともに向き合えるのか。日本海側に住む一人としての懸念だ。

⇒15日(土)夜・金沢の天気     はれ

☆退路絶ち三つどもえ「知事選」春の嵐

☆退路絶ち三つどもえ「知事選」春の嵐

   きょうも雪の朝だ。晴れ間に雪すかしをする。「冬来たりなば春遠からじ」と自身に言いきかせながら作業をする。この冬は寒さは厳しいが、桜の開花は早めめで金沢は3月25日との情報が出ている(1月13日付・ウエザーニューズ公式ホームページ)。春が待ち遠しいのだが、この3月は「政治の嵐」に見舞われそうだ。3月13日投開票の石川県知事選挙にきのう(13日)金沢市長の山野之義氏(59)が立候補を表明し、すでに名乗りを上げている元プロレスラーで自民党の前衆院議員の馳浩氏(60)、同じく元農林水産審議官で自民党前参院議員の山田修路氏(67)との「三つどもえの戦い」となることがほぼ確定した=写真=。

   石川の知事選で、知名度がある保守系の政治家3人が争う構図は初めてだ。現職の谷本正憲氏(76)は自治省の元官僚で副知事に就任し、1994年3月の知事選で元農水事務次官の候補を破り、以降7期28年になる。去年11月に今期限りでの退任を表明した。その前の中西陽一氏も自治省の元官僚で副知事に就任し、1963年の知事選で当選、以降8期31年その任に当たった(76歳で在職中死亡)。自身は石川で生まれたシニア世代で、物心がついて覚えた知事の名前は「中西」「谷本」の2人しか知らない。なので「国会議員は政治家」「知事はキャリア官僚」というイメージがこびりついてしまっている。

   地方分権の首長とは言え、中央官庁とのパイフを持つ知事は頼りされる。都道府県知事の6割が元キャリア官僚といわれる。ところが、最近のトレンドとして国会議員などの政治家が知事への「転職」にシフトしているのではないだろうか。現在、都府県知事は12人は元国会議員で、自民党衆院議員を辞して東京都知事になった小池百合子氏はそのシンボル的な存在かもない。ほかにも、群馬の山本一太氏(元参院議員)、沖縄の玉城デニー氏(元衆院議員)が知られる。

   では、なぜ知事への転職を目指すのか。以下憶測だ。自民党の国会議員といえども、党という「合議体」の一員にすぎない。大勢の「センセイ」の一人なのだ。それに比べ、知事は政策の実現に向かって進むことができる。谷本氏は県内で2番目の空港となる能登空港の開港(2003年7月)、北陸新幹線の金沢延伸(2015年3月)といった大型プロジェクトをやり遂げた。また、中西氏が「能登と加賀の格差是正」を打ち出して能登半島に縦貫する「能登有料道路」(83km)をつくり、谷本氏は2013年3月に無料化した。2人には政策の実現性というものが見えた。

   3月の石川の知事選に国会議員、首長といった政治家3人が名乗りを上げた。その背景には、現在の副知事にキャリア官僚がいないということもあるのかもしれない。それにしても、3人の出馬表明は分かりやすい。馳氏は去年7月19日に記者会見し、秋の衆院選に出馬はせず知事選に立候補すると表明。山田氏は12月3日に立候補を表明し、臨時国会閉会後に議員辞職。山野氏は市長任期を連続3期12とする多選自粛条例を自ら議会に諮って通した。3人とも自ら退路を断ち知事選に臨む。その分、強烈な三つどもえの嵐が吹くことが予想される。折に触れてウオッチしていきたい。

⇒14日(金)夜・金沢の天気     くもり

★雪国の美徳「雪すかし」とマイクロプラスチック問題

★雪国の美徳「雪すかし」とマイクロプラスチック問題

   きょうも朝から雪が降っている。積雪は自宅周囲で5㌢ほどだが、降雪の合い間にご近所さんが「雪すかし」を始めると、町内の家々からも人が出てきて始まる。「また降りましたね」と。雪すかしは朝のあいさつ代わりでもある。金沢の雪すかし、除雪にはちょっとした暗黙のルールのようなものがある。

   雪をすかす範囲はその家の道路に面した間口部分となる。角の家の場合は横小路があるが、そこは手をつけなくてもよい。家の正面の間口部分の道路を除雪する。しかも、車道の部分はしなくてよい。登校の児童たちが歩く歩道の部分でよい。すかした雪を家の前の側溝に落とし込み、積み上げていく。冬場の側溝は雪捨て場となる=写真・上=。

   雪国の住民の「自助・共助」の美しい街の光景ではある。では、行政は何もしないのかというとそうではない。町会が費用を負担し、事業者に除雪車など機械による市道の除排雪を委託する場合に、30万円を限度としてその費用の3分の2を補助する制度を設けている。ただ、自身は毎年この雪の季節にまったく別の問題を考えてしまう。スコップとマイクロプラスチック問題のことだ。

   かつてスコップは鉄製が多かったが、軽量化とともにアルミ製に変化し、最近ではプラスチックなど樹脂製が主流となっている。除雪する路面はコンクリートやアスファルトなので、そこをスコップですかすとプラスチック樹脂が摩耗する=写真・下=。微細な破片は側溝を通じて川に流れ、海に出て漂うことになる。

   さらに粉々に砕けたマイクロプラスチックが海を漂い、海中の有害物質を濃縮させる。とくに、油に溶けやすいPCB(ポリ塩化ビフェニル)などの有害物質を表面に吸着させる働きを持つとされる。そのマイクロプラスチックを小魚が体内に取り込み、さらに小魚を食べる魚に有害物質が蓄積される。食物連鎖で最後に人が魚を獲って食べる。

   自身はなるべくステンレス製のスコップを用いるようにしている。ただ、ご近所を見渡すとほとんどがプラステチック製だ。雪国から排出されるマイクロプラスチックは想像を絶する量ではないだろうか。この問題を解決する方法はただ一つ。一部には製品化されたものもあるが、スコップのさじ部分の尖端をステンレスなど金属にするしかない。これを法令で措置すべきだ。「2050年のカーボンニュートラル」宣言の次は、「マイクロプラスチック・ゼロ宣言」ではないだろうか。

⇒13日(木)午後・金沢の天気    ゆき

☆北の五輪不参加と極超音速ミサイルは何を潰したのか

☆北の五輪不参加と極超音速ミサイルは何を潰したのか

   きのう11日に北朝鮮が発射した極超音速ミサイルについて防衛省は公式ホームページで落下地点を推定した図=写真・上=を掲載し、「詳細については現在分析中ですが、通常の弾道軌道だとすれば約700km未満飛翔し、落下したのは我が国の排他的経済水域(EEZ)外と推定されます」とコメントを書いている。この図を見て、ミサイルの発射角度を東南に25度ほど変更すれば、間違いなく能登半島に落下する。さらに、朝鮮新報(12日付)は「発射されたミサイルから分離された極超音速滑空飛行戦闘部は、距離600km辺りから滑空再跳躍し、初期発射方位角から目標点方位角へ240km旋回機動を遂行して1000km水域の設定標的を命中した」と記載している=写真・下=。この記載通りならば、北陸がすっぽり射程に入る。

   さらに、朝鮮新報の記事は金正恩朝鮮労働党総書記が発射を視察し、「国の戦略的な軍事力を質量共に、持続的に強化し、わが軍隊の近代性を向上させるための闘いにいっそう拍車をかけなければならない」と述べと伝えている。

   NHKニュース(12日付)によると、岸防衛大臣はきょう12日午前、記者団に対し、11日に北朝鮮が発射した弾道ミサイルについて、通常よりも低い最高高度およそ50㌖、最大速度およそマッハ10で飛しょうしたと分析していると説明した。今月5日に発射した極超音速ミサイルはマッハ5の速さで飛行したと報じられていた。去年9月28日の「火星-8」はマッハ3とされていたので、ミサイル技術が格段に高まっていると言える。

   そして、岸大臣が述べたように、今回の弾道ミサイルは通常より低く飛び、最高高度およそ50kmだった、非常に速く低く飛ぶ弾道ミサイルに日本は対応できるのだろうか。これまで北朝鮮のミサイル発射は、アメリカを相手に駆け引きの材料だと思い込んでいた。どうやらそうではないようだ。日本やアメリカの迎撃ミサイルなどはまったく寄せ付けない、圧倒的な優位性を誇る弾道ミサイルの開発にすべてを集中する。国際的な経済封鎖下でも、東京オリンピックと北京オリンピックをボイコットしてでも開発を急ぐ。そして、ダメージを受けたのは韓国だった。

   韓国の大統領府関係者は、北京オリンピックについて「慣例を参考にして、適切な代表団が派遣されるよう検討中」と語り、文在寅大統領の出席は検討していないと明らかにした(12日付・時事通信Web版)。文氏は「外交的ボイコット」を検討していないと訪問中のオーストラリアでの首脳会談後の記者会見で表明していた(12月13日付・朝日新聞Web版)。

   以下裏読みだ。文氏は北京オリンピック期間中に中国の仲立ちで北京での南北首脳会談を構想し、水面下で交渉していた。ところが、北朝鮮は今月5日に極超音速ミサイルを発射。同じ日に「敵対勢力の策動と世界的な感染症の大流行」を理由にオリンピックに参加しないことを中国側に通知した。そして11日にマッハ10の極超音速ミサイルを発射した。これで文氏の「北京での南北首脳会談」の構想は完全に潰えてしまった。というより、ひょっとして、北朝鮮は文氏の夢を潰すためにあえて発射と不参加をセットにしたのか。「敵対勢力の策動」とはこのことを指すのか。

⇒12日(水)夜・金沢の天気      あめ

★騒々しい3連休明け 弾道ミサイルどこに向けているのか

★騒々しい3連休明け 弾道ミサイルどこに向けているのか

   海上保安庁公式ホームページは11日7時29分の「【緊急情報】ミサイル発射情報」で、「北朝鮮から、弾道ミサイルの可能性があるものが発射されました。船舶は、今後の情報に留意するとともに、落下物を認めた場合は、近づくことなく、関連情報を海上保安庁に通報してください」と伝えた。同じく防衛省公式ホームページは7時35分の「お知らせ(速報)」で、「北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されました」と伝えている。総理官邸公式ホームページでは、「総理指示(7:33)」として、「情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して、迅速・的確な情報提供を行うこと」「航空機、船舶等の安全確認を徹底すること」「不測の事態に備え、万全の態勢をとること」を出している。騒々しい連休明けだ。

   北朝鮮は今月5日の午前8時7分ごろにも、内陸部から「極超音速ミサイル」を日本海に向けて発射している=写真、1月6日付・朝鮮新報Web版=。落下地点は日本の排他的経済水域(EEZ)外と推定される。航空機や船舶からの被害報告などは確認されていない。去年10月19日にも北朝鮮は潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)を、9月には11・12日に長距離巡航ミサイル、15日に鉄道線路での移動式ミサイル、28日に極超音速ミサイルを発射している。

   NHKニュースWeb版によると、岸田総理は午前9時前、総理大臣官邸で記者団に対し、「先日、北朝鮮は弾道ミサイルを発射し、国連安全保障理事会で対応が協議されたところだ。こうした事態に北朝鮮が継続してミサイルを発射していることは極めて遺憾なことだ。政府としては、これまで以上に警戒監視を進めているが、発射の詳細は早急に分析を行っている」と述べた。また、岸防衛大臣は記者会見で、北朝鮮から発射された弾道ミサイルの可能性があるものは、通常の軌道であれば、日本のEEZの外側に落下したと推定されることを明らかにした。

   それにしても、この騒々しさは北京オリンピック・パラリンピックに影響をもたらさないのだろうか。弾道ミサイルを打ち上げている国がオリンピック開催国の隣国にあることに、各国のオリンピック選手団はどう思っているだろうか。そして、北朝鮮は北京オリ・パラに参加しない方針を明らかにしている(1月7日付・NHKニュースWeb版)。その理由に、アメリカなどの「外交的ボイコット」に関連して、「アメリカと追従勢力の中国への陰謀がより悪質になっている。中国の国際的なイメージを傷つけようとする卑劣な行為で排撃する」としている(同)。この言葉を真に受けると、「アメリカと追従勢力」を「排撃する」ことと、弾道ミサイルを関連づけて考えてしまう。

⇒11日(火)午前・金沢の天気      あめ

☆用心するに越したことはない

☆用心するに越したことはない

   新型コロナウイルスの感染が急拡大している。石川県でもきょう10日、新たに18人が感染、1人の死亡が発表された。県内で亡くなった人はこれで139人、県内での感染者も累計で8135人となった。そして、全国ベースではここ1週間の新規感染者は3万2081人で、前週(3200人)の約10倍に増加。オミクロン株の広がりとともに、増加幅が拡大している(10日付・時事通信Web版)。感染力が強いとされるオミクロン株の市中感染が全国的に広がっている。感染症者は人工呼吸器やエクモを使用するような重症患者は少ない、「インフルエンザと同じ程度」との情報があるものの、用心するに越したことはない。   

   きのう9日のNHK『日曜討論』で、岸田総理はいわゆる「敵基地攻撃能力」について、憲法など基本的な考え方を守ったうえで、具体的な対応を国民の理解を得ながら結論を出したいと述べた。これに対し、野党党首の考えは割れた。野党第一党の立憲民主と共産は否定的だった。日本維新と国民民主はおおむね賛同する考えだった。ただ、立民の泉代表の言い分は一理あると思った。北朝鮮の弾道ミサイルを念頭にして、「今の時代は発射台付き車両からミサイルを射出するわけで、動かない基地を攻撃したところで抑止できるのか」との問題提起だった。

   確かに、北朝鮮が去年9月15日に発射した弾道ミサイルは移動式だった。北朝鮮の朝鮮中央テレビ(同9月17日付)は、弾道ミサイルは鉄道を利用した移動式ミサイル発射台から発射されたもので、その動画を公開した=写真=。安倍政権時代に北朝鮮の弾道ミサイルの発射予測を検知して事前に破壊する「敵基地攻撃能力」の保持が議論されていたが、この弾道ミサイルは敵基地攻撃の意味がなさなくなったことを示すものだった。だからと言って、すべての弾道ミサイルが移動式ではない。「敵基地攻撃能力」を有したほうがよいのではないだろうか。用心するに越したことはない。

   日本気象協会の予報(10日付)によると、あさって12日から14日にかけて、冬型の気圧配置が強まり、日本海側は雪。積雪が急に増えたり、猛吹雪となるおそれがあるという。あのJPCZ(日本海寒帯気団集束帯)がまたやってくる。用心するに越したことはない。

⇒10日(月)夜・金沢の天気    くもり

★小銭はどこへ行く「さい銭箱」と「coinstar」の話

★小銭はどこへ行く「さい銭箱」と「coinstar」の話

   先日、石川県白山市の白山比咩(しらやまひめ)神社での初詣=写真・上=でたまたま見た光景だ。家族連れの参拝者の男性が小さなビニール袋をハンドバックから取り出し、さい銭箱に投げ入れた。ゴトッという重量感のある音がしたので、相当の小銭の入った袋だったのだろう。また、グループで参拝していた女性は大きめ財布から小銭を手で掴むようにして投げ入れていた。こんなことを言うと罰が当たるかもしれないが、まるで小銭を厄介払いしているようにも見えた。

   キャッシュレス決済の時代、買い物をカードで済ませるのが普通となってきたが、それでも小銭は財布に溜まる。現金のみ扱う商店はまだまだ多い。スーパーなど量販店でも取り扱っていないキャッシュレスカードは使えない。本来ならば財布の硬貨を数えて出せばよいのだが、時間がかかる。スーパーのジレの後ろに列ができている場合などはつい急いで紙幣を出してしまう。すると、どっさり釣銭が戻って来る。飲み物の自販機では硬貨の10円、50円、100円、500円、紙幣は扱っているが、1円と5円は使えない。 

   さらに小銭を厄介もの扱いにする風潮を煽っているのが銀行の手数料だ。年賀状を買いに行った近くの郵便局で、「硬貨取扱料金」を新設するとのチラシを手にした。ゆうちょ銀行は窓口で大量の硬貨を預け入れる時、これまでは無料だったが今月17日からは有料になる。チラシによると、50枚までは引き続き無料だが、51枚から100枚には550円がかかる。ということは、1円が100枚で550円の手数料だ。101枚から500枚は825円、501枚から千枚は1100円となる。そして、ゆうちょ銀行のATMでは、硬貨1枚から25枚の預け入れで110円を求められる「ATM 硬貨預払料金」が新設される、とある。

   硬貨はこのまま「悪銭」と化するのか、と初詣のときから小銭問題が頭から離れなかった。これもたまたまだが、コインを取り扱う「自動硬貨計数機」という自販機と出会った。きのう8日、金沢市内にあるスーパーに立ち寄った。入院している親戚への新年のあいさつとお見舞いの帰りに立ち寄り、このスーパーに入るのは初めてだった。レジの近くの自販機に「coinstar」と書かれ、「たまった硬貨を手軽に換金できます!」とある=写真・下=。近づいてよく見ると、「投入金額の9.9%が手数料としてかかります」と貼り紙がしてある。これを見た瞬間、「手数料が枚数ではなく、投入金額の9.9%だったら、ゆうちょ銀行よりお得かもしれない」と思った。1円を千枚入れても、手数料は99円だ。10円が千枚の場合でも990円。ゆうちょ銀行は1100円かかる。

   財布の小銭を試しに入れてみた。1円、5円、10円、50円、100円をバサーッと自販機のトレイに入れ、レバーを上げると硬貨が吸い込まれていく。すると、硬貨枚数と金額が表示され、引換券が出てきた。341円。この引換券をサービスカウンターに持って行くと、100円3枚と10円4枚、1円1枚と交換してくれた。その後、買い物をして帰宅。ネットで「coinstar」を調べると、アメリカに本社がある会社でアメリカとヨーロッパを中心にコイン換金機を展開していて、アジアでは2018年7月に初めて日本に導入された、とある。キャッシュレス決済の時代、コインはもはやグローバル問題なのだ。そして、小銭の取り扱いにちょっと困っている人たちへの救いの換金機なのかもしれない。フリーダイヤル(0120-347-502)が記されていた。347-502はサヨナラ・コゼニと読むそうだ。

⇒9日(日)午後・金沢の天気      くもり