☆報道自由ランキング

その「国境なき記者団」(Reporters Without Borders)は1985年に設立され、活動の中心は各国の報道機関の活動と政府による規制の状況を監視することにある。その他にも、世界各地で拘束された記者の保護や解放、紛争地帯での記者を守る活動などを展開している。昨年12月にフリージャーナリストの安田純平さんがシリアで武装勢力に拉致され、身代金を要求されているとの声明を出したものの、その後声明を撤回して、日本では話題となったこともある。
中心的な活動であるメディア体制の監視と調査の結果をまとめた年次報告書「報道自由度ランキング」は2002年がスタートで、メディアの独立性、多様性と透明性、自主規制、インフラ、法規制などを客観的に数値化して評価している、という。では本題、日本のランキングはどうなのだろう。日本の最高は2010年の11位が最高だった。民主党政権誕生による社会的状況の変化や、政府による記者会見を一部オープンにしたこと評価された。ところが、2011年の東日本大震災と福島第一原発事故が起き、2012年は22位に下がる。さらに、2013年は53位、2014年は59位、そして2015年は過去最低の61位となる。
順位が下がった理由が報告書で解説されている。東日本大震災によって発生した福島第一原発事故に対する報道の問題だ。一つは、電力会社などによる、いわゆる「原子力ムラ」と呼ばれる内なる規制でメディアに対する発表が閉鎖的だと指摘されている。二つ目が「記者クラブ」制度がフリーランスの記者や外国メディアの排除しているというのだ。日本のメディアの在り様そのものがマイナス要因だと指摘していることが注目される。
もう少し深堀りする。重大な災害、とくに震災や原発事故などが発生したときは、情報が監督官庁などに集中する。それを集約して記者会見、これが公式発表となる。監督官庁は記者クラブを通じて発表するカタチとなり、フリーランスの記者や外国メディアには記者発表の日時や場所の案内はない。そのため、フリーランスの記者や外国メディアの特派員は日本のメディアの発表を追いかけて、発表文を入手することになる。そのため、海外から「発表ジャーナリズム」だと批判されることが多い。政府の記者会見での発表をそのまま報道する、いわゆる「垂れ流し」だというのだ。
さらに海外から批判があるのは、紛争地への記者の派遣を、日本のテレビ局や新聞社、いわゆる「組織ジャーナリズム」は原則として認めていないことだ。組織としては危険な場所に記者を派遣することはコンプライアンス(法令順守)に反するということがベースにある。では、紛争地の情報をどう入手するのか、フリーのジャーナリストに依頼するしかない。危険な場所で取材するのはフリーのジャーナリストなのだ。こうした構造的な問題に、とくに欧米のメディアは日本のメディアの在り様をいぶかっている。
さらに2013年に特定秘密保護法が成立し、自由な報道の妨げになるというマイナス評価となり、日本の順位は下落。韓国よりもランク下という事態になっている。「報道自由度ランキング」は毎年発表されるが、実は日本のテレビや新聞は熱心に取り上げてはいない。「不都合な真実」だからだ。日本のメディアそのものに改革の余地あり。
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