2020年 2月 の投稿一覧

★新型ウイルス、さらなる「経済感染」

★新型ウイルス、さらなる「経済感染」

   新型コロナウイルスの感染拡大の影響が経済にも及んできた。きのう(2日)のニュースで、中国人民銀行が春節の連休が明ける3日に合わせ、金融市場に1兆2千億人民元(18兆円相当)を供給し、企業の資金繰りを支えると報じられていた。となれば、きょう(3日)の上海の株式市場は暴落しないで済むのではないかと思っていた。

   では、どうか。報道各社のニュースをチェックするときょう午前10時30分(日本時間)から始まった上海株式市場は、連休前の先月23日の終値より一時8.7%も下げた。これでは中国のメンツが丸つぶれになるので、おそらく午後からは国営企業などを動員して買い支えに入るだろう、と推測する。為替レートは、人民元はドルに対し値下がり、1㌦=7人民元台の「元安ドル高」となってる。人民元は今後さらに安くなるのか。

   東京株式市場の日経平均も取引開始と10時30分前後の2度400円ほど値を下げたが、その後は223円安まで戻して午前の取引を終えている。先週末のアメリカのダウが600㌦超の下落だった。素人の読みだが、世界の株式相場は下げることはあっても上げることは当面ないのではないか。

   日本の産業経済は今度どうなるのか。中国の部品メーカーが製造した部品を日本の工場で組み立てるメーカーもあるだろう。その逆もあるだろう。中国の工場の操業停止や物流の停滞によって部品の調達や供給網にも影響が出ることは当然予想される。観光にも影響を及ぼすことは想像に難くない。石川県の小松空港と上海を結ぶ空の便で、中国東方航空はこれまでの週6便から2便に減便(今月9日から来月27日まで)を決めている。

   それにしても気になるのは東京オリンピック(7月24日-8月9日)への影響だ。2002年11月に中国・広東省で発生したとされるSARSは世界で感染者8千人、死者774人を出して収束したのは翌年の7月だった。足かけ9ヵ月かかっている。新型コロナウイルスの発生は昨年12月とされる。WHOが終息宣言を出さない限り、世界の人々は東アジアのオリンピックに足を運ばないのではないか。欧米系の選手たちはもっとナーバスかもしれない。

⇒3日(月)午前・金沢の天気   くもり

☆パンデミックに敏感な遺伝子

☆パンデミックに敏感な遺伝子

            新型コロナウイルスを報じる各国のメディアをチェックしていると、ウイルスがいかに人々の不安や危機感を増幅させているか伝わってくる。

   韓国の中央日報日本語(31日付)によると、チャーター便で中国から帰国する韓国人が一時滞在する臨時施設(忠清南道・牙山市)を政府が用意したところ、周辺住民から激しい反対運動が盛り上がり、説得に訪れた政府の行政安全部長官が住民から卵を投げつけられるという事態になった。「そんなに危険でないなら、あなたがたが住むところや青瓦台で海外同胞を受け入れたらよいではないか」と住民らは叫んだと伝えている。

   こうした事態に文大統領は関係者を集めた会議で、「ウイルスだけでなく、過度な不安や漠然とした恐怖にも立ち向かわなければならない」とし、情報開示を透明に行うよう指示する一方、フェイクニュースには厳しく対応するよう強調した(同)。

   ロイター通信日本語(31日付)によると、フェイスブック(FB)社は、WHOが国際的な公衆衛生上の緊急事態を宣言したことを受け、新型ウイルスに関する虚偽の情報を含むコンテンツを削除する方針を明らかにした。とくに、虚偽の主張、あるいは国際的な保健機関や地元の衛生当局が警告を与えているかのような陰謀説が含まれている場合は削除する。これまでFBは、健康や医療に関する虚偽の情報への対策では投稿を削除することはなかったが、今回は異例の措置に踏み込んだ。

   CNN日本語(1日付)によると、アメリカのアザー厚生長官は31日、新型ウイルスによる肺炎をめぐり、公衆衛生上の緊急事態を宣言した。過去2週間以内に中国を訪問した外国人の入国を停止する方針。規制対象はアメリカ国民にも及び、過去2週間以内に中国・湖北省に滞在していた場合、最大14日間にわたり強制隔離する。緊急事態宣言はアメリカ東部時間の今月2日午後5時に発効する。

   こうしてニュースをチェックしていると、とくに欧米はウイスル感染に対して敏感で行動が素早い印象を受ける。イタリアでは30日に国内で感染者を確認し31日に非常事態を宣言。フランスは24日に感染者を確認し、31日にチャーター便で200人を帰国させている。エールフランスは今月9日までの運休を明らかにしている。イギリスもチャーター機で110人が31日に帰国している。

   世界史でも紹介される「黒死病」、今でいうペスト感染。14世紀、中世ヨーロッパの人口の3分の1が死亡したとされ、19世紀初頭まで繰り返しパンデミック(世界的流行)を引き起こしてきた。そのため、感染拡大のモデルとして欧米の人々の脳裏に遺伝的に刻まれているのだろうか。(※写真は、バチカン美術館のシスティーナ礼拝堂にあるミケランジェロの壁画「最後の審判」=2006年1月撮影)

⇒2日(日)午後・金沢の天気     はれ

★武漢の感染者数を推測

★武漢の感染者数を推測

   中国・武漢から日本政府のチャーター機1便から3便で帰国した邦人は合わせて565人。そのうちウイルス感染が判明したのは1便と2便の416人のうち5人だ。3便の149人の検査結果はまだ出ていないようだ。

   ここからは推論だ。1便と2便の416人のうち5人ということは、感染率が1.2%になる。衛生観念が割とあるといわれる日本人でこの感染率だ。では、この感染率を人口1100万人といわれる武漢の感染者数に落とし込んでみると、13万2千人になる。地元の人たちは濃厚接触が日本人と比べ物にならないほど多いだろうから、感染率を日本人の5倍と想定すると、実に66万人になる。

   きょう1日午前、中国の国家衛生健康委員会が公表した、中国全土の新型ウイルスによる肺炎の患者数は31日現在、新たに2102人増え1万1791人に。死亡者数は46人増えて259人となった(1日付・NHKニュースWeb版)。実際の数字はおそらくこのように生易しくはないだろう。

   ところで、WHOは31日(日本時間)「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言したが、渡航制限勧告は見送っている。日本をはじめアメリカ、フランスなど各国政府はすでに武漢から自国民をチャーター機で帰国させているのに、である。WHOによる宣言後の記者会見で、緊急委員会のフサン委員長は「飛行機で自国民を呼び戻している国もあるが、それは呼び戻した後にさらなる感染を防げるという自信がある国だ。全ての国ができるわけではない」(31日付・日経新聞Web版)で皮肉ともとれる発言をしている。

   そもそもWHOが23日の緊急会合で「時期尚早」と緊急事態宣言を見送ったこともあり、各国政府ができる範囲で独自に対策を取った。そして、日本政府はきのう(31日)武漢を含む中国・湖北省に滞在歴のある外国人の入国を拒否する方針を発表した。当然の措置なのだが、WHOとすれば渡航制限の勧告をしていないのに何だと苛立っているかもしれない。

   どこか、WHOに処し方にインシュラリティ(insularity)、頑なさや偏狭性を感じるのは自身の誤解だろうか。(※写真は、感染者の退院の様子を伝える中国・武漢市のホームページ)

⇒1日(土)午後・金沢の天気    くもり