2021年 7月 の投稿一覧

☆緊急宣言再び 不可解な「都の選良」を追う

☆緊急宣言再び 不可解な「都の選良」を追う

   選挙で選ばれた公人として記者会見を開き、説明責任を果たすことが最優先ではないのか。東京都議会選に当選した都民ファーストの会の女性都議が選挙期間中に無免許運転で人身事故を起こし、党から除名処分(5日)を受け、その後雲隠れしている問題は今月6日付のブログでも取り上げた。メディア各社が、その都議が新会派「SDGs東京」を立ち上げたと報じている。(※写真・上は選挙応援に駆け付けた小池都知事とツーショット、本人のツイッターより)

   さっそく、都議会議会局広報課の公式サイトをチェックする。「各会派等の構成(7月6日現在)」の欄には、確かに「無所属(SDGs 東京)」と記載されている。1人会派だ。しかし、「各会派等の連絡先」は11会派のうち、SDGs 東京だけが空欄となっている。何かやましさでもあるのかと勘繰ってしまう。後ろめたさがないのであれば堂々と連絡先を表記すればよいのではいか。

   除名処分を受けた日には、記者からの取材に対し「仕事をしていくことで期待に応えたい」と述べて、議員辞職の考えはないことを示した(7月5日付・産経新聞Web版)。その後、新たな疑惑(無免許運転の常習性)の証言が出る中で、翌6日には新会派を立ち上げたのだから、本人はヤル気を示したのだろう。

   ただ、「SDGs東京」のネーミングについては解せない。国連が採択したSDGs(目標持続可能な開発目標)をベースに都政の課題とどう向き合うのか、本人が政策を具体的に示さないと、環境や社会、経済に問題意識を持ちながらSDGsに取り組んでいる人たちはこのネーミングに納得しないだろう。その説明がなければ、「SDGs」を借用しただけの会派ということになる。もっと厳しく言えば、SDGsを愚弄する行為ではないだろうか。

   都議は板橋区役所で6日開かれた当選証書付与式を欠席した。選挙後初めての公の場となる付与式だったが、代理人も来なかった(7月6日付・NNNニュースWeb版)。冒頭で述べた「説明責任」を果たすタイムリミットはもう迫っている。報道によると、政府は新型コロナウイルスの感染の再拡大が続く東京都に対し、今月12日から来月22日まで緊急事態宣言を出す方針を専門家でつくる分科会に諮った。了承を得て、夕方の対策本部で決定する(7月8日付・NHKニュースWeb版)。今月23日に開会式を迎える東京オリンピックは緊急事態宣言の下で行われることになる=写真・下=。

   東京の緊急事態下、都の選良である政治家が果たすべき役割が多々あるはずだ。都議は一体いつ会見を開いて、自らの行動について釈明する説明責任を果たすのか。なぜ雲隠れを続けるのか。あくまでも、メディアを通した1人の政治家の観察記録である。人物との関わりは一切ない。

⇒8日(木)午前・金沢の天気      あめ時々くもり

★日本海の現実、空からミサイル、海では漁場荒らし

★日本海の現実、空からミサイル、海では漁場荒らし

   また、日本海で難題だ。きのう6日午前、岸防衛大臣は記者会見で、ロシア海軍が日本海のEEZ内にある大和堆=写真・上=の周辺でミサイル発射訓練を行うことに関して述べた。以下は、防衛省公式ホームページに掲載されている会見内容。

「大和堆の事ですけれども、7日から9日にかけて、ロシア海軍が日本海海域でミサイル発射訓練を実施予定であることを受けて、3日に海上保安庁から日本海海域に航行警報を発出しております。また、これに先立ち、2日、ロシア海軍によるミサイル発射訓練の実施海域の一部にわが国のEEZが含まれていることを踏まえ、外交ルートを通じて、沿岸国であるわが国の権利および義務に妥当な考慮を払うようにロシア側に申し入れを行うとともに、わが国周辺におけるロシア軍の活動を関心を持って注視していることを伝達をいたしました。わが国周辺において、演習や訓練を含めたロシア軍の活動が活発化する傾向にあります」

   日本のEEZにある大和堆はスルメイカの好漁場で、先月6日に能登半島の能登町小木漁港からイカ釣り船団8隻が出航し操業を行っている。このブログを書いているときにも、ミサイル発射訓練が行われるかもしれない。それにしても、日本の漁船が危険にさらされようとしているのに、はっきり発言するタイプの岸大臣にしては、「外交ルートを通じて、沿岸国であるわが国の権利および義務に妥当な考慮を払うようにロシア側に申し入れを行う」とは、言いようがどこか生ぬるい。じつは、国際法では他国の排他的経済水域で軍事演習を行うことは明確に禁じられていない。「抗議をする」などとは言えないのだ。

   ミサイルを発射するのはロシアだけではない。北朝鮮は3月25日、弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射した(日本政府が同日発表)。北朝鮮東部の宣徳付近から発射し、いずれも約450㌔飛行。日本の領海域には到達せず、EEZの外に落下した。北朝鮮の弾道ミサイル発射は昨年3月29日以来だった。事前通告なしに発射が繰り返されている。

   さらに、日本のイカ釣り漁船団が大和堆で警戒するのは中国漁船の違法操業だ。その無法ぶりは深刻だ。日本側のスルメイカのイカ釣り漁の漁期は6月から12月だが、4月から多数の中国漁船が大和堆などに入り込んでいて、水産庁は320隻に退去警告を発し、うち91隻に放水措置を行っている(5月27日現在)=写真・下、水産庁公式ホームページより=。つまり、日本の漁船に先回りして、イカ漁場を荒らしているのだ。空からミサイル、海では違法操業。日本の排他的経済水域であるものの、日本の漁船は安心安全な漁ができないでいる。これが日本海の現実だ。

⇒7日(水)午後・金沢の天気       くもり

☆「自分ファースト」な議員 「議員ファースト」なメディア

☆「自分ファースト」な議員 「議員ファースト」なメディア

   誰がどう見てもこれは「自分ファースト」ではないだろうか。報道によると、今月4日投開票の東京都議選で板橋区選挙区で当選した都民ファーストの会の木下富美子氏が、選挙期間中だった2日に車で人身事故を起こしていた。木下氏は免許停止期間中で、警視庁が自動車運転処罰法違反(過失傷害)や道交法違反(無免許運転)の疑いで捜査している(7月5日付・朝日新聞Web版)。

   都民ファーストの会は5日夜、木下氏を除名処分にしたと発表した。「無免許運転は明確な法律違反であり、公人としてあるまじき行為だ」と指摘したうえで「このような重大な事故について、事故発生から数日経って初めて党に報告されたことは、党として看過できない」としている(同)。

   問題は根深い。木下氏は取材に「2日が免停期間の最終日で(免停期間が終わっていると思い)運転しても大丈夫だと思っていた。申し訳ない」と話した(7月5日付・産経新聞Web版)。ところが、都議選で木下氏と同じ板橋区で東京維新の会から出馬し落選した候補者がツイッター(7月5日付)でこう記している。「大事な点なので記載しておく。告示日直前の6月21日に志村坂上でご自身が街宣車を運転しているのを、私はハッキリと見た。私は自分の街宣車のマイクでご挨拶をしたが無視されたので、良く記憶している」

   つまり、無免許運転は2日だけではなく、その他の日(6月21日)でも目撃されている。それを木下氏は「免停中の期間を間違えた」と言い張っている。さらに、都民ファーストの会から除名処分を受けたものの、取材に対し「仕事をしていくことで期待に応えたい」と述べて、議員辞職の考えはないことを示した(7月5日付・産経新聞Web版)。

   政治家の矜持が感じられない。議員報酬にしがみつく様子が見え見えで、「自分ファースト」なスタンスだ。まず、都議会の記者クラブで会見を開くべきだろう。それにしても奇異に感じるのは、各メディアはなぜ2日の人身事故の時点で報道しなかったのだろうか。警察の担当記者は把握していたはずだ。2日の時点で「無免許で人身事故」と報じていれば、選挙情勢は変わっていたに違いない。選挙期間中ということで忖度したのだろうか。とすれば、まるで、「議員ファースト」なメディアだ。

(※写真は、当選を報告する木下富美子氏のツイッター=7月5日付)

⇒6日(火)夜・金沢の天気      あめ

★司法の断罪を超える「遺骨の存在」

★司法の断罪を超える「遺骨の存在」

   地下鉄サリン事件から25年が経つものの、「オウム真理教」は過去の話ではない。今でも元教祖、麻原彰晃に帰依している宗教団体の一つが金沢市内にあり、近くの人たちが監視行動を続けている=写真=。何度か近くを通ったことがあるが、麻原の教えがそのまま脈々と伝わっているのかと思うと背筋が寒くなる。あす6日は松本元死刑囚の刑が2018年7月6日に執行されて丸3年となる。さらに不気味さを予感させるニュースがきょう報じられた。

   死刑が執行されたオウム真理教の教祖・麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚の遺骨を次女に引き渡すとした決定が確定した。松本元死刑囚の遺骨の引き渡しを巡っては家族の間で争いになり、昨年9月、東京家裁が遺骨と遺髪を次女に引き渡すと決定し、東京高裁もこれを支持した。これに対し、四女側は「松本元死刑囚が執行直前に遺骨などの引き取り先を四女に指名した」と主張していた。四女らは特別抗告していたが、最高裁は今月2日付で退ける決定をした。これにより、松本元死刑囚の遺骨は次女に引き渡すとした決定が確定した(7月5日付・テレビ朝日ニュースWeb版)。

   遺骨をめぐる家族の争いはこれまで何度かニュースになっていた。2018年7月12日付・毎日新聞Web版によると、四女の代理人弁護士は7月11日に司法記者クラブで会見し、元死刑囚の遺骨を受け入れ、太平洋の不特定地点で船から散骨したいとの意向を明らかにしていた。これに対し、2021年3月10日付・朝日新聞Web版によると、東京家裁は、次女は面会を繰り返していて次女側との関係が「最も親和的」と判断し、東京高裁も支持した。今回、司法判断が確定したことについて、次女の代理人弁護士は「父を家族として静かに悼みたいということに尽きる」とした上で「次女はオウム真理教や後継団体とは一切関係がなく、父の遺骨が宗教的、政治的に利用されることを決して望んでいません。この審判でも主張してきました」と述べた(7月5日付・朝日新聞Web版)。

   おそらくこのニュースを喜んでいるのは信者たちだろう。まさに「仏舎利」が出来たようなものだ。信者たちは次女の自宅にある方向に向かって、イニシエーション(修行)を繰り返し、「聖地」化するのではないか。では、どうすれば「聖地」化を防ぐことができるか。裁判での四女の主張はまさにこのことだと想像する。以下の事例を念頭に置いているのではないだろうか。

   ニューヨークの同時多発テロ(2001年9月11日)の首謀者とされたオサマ・ビン・ラディンに対する斬首作戦が2011年5月2日、アメリカ軍特殊部隊によってパキスタンで実行された。アラビア海で待機していた空母カール・ビンソンに遺体は移され、海に水葬された。また、第二次大戦後、極東軍事裁判(東京裁判)で死刑判決を受けた東條英機ら7人のA級戦犯の遺骨はアメリカ軍によって、上空から太平洋に散骨された。

   「最も親和的」とする司法判断はまるで性善説のようだ。「死刑をもって断罪」は法の次元であって、遺骨があれば宗教はそれを超える。不可解な信仰とテロが復活しないことを祈る。

⇒5日(月)夜・金沢の天気      あめ時々くもり       

☆「アナログ選挙」いつまで続けるのか

☆「アナログ選挙」いつまで続けるのか

   東京都議選のニュースを視聴していて、きのう3日に各党首が最後のお願いを街頭演説で訴えていた。共産党の志位委員長は「菅総理と小池知事が、何がなんでもオリンピックやるっていうんだったら、都民の意思を示そうじゃありませんか。あすの都議選で、審判を下そうではありませんか」と。日本維新の会副代表の吉村大阪府知事は世田谷区で行った街頭での応援演説に約200人が足を止めていたと報じられている(7月3日付・毎日新聞Web版)。都議選の街頭演説の様子を新聞・テレビのメディアで見る限り、かなり「密」の状態だ。

   その後のニュースで、東京都で新型コロナウイルスの感染が新たに716人に確認され、先週の土曜日より182人増え、14日連続で前の週の同じ曜日を上回った(7月3日付・NHKニュースWeb版)。単純な話、都議選こそコロナ感染者を増やしているのではないだろうか。街頭演説や集会で「人流」と「3密」をもたらしながら、東京オリンピックの是非を問うことに矛盾を感じる。大阪市が昨年11月1日に「大阪都構想」の是非をめぐる住民投票を実施。その後、大阪は第3波のコロナ禍に見舞われた。東京もこの後、第5波が襲ってくるのではないだろうか。

   都議選(定数127)はコロナ禍で選挙運動そのものが相当に制約されていたことは想像に難くない。きょう午後8時で締め切られた投票率を見れば、有権者が「コロナ選挙」をどう見ていたか分かる。前回2017年は「小池」と「都民ファーストの会」のブームもあり、投票率は51%だったが、今回はコロナ禍で42%と9ポイントもダウン。1997年の40%に次いで過去2番目の低さだった。一方で、期日前投票(3日まで)は142万と都議選としては過去最高だったと報じられている(7月4日付・NNNニュースWeb版)。これは、コロナ禍で当日の投票会場には行きたくないという都民の意思表示ではないだろうか。

          上記の傾向は今回の都議選だけはない。2020年に行われた知事選と県庁所在地の市長選挙合わせた13の選挙のうち、11の選挙で期日前投票をした有権者数がこれまでで最も多くなっている(2020年12月29日付・NHKニュースWeb版)。

   午後9時からNHKの都議会選の特番を見た。スタジオでは出口調査で各党の当選候補者数を予想していた=写真=。NHKは「選挙のNHK」と呼ばれるほど、出口調査や開披台調査などを独自で実施し、民放各社とは比べものにならないくらいの速さと正確性で「当選確実」を出している。なので、候補者はNHKの出口調査にもとづく当確を確認して万歳や勝利宣言のインタビューに応じている。

   ただ、いつまでこのようなアナログな選挙をやるのだろうか。NHKも出口調査や開披台調査といったアナログなデータをもとに選挙特番をやるのだろうか。選挙をデジタル化し、いつでもどこででもスマホやパソコンで投票できる投票システムに改めるべきではないだろうかと思っている。9月にデジタル庁が新設される。省庁のデジタル化推進だけではなく、選挙制度や経済、福祉、教育など国全体のデジタル化を急がなければ日本の時代の遅れは決定的となるのではないかと危惧する。

⇒4日(日)夜・金沢の天気        あめ

★コロナ禍のオリンピック 報道との二律背反が鮮明に

★コロナ禍のオリンピック 報道との二律背反が鮮明に

   スポーツにはルールや規則というものがあるが、報道には基本的にはそれがない。しかし、ルールや規則に縛られるとなったら報道陣は「報道の自由を奪うのか」と大騒ぎするものだ。NHKニュースWeb版(7月2日付)によると、東京オリンピックにおける新型コロナウイルスの感染防止対策として来日する海外メディアの行動制限について、アメリカのニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなど12社が6月28日付で大会組織委員会やIOCに対し、連名で抗議の書簡を送った。東京オリンピックでは、海外メディアを含めた大会関係者は、感染対策を定めた「プレーブック」に基づく行動が求められている。  

   この抗議書簡の原文を見たいと思い、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストの公式ホームページをチェックしたが、見当たらない。そこで、日本のメディア各社のニュースをまとめてみると以下になる。

   抗議の論点は主に2つ。日本と海外のメディアの取材陣にはソーシャルディスタンス(2㍍以上)を守り、ワクチン接種をしてマスクを着用することが前提となっている。しかし、日本人記者には自由な取材が認められているのに、海外メディアの記者には観客へのインタビューや都内での取材が制約される。こうした取材制限は不公平で、外国人記者を標的にした行き過ぎた規制だ。また、スマートフォンの位置情報(GPS)をオンにして知らせることになっているが、このGPS情報がどのように使われるのか不安があり、報道の自由が阻害されないよう、メディア側にもアプリの使われ方を検証する機会を与えよと求めている。

   確かに、大会組織委員会の公式ホームページに掲載されているプレイブック(第3版)「プレス」=写真=では規制が厳しい。7月1日以降の順守項目では、「入国後3日間は自室で隔離しなければならない。毎日検査して陰性であることと、GPSによる厳格な行動管理に従うことを条件に、入国日から取材活動を行ってもよい」、「競技以外に、観客や市中を取材することは認めない。散歩したり、観光地、ショップ、レストラン、バー、ジムなどに行ったりすることも禁止」などと。おそらくアメリカのメディアの記者とすると、まるで言論統制が厳しい共産主義国家のイメージしたのかもしれない。

   これに対し組織委員会は「現下の情勢に鑑みれば、非常に厳しい措置が必要で、すべての参加者と日本居住者のために重要なことと考えている。取材の自由は尊重し、可能なかぎり円滑に取材が行えるようにする」とコメントし、また、GPSについては「監視するものではなく、本人のスマートフォンに記録してもらい、必要な際に同意を得て提示を求めるものだ」と説明している(7月2日付・NHKニュースWeb版)。

   取材の基本は取材対象者へのアクセスにある。さらに、報道の自由は誰にも束縛されない立場を貫くことだ。この意味で、取材・報道の自由と防疫対策の厳格化は「二律背反」なのだ。さらに、アスリートの中から1人でも感染者が出れば、今度は日本のメディアが大騒ぎする。そして、アメリカだけでなく、取材に訪れ、窮屈さを感じる世界のメディア各社は「取材規制はオリンピック憲章に反する」とブーイングを発信するだろう。中には「これはまるで日独同盟だ」と戦前の歴史を持ち出して揶揄するメディアも出てくるかもしれない。この二律背反を共存させる知恵は大会組織委員会やIOCにあるのか。

⇒3日(土)午後・金沢の天気     くもり

☆中国人の不動産熱と「寝そべり族」

☆中国人の不動産熱と「寝そべり族」

   中国の人々の熱い投資熱を感じたことがある。10年前のことだ。2012年8月、浙江省紹興市で開催された「世界農業遺産(GIAHS)の保全と管理に関する国際ワークショップ」(主催:国連食糧農業機関、中国政府農業部、中国科学院)に参加し、日本と中国のGIAHSについて意見交換や、隣接する青田県などを視察した。青田県方山郷竜現村を訪れたとき、田舎に不釣り合いな看板が目に飛び込んできた。川べりに建設予定の高層マンションの看板だった。

   中国人の女性ガイドに聞くと、マンションは1平方㍍当たり1万元が相場という。1元は当時12円だったので、1戸161㎡では円換算で1932万円の物件である。確かに、村に行くまでの近隣の都市部では川べりにすでにマンションがいくつか建っていた=写真=。夕食を終え、帰り道、それらのマンションからは明かりがほとんど見えない。おそらく、買って値上がりするのを待つ投資向けマンションなのだろう。前年の2011年6月に訪れた首都・北京でも夜に明かりのないマンションがあちこちにあった。

   同じ女性ガイドに「中国はマンションブームなのですか」と問いかけると、このような話を披露してくれた。「日本でも結婚の3高があるように、中国でも女性の結婚条件があります」と。中国の「3高」は、1つにマンション、2つに乗用車、そして3つ目が礼金、だと。マンションは1平方㍍当たり1万元が相場という。中国ではめでたい「8」の数字でそろえるので、1戸88平方㍍のマンションが人気。となると、1056万円だ。そして、18万元の乗用車、さらに8万元の礼金。この3つの「高」をそろえるのは大変だ。

   上記の話を思い出したのは、いま中国の若者の間で広がっているとされる、あえて頑張らない「タンピン(寝そべり)」現象がある一方で、習近平国家主席が共産党創立100年の式典で「われわれは党創立100年の目標である貧困問題を解決した。生産力が劣っていた状況から、経済規模で世界2位になるという歴史的な進歩を実現した」(7月1日付・NHKニュースWeb版)と拳を振り上げて強調した、いまの中国のギャップだ。

   習氏の世代は、極限の貧困や飢餓などを体験しながらも社会のはしごをよじ登ってきた。しかし、いまの若者たちは過当競争や長時間労働に耐えて、車の所有やマンション投資、結婚して子どもを持つという、いわば「人生の勝ち組」を目指すことにむしろ違和感や無力感を抱いているのではないだろうか。逆に言えば、習氏が「小康社会」と語ったように、それだけ国が豊かになったという証(あかし)なのかもしれない。

⇒2日(金)午後・金沢の天気   くもり時々はれ

★「反日」でも「親日」でもない、「愛国」というステージ

★「反日」でも「親日」でもない、「愛国」というステージ

           来年3月の韓国の大統領選に関心があり、NHKニュースWeb版(6月29日付)を読むと、文在寅政権と対立して辞任した前検事総長の尹錫悦(ユン・ソギョル)氏が政界入りする意向を明らかにし、事実上の立候補表明をしたと報じていた。さらに詳細を知りたく韓国のメディアWeb版を検索する。

   中央日報Web版日本語(6月29日付)によると、尹錫悦国前検察総長が20代大統領選挙への出馬を公式宣言した。 この日(29日)、尹氏はソウル瑞草区良才洞の「尹奉吉義士記念館」で開かれた記者会見で「産業化と民主化で今の大韓民国を作った偉大な国民、その国民の常識から出発する」と話した。 尹氏は「その常識を武器に、崩壊した自由民主主義と法治、時代と世代を貫く公正の価値を必ず再建する」とし「正義が何か悩む前に、誰でも正しいことが日常で感じられるようにする。これが私の胸に刻んだ使命だ」と話した。

   尹氏が出馬表明の舞台に選んだのが尹奉吉記念館だったことに注目した。朝鮮独立運動家、尹奉吉(ユン・ボンギル)の碑が金沢市の野田山墓地にある。尹奉吉は日本が朝鮮半島を統治していた1932年4月29日、中国・上海の日本人街で行われていた天長節(天皇誕生日)の行事に、手榴弾を投げ込んで、日本軍の首脳らを死傷させ、軍法会議で死刑判決となった。その後、陸軍第9師団の駐屯地(金沢市)に身柄が移管され、その年の12月19日に銃殺刑に処せられた(Wikipedia「尹奉吉」)。戦後、韓国では「尹奉吉義士」と称され、野田山には在日韓国民団県本部が建立した記念碑がある=写真=。

   韓国人にとっては「義士」なのだが、日本人にとっては「テロリスト」でもある。尹錫悦氏が同記念館で記者会見したことの想いはどこにあるのか。同じ「苗字」という単純な理由ではないだろう。産経新聞ニュースWeb版(6月29日付)によると、尹氏は同記念館で記者会見したことについて、「尹奉吉の愛国精神をたたえる場所で、私たちの先祖が命をささげた韓国建国の土台である憲法精神を受け継ぐ意思を国民に示すためだ」と説明した。一方で、日本との関係では、文政権の「反日」外交を批判しつつ、「親日」とも一線を画す立場を示唆した(同)。

   尹氏は韓国の世論調査でも大統領候補として支持率がもっとも高いとされる。「反日」でも「親日」でもなく、「愛国」を前面に掲げ政権交代に向けて現政権に「手榴弾」を投げ込むのだろうか。

⇒1日(木)夜、金沢の天気    くもり