☆夏の夜の睡眠不足

ところが夜中0時半ごろ、ふと目を覚ますと大変なことになっていた。日本勢でトップを走っていた荒井広宙(あらい・ひろおき)が3時間41分24秒の3着でゴールした後に妨害行為があったとして失格になっていたのだ。荒井はレース終盤の残り1.2㌔で、カナダの選手を追い抜く際に上半身が接触。カナダ選手はバランスを崩してよろけして後退した。これに、カナダ側が進路妨害だとして抗議し、審判長が受け入れて荒井を失格としたのだった。
ネット上でその時のビデオが公開されていたので再生すると、荒井が追い抜く際に両者の肘が接触していることが確認できるが、それを「進路妨害」と決めつけるのには疑問符が付くのだ。その審判長の判定がひっくり返ったのは夜中の3時半ごろだった。今度は日本陸連の方がビデオを精査して「不可抗力の接触。カナダ選手の肘が先に当たっている」と判断し、国際陸連理事5人で構成する上訴審判に申立書(英文)を提出して審判長裁定の取り消しを求めたのだ。時間にすれば2時半ごろ。
それから1時間後、上訴審判は協議の結果、日本側の訴え通り「その接触とカナダ選手の失速に因果関係はない」と判断。荒井は銅メダルを手にしたのだった。その時の第一声が日本人らしい一言だった。「お騒がせしてすいません。(相手に)当たらなければ良かったんですが…」。失格の悪夢を乗り越え、日本の競歩界に初のオリンピックメダルをもたらした喜びはいかほどのものだったか。また、日本陸連のスピーディな対応(抗議と上訴)にも拍手を送りたい。
この夜、もう一つ注目した動きが同時刻ごろにあった。ジュネーブで開かれていた国連核軍縮作業部会だ。「核兵器の法的禁止を協議する会議を2017年に開くよう国連総会に勧告することに、広範な支持が寄せられた」との報告書が賛成多数で採択された。国連加盟国(193)の半数超に当たる100ヵ国が支持したとされる。今後、国連総会の場で、核兵器禁止条約づくりに向けた議論が本格化することになる。
核軍縮の問題を国連の多数決で決めるべきではないとし、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の核保有国側は作業部会の参加をボイコットしてきた。気になっていたは日本の立ち位置だ。採択は挙手による意思表明だったが、日本は棄権した。同じくアメリカの「核の傘」にいるNOTO諸国もだ。
これと連動して、8月15日付のアメリカのワシントン・ポスト紙の記事が波紋を呼んでいる。オバマ大統領が進めているとされる「核兵器の先制不使用政策」を構想していることにし、安倍総理がハリス太平洋軍司令官に「北朝鮮に対する抑止力が弱体化する」と反対の意向を伝えたとスッパ抜いた。同紙を引用して日本の新聞メディア各紙も報じた。
この記事だけを読めば、ことし5月28日に安倍総理はオバマ大統領といっしょに広島の平和記念公園の原爆死没者慰霊碑を訪れ献花に臨んだのだから、今こそ「核兵器なき世界」に向けて安倍総理はオバマ大統領の先制不使用政策をサポートすべきなのに、なぜに反対なのかと考え込んでしまう。
確かに、オバマ大統領の核兵器の先制不使用政策や、安倍総理の反対の立場もアメリカの有力メディアの伝えた話であって、本人が公に述べたものではない。空中で話が飛び交っている状態だ。ただ、火の気のないところ煙は立たず、である。今後、10月からニューヨークの国連本部に議論の舞台が移る。その場で、オバマ大統領が何を述べるのか。真夏の夜の出来事にますます睡眠不足に陥った…。
⇒20日(土)正午、金沢の天気 くもり