★「歴史的な旅に出る」
「国連生物多様性の10年」のキックオフイベントが17日午後、石川県立音楽堂(金沢市)であり、記念式典と基調講演に出席した。「国連生物多様性の10年」は去年10月の名古屋市で開かれた生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で、NGOの提言をもとに日本政府が国連に提唱し採択されたもの。国連は今年から2020年までの10年間を生態系を守る集中的な行動期間と定めた。COP10では、生態系保全のためにそれぞれの国が2020年までに実行すべき目標を定めた「愛知ターゲット」を採択していて、金沢でのキックオフイベントで目標達成に向けてスタートを切ることになる。
式典は30ヵ国から政府関係者が集まりにぎやかだった。でも、なぜ金沢で開催するのか、と疑問符がつく。歓迎レセプションで谷本正憲石川県知事と、武内和彦国連大学副学長(東京大学教授)がその理由を明かした。キックオフイベントは環境省と国連大学などが中心となって5月に東京で開催する方向で準備が進んでいた。ところが3月11日に東日本大震災、そして福島の原発事故などがあり、中止となった。「愛知ターゲット」を何とかスタートさせたいと思いを募らせた関係者に浮かんだアイデアが、昨年12月「国際生物多様性年クロージングイベント」を開催した金沢市でキックオフイベントができないか、だった。会場はどこでもよいという訳にはいかない。生物多様性という意味合いが地域で理解され、これに協力的で、国際会議の開催経験があり、しかもそれなりの開催費も負担する自治体となると絞られてくる。知事はどうやら武内氏らに懇願され最終的に引き受けたらしい。
記念式典でアフメド・ジョグラフ生物多様性事務局長=写真=は「次世代を担う子どもたちの間でも生物多様性の認知度は低い。分かりやすく説明することから始める必要がある。日本の良寛は最後に残すことは何かと問われ『春の花、丘になく鳥、秋の紅葉』と言った。愛知ターゲットの達成に向けてこれから国際社会は歴史的な旅に出る。選択肢はない」と呼びかけた。また、2012年10月にハイデラバードでCOP11を開催するインドのヘム・パンデ環境森林省担当局長は「インドも生物多様性の恩恵を受けている。COP11のスローガンを『もし私たちが自然を保護すれば、自然は私たちを守ってくれる』としたい」と述べた。
2008年5月にボンで初めてジョグラフ氏を知り、COP9とCOP10でのスピーチを、また金沢大学でもスピーチ(2009年5月)をいただいた。その中でも、今回のジョグラフ氏の「歴史的な旅に出る。選択肢はない」の言葉が一番強く印象を受け、覚悟のようにも聞こえた。
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