★告発する理由
最近不思議に思った告発は「レスリング女子の伊調馨選手へのパワハラ」問題だった。レスリング女子でオリンピック4連覇の伊調選手が日本レスリング協会の栄和人強化本部長からパワーハラスメントを受けたとする告発状が内閣府の公益認定等委員会に提出された(1月18日)。日本レスリング協会は公益財団法人であることから、告発状をあえて第三者の審議機関に出したのだろう。報道によると、告発状では、伊調選手が練習に通っていた警視庁の施設への出入りを、栄氏が禁じたと訴えている。
これに対し、日本レスリング協会は告発内容を否定し、伊調選手も「告発状には関わっていない。しかるべき機関から正式に問い合わせがあった場合はご説明することも検討したい」としている。本人が関知しない告発状の意味は一体どこにあるのか。うがった見方をすれば、わざわざ内閣府に告発状を出し、同時に週刊誌にリークして、ことを大きくして世間の注目を浴びることに長けた「告発のプロ」が背後にいる。なぜそのような仕掛けをするのか、ニュースを聴いていぶかっている。ひょっとして、裏取引を仕掛ける告発ビジネスではないのか、と。内閣府の調査が待たれる。
自称フリージャーナリストの女性が元TBSの記者の男性を、望まない性行為で精神的苦痛を受けたとして民事訴訟で訴えている問題。1100万円の損害賠償を求めた訴訟だ。報道によると、女性は2015年4月、就職の相談をしようと都内で男性と会食し、その後意識を失ってホテルで望まない性行為をされたと訴えている。この問題が浮き上がった当初はハリウッドで起きた「#MeToo」(ハッシュタグミートゥー)、セクハラ告発が日本でもムーブメントとして起きたとの新鮮な印象だった。顔をメディアに出しての告発で、勇気ある女性とも思った。
ところが、事件性は徐々に消えていった。警視庁はこの件を男性による準強姦罪の容疑で捜査したが、東京地検は2017年4月、嫌疑不十分で不起訴処分。女性は5月に司法記者クラブで会見し、検察審査会に不服を申し立てたことを公表したが、検察審査会は9月に「不起訴相当」との議決を出した。女性はめげずに民事訴訟で訴えた。行動に少々違和感を感じたのは、2017年10月、日本外国特派員協会での記者会見だった。女性はそれまで「詩織」と名を明かしていたが、この会見で姓も明かした。そして席上、同じ月に手記を出版したことを公表したのだ。
ニュースの流れを素直に読めば、一連の流れは著書を売るために出版社と組んだ、告発ビジネスではないかと誰もが想像するだろう。もちろん、元TBS記者の男性を擁護するつもりは一切ない。
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