2018年 4月 1日の投稿一覧

☆「電波の座」めぐる攻防-中-

☆「電波の座」めぐる攻防-中-

   近い将来、日本の電波をどう割り当てるのか、大きな論点になってくるだろう。民放テレビ局の放送をインターネット化(通信化)、空いた電波帯域を超スマート社会の実現のためのIoT、AI、ビッグデータ、ロボットの事業者に割り当てる、というのが政府の目指す方向性だろう。

 「テレビ局の敵はテレビ局でない」時代、放送の価値をどう見出していくのか

   電波割り合てに関しては、2011年7月に実施された、それまでのアナログ放送から地上デジタル放送の移行時でもあった。地デジ移行により、従来370MHz幅の周波数帯域を使用していた地上テレビ放送の周波数は240MHz帯域となり、3分の2以下に縮小した。空いた周波数帯を、スマートフォンなどの急速な普及でひっ迫していた携帯電話サービス用の周波数帯として割り当てた。政府は「電波は国民の財産である」との言い分で、電波の割り当てや再編には強く出るのだ。

   放送は、放送法第2条により「公衆によつて直接受信されることを目的とする無線通信の送信」と定義されているものの、放送インフラと通信インフラを分ける時代ではなくなっている。インターネット網のブロードバンド化や光ファイバーの広がり、そこそこ品質の高いが画像がネットも見ることができる。インターネットと放送の同時配信だ。先の韓国・平昌冬季オリンピックでは、民放テレビ局のオリンピック公式動画サイト「gorin.jp」で初めて実況付きの同時配信を行っている。放送時間外でもネットで送信され、テレビをネットが補完したカタチだ。

   コンテンツで言えば、テレビ朝日とサイバーエージェントが共同出資したテレビ型動画配信サイト「AbemaTV」(2016年開始)は放送と通信が融合した新たなビジネスモデルではないだろうか。そして、もうテレビ局の敵はテレビ局ではないと感じさせたいのが、女子テニスの大坂なおみ選手がBNPパリバ・オープンでの初優勝(3月18日)だった。この決勝戦をライブ中継したのはテレビ局ではなく、インターネット動画配信サービス「DAZN」だった。さらに、DAZNとJリーグはJ1、J2、J3の全試合の放送権を2017年から10年間2100億円で契約している。テレビ局と動画配信サービスによるコンテンツの争奪戦が始まっている。

   テレビ局と電波を考える際、もう一つの動きに注目したいのが「スマートグリッド(Smart Grid)」だ。送電網と通信網の融合だ。IoT(Internet of Things)の代名詞としても使われ、すべてのものがインターネットとつながる時代を意味する。このときの放送はどうなるのか。

   民間放送連盟は3月15日の記者会見で、政府の動きに対応するように「放送の価値向上に関する検討会」(仮称)を設置したと発表した(民間放送連盟HP)。今後テレビやラジオ放送の価値向上策や未来像を検討するとしている。会見で井上弘会長(TBS名誉会長)は「(政府の)規制改革推進会議の方々には、単なる資本の論理、産業論だけで放送を切り分けてほしくないし、バランスの取れた議論をお願いしたい。私は、放送に比べてネットの世界は発展途上だと思っているので、もう少し時間をかけて推移を見守っていったほうが、国民視聴者にとってより有効な、放送とネットの“棲み分け”というものが成立するのではないかと考えている」と述べた。「放送の価値向上に関する検討会」(仮称)の設立の意義については、「放送が本来持っている強みや特性を踏まえ、新しい時代の放送について考えたい。そのうえで、もうひとつ上の段階へ進んで、より強力な媒体となってほしいと考えている」と。

   放送法の規制を全廃すると、民放は普通のコンテンツ制作会社になってしまうとの懸念はある。では、ネット社会が高度化し、テレビ放送に課していた政治的公平性を撤廃したアメリカの現実はどうか。

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