2021年 8月 の投稿一覧

☆オリンピック打ち上げ宴会 テレ朝が問われること

☆オリンピック打ち上げ宴会 テレ朝が問われること

         オリンピックは強かった。ビデオリサーチ社Webサイト(10日付)の「オリンピック関連番組 視聴率・視聴人数」(関東地区)によると、7月23日の開会式は56.4%(NHK総合)、今月8日の閉会式は46.7%(同)だった。そして競技では、侍ジャパンが優勝した今月7日の野球、対アメリカ戦は37.0%(同)だった。はやり東京オリピック番組は視聴率を稼ぐのだと実感した。

   その視聴率と向き合い、オリンピックの番組制作に苦心したのがテレビ局の制作スタッフであることは言うまでもない。おそらく、オリンピックが終了し、一気に解放感が包まれたのだろう。気が緩んだようだ。テレビ朝日は10日付の公式ホームページで「当社社員の緊急搬送事案について」と題して、プレスリリースを掲載している。

   「今月8日夜、東京オリンピックの当社番組担当スタッフ 10 名が緊急事態宣言下における東京都の要請及び社内ルールを無視して打ち上げ名目の飲酒を伴う宴席を飲食店で開き、翌 9 日未明退店する際に当社スポーツ局社員1 名が誤って店の外に転落し、負傷して緊急搬送されました。当該社員は現在入院中で、事案の詳細は確認中です。」

   この事案はメディア各社もニュースとして大々的に報じている。NHKニュースWeb版(10日付)によると、東京オリンピック関連の番組を担当したテレビ朝日の社員6人と外部スタッフ4人の合わせて10人は、閉会式が行われた8月8日の夜から翌日の明け方にかけて、東京 渋谷区の飲食店で打ち上げの名目で飲酒をともなう宴会を開いていた。10人のうち社員1人が途中で帰ろうとした際、飲食店が入るビルの非常階段から誤って路上に転落して足の骨を折る大けがをし、救急搬送された。

   では、テレビ朝日のオリンピック番組を担当スタッフはどのような番組づくりをしていたのか。オリンピック映像の基本はOBS(Open Broadcaster Software)という国際組織が撮影を担当し、放映権を持つ各国の放送局へフィードバックしていた。つまり、映像は基本的に配信されていた。それを各放送局は独自の番組として報道をするためにアナウンサーやキャスターのほかにコメンテーターをスタジオに配置。また、試合の展開をある程度予想しながら過去の映像や関係者のインタビィーなどを行い番組を構成する役割を担っていた。多局との違いを出しながら、情報を抜かれないように、少なくとも五輪期間中の17日間は相当の緊張感を強いられていたことは想像に難くない。

   しかし、このような事態に陥った場合、テレビ朝日には当然容赦ない批判が浴びせられる。これまで同類の事案があった厚労省に向けて、テレビ朝日の「報道ステーション」や「羽鳥慎一モーニングショー」といった番組では痛烈な批判を展開していた。ところが逆の立場に追い込まれた。今回の社員の不祥事では、テレビ朝日の社長がまず釈明の会見を行い経緯の説明をすることが先決だろう。

⇒10日(火)夜・金沢の天気  くもり

★オリンピックを妙に盛り上げた選手たち

★オリンピックを妙に盛り上げた選手たち

          きのう閉会した東京オリンピックのことを海外メディアはどのように評価しているのだろうか。イギリスBBCのスポーツ編集長は「Tokyo Olympics : Sporting drama amid a state of emergency but how will Games be remembered?」との見出しで記事を書いている。印象の深いのは最後の下りだ。「パンデミックという事態であっても、オリンピックを否定することはできなかった。そのことに安堵した人も、失望した人もいたはずだ。そして、東京オリンピックの開催が正しかったのかどうかは、今後ずっと議論されていくだろう。しかし、不安に満ちた時代でも、スポーツ選手はこれまでと同じように、その元気な姿で我々を励ましてくれる存在であり続けた。それだけは確かなことではないだろうか」

   17日間、自身がテレビでオリンピック競技を視聴して、印象に残っているのは、番組での解説やコメントなどスタジオのバックで流れていた、桑田佳祐の『波乗りジョニー』だった。もともと、テレビCMに流れる、日本の夏を象徴する曲だった。夏のテーマソングがそのままオリンピックのテーマソングのようになり、盛り上げてくれた。

   逆説的な意味でオリンピックを盛り上げてくれたのは韓国選手団だったのかもしれない。選手団は選手村入りすると、さっそくにバルコニーに掲げた横断幕だった。豊臣秀吉の朝鮮出兵に抗した李舜臣将軍の言葉にちなんだと連想させる、「臣にはまだ5000万国民の応援と支持が残っています」とハングルで書かれていた。IOCは政治的宣伝と勧告し、横断幕は7月17日に撤去された。

   さらに韓国選手団は、選手村の食材は放射能で汚染されている可能性があるとし、独自に給食センターを設置して選手らに配給した。選手村の食材の一部が福島県から調達されたものであったことから、「放射能フリー弁当」を自国で調達すると、「復興五輪」のネガティブキャンペーンを展開した。

   世界から批判されたのは、7月23日の開会式を生中継した韓国のテレビ局だった。MBCは、ハイチの選手団が入場した際のテロップで「大統領の暗殺によって政局は霧の中」と、マーシャル諸島を選手団を紹介するテロップには「アメリカのかつての核実験場」と、ウクライナの選手が入場する際にはチェルノブイリ原発事故の画像が使われた。不適切放送として批判を浴びた(7月26日付・CNNニュースWeb版日本語)。

   メダル以外に大会をいろいろと盛り上げてくれた選手もいる。男子テニスのダニール・メドベージェフ選手(ロシア五輪委員会)は7月28日、東京の暑さの中で「オリンピックの試合中に暑さで死亡した場合、いったい誰が責任を取るのか」と審判に問いただした。世界2位ランクの選手のひと言で、国際テニス連盟は暑さ対策として、29日の第1試合の開始時間を当初予定していた午前11時からを午後3時に変更した。その29日の準々決勝で、メドベージェフ選手はスペインの選手にストレ-ト負けを喫した。ラケットを破壊し、無観客のスタンドに放り投げた(7月29日付・AFP通信Web版日本語)。何かと話題の多い選手だった。

   オリンピックを多様に盛り上げてくれた人たちだった。「そして笑って もう一度 せつない胸に波音が打ちよせる」。2024年のパリオリンピックもぜひ盛り上がってほしい。

(※写真は8日の東京オリンピック閉会式で映し出された2024年のパリ五輪の映像=NHKテレビ)

⇒9日(振休)午後・金沢の天気     はれ後くもり

☆オリンピックにARIGATO、あすから「五輪ロス」が

☆オリンピックにARIGATO、あすから「五輪ロス」が

           最後はビジョンに「ARIGATO」の文字が映し出された=写真・上=。この東京の暑い最中に選手たちはよく耐えた。「ARIGATO、よく頑張って、スポーツの醍醐味で見せてくれた」と国民の一人として思うことだ。新型コロナウイルスのパンデミックが広がる中での東京オリンピックの閉会式は静かに幕を下ろした。

   午後8時からテレビで閉会式の模様を視聴していた。注目していたことが一つあった。それは、広島市の松井市長がIOCのバッハ会長に書簡を送り、(原爆が投下された8月6日午前8時15分に)選手村などで黙とうを呼びかけてほしいと求めていた。これに対し、今月2日午後、IOCから、黙とうを呼びかけるなどの対応はとらないといった返答が広島市にあった。その理由についてIOCは「歴史の痛ましい出来事や様々な理由で亡くなった人たちに思いをはせるプログラムを8日の閉会式の中に盛り込んでおり、広島市のみなさんの思いもこの場で共有したい」と説明していた(8月2日付・NHKニュースWeb版)。それは閉会式でどのようなプログラムなのか。

   このことかと思ったのが、新型コロナウイルスで亡くなった世界の死者への葬送のパフォーマンスと日本各地の盆踊りだった。アイヌ古式踊や、沖縄県の琉球エイサー、岐阜県の郡上踊りなどの映像が新国立競技場のスクリーンで流された。確かに、旧盆に全国各地で催される盆踊りは亡くなった人々への供養や弔いの踊りである。しかし、普通に考えても、「ヒロシマの祈り」とは意義付けが異なる。

   そこで、今度はバッハ氏の閉会宣言に「祈り」の言葉が込められるのか、7分間のスピーチを最後まで聞いていた。「パンデミック以来初めて、全世界が一つになった。何十億の人が心を一つにし、喜びと感動の瞬間を共有した。これが希望をもたらし、未来を信じる気持ちを与えてくれた」との言葉には自身も心が動いたが、「祈り」「ヒロシマ」についてのワードは宣言になかった。結論、広島市長への回答は「葬送のパフォーマンスと盆踊りプログラム」だった。

   東京オリンピックの17日間はテレビを堪能した。スケートボード女子で13歳の西矢椛選手の日本史上最年少の金メダリストに=写真・下=、卓球の混合ダブルスで水谷隼・伊藤美誠選手が「チャイナの壁」を突破して日本の卓球界に初の金メダル、地元びいきかもしれないが、レスリング女子で川井梨沙子・友香子の姉妹選手がそろって金メダルを獲得した。そして、野球の日本とアメリカの決勝戦。この17日間は十分に楽しませてもらった。

   ほとんどの競技場が無観客での開催だったので、魂の抜けたようなひっそりとした大会ではないかと想像してもいたが、テレビの映像技術が臨場感を湧き立たせ、そして世界の選手たちがオリンピックに魂を吹き込んだ。あすからコロナ禍のニュースばかりに日々に戻り、「五輪ロス」が始まるかもしれない。

⇒8日(日)夜・金沢の天気       くもり

★オリンピック野球決勝 日米対戦の報道を裏読み

★オリンピック野球決勝 日米対戦の報道を裏読み

          東京オリンピックもきょうを入れてあと2日。ハイラトシーンをリアルで視聴したいと思い、午後7時から横浜スタジアムでの野球、日本とアメリカの決勝戦を放送するテレビ前に陣取った。予選リーグから4連勝の日本と、敗者復活戦から勝ち上がったアメリカだったが、正直、勝敗は五分五分と思っていた。

         3回、1アウト後に村上宗隆選手がソロホームランを打って先制。そして、8回は1アウト二塁で吉田正尚選手がセンター前にヒット、相手のエラーも重なって追加点。投手陣は5人を繰り出し、先発した森下暢仁選手は5回をヒット3本無失点と好投し、6回は千賀滉大選手、7回は伊藤大海選手、8回途中からは岩崎優選手が登板して、得点を与えなかった。9回は栗林良吏選手が2アウトからランナーを出したが、後続を抑えて2-0で勝った。この瞬間「強い、侍ジャパン」と思わず叫んだ。

   ところで、アメリカはこの試合をどう報じているのか気になった。アメリカでの放送権を独占しているNBCテレビのニュースWeb版は「Team USA shut out by Japan, settles for baseball silver as hosts win Olympic gold」との皮肉を込めた見出しで伝えている=写真・上=。ホスト国の日本チームはプロ野球球団から構成するオールスターメンバーだったが、アメリカチームは大リーグ(MLB)がシーズンを中断しなかったため、スター選手は出場しておらず、マイナーリーグやフリーエージェントの選手たちで構成されていたと報じている。

  また、CNNニュースWeb版は「Japan beats US to win first-ever gold medal in baseball」との見出しで、アメリカは銀メダル、これで4度目のオリンピック野球メダルを獲得した、と淡々と伝えている=写真・下=。試合の経過は記事にしていない。

   このNBCとCNNの違いはなんだろう。IOCの収入は放送権料が73%、スポンサー料が18%だ。その放送権料の50%以上をNBCが払っている。韓国・平昌冬季大会(2018年)と東京大会の合算した数字だが、NBCの供出額は21億9000万㌦だ。ちなみに、開催国の日本はNHKと民放がコンソ-シアムを組んで5億9400万㌦だ。五輪開催前の6月の投資家会議でNBCの最高経営責任者(CEO)が「the pandemic-tainted Tokyo Games “could be our most profitable Olympics in the history of the company.“」(パンデミック下での東京大会は「当社の歴史の中で最も収益性の高いオリンピックになるかもしれない」)と述べて、モラルハザードではないかと問題視されたことがある。

   NBCテレビのスポンサーにはさまざまポリシーを持った企業がある。このようなスポンサーをバックにしていると、あえて「Team USA shut out by Japan」という表現を使わざるを得ないかもしれない。8月3日付のブログでも書いたように、広島市長から6日の広島の原爆投下の時刻に選手たちに黙とうを捧げてほしいとの要請をIOCを受け入れなかったのも、NBCが裏で却下するように動いたではないかと個人的に憶測している。アメリカには原爆投下で先の戦争を終わらせたという意識が根強くあるのだ。

(※NBCは写真でアメリカチームの様子を、CNNは日本チームの胴上げの模様を掲載)

⇒7日(土)夜・金沢の天気      はれ時々くもり

☆姉妹でレスリング金メダル 東京五輪の新たなレジェンド

☆姉妹でレスリング金メダル 東京五輪の新たなレジェンド

   連日、地元紙が派手に報じている。レスリング女子57㌔級の決勝で石川県津幡町出身の川井梨沙子選手が5日、ベラルーシの選手を下し、前回のリオデジャネイロ大会に続いて金メダルを獲得した。川井選手の妹・友香子選手も前日4日に62㌔級で金メダルだったので、姉妹で「金」は日本勢初の快挙と讃えている。地元紙の北國新聞は連日の特別紙面で「最強の姉 約束の金lと、本紙では「梨沙子連覇 川井姉妹そろって金」、北陸中日新聞は「川井 姉妹で金 梨沙子連覇」とそれぞれ一面の通し見出しだ=写真=。

   昨夜は民放テレビで観戦していた。横綱相撲という感じだった。ベラルーシの選手を横に投げて動かし、後ろに回って抱える。場外際の投げで2点を先制。素早いタックルなどで場外に押し出してさらに1点。腕を相手の胴体に入れて一気に投げて2点。5‐0で下した。試合後にマットの外に出て、日の丸を背負って初めて笑みを浮かべていた。観客席にいた妹・友香子選手にも両手を上げていた。もし、観客席に人が大勢の人がいたら、「梨沙子」コールがわき起こっていたに違いない。

   インタビューで、梨沙子選手は「最後の1秒まで絶対に相手から目を逸らさないって決めていた。友香子にきのうあんな試合を見せられたらやるしかないって思っていたのでよかった」と。東京オリンピックの日本勢で、姉妹による金メダルは初めてなので、まさに日本のオリンピックの歴史に新たなレジェンドをつくったのではないだろうか。

   話はそれる。金メダルの「番外レジェンド」もある。NHKニュースWeb版(8月5日付)によると、名古屋市の河村市長は4日、ソフトボール日本代表チームのメンバーで、名古屋市出身の後藤希友投手から金メダル獲得の報告を受け、後藤投手からメダルを首にかけてもらった際、突然、マスクを外してメダルをかんだ。これを受け、市の広聴課には、河村市長の行為を批判する電話やメールなどが5日午後5時半までに4000件余り寄せられた。5日午前、後藤投手の所属先のトヨタ自動車から豊田章男社長の名前で、河村市長宛ての抗議文が提出された。

   河村氏の気取らずモノを言い行動するキャラは超絶だ。それにしても、金メダルに突然かぶりつくとは、「とんでもにゃあ」。

⇒6日(金)朝・金沢の天気     はれ

★メダルラッシュに沸く そしてあの論調はどこへ

★メダルラッシュに沸く そしてあの論調はどこへ

    金メダルのラッシュだ。きのう夜、民放テレビでレスリング女子フリースタイル62㌔級の決勝を見ていた。日本の川井友香子選手がキルギスの選手を4‐3で下し、金メダルを獲得した。川井選手の姉の梨沙子選手も前回のリオデジャネイロ大会の63㌔級で「金」を獲得していて、きょう夜は57㌔級で決勝戦に臨む。姉妹で金メダリストなのだ。そして姉妹は、石川県津幡町出身ということもあって、当地ではかなりテレビの視聴率は高かったのではないだろうか。

   オリンピックの地ダネだけに、地元紙の朝刊は派手に報じている=写真=。「友香子 金 井川姉妹でメダル」(8月4日付・北國新聞)、「川井友『金』 姉・梨沙子連覇に王手」(同・北陸中日新聞)とどれも一面トップだ。北國は両面見開きの裏表で「2人の夢 たどり着いた妹」と特別紙面を組んでいる。。

   話はそれるが、1ヵ月前、オリンピックの開催については反対意見が盛り上がっていた。東京五輪の中止を求めるオンライン署名サイト「Change.org」の署名は45万筆を超えていた。署名の発信者は弁護士の宇都宮健児氏で、相手はIOCのバッハ会長らだった。そして、もっとも強烈なメッセ-ジを発したのはトヨタだろう。7月19日、トヨタは東京オリンピックの大口スポンサーでもあるが、新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない中での開催の是非について世論が割れていることを理由に、オリンピック関連のテレビCMをいっさい見送ると発表した。CMはすでに完成していて、流すだけになっていた。確かに五輪番組をテレビを見ていてもトヨタのCMは見ない。

   東京オリンピックの開催に疑念を呈していたテレビメディアも新聞メディアもまるで「手のひら返し」をしたかのように、連日オリンピックの競技を報じている。NHKや民放のテレビのアナウンサーの大声は特に響く。

   いま思えば、コロナ禍でのオリンピックは是か非かという単純な論調、あるいは読者や視聴者に分かりやすかった。ただ、どのような工夫を凝らせばオリンピックの開催は可能かという論調はあったのかもしれないが、印象に残るメディアの論調はない。トヨタのCM見送りは当時の世論を見極めた上での判断だったのだろう。ただ、いまどう思っているのだろうか。

⇒5日(木)午後・金沢の天気     くもり一時あめ

☆緊急時の病床確保、求められる自治体の臨機応変さ

☆緊急時の病床確保、求められる自治体の臨機応変さ

   きょう午前、ワクチン接種を2回受けた病院へ抗体検査に出かけた。2回目接種から2週間余り経ち、病院に申し込んでいた。これまで副反応もなかったことから、「本当に抗体ができているのか」「効果を数値で確かめたい」という思いが募って申し込んだ次第。ワクチン接種は国の政策で無料だったが、この抗体検査は保険適用外で税込み6000円だ。

   病院に到着して受付に行き、採血して終わり。結果の書面は1週間後に自宅に郵送されると看護師から告げられた。時間にして10分足らずだった。説明書によると、ワクチン接種でヒトの細胞内にスパイクタンパク質(ウイルスのトゲトゲの部分)をつくる。このトゲトゲの構造に人体の免疫系が強く反応することで、ウイルスの感染に対する抵抗力、つまり抗体が獲得できる。抗体検査は2つのことを確認する。一つはワクチン接種前の免疫状態、つまり、過去に感染があったかどうかの確認。もう一つはワクチン接種後の免疫応答、これは接種により抗体がついたのかどうかの確認検査となる。その効果が数値で確かめられるので、結果を心待ちにしている。

   イスラエルでは8月からファイザー社製のワクチンの5ヵ月経過を見計らって3回目の接種が行われている。病院の医師と相談し上記の数値と照らし合わせて、自身の3回目接種のタイミングを決めたいと思っている。

   ところで、きのう政府が方針転換した「重症以外は自宅療養」が問題となっている=写真=。病床のひっ迫に備えて、自宅療養を基本とし、酸素吸入も自宅でという方針だ。自身が感染したと想定すると、自宅で酸素吸入をするより、病院の廊下でもいいので、医者や看護師など医療関係者が近くにいてくれた方が安心感がある。

   日本の場合、医療機関の病床の数が入院者数となる。コロナ禍で緊急事態が起きれば、病床ベッドを増やすしかない。たとえば、廊下にベッドを置いてはどうだろうか。あるいは、自治体とタイアップして、病院のごく近くに公共施設があれば、そこに臨時にベッドを置いてはどうだろうか。さらに、行政が交渉してホテル一棟を借り切り、病院に提供し、そこに医師が回診にくるというシステムでもよいのではないか。まるで野戦病院のイメージだが、必要なのは臨機応変な対応だと考える。  

       菅総理は入院制限方針に与党からも撤回要求が出ていることについて、「撤回しない」と記者団に述べた(8月4日付・共同通信Web版)。オリンピックがあり、生徒や学生たちが夏休み、そして、旧盆も近づき、いわゆる「人流」の抑制が効かくなりつつある。こうなれば、求められるのは政府の対応ではない。むしろ、都道府県を単位とする首長の臨機応変な対応ではないだろうか。

⇒4日(水)夜・金沢の天気      はれ

★「ヒロマシの祈り」とオリンピック憲章

★「ヒロマシの祈り」とオリンピック憲章

   前回のブログの続き。8月6日はオリンピック期間中であるが、1945年に広島に原爆が投下された日でもある。3日後の9日は長崎にも投下された。6日と9日は日本では平和の祈り日であると同時に、核兵器全面禁止と廃絶を求める運動が活発になる日でもある。

   NHKニュースWeb版(8月2日付)によると、広島市の松井市長はIOCのバッハ会長に書簡を送り、(原爆が投下された8月6日午前8時15分に)選手村などで黙とうを呼びかけてほしいと求めていた。これに対し、2日午後、IOCから、黙とうを呼びかけるなどの対応はとらないといった返答が広島市にあった。その理由についてIOCは「歴史の痛ましい出来事や様々な理由で亡くなった人たちに思いをはせるプログラムを8日の閉会式の中に盛り込んでおり、広島市のみなさんの思いもこの場で共有したい」と説明している。

   バッハ会長は7月16日午後、広島市の平和記念公園を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花している。では、なぜ、「6日の黙とう」を避けたのか。以下憶測である。オリンピック憲章に違反すると、IOCは判断したのだろう。憲章の50条2項ではこう記されている。「No kind of demonstration or political, religious or racial propaganda is permitted in any Olympic sites, venues or other areas.」(オリンピックの用地、競技会場、またはその他の区域では、いかなる種類のデモンストレーションも、 あるいは政治的、 宗教的、 人種的プロパガンダも許可されない)。この「いかなる種類のデモンストレーション」に相当する行為としてみなされるとの判断ではないだろうか。

   オリンピックにおける黙とうが原爆投下を否定するデモンストレーションとみなされるとの解釈だ。原爆投下に関する歴史認識には、日本とアメリカでいまだに隔たりがある。アメリカでは「原爆投下によって戦争を終えることができた」と正当化する意識がいまもある。アメリカの世論調査機関「ピュー・リサーチセンター」の調査(2015年)では、65歳以上の70%が「正当だった」と答え、18歳から29歳の若者も「正当だった」との答えは47%だった(2020年8月21日付・ロイター通信Web版日本語)。2016年5月28日、当時のアメリカ大統領のオバマ氏は歴代大統領として初めて原爆死没者慰霊碑を訪れて献花した。ただ、アメリカ国内の反対世論を意識して、「謝罪はしない」と事前に公言していた。

   また、原爆投下についての中国側の論調もはっきりしている。「長年にわたり、日本は第二次世界大戦、特に原子爆弾の被害者であると自らを位置づけてきたが、原子爆弾を投下されることになった歴史的背景について触れることはほとんどなかった」(2020年8月7日付・人民網日本語)

   上記のようなアメリカや中国の論調があるなかで、IOCとしては広島市長のメッセ-ジに応じることをためらったのだろう。IOCは代案として8日の閉会式で「歴史の痛ましい出来事や様々な理由で亡くなった人たちに思いをはせるプログラム」を設けるという。どのような内容なのか注目したい。

(※写真は、広島市の平和記念公園を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花するIOCのバッハ会長=7月16日付・AFP通信Web版動画より)

⇒3日(火)午後・金沢の天気   くもり

☆オリンピックの政治利用って何だ

☆オリンピックの政治利用って何だ

   「オリンピックを政治利用してはならない」との言葉はこれまで繰り返し聞いてきた。先の東京都議選(7月4日投開票)でも、自民と公明は選挙公約にオリンピックを入れていなかったが、都民ファーストの会は「無観客での開催」を、共産は「中止」を、立憲民主は「延期または中止」をそれぞれ公約に掲げていた。無観客、中止、延期と言えども、オリンピックそのものを公約に掲げること自体が政治利用ではないのかと考える。

   では、オリンピック憲章ではどのように明記されているのか。憲章の50条2項ではこう記されている。「No kind of demonstration or political, religious or racial propaganda is permitted in any Olympic sites, venues or other areas.」(オリンピックの用地、競技会場、またはその他の区域では、いかなる種類のデモンストレーションも、 あるいは政治的、 宗教的、 人種的プロパガンダも許可されない)と。これだけだ。「オリンピックの場」における政治的なブロパガンダなどは許されないと限定的な解釈だ。

          今回の東京オリンピックで上記の憲章に反するとして、IOCの勧告を受けたのが韓国選手団が選手村のバルコニーに掲げた横断幕だった。豊臣秀吉の朝鮮出兵に抗した李舜臣将軍の言葉にちなんだと連想させる、「臣にはまだ5000万国民の応援と支持が残っています」とハングルで書かれた横断幕だった。IOCは政治的宣伝と判断。横断幕は先月17日に撤去された(7月18日付・AFP通信Web版日本語)。

   そもそもなぜ、オリンピックの政治利用がこれほど敏感になったのか。ルーツはドイツで開催された1936年のベルリン大会だった。オリンピックがナチスドイツに仕切られ、総統だったヒトラーが開会宣言を行うなど、まさに大衆の熱狂と国威発揚、いわゆるポピュリズムを醸し出す道具として使われた。その3年後、ドイツはポーランドを侵攻し、第二次世界大戦が始まる。戦後、1980年のモスクワ大会では、ソ連によるアフガニスタン侵攻への抗議のためアメリカを中心とした西側諸国がボイコット、日本も同調し不参加だった。1984年のロサンゼルス大会では、ソ連が安全上の懸念を理由にボイコットした。

   オリンピックはまさに国内政治の道具や、国際政治の駆け引きの材料に使われてきた。では、次なるオリンピックの政治の争点はどこに焦点が当てられるのか。来年2022年の北京冬季オリピックではないだろうか。すでに、EU欧州議会は7月8日、北京冬季オリンピックついて、中国政府が香港や新疆ウイグル自治区での人権侵害を改善しない限り、政府代表や外交官の招待を辞退するようEUや加盟国に求める決議を採択している(7月9日付。時事通信Web版)。選手たちの北京ボイコットなどはおそらく、東京オリンピック・パラリンピック後に最大の課題になってくるのではないだろうか。

(※写真は、7月23日の東京オリンピック開会式の模様=NHK番組)

⇒2日(月)夜・金沢の天気    はれ

★無心の境地 ゴルフ松山選手の活躍に期待

★無心の境地 ゴルフ松山選手の活躍に期待

   8月に入り、和室の床の間の掛け軸を替えた。『白雲抱幽石』。人里離れた深山幽谷、そこに夏雲がもくもくと現れ、まるで雲が大地を抱きかかえているような壮大な自然の光景をイメージさせる。中国・唐代の禅僧、寒山の漢詩の一節である。

   この掛け軸に合う花を探すと、真っ白なムクゲの花、ギオンマモリがちょうど咲いていた。日差しを浴びて、純白に輝く様子がまるで夏雲のようなイメージだったので 、唐銅の花入れに挿した。

   改めて禅語辞典でくってみると、「世俗との交渉を絶って幽居する隠棲者寒山の心境が偲ばれる」と。禅の修行僧の境涯を表現したものと書かれている。自然界では人の奢り高ぶった気持ちは通用しない。自然を我家として修行に励むことで、人は全ての生き物と同じように大自然の中に生かされているということを改めて感じ、悟りをひらく。

   話は変わる。東京オリンピックのメダリスト、そして敗者へのインタビューが行われているが、その表情や言葉が短く的確で感動することがある。きょうNHKでゴルフ男子の最終ラウンドを視聴していた。ことし4月、海外メジャー大会のマスターズ・トーナメントで優勝した29歳の松山英樹選手に注目していた。メダル獲得を逃したものの、松山選手は「自分が思っているパフォーマンスは出せなかった」「きょうのプレーは上位に追いついて追い越せる雰囲気も感じながら、なかなか最後の部分がうまくいかなかった。自分の課題が見えてきた.」と淡々とインタビューに答えていた。

   スポー ツは勝利して結果を残すものなので、もっと悔しさをにじませた表情かと思ったが、そうではないのだ。「自分の課題が見えてきた」。このコメントを聞いて、松山選手は競技の中で、敵は相手ではなく、意のままにならない自身だと悟ったのではないかと察した。自らの鍛え方が足りないと、まるで武道家の言葉のようにも聞こえた。まだ、29歳、無心の境地で世界のゴルフ界を背負う人材に成長することを期待したい。

⇒1日(日)夜・金沢の天気      はれ時々くもり