☆SDGsは「三方よし」の社会循環
国連の持続可能な開発目標(SDGs)を目指す自治体など集まる「第1回地方創生SDGs国際フォーラム」がきょう(13日)東京・千代田区の日経ホールで開催された=写真=。内閣府の「SDGs未来都市」に採択された全国の29自治体の関係者や研究者、NPO関係者ら600人が参加する初めての集会でもあった。新たな価値観の共有の場でもある。その意味でフォーラムで飛び交った言葉は実に新鮮だった。そのいくつかを紹介する。
基調講演に立った神奈川県の黒岩祐治知事。「昨年の夏に鎌倉市由比ガ浜でシロナガスクジラの赤ちゃんが打ち上げられ、胃の中からプラスチックごみが発見されました。これを『クジラからのメッセージ』として真摯に受け止め、持続可能な社会を目指すSDGsの具体的な取組として、深刻化する海洋汚染、特にマイクロプラスチック問題に取り組んでいます。それが『かながわプラごみゼロ宣言』です」「新素材開発ベンチャー企業と連携して、石灰石を主成分とし、紙とプラの代替となる革新的新素材の開発を進めています。アップサイクルの実証事業です」
KDDI代表取締役会長の田中孝司氏の話には妙に納得した。「通信事業の社員には『つなげたい』という意識が強いんです。電波の届かない不感地はもちろん、世界中のモノとモノとつなげたい、多様な人たちをつなげたい。コネクティビティ(相互接続)は通信事業の社員のDNAなんです」
山口県宇部市はSDGs未来都市に採択されている。久保田后子市長は「ICTやイノベーションを切り口にして、起業家やスタートアップ企業支援に力を入れています」と。地場の金融機関と連携し、セミナーや創業コンテストなどに積極的に取り組んでいる。その成果があって、年40件以上の起業件数に。久保田市長は「ICTクリエイティブ人財の育成にチカラを入れています。宇部は『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明氏を育てたまちなんです。宇部から全国区のスタートアップ企業を輩出するのが私の願いです」と。
今回のフォーラムでいろいろな立場の人のSDGsに対する想いを聴いた。一つ感じたことは、話し手は楽しそうに熱く語っているのが印象的だった。さらに思ったのは、SDGsは古くから伝えられる近江商人の「三方よし」の心得ではないだろうか。これは私が知る事例なのだが、石川県小松市に腕のよい造り酒屋の杜氏がいる。買い手が満足してブランド化している。造り酒屋の近くには有機で造る酒米の農家の人たちがいる。造り酒屋は酒米を相場より高く買う。売り手、買い手、作り手がそれぞれに納得して利を得る。「三方よし」のモデルのような社会循環ではある。SDGsは日本に根付く「三方よし」の和の精神と合致するのではないか。楽しそうに語る講師の人たちを見てそんなことを考えた。
⇒13日(水)夜・金沢の天気 あめ