☆コロナ危機 イタリアの悲しみ
新型コロナウイルスの感染が欧米で広がり、とくにイタリアで感染者が3000人、死者は100人を超えている。きょう5日のニュースでは、イタリア政府が大学を含めすべての教育施設を今月15日まで休校とする「学校閉鎖」の措置を講じたという。事態の深刻さが伝わってくる。というのも、イタリアでは大学と地域は一体化している。そこでの「学校閉鎖」、つまり「地域閉鎖」というイメージなのだ。
地域と大学は歴史的にも関わり合う。11世紀後半に創設されたイタリアのボローニャ大学はヨーロッパ最古の総合大学といわれる。「大学(ユニバーシティ)」の語源であるウニベルシタス(universitas)はそのボローニャに集まった青年たちの集団を意味する言葉だったとされる。青年たちは組合をつくり、法学者の中から先生を選び、教授契約を結んで学問をした。このような伝統がある大学がイタリアには多い。
2006年1月に訪れたフィレンツェ大学も14世紀初頭に設立し、大学と街が一体化していた。11学部5万人の学生が学ぶ。社会人の学生が多い。校舎はフィレンツェ市内に点在する。学部・学科の看板がなければ街の中の住宅アパートと見誤るほどだ=写真=。街に溶け込んでいると表現した方が的確かもしれない。同大学には6つも附属の美術館や博物館がある。一時的とは言え閉鎖するとなると、観光としても打撃で、街の活気が失われるのではないだろうか。
イタリアではハンカチをプレゼントされることを忌み嫌う。他国の人がその習慣を知らずに贈った場合、数十セントで「買う」。そうすれば、贈られたことにはならない。なぜそこまでするのか。「ハンカチは涙(悲しみ)を運んでくるもの」との思いがイタリア人には強いからだ。そう考えると、イタリアには同情は無用だ。「あえて日本からそのように思われたくない。悲しみが増すだけだ」と言われそうだ。
⇒5日(木)朝・金沢の天気 くもり