2011年 12月 27日の投稿一覧

☆2011ミサ・ソレニムス-4

☆2011ミサ・ソレニムス-4

 ことし7月24日にテレビのアナログ放送が停波(岩手、宮城、福島の3県を除く)、デジタル放送に完全移行した。1953年に誕生した日本のテレビはカラー化やハイビジョンなどの技術革新を経て、2011年にようやくデジタル化へ到達したとの感はある。しかし、私の周囲の地デジに関する評判ははかばかしくない。「高いテレビ買ったのだが、何のために地デジにしたのか未だによくわからない」「地デジって、BSのチャンネルが増えただけなのか」「視聴者が投資をしたのに、テレビ局はどんな投資をしたのか、画像がきれいになっただけじゃないか」など。視聴者は「テレビ新時代」を実感していないのが現状なのだ。

           地デジの「テレビ新時代」、ローカル局からアピールを

 今月(12月)22日午後、金沢市内で地デジに関するシンポジウムが開催された。タイトルは「地デジ化のメリットの視聴者及び地域への還元に関するシンポジウム~地デジの特徴を生かした番組づくりの充実、空いた電波の地域のための活用等~」(総務省北陸総合通信局など主催)=写真=。どうしたら「地デジに変わって本当によかった」と視聴者に実感してもらえるか、北陸の電波行政や放送事業に携わる130人が集った。このシンポジウムではパネリストと参加し、いくつか意見や提案を述べさせてもらった。

 地デジの特徴を生かした番組づくり、それはデータ放送やマルチ編成、ネットとの連携などのほか、地デジ化により空いた電波の地域への活用など地デジ化のメリットを視聴者や地域にどう還元するかだ。しかし、たとえばデータ放送にしては、機材が高価、専門技術者が不足している、放送局にとっては慣れていないメディア、機器や制作システムの操作性、煩雑な検証作業、新しい収益モデルが描けないなどの理由でテレビ局側が二の足を踏むケースが多かった。本音で言えば、データ放送は投資が大きい割には儲からないメディア、というわけだ。

 ところがローカル局でも、一部のテレビ局が動き始めている。彼らは口をそろえて「今動かないことがリスクだ」と言う。そして、今までのビジネスモデルだけに頼れない、キー局依存からの自立、地方独自の番組や広告づくり、通信メディアを積極的に取り込み、テレビを中心としたクロスメディアの番組と広告の展開など、さまざまなアプローチを試行している。シンポジウムではいくつか事例が報告された。「地デジとワンセグのデータ放送を活用した地域放送サービス」(NHK富山放送局)、「5.1CHサラウンド放送への取り組み」(北日本放送)、「エリアワンセグ放送の実証実験」(富山テレビ放送)、「データ放送のローカル送出実現と地域情報の提供」(チューリップテレビ)、「自社制作データ放送、クロスメディア展開による地域情報の独自発信」(テレビ金沢)など。これらの発表を若手のテレビマンたちが行い、その可能性を感じさせた。

 パネル討論では、いくつか意見や提案をした。その一つはデータ放送について。「『詳しくはウエッブへ』というCMがあるが、私自身はテレビのCMを見てインターネットを起動したことはない、また、それでネットを検索したという知人の話を聞いたこともない。もともとテレビの情報というのは揮発性が高く、視聴した瞬間は印象深いが記憶にとどまらない。パッと消え去ってしまう。キーワードを覚えて、ネット検索するという人はごく限られているのではないか。それよりむしろ『詳しくはDボタンへ』と誘った方がよい。少なくとも視聴者には親切だと思う。地デジは自己完結型のメディアでもある」

 そのほかの提言。「北陸の冬は電気の使用量が気になり、節電ムード。そこで、電力会社からデータを得て『でんき予報』をデータ放送で実現してはどうか。視聴者の関心は高い。テレビは速報性が基本である」「若者のテレビ離れと一口に言うが、問題はデジタル・ネイティブ(物心ついてからケータイやPCが周囲にあった世代)をどう取り込むか、だろう。彼らのどんな感性をくすぐる番組をつくっていけばよいのか」

 地域におけるテレビ局、地域における大学というのはよく似ている。何もしなけらば製作費というコストがかからず経営は安泰かもしれないが、地域における存在価値は高まらない。むしろ、地域を照らす、つまり地域の文化価値や社会価値を掘り起こして、全国と比較、また世界で通用する価値なのか検証する必要があるだろう。地域に寄り添うメディアとして、テレビの新時代をぜひローカル局からアピールしてほしい。

⇒27日(火)夜・金沢の天気   くもり