2012年 1月 22日の投稿一覧

★IRTイフガオ考~4~

★IRTイフガオ考~4~

 世界遺産でもあるイフガオの棚田でブランド米と呼ばれるのが、「WONDER」の米。赤米で、粒が日本のジャポニカ米と似てどちらかといえば丸い。値段は1㌔100ペソ。マニラのマーケットでは米は1㌔35ペソから40ペソなので、ざっと3倍くらいの値段だ。この米をアメリカのNGOなどが買い付けてイフガオの棚田耕作者の支援に動いているという。もう一つ、「棚田米ワイン」も味わった。甘い味でのど越しが粘つく。アルコール度数は表示されてなかったが25~30度くらいはありそうだ。ブタ肉のバーベキューと合いそうだ。イフガオでは棚田米に付加価値をつけて販売する動き出ているのだ。こうした取り組みが一つ、また一つと成功することを願う。

      「イフガオ棚田の誇り、それは人々が平等な関係でつくりあげたことだ」

 イフガオでは何人かの「親日家」と話すことができた。親日という意味合いは、かつて日本の大学で留学経験があり、日本とフィリピンの関係を前向きに考えているとの意味だ。「私は純イフガオでございます」と話しかけてくれたのはフィリピン大学のシルバノ・マヒュー教授だった。国際関係論が専門で、日本には2度にわたって13年の留学経験を持つ。イフガオ州立大学で開催した国際フォーラム「世界農業遺産GIAHSとフィリピン・イフガオ棚田:現状・課題・発展性」では、「THE IFUGAO RICE TERRACES: A Socio-Cultural & Globalization Perspective」のタイトルで講演もいただいた。

 「純イフガオ」という通り、本人はイフガオ族の出身で両親はいまでもイフガオで田畑を耕している。彼に、ICレコーダーを向けて、イフガオの問題についてインタビューした。快く答えてくれた。質問のその1は、今回のフォーラムの開催の意義について感想を聞いた。

 「(世界遺産、あるいは世界農業遺産など)文化遺産に関するシンポジウムで本当に意義のあることは、例えば日本とフィリピンが国境や社会を超えて語り合う、あるいは、知恵・知識・技術などの諸問題について情報を交換し、お互いに知り合うことだと思います。これこそがグローバリゼーション、国際化であり、学問の世界、行政の世界、NPOやNGOにはそれぞれの立場がありますが、やはり文化遺産を保全・維持するためには、日本とフィリピン、あるいはアジア地域でもいいのでグローバルに話し合う会議を開催することは大変大事だと私は思います」

 質問その2はイフオガの問題について、「フォーラムの講演でマヒュー教授は、今、イフガオの人たちが抱える一番の問題は、田んぼをつくる人たちの田から心が離れてしまっていることではないかという印象を受けたのですが、そういう解釈でよいか」と質問を投げた。

 「イフガオ族には歴史上、王政というものはなかった。奴隷のような強制労働はなく、人々は平等な関係と意志で営々と棚田をつくり上げた。われわれイフガオの民はそのことに誇りに思っている。しかし、現代文明の中で、世界中どこでもそうだと思いますが、イフガオでもそうした昔のことを忘れてしまっています。昔と今とのギャップがどんどん開いていくと、保存する価値は薄くなってしまいます。ですから、例えばイフガオの人が、自分は別の所に住みたいと言って、祖先から伝えられた土地を忘れて離れていってしまうという問題を解決する方法があればいいと切に願っています」「日本でも同じようなことが農村地域で起きていると昨日のフォーラムで指摘がありましたが、日本とフィリピンで共通するこの問題をどのようにそれを防ぐかです。もちろん国際化した中では、どこにでも行けるようになっていますが、せっかく昔々の祖先につくってもらったものはやはり大事にしなければならないと思います」

 質問その3として、「日本の能登と佐渡、イフガオが今度どのように交流を持てばよいか。日本に期待することは何か」と。

 「まず、日本とイフガオということより、ご承知のように、フィリピン全体に対してイフガオは文化的にも少し特別な部分を持っています。イフガオ族の文化と、日本の昔の文化には共通点があると思います。そういうものを忘れないために、交流が必要です。これから、遺産の保存技術も含めた日本の優れた技術、あるいはお互いの考え方や価値観に関する交流をすれば、もっともっと文化遺産の保存に役立つと思います。日本の知恵とイフガオの知恵をお互いに考えながらやると、もっと効果的かと思います。そういう意味で、これから本当に日本とフィリピンが文化遺産保存のコンソーシアムという形で定期的にやれば、あるいはもうもっと広く言えば、アジアの文化遺産を一緒に考えながらやっていったら、組織化することも含めて進めばいいと思います」

 マヒュー教授の提案は具体的だった。共通する文化があれば、国境を越えて、グローバルに話し合いましょう、知恵を出しましょうと。そして国内問題や政治問題として矮小化しないこと。問題の解はその先に見えてくる。

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