☆2017 ミサ・ソレニムス~1
先日(23日)、年末恒例のベートーベン「荘厳ミサ曲(ミサ・ソレムニス)」のコンサートに出かけた。石川県音楽文化協会が昭和38年(1963)12月に年末公演を始めて開催して、今回は55回の記念公演。当初はベートーベンの「第九交響曲」のみだったが、第7回から別日で「荘厳ミサ曲」を入れて、年末公演は2回に分けて行っている。
「金色の翼」は能登に何をメッセージとして発したのか
記念公演と銘打った今回のコンサートでは、イタリアから指揮者とソリストを招いての力のこもった演奏会で、会場の県立音楽堂は1階と2階はほぼ満席の状態だった。午後2時の開演で、思わず身を乗り出したのは、「荘厳ミサ曲」の前で演奏された、歌劇「ナブッコ」より合唱曲「行け、我が想いよ金色の翼に乗って」(ヴェルディ作曲)だった。
つい、いっしょに歌いたくなるようなインスピレーションが働く。古代、バビロニア王ナブッコがユダヤの国に攻め込み、捕らえられ、強制労働を強いられるユダヤ人たちが故郷を想って歌う合唱曲なのだ。力強く、したたかに、希望を持って、そしてゆっくりと。
この曲を聴いていて、イメージがことし9月から10月に能登半島・珠洲市で開催された奥能登国際芸術祭で鑑賞したアローラ&カルサディージャ作「船首方位と航路」へとシフトしたのだ。船首に金色の大きなワシのような鳥が付いていて、風によってゆっくり動く彫刻=写真=。その動き方が、不安定な状態でありながらバランスをとりながら、風や重力で上下、左右にまるで「やじろべえ」のよう。その動きのテンポがこの曲とぴったりなのだ。
そこで仮説を立てた。二人のアーチスト、アローラ&カルサディージャは作品を、この曲「行け、我が想いよ金色の翼に乗って」をモチーフにして創ったのではないか、と。その堂々とした金色の鳥の姿は、能登半島の先端から何かを問いかけるようにして動く。アローラ&カルサディージャが作品に込めたメッセージと何だったのだろうか。
歌詞にそのメッセージが込められているのではないかと想像をたくましくする。3節目の歌詞。Arpa d’or dei fatidici vati,(運命を予言する預言者の金色の竪琴よ、)、Perché muta dal salice pendi?( 何故黙っている、柳の木に掛けられたまま?)、Le memorie nel petto raccendi,(胸の中の思い出に再び火を点けてくれ)、Ci favella del tempo che fu!(過ぎ去った時を語ってくれ!)
以下は勝手解釈だ。「能登半島の未来を担う皆さん、すばらしい自然が疲弊しているではないですか。海岸に行けば大量の漂着物、山を見上げれば立ち枯れとヤブ化した森林。なぜ黙っているのですか。自らの環境を守るために再び心の火をつけてほしい、よき能登半島の歴史、そして今、未来を語ってほしい」
現在、二人はサンファン(プエルトリコ)を拠点に活動している。再び能登に来られたら、「行け、我が想いよ金色の翼に乗って」の曲がモチ-フの作品なのか、と伺ってみたい。「あなたの単なる空想ですよ」と言われそうだが。
⇒25日(月)未明・金沢の天気 あめ