2020年 3月 23日の投稿一覧

★ある「オリンピック銘柄」の話

★ある「オリンピック銘柄」の話

   話は少々長くなるが、自身が「オリンピック銘柄」ということに気が付いたのは、2019年1月の第198回通常国会で安倍総理は施政方針演説がきっかけだった。演説の中で、能登半島の農家民宿で組織する「春蘭(しゅんらん)の里」(能登町)の取り組みを紹介した。「地方創生」の項目の中で、「田植え、稲刈り。石川県能登町にある50軒ほどの農家民宿には、直近で1万3千人を超える観光客が訪れました。アジアの国々に加え、アメリカ、フランス、イタリア。イスラエルなど、20ヵ国以上から外国人観光客も集まります。」と例に挙げ、「観光立国によって全国津々浦々、地方創生の核となる、たくましい一大産業が生まれた」と。

   春蘭の里はかつてこのブログでも取り上げたことはあるが、最近はごぶさただった。地域にある50軒ほどの農家民宿が実行委員会をつくって、インバウンド観光の里山ツアーや体験型の修学旅行の受けれを積極的に行っている。最近では民宿経営の人たちが自動翻訳機を使いこなして、インバウンド観光客に対応していることを知った。

   現地を訪れ、春蘭の里の代表から話を聞いた。「ポケトークだと会話の8割が理解できる。すごいツールだよ」と。見せてくれたのは、74言語に対応した音声翻訳機「ポケトーク」だった。この翻訳機を使うようになって、年間20ヵ国ほどから2000人余りを受け入れている、という。70歳や80歳のシニアが自動翻訳機を使いながら、笑顔でコミュニケーションを取っている姿は、言語の壁を楽々と超える文明の利器を感じさせた。

    そして、昨年10月、観光庁の観光振興に貢献した団体、個人を表彰する第11回観光庁長官表彰で、「春蘭の里」、そして、ポケトークを開発した「ソースネクスト」が同時に表彰を受けた。春蘭の里は農家民泊を運営するグリーンツーリズムの草分け的存在として、そしてソースネクストは技術による観光振興に貢献したとしてそれぞれ評価された。

   春蘭の里の代表と再度会った。「私たちが使っているポケトークは、来年の東京オリンピックでもっと有名になるよ」と話した。なるほど、オリンピックでは海外からの観光客が見込める。2020年は訪日外国人が3430万人(JTB)との見通しもあった。こうなると、ポケトークの需要がさらに高まるに違いない。ソースネクストは「オリンピック銘柄」だと気が付いた。この話を聞いて12月11日調べると、株価は480円だった。グーグルがスマホ向けの翻訳アプリを発表し一時的に下げたものの、その後は値を上げことし1月16日には590円をつけた。オリンピック銘柄は強いと思った。

   ところが、新型コロナウイルスの感染拡大が世界に広がると同時にソースネクトは値を下げ続ける。東京オリンピックそのものの開催が危惧され、そのまま株価に表れた。WHOのテドロス事務局長による「パンデミック宣言」は今月12日(日本時間)。13日には224円の底値となった。その後、IOCのバッハ会長が「延期や中止の理由はない」とコメントして値はやや戻したものの、きょうはオリンピック延期もありうるとの情勢で263円に下げている。新型コロナウイルスに翻弄される「オリンピック銘柄」の話である。

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