2012年 12月 2日の投稿一覧

☆米国からのメッセージ

☆米国からのメッセージ

 今回の総選挙をアメリカ側の眼から考えると、国内の選挙情勢とまったく違って見える。先月29日、アメリカ議会上院が、沖縄県の尖閣諸島について、アメリカの日本防衛義務を定めた日米安全保障条約の適用対象であることを明記した国防権限法の修正案を可決した。全会一致で可決された、この国防権限法の修正案は「アメリカは、尖閣諸島の最終的な主権に特定の立場はとらないが、日本の施政権下にあることを認識している」と指摘し、日米安保条約第5条のもと、「日本の施政権下にある領土に対する武力行使は、日米両国の平和と安全にとって危険であることを認識する」と明記している。中国を牽制した内容だった。上記は、日本のメディアが報じた。

 これより2月余り前の9月21日、アメリカのワシントン・ポストは、尖閣諸島をめぐる中国との対立などを背景に、日本が「緩やかだが、かなりの右傾化」を始めていると指摘、周辺地域での行動は「第2次大戦後、最も対決的」になっていると1面で伝えた。日本のメディアが報じたこのニュースの内容を読むと、同紙は、日本の政治家が与野党問わず集団的自衛権の行使容認を主張するようになり、憲法改正論が高まっていると分析し、与那国島への陸上自衛隊配備計画などを挙げ、自衛隊にも「より強力な役割」が与えられつつあるとの見方を示したという。

 上記の2つの記事を読むと、こう解釈できる。ワシントン・ポストなどアメリカのメディアには、尖閣諸島をめぐる中国との対立をきっかけに、日本のナショナリズム(右傾化)が増大しているという見方が広がっている。とくに、憲法改正論など高まると、アメリカとの軋轢も生じかねない。それを危惧したアメリカ議会上院では、中国を牽制し、日米両国の平和と安全を強調することで、総選挙で過熱するかもしれない日本の右傾化を冷まそうと国防権限法の修正案可決を急いだ、と。

 我々日本人とすると複雑な思いだ。尖閣諸島や竹島をめぐって緊張を高めるつもりはない。そもそも、いずれの問題も「日本から始めたものではない」からだ。所有権の移転をあえて政治問題化し、暴徒化を煽ったのは日本ではない。日本人は、国際法を尊重して平和的に対処することを願っているだけだ。それを日本のナショナリズム(右傾化)だとアメリカのメディアに騒がれても困る。

 アメリカ側から見れば、「脱原発」や「消費税増税」はあまり関心ないのかもしれない。むしろ、極東アジアの安定に貢献できるリーダーは誰なのか、だろう。すると、消去法でだいたい決まってくる。国防権限法の修正案可決は、アメリカ側からの政治的なメッセージなのかもしれない。

⇒2日(日)夜・金沢の天気  あめ