★「イノシシの天下」
きょう(3日)能登町でキノコ採りをしている知人から聞いた話だ。アカマツ林の根元が掘られて、毎年採れるマツタケがなくなっていた。根元がほじくられているので、「おそらく来年からは生えてこないだろう」と肩を落とした。あちこちでこうしたイノシシによる被害があり、「能登のマツタケは壊滅だ」という。マツと共生する菌根菌からマツタケなどのキノコが生えるが、イノシシによる土壌の掘り返しで他の菌が混ざるとキノコは生えなくなることが不安視されているのだ。
春にはタケノコが同じくイノシシに荒らされたとも知人は嘆く。さらに、「ブドウ畑もやられているようだ」と話してくれた。赤ワイン用のソービニオン系の品種を栽培している農家が被害に遭っているという。
こうしたイノシシの被害に対して、「デンサク」と呼ばれる電気柵を畑の周囲に張り巡らす方法がある。イノシシの鼻の高さの地上40㌢ほどで設定して、イノシシに電気ショックを与えると近寄ってこない。問題もある。面積が限られる畑の場合はそれでよいが、マツタケ山のような広範囲を張り巡らすことはコスト的に難しい。ましてや、農作物と違って、年によって不作の場合もあるキノコの場合、デンサクを設けても労力が報われない場合もあるのだ。
石川県の「イノシシ管理計画」(平成29年5月)によると、一般にイノシシは多雪に弱く、積雪深30㌢以上の日が70日以上続くことが生息を制限する目安と言われているが、平成以降で「70日」を越える年は平成3年、7年、18年、23年、24年、27年の5回のみで、いわゆる暖冬傾向がイノシシの生息拡大に拍車をかけている。
能登半島の先端である奥能登地域(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)では平成22年からイノシシによる農業被害が出始め、年々増えている。このイノシシ被害に危機感を持った人々の中には狩猟免許を取って、鉄檻を仕掛けて捕獲に乗り出すケースも増えている。自治体ではイノシシの捕獲報奨金として1頭当たり3万円(うり坊など幼獣は1万円)を出している。
輪島市で捕獲されたイノシシは平成28年度690頭(同27年度117頭)、珠洲市で平成28年度432頭(同27年度119頭)と格段に増えている。
問題は、捕獲頭数が増えたから頭数が減ったといえるのか。その逆だ。絶対数が増えているから捕獲頭数が増えたにすぎないのだ。イノシシのメスは20頭の子を産むといわれる。「イノシシの天下」。この現実をどうすればよいのか。
⇒3日(祝)夜・金沢の天気 はれ
午前9時、能登空港に集合し乗り合いで山林に入った。アテ(能登ヒバ)とスギの50-60年の人工林だ。ハーベスター=写真=が機敏に動いている。立木の伐倒、枝払い、玉切りなど造材を担うのはハーベスターヘッド。枝払いなどは1秒で5㍍もアッという間に。ディーゼルエンジンに直結した発電機で発電し、発電機から得る電力でモーターを駆動させる。燃料のこと気になって、休憩に入った操縦士に質問すると。1回の給油(軽油)で160㍑、2日でなくなるので1日当たり80㍑の計算だ。現地を案内してくれた能登の林業者は「道づくりは山づくりなんです。道づくりによって、山の資産価値も高まるんです」と。なるほど、その道づくり(森林作業道)も別の重機でこなしていく。山にマシーンは欠かせない。
こうした課題解決を目指すべき社会を「プラチナ社会」と定義し、地域でさまざまイノベーションに取り組んでいる自治体や企業、団体を表彰するのが、民間団体「プラチナ構想ネットワーク」(会長:小宮山宏元東京大学総長)だ。ちなみに、金のようにギラギラとした欲望社会を目指すのではなく、プラチナのようにキラキラと人が輝く社会づくりを理念に掲げている。その「プラチナ大賞」の第3回大賞・総務大臣賞(2015年)に、珠洲市と金沢大学が共同でエントリーした「能登半島最先端の過疎地イノベーション~真の大学連携が過疎地を変える~」が選ばれた。プラチナ構想ネットワーク事務局から、受賞から2年間の取り組みを報告してほしいと依頼され、過日(10月26日)、同市の担当者と2人で東京・イイノホールでに出かけた。