☆IRTイフガオ考~1~

マニラからイフガオへの道
12日午前、日本の大手総合商社のマニラ支店長にフィリピンの現地情報について話をうかがう機会に恵まれた。マニラ首都圏(メトロマニラ)の人口は1800万人、第二はメトロ・セブで230万、ダバオ130万人である。一極集中の度合でいえば、東京よりマニラの圧倒的だ。ただ産業では、総合プランドといえるものはなく、OFW(Oversea Filipino Worker)と呼ばれる海外出稼ぎによる送金収入がGNPの10%にもなる。したがって全体に貧しい国であり、たとえば新車購入台数は人口9500万人のフィリピンは15万台、2700万人のマレーシア60万台に比べれば一目瞭然となる。マニラ市内を走る乗用車のほとんどは日本メーカーのものだが、多くは中古車ということになる。中古車だけではない。かつて、上野-金沢間を走っていた寝台特急「北陸」がフィリピンでは「リコール・エクスプレス」と称され、マニラ駅とナガ駅間378㌔を1日1往復走っているという。日本を走っていた時と同じ青い塗装のままで。支店長の話は機知に富んで刺激的でもあった。
さて、フィリピンに来た目的はマニラではない。さらにマニラから車で8時間かけて移動する。その理由は。能登の里山里海(農山漁村)が国連食糧農業機関の世界農業遺産(GIAHS)に認定された(昨年6月)。半島の立地を生かした農林漁業の技術や文化、景観が総合的に評価されたものだ。これを受けて、昨年より石川県の地域連携促進事業の一つとして、「世界農業遺産GIAHS『能登の里山里海』実施支援」プログラム(代表・中村浩二教授・学長補佐)を実施している。つまり、大学としてもいろいろとできることはやりましょう(社会貢献)との意味合いだ。今回のマニラ訪問は事業の柱の一つである世界農業遺産の他地域(サイト)との交流をはかろうとの狙い。マニラはその一歩。ルソン島北部のイフガオの棚田に行く。1995年にユネスコの世界遺産にも登録されているイフガオの棚田は世界農業遺産の代表的なサイトだ。そこの関係者とネットワークをつくりたいとの計画している。ちなみにIRTはIfugao Rice Terracesの現地略称だ。
あす13日から14日で、イフガオの棚田で視察とフォーラムを開催する。現地の自然保護協会の関係者やフィリピン大学、イフガオ州立大学などの研究者との交流を通じて、能登サイトとのネットワークづくりの道筋をつける。今回の現地交流(イフガオ棚田視察とフォーラム)では、同じ世界農業遺産の佐渡サイトから高野宏一郎市長、そしてローマに本部がある国連食糧農業機関(FAO)のスタッフも参加することになっている。イフガオ、佐渡、能登の3サイトが集まり相互理解を深め、今後の協力体制を話し合う。ささやかながら能登の明日に向けた新たな取り組みになればと、マニラに来て、能登を想う。
⇒12日(木)午後・マニラの天気 はれ