2021年 10月 の投稿一覧

☆ノーベル平和賞の遺伝子

☆ノーベル平和賞の遺伝子

   第二次世界大戦後長らく続いたアメリカとソビエト連邦のいわゆる「冷戦」を終結に導き、ソ連で最初で最後の大統領として知られるミハイル・ゴルバチョフ氏がノーベル平和賞を受賞したのは1990年だった。中距離核戦力の全廃条約に調印したことや、グラスノスチ(情報公開)とペレストロイカ(再建)を掲げてソ連の民主化を進めたことが受賞理由だった。1991年に辞任に追い込まれたが、同時に賞金などを元手にゴルバチョフ財団を創設し、独立系新聞の創設を支援してきたことなど、後年、何度か出演した日本の民放テレビで語っていた。

   きのう8日、ノーベル平和賞のニュースをテレビで視聴していて、その記憶と同時に「ノーベル賞ストーリー」というものを感じた。

   ノルウェーのオスロにあるノーベル平和賞選考委員会は、ことしのノーベル平和賞にフィリピンのインターネットメディア「Rappler(ラップラー)」代表マリア・レッサ氏と、ロシアの新聞「Novaja Gazeta(ノヴァジャ・ガゼータ)」の編集長ドミトリー・ムラトフ氏の2人を選んだと発表した(「ノーベル平和賞2021」プレスリリースWeb版)=写真=。ノヴァジャ・ガゼータ紙こそ、ゴルバチョフ氏がファンドで支援した新聞だった。以下、プレスリリースを引用する。

   ドミトリー・ムラトフ氏は1993年創刊の独立系新聞「ノヴァジャ・ガゼータ」を立ち上げた一人。24年間、同紙の編集長を務めている。権力に対して批判的な論調を崩さず、権力の汚職、警察の暴力、不法逮捕、選挙詐欺の汚職など重要な記事を発表し、現在のロシアで最も独立性の高いメディアと評価されている。一方で、権力サイドからは嫌がらせ、脅迫、暴力、殺人にいたるさまざま迫害を受けていて、創刊から現在まで、チェチェンでの戦争に関する政府への批判記事を書いた女性記者ら同紙の6人のジャーナリスト記者が殺害されている。殺害と脅迫にもかかわらず、編集長のムラトフ氏は新聞の独立性を守り続けている。

   プレスリリ-スは、フィリピンのドゥテルテ大統領とロシアのプーチン大統領の名前を記していないが、両国での人権侵害や報道の自由が危うくなっていると指摘している。フィリピンでは麻薬犯罪の取り締まりで容疑者の超法規的な殺害が続き、ドゥテルテ大統領はこれを容認している。マリア・レッサ氏はこれを正面から批判している。また、ロシアではプーチン政権に批判的なジャーナリストへの迫害が相次いでいる。今回受賞した2人は政権に妥協しない報道の自由を死守している。その姿勢を高く評価したものだ。

   冒頭で「ノーベル賞ストーリー」と述べたが、ソ連の民主化を毅然と推し進めたゴルバチョフ氏。その賞金で支援した独立系新聞社の報道の自由を守る戦い。この部分を切り取って考えると、まさに「ノーベル平和賞の遺伝子」ではないかと想像してしまう。こんなことも考える。今回のノーベル賞受賞でフィリピン、ロシア政府がそれぞれに2人に対して圧力を強めるかもしれない。ノーベル賞というスポットライトを当てることで、国際世論を喚起することの効果をノーベル選考委員会は期待しているのかもしれない。

   プレスリリースはこう締めくくっている。「Without freedom of expression and freedom of the press, it will be difficult to successfully promote fraternity between nations, disarmament and a better world order to succeed in our time. This year’s award of the Nobel Peace Prize is therefore firmly anchored in the provisions of Alfred Nobel’s will.」(意訳:表現の自由と報道の自由がなければ、国家間の友愛、軍縮、そしてより良い世界秩序を促進することは困難である。したがって、今年のノーベル平和賞はアルフレッド・ノーベルの意志に合致している)

⇒9日(土)夜・金沢の天気    くもり時々はれ

★首都圏で震度5強、ドラマ『日本沈没』のリアル

★首都圏で震度5強、ドラマ『日本沈没』のリアル

   昨夜寝がけにスマホでニュースを見ると、「首都圏で震度5強の地震」とあり、関連ニュースを見ていると寝付けなかった。東京、群馬、埼玉、千葉、神奈川の5都県で計32人が重軽傷を負い、埼玉県草加市では建物火災があり、千葉県の富士石油袖ケ浦製油所では未明に火災が発生したと報じられている。東京都足立区では、緊急停止した日暮里・舎人ライナーの列車(6両編成)が脱輪。高架上で止まった列車から乗客100人が降り、駅員らの誘導で最寄りのまで歩いて移動した。午後10時41分の発生なので、夜中の停電でパニック状態、そして多くの人は「次は首都直下型」が頭をよぎったことは想像がつく。

   けさ気象庁公式ホームページをチェックすると、震源の深さは75㌔、地震の規模を示すマグニチュードは5.9と推定される。東京23区内で震度5強を記録したのは東日本大震災が発生した2011年3月11日以来10年ぶりとのこと。気象庁は、今後1週間ほどは最大震度5強程度の地震に注意するよう呼びかけている。

   能登半島でも先月、9月16日にマグニチュード5.1、震度5弱の地震があった。そして、29日には日本海側が震源なのに太平洋側が揺れる「異常震域」という地震があった。震源の深さは400㌔、マグニチュード6.1の地震に、北海道、青森、岩手、福島、茨城、埼玉の1道5県の太平洋側で震度3の揺れを観測した。このところの頻発する地震に不気味さを感じる。

   あさって10日から、TBS系の番組、日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』(午後9時)が始まる=写真、TBS公式ホームページより=。小松左京のSF小説『日本沈没』が原作。かつて映画で見たことがある。日本を襲う巨大地震という未曽有の事態に立ち向かう人々の姿を描くドラマではあるものの、今回首都圏を襲った震度5強という現実があるだけに、いくらドラマとは言え、視聴する気にはなれない。金沢に住んでいてもそう感じる。ましてや、首都圏の人々は恐怖心を呼び起こすことになりはしないか。リアルすぎる。

   さらに気になるのは、このドラマが30言語に字幕翻訳され、動画配信サービス「Netflix」で世界配信される。おそらく世界の人たちは現実に日本で地震が頻発していることを知れば、ドラマというより、ドキュメンタリー、あるいは現実的な未来予測というふうに思い込んで視聴するだろう。「日本沈没」というワードが独り歩きして、経済や政治、外交などさまざまなカタチで影響を与えるかもしれない。

   TBSがあさってから予定通り放送をスタートさせるのか、あるいは、首都圏だけでなく東日本大震災の被災地の人々のことを考えてしばらく延期するのか注目したい。

⇒8日(金)朝・金沢の天気      はれ 

☆ガソリン高騰、日本海、そして隣国のキナ臭さ

☆ガソリン高騰、日本海、そして隣国のキナ臭さ

   近所のガソリンスタンドに行き、「レギュラー161円」の表示看板=写真・上=を横目に見ながら給油した。先月までは「158円」だったのが一気に3円値上がり。ニュースでは、石油関連施設が集中するアメリカ南部をハリケーンが直撃して原油の先物価格が上昇している。また、OPECやロシアなど産油国が生産量を据え置いたこと、そして、ヨーロッパでは冬の燃料在庫を積み増する動きもあって、ガソリンの需給がひっ迫しているようだ(10月6日付・NHKニュースWeb版)。年内に1㍑170円を超えるのだろうか。石油価格の高騰は1970年代のオイルショックを思い出し、なんともキナ臭い。

   日本海にもキナ臭さが漂う。能登半島沖のEEZ内の漁場「大和堆」で、北朝鮮当局の船が航行しているのが確認されていて、ことし6月末には、そのうちの1隻が携帯型の対空ミサイルを装備していたことを海上保安庁が確認した。ミサイルは旧ソビエトが開発した「SA-16」と同じタイプで、射程は4.5㌔に及ぶ。海上保安庁は、現場海域で操業する日本の漁船の安全確保に向け、警戒レベルを上げて対応している(同)。地元紙も一面などで大きく報じている=写真・下=。

   対空ミサイルを装備してこの海域に出ているということは、海洋権益を主張する手段、つまり、他国の哨戒艇や漁船などを追い出すためではないかと想像してしまう。1984年7月、北朝鮮が一方的に引いた「軍事境界線」の内に侵入したとして、能登半島の小木漁協所属のイカ釣り漁船「第36八千代丸」が北朝鮮の警備艇に銃撃され、船長が死亡、乗組員4人が拿捕された。1ヵ月後に「罰金」1951万円を払わされ4人は帰国した。

   さらにキナ臭いのが中国だ。BBCニュースWeb版日本語(10月5日付)によると、台湾当局は4日、中国軍のJ-16戦闘機34機、核攻撃能力のあるH-6爆撃機12機などが台湾が実効支配する東沙諸島の近くを飛行したと発表した。その後、さらに戦闘機4機が確認されるなど、この日に台湾付近を飛行した中国軍機は計56機にも上った。中国は今月1日以降、延べ150機以上の軍機を、台湾が設定した防空識別圏内で飛行させている。アナリストらは、台湾の国慶日(10月10日)を前に、中国が台湾の蔡英文総統に警告を発した可能性があると分析している。

   BloombergニュースWeb版日本語(10月7日付)によると、ここ数週間で中国恒大集団の危機が一段と深まっているが、危機は中国の不動産業界全体に波及している。初のドル建て債デフォルト(債務不履行)が起きた。高級マンションや都市再開発プロジェクトを手掛ける花様年控股集団は、4日が期限だった社債2億570万㌦相当を償還できなかった。5日には同社を「一部デフォルト」に格下げする動きが相次いだ。緊張感の高まる中国不動産業界で次にトラブルを起こすのはどこか。

   ガソリン高騰、日本海、そして隣国のキナ臭さ。ブログを書きながら周囲を見渡すと、嗅覚がすこぶる敏感になる。

⇒7日(木)夜・金沢の天気    はれ

★ノーベル賞「真鍋効果」がもたらすもの

★ノーベル賞「真鍋効果」がもたらすもの

   今年のノーベル物理学賞に地域温暖化予測の第一人者として知られるプリンストン大学上級研究員の真鍋淑郎氏が選ばれた=写真=。真鍋氏は京都大学と東京大学大学院で地球物理を学び、それまで物理学とは考えられていなかった気候変動を数式を使うコンピューターでシミュレーション解析を行うことで、「気候物理学」という新たな研究ジャンルを切り拓いた。

   実にタイムリーな受賞ではある。今月31日からイギリス・グラスゴーで国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催され、各国の代表やNGOが脱炭素の目標や具体策について話し合う。今回のノーベル賞受賞で、温室効果ガスの削減こそ国際的な課題として広く認知されることになるだろう。

   ひょっとして、真鍋氏のノーベル賞受賞はアメリカのバイデン大統領へのメッセージではないだろうか。アメリカは2015年に採択された温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」について、「不公平な経済的負担」を強いているという理由で2017年6月、当時のトランプ大統領が協定から離脱すると宣言し、2020年11月に正式に離脱した。政権を引き継いだバイデン氏はパリ協定への復帰を表明し、ことし1月20日に復帰手続きの開始を命じる大統領令に署名した(2021年1月22日付・BBCニュースWeb版日本語)。ノーベル委員会は「パリ協定復帰を急げ」とバイデン氏にメッセージを贈ったのだろう。

   話は変わるが、先の菅政権はことし4月に日本が2030年度の温室効果ガスの削減目標を46%減(2013年比)に引き上げて設定し、「2050年カーボンニュートラル宣言」に向けた青写真を示した。さらにG7首脳会議(ことし6月・イギリス)で途上国などで建設する石炭火力発電への新たな公的支援の廃止に合意した。これらの削減目標と対策は前出のCOP26で国連に提出することになる。日本は温室効果ガス削減に向けて舵を切った。

   これも実にタイムリーだった。これまでの温暖化対策が経済成長の制約やコストと考える時代に終わりを告げ、経済成長の新たなチャンスとらえる時代の到来だ。日本には脱炭素化のさまざまな先端技術(水素と二酸化炭素から天然ガスの主成分メタンを合成するメタネーション技術など)がある。日本が本気になって温暖化対策のイニシアティブを握る好機でもある。環境関連に投下される「ESG投資」は世界でさらに強まるだろう。日本経済に「真鍋効果」がもたらされるのではないか。

⇒6日(水)午前・金沢の天気       あめ後くもり

☆新総理初会見を視聴して記した「Good job !」メモ

☆新総理初会見を視聴して記した「Good job !」メモ

   岸田総理の就任後初めての記者会見をきのう4日午後9時からNHKが中継していたのでメモを取りながら視聴していた=写真=。そのメモを見ながら、会見内容で再度チェックする。「早すぎる」と書いたメモが、今月14日に衆院を解散し、19日公示、31日投開票との選挙日程だった。それまでメディア各社が26日公示、11月7日投開票などと予想を報じていたので、「前倒し」は意外だった。それにしても、内閣発足10日で衆院解散に突入する、とは。

   4人が立候補した自民党総裁選(9月17日告示・29日開票)はNHKや民放各社がこぞって討論会の模様を報道するなど、「メディアジャック」現象ともいえるほどに注目された。直近の政党支持率では、日経新聞の世論調査で自民47%、立憲民主8%(9月23-25日調査)、テレビ朝日の調査で自民が49%、立憲民主9%(9月18、19日調査)と自民が支持率を伸ばしている。「鉄は熱いうちに打て」との選挙ポリシーなのだろうか。

   「新たな資本主義って何だ」とメモをしたのが、経済政策での「成長と分配の好循環」の説明だった。岸田氏は総裁選の論戦で「富む者と富まざる者の格差が生まれ、コロナ禍でさらに広がった。これからは富める一部の人間だけでなく、広く多くの人の所得を引き上げること」などと述べていた。中間層の所得の引き上げを通じて、GDPの半分以上を占める個人消費の活性化につなげる経済政策との意味で受け止めていたが、そのような単純明快な話ではないらしい。新たな大臣ポストとして「新しい資本主義担当」を置き、ヤル気だ。富の再配分を目指した、たとえば富裕税の創設などが頭の中にあるのだろうか。

   関連メモで「中国の共同富裕?」とも書いている。中国の習近平総書記が所得格差の是正と称して、不動産会社やIT企業、高所得の俳優などの富裕層に警告を発し、不動産大手「中国恒大集団」などはデフォルト寸前に追いやられている。岸田氏の「成長と分配の好循環」が中国の「共同富裕」のようにならないことを願う。

   「Good job !」とメモ書きしているが、人工知能など先端科学技術の研究に大規模な投資を行うとした「科学技術立国の実現」。そして、地方からデジタルの実装を進め、都市との差を縮める「デジタル田園都市国家構想」だった。本来ならばおそらく地方都市への移住政策だろう。それをあえて移住とは言わず、「デジタル田園都市国家構想」と称したところが見事、「Good job !」だ。

   これは個人的な願いだが、日本のデジタル化を本気で推進するのであれば、選挙のデジタル投票とデジタル法定通貨をぜひ実現してほしいものだ。

⇒5日(火)午前・金沢の天気    はれ

★「里山」が国際用語「SATOYAMA」になる言葉の価値

★「里山」が国際用語「SATOYAMA」になる言葉の価値

    このブログでもよく使う「里山」という言葉はすでに国際用語になっていると周囲で話すと、驚く人が多い。「なんで里山が」「どういうこと」と。その事例として出すのが、国連大学サステイナビリティ高等研究所が事務局となっている、「SATOYAMA イニシアティブ国際パートナーシップ」(IPSI)という国際組織だ。2010年10月に名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(CBD/COP10)で採択された「Satoyama Initiative」の推進母体となっている。

   SATOYAMAイニシアティブは生態系を守りながら農林業や漁業の営みを続ける「持続可能な利用」という概念であり、生物多様性の戦略目標とする国際的な取り組み。SATOYAMAイニシアティブがCOP10で採択されたのには伏線があった。2008年5月にCOP9がドイツのボンで開催され、日本の環境省と国連大学が主催したサイドイベント「日本の里山・里海における生物多様性」で、当時の黒田大三郎環境省審議官が「SATOYAMAイニシアティブ」を提唱した。

    これに、CBD事務局長のアフメド・ジョグラフ氏が共感し、「成長を続け現代的な社会を形成した日本は文化や伝統、そして自然との関係を保ってきた。そのコンセプトは世界で有効であり、日本の経験に大きな期待が集まっている」と支援を表明した。そのジョグラフ氏は4ヵ月後、名古屋市で開催された第16回アジア太平洋環境会議(エコアジア)出席の後、能登半島を訪れ、輪島市の千枚田や地域の人たちの森林保全の取り組み、休耕田を活用したビオトープでの環境教育など日本のSATOYAMAの現場をつぶさに見学した=写真・上=。

   じつはそれ以前にもSATOYAMAは海外で紹介されていた。イギリスBBCがNHKのドキュメンタリー番組『映像詩 里山』を動物学者で番組プロデューサーのD・アッテンボロー氏のナレーションで吹き替えて、番組『SATOYAMA』として放送し、これが欧米で反響を呼んだ。1999年のことだ。こうしたいくつかの伏線があって、COP10で「SATOYAMAイニシアティブ」が採択された。COP10の参加者は「SATOYAMAエクスカーション」公認コースとなった能登半島を訪れている。

    このSATOYAMAをさらに国際用語へと押し上げたのは能登と佐渡だった。国連食糧農業機関(FAO、本部ローマ)が認定する世界農業遺産(GIAHS)への2011年申請に、能登の8市町は共同して「Noto’s Satoyama and Satoumi(能登の里山里海)」を、そして、佐渡市は「SADO’s Satoyama in harmony with the Japanese crested ibis(トキと共生する佐渡の里山)」を提出した。双方とも申請タイトルに「Satoyama」を冠した。2011年6月、北京でGIAHS国際フォーラムが開催され、日本で初めてこの2件がGIAHSに認定された=写真・下=。「Satoyama Initiative」の採択と連動する相乗効果でもある。

   自身はCOP9、そしてCOP10、北京でのGIAHS国際フォーラムに実際に参加して、「Satoyama」「SATOYAMA」の言葉が持つ深みや重み、可能性というものを感じてきた。生物多様性や世界農業遺産の国際評価のキーワードでもある。そして、SDGsとの親和性も高い。COP10から11年、GIAHS国際フォーラムから10年、「里山」の言葉の価値をふと振り返ってみた。

⇒4日(月)午後・金沢の天気     はれ

☆民放のネット同時配信 日テレが先駆け

☆民放のネット同時配信 日テレが先駆け

   いよいよ民放で放送とネットの同時配信が始まった。きのう2日午後7時から、民放動画配信サービス「TⅤer」で「日テレ系ライブ」を視聴した。番組「I LOVE みんなのどうぶつ園」が民放の歴史で記念すべき同時配信スタート番組となった=写真=。日本テレビは民放初のテレビ局として1953年8月28日に開局。2003年12月1日にはそれまではアナログ放送から地上デジタル放送をスタートさせ、そして2021年10月2日に同時配信の開始と、まさに日本の放送史を刻んでいる。

   放送とネットの同時配信では、NHKが先行して2020年4月1日から「NHK+(プラス)」で始めているので、民放初の日テレの新サービスはNHKに比べれば1年半の遅れでもある。ただ、民放でここまでこぎつけるには相当のハードルがあったことは想像に難くない。技術面もさることながら、日本独特の「放送権」の有り方だ。ローカル局には放送法で「県域」というものがあり、放送免許は基本的に県単位で1波、あるいは数県で1波が割り与えられている。1波とは、東京キー局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジテレビ、テレビ東京)の系列ローカル局のこと。パソコンやスマホ、タブレットで東京キー局の番組を視聴できれば、ローカル局は視聴されなくなるかもしれないという不安がローカル局にはある。テレビ業界における「ポツンと一軒家」化だ。

   また、民放ではバンセンと称される番組宣伝や「ACジャパン」が目立つ。電通がまとめた「2020年 日本の広告費」によると、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でイベントや広告販促キャンペーンの延期や中止が相次ぎ、2020年は通年で6兆1594億円(前年比88.8%)となり、東日本大震災のあった2011年以来、9年ぶりのマイナス成長。リーマン・ショックの影響を受けた2009年(同88.5%)に次ぐ下げ幅となった。内訳を見ると、インターネット広告費は2兆2290億円(前年比105%)で増加してトップ、テレビ広告費は1兆6559億円(同89%)と減り、ネットとの格差が年々拡大している。

   このようなテレビ業界の逆風の中で、日テレがプライムタイムの番組を中心に、放送とネットのリアルタイム配信に踏み切った。昨年10月から3ヵ月の時間をかけて347番組で同時配信の実証実験を行っていた。パソコンやスマホなど対応デバイスでどう映り方が異なるのか、タイムラグ(時間差)、CMの入れ替えなど用意周到に臨んだのだろう。他のキー局も年内から年度内にかけて順次移行する。同時配信によって、民放は新たなビジネスモデルをどう構築していくのか注目したい。

⇒3日(日)夜・金沢の天気     はれ

★NYでの新婚生活は明るく自由で平和なのか

★NYでの新婚生活は明るく自由で平和なのか

   秋篠宮家の眞子さまの結婚問題が大きく動いた。NHKニュースWeb版(2日付)によると、宮内庁はきのう1日に記者会見を行い、眞子さまは今月26日に婚姻届を提出し、その後、小室圭氏とともに記者会見に臨む予定と発表した。この日は大安にあたる。また、結婚にあたって、女性皇族の結婚に伴う儀式をすべて行わないことや、皇室を離れる際に支給される「一時金」の受け取りを辞退されることなども明らかにした。眞子さまは、結婚に当たり、両陛下や上皇ご夫妻を訪ねてお別れのあいさつをされる。

   さらに、宮内庁の会見で明らかにされたことは、「眞子さまは、ご自身やご家族、それに小室さんとその家族への誹謗中傷と感じられる出来事が続いたことで、『複雑性PTSD』(=複雑性心的外傷後ストレス障害)と診断される状態になられている」(2日付・NHKニュースWeb版)。宮内庁の会見には、医師も同席し、「結婚について周囲が温かく見守ることで回復が進むものと考えられる」などと述べた。

   この会見内容を読んでの率直な感想だ。お二人の婚姻手続きから記者会見の設定まで、宮内庁は一応すべての段取りを終え、ようやく発表にこぎつけた。きのうは金曜日だったので、記者発表の日程としてはぎりぎりセーフだろう。そして、「PTSD」を公表して、周囲が温かく見守ってほしいと医師に語らせた。この周囲とは「国民」のことと解釈する。さらに、宮内庁はPTSDの原因を誹謗中傷によるものとしている。SNSなどの誹謗中傷による侮辱罪を厳罰化する法整備が進められているので、宮内庁は「黙れ、訴えるぞ」と言っているようにも聞こえる。

   結婚後にニューヨークで暮らすことも報じられているが、アメリカのメディアは今回の結婚をどう報道しているのか。ニューヨークに本社がある「The Wall Street Journal」Web版(1日付)は「Japan’s Princess Mako to Marry as Palace Blames Media for Her PTSD」と、PTSDをあえて見出しに入れて報じている=写真=。同じくニューヨークに本社がある「Bloomberg」Web版(同)は「Japanese Princess Giving Up $1.4 Million to Wed Fordham Grad」と140万㌦の持参金をあきらめたとの見出しで報道している。その理由として、弁護士志望の小室氏の家族の背景に関する厳しい世論などに配慮したものと報じている。アメリカメディアは、基本的人権の問題であるので他人が干渉すべきではないとの論調が主流だ。

   一つ案じることがある。それは、「Japan’s Princess」へのアメリカの国民感情だ。異なる民族の集合体でもあり、実に多様で複雑だ。中には、第二次世界大戦と天皇について語り、日本はいまだに十分な謝罪も償いもしていないと声高に主張する東南アジア系市民もいるだろう。韓国系市民団体などは慰安婦像の設置や、ハーバード大学教授の学術論文を批判、日本製品の不買運動など活発な運動を展開している。あるいは逆に、「Japan’s Princess」を政治的に活用しようという動きも出て来るかもしれない。これまでよく引き合いに出されるイギリスのヘンリー王子とメーガン夫人の王室離脱騒動とは違った次元だ。自由で明るい、平和な暮らしだけがニューヨークにあるわけではない。

⇒2日(土)午前・金沢の天気    はれ時々くもり

☆「ブログ開設6000日」の夢

☆「ブログ開設6000日」の夢

   きょうログインすると「ブログ開設から6000日」の表示が出ている。アップした本数は2143になる。初めてのブログは2005年4月28日。タイトル「★50歳エイ・ヤッと出直し」がスタートだった。その年の1月に民放テレビ局を辞して、4月から金沢大学の「地域連携コーディネーター」という仕事に就いた。まったくの異業種、エイ・ヤッだった。そのよう気持ちでブログを始めた。働く環境がまったく違ったので、周囲が実に新鮮に映った。身の回りでの出来事や動き、目にしたこと、聞いたことを自分なりに解説してコラム風な論調で発信してきた。「マイメディア」を得た感覚だった。

   ブログを書く際には手元に新聞用字用語集『記者ハンドブック』(共同通信社)を置いている=写真=。マイメディアとはいえ、誤字や脱字、そして表現方法には気を遣う。たとえば、このブログでは「眞子さま」と表現し、「眞子様」とはしない。ハンドブックの皇室用語のマニュアルに沿ったものだ。「皇后や皇太子など皇族は『さま』を使う。夫婦や家族単位で主語になる際は敬称を省いて『ご夫妻』『ご一家』などとする」と。このハンドブックを始めて手にしたのは新聞記者になった1978年4月だった。それからずっと新版を取り寄せながら43年間使っている。

     きょう10月1日はもう一つ思い出に刻んでいる。かつて務めていた金沢の民放テレビ局、北陸朝日放送が開局したのが1991年10月1日、きょうで開局30周年となる。開局と同時に新聞記者からテレビ報道のデスクに転職し、映像の世界を知った。朝日系は高校野球の中継番組が売りの一つで、甲子園伝説をつくった当時星稜高校の松井秀喜選手のことは印象深く記憶に残っている。1992年8月16日、2回戦の明徳義塾高(高知)戦で明徳側のピッチャーが4番打者の松井を5打席連続で敬遠した。実況アナの「勝負はしません」の声はいまでも耳に残る。

   視聴者の共感や感動を得る表現方法とは何か。テレビを通じて「マスメディア」の映像表現というものを学んだ。このテレビ的なモノの見方や文字表現はその後のブログに役立った。新聞記者だったら、おそらくブログを始めることはなかったろう。

   ブログを毎日書いてきたわけではない。冒頭で述べたようにアップしたのは2143本。どちらかといえばゆっくりペースだ。日々のニュースや身の回りの出来事に目を向け、「これはブログのネタになるかもしれない」などと常に思いを巡らしている。では、「ブログ開設から10000日」まで果たして続けられるか。年齢でいえば78歳。問題は記憶と感性を維持し続けることができるかどうかだ。

   新境地はAIの活用だと考えている。自身のデータ(日記、検診や診療記録など)、講演や講義の原稿、著作物、撮った写真、読んだ本のリスト、名刺、これまでのブログなどをすべてAIに読み込ませ、私の思考や感情、心理と論理、知識、対人関係を身に着けた「分身」になってもらい、ブログを日々書かせる。ただし、テ-マ設定は自身が決め、AIに1000字程度で書かせる。自身の記憶から失せたデータや経験知をAIによみがえらせて文章化させ、それを手直して完成する。「ブログ開設から6000日」の夢物語ではある。

⇒1日(金)午前・金沢の天気     あめ時々くもり