2018年 4月 7日の投稿一覧

☆「神話の続き」、さらに悩ましく

☆「神話の続き」、さらに悩ましく

     昨年秋に能登半島の尖端、珠洲市で開催された「奥能登国際芸術祭」の会場をめぐり、アーチストたちの鋭い感性に触れた。総合プロデューサーの北川フラム氏は「さいはてのアート」と称したように、半島の尖端で創作された芸術作品群が想像力をかきたてた。その中で「歴史信仰の壮大なパロディ」として脳裏に焼き付いているのが、深澤孝史氏作「神話の続き」=写真=だった。

   能登半島は地理的にロシアや韓国、北朝鮮、中国と近い。古代より海の彼方から漂着するものを神様や不思議な力をもつものとして、「寄(よ)り神」あるいは「漂着神」と崇めた。深沢氏の作品は、日本海に突き出た半島の先端に隣国から大量のゴミが流れ着く現状を「現代の寄り神はゴミの漂着物」と訴え、ゴミを白くペイントして鳥居に似せたオブジェを創り話題となった。「鳥居」に近づき白く塗られたゴミをよく見ると、ハングル文字の入ったポリ容器やペットボトル、漁具が多かった。

     石川県廃棄物対策課の調査(2017年2月27日-3月2日)によると、県内の加賀市から珠洲市までの14の市町の海岸で合計962個のポリタンクが漂着していることが分かった(県庁ニュースリリース文)。ポリタンクは20㍑ほどの液体が入るサイズが主で、そのうちの57%に当たる549個にハングル文字が書かれ、373個は文字不明、27個は英語、10個は中国語、日本語は3個だった。さらに問題なのは、962個のうち37個には残留液があり、中には、殺菌剤や漂白剤などに使われる「過酸化水素」を表す化学式が表記されたものもあった。ここから理解できることは、簡単に言えば朝鮮半島からの海洋不法投棄は深刻だ、ということだ。

     このことが頭にあったので、きょう韓国・中央日報Web版を読んで「さらに深刻になる」と胸騒ぎがした。記事の見出しは「韓国国内で捨てられたペットボトルも処理できないのに…輸入は大きく増える」(4月4日付)。要約すると、中国が今年からプラスチックやビニールなどの廃棄物輸入を禁止し、アメリカや日本など世界の資源ゴミが韓国に集まっているという。韓国の「廃プラスチック類輸出入現況資料」では、ことし1-2月の廃プラスチック輸入量は1万1930㌧で前年同期の輸入量の3.1倍と急増している。韓国ではペットボトルなど圧縮品形態で入ってくる廃棄物に対しては申告だけすれば輸入が可能なのだという。

     なぜ廃プラスチック類などの輸入が急増したのか。国内問題のようだ。記事では「韓国製のペットボトルは色がついており低級品が多く処理費用が多くかかるため資源ごみ加工会社があまり引き取ってくれない」と資源ごみ回収業者のコメントを紹介している。ということは、アメリカや日本などから良質なペットボトルを圧縮品形態で輸入してリサイクル加工することが増えたが、その分、良質でない国内産のペットボトルなどは資源ゴミとして引き取り手がなくなった、ということだ。

    「さらに深刻になる」とはここだ。韓国内で引き取り手がない資源ゴミはこれまで以上に日本海に不法投棄されるのではないか。不法投棄を何とか防げないか。地中海の汚染防止条約であるバルセロナ条約(1976年)が21ヵ国とEUによって結ばれ、地中海の海域が汚染されるのを何とか防いでいる。国連環境計画(UNEP)などに訴求していかなければ、二国間では「日本海」の呼称の問題や「竹島」の領有権問題で解決策が見出せないのではないか。そうこうしている間に、すさまじい量の不法投棄があるのではないか。作品「神話の続き」が投げかけた問題がさらに悩ましく思えてくる。

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