2020年 5月 12日の投稿一覧

☆メディア規制めぐる米中バトルの行方

☆メディア規制めぐる米中バトルの行方

    新型コロナウイルス感染とPCR検査をテーマに、テレビ局から取材を受けた医師がコメントと真逆の内容に編集されたとフェイスブックで訴え、スポーツ紙などが取り上げている。けさ番組(テレビ朝日)で再度この医師のコメントを放送していた。医師は、PCR検査が増えることについては一般の人たちにとくに、不安を感じている人たちにとっては良いことと言い、一方で、無作為な大規模検査は医療の逼迫(ひっぱく)をもたらすとの趣旨を述べていた。医師の立場からすれば、後者の状況はより現実味があるだろう。 ところが、番組では後のコメントがカットされた。

   問題はこの医師のコメントをディレクターが意図的に削除したのか、あるいはケツカッチン(OAの締め切り時間)に追われて意図的ではなかったものの成り行きでカットしたのか。番組の全体的な流れを把握しないままコメントを詰めていくと、成り行き削除はままある。これを受けて番組側はきょう実質的な「訂正放送」をした。こうした制作現場のミスが大ごとになる。

   話は変わるが、メディアをめぐる国際的な大ごとが起きている。アメリカと中国がメディアの記者の扱いをめぐって対立しているのだ。アメリカの国土安全保障省はきのう11日、香港とマカオを除く中国の記者に対して、アメリカに滞在できる期間を90日までに制限する措置を発表した。中国人の記者はこれまで取材ビザの発給を受けてアメリカに入国すれば、滞在期間に制限はなかった、今後は90日ごとに延長の申請が必要になる(12日付・NHKニュースWeb版)。

   これに先立って、中国政府は3月18日、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナルの3社のアメリカ人記者に対し、記者証を返還させて事実上の国外退去を命じている。これは、今年に入ってアメリカが国内で活動する中国メディアに記者の個人情報を報告するよう義務づけ、さらに記者を160人から100人に制限したことによる報復措置だった。

   記者の個人情報の報告の義務づけ、人数制限、そして滞在期限の制限など、アメリカ政府の一連の措置の背景にあるのは、中国の新聞・テレビは共産党の管轄下にある国営メディアであるということだ。ジャーナリズムを基本精神とした欧米や日本のメディアの有り様とはまったく異質だ。さらにアメリカが注視しているのは、2017年に施行された中国の「国家情報法」ではないだろうか。この法律では、11項目にわたる安全(政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核)を守るために、「いかなる組織および国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助および協力を行う」(第7条)としている。端的に言えば、記者も国家情報活動に協力しなければならない。

   この法律がある以上、アメリカとすれば中国人記者の取材活動は安全保障の問題とかかわると受け止めざるを得ない。報道機関には事実を報道するための情報収集を行う自由が認められている。この取材の自由を国家機密などに悪用されてはたまらないということなのだろう。中国人記者をマークしているのは、機密漏洩などに対処する国土安全保障省だ。アメリカのテレビドラマ番組『スパイ大作戦』(Mission:Impossible)でかつて見たような話ではある。

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