☆この「マクロ」の暗さよ
なぜイギリスはEUに加盟していながら、通貨はユーロ圏に入らないのか、不思議だったが、いまにして思えば、ぼんやりとながら輪郭が描ける。経済はドミノ倒しのリスクがあるからだ。私自身、マクロ経済に関心があるわけでも、造詣が深いわけでもないが、こうも連日のようにギリシャの財政危機などが新聞などで報道されるとつい見入ってしまう。
ギリシャ国債のデフォルト(債務不履行)が不可避の状況となってきたようだ。1年物国債の利回りは一時117%と急上昇した。つまり、1年で元本が倍になる金利を付けても購入されないということなのだ。同じユーロ圏の支援国のドイツとフランスは、ギリシャ救済に自国の税金が使われることに対する世論の反発が強いことを恐れ、思い切った打開策を打てないでいる。もちろん、ギリシアがデフォルトに陥れば、ギリシャの国債を有するヨーロッパの金融機関は巨額の損失が発生し、金融危機へと連鎖するだろう。そうなれば、同じく膨大な債務を抱えるイタリアやスペインの国債破綻へとドミノ倒しとなる。ちょうど3年前の9月に起きたアメリカ発のリーマン・ショックの欧州版となる。
だからといって、イギリスのポンドがユーロ圏のドミノ倒しから逃れ、安定していのかと言えばそうでもなさそうだ。金利を上げ下げしながら、イギリス製品の輸出を刺激するためにポンド安をなんとか誘導している。要は、綱渡りの上手な国なのだ。もちろん、イギリス連邦(54ヵ国加盟)の宗主国としての通貨のプライドもあろう。
では、アメリカはどうか。「政府が中心になって景気回復を」というオバマプランで膨大な出費をして経済対策を打ってきたが、手詰まりの状態に。そして、つい先日(19日)、今後10年間で3兆ドル(日本円にして230兆円)の財政赤字を削減する方針を示した。驚きだったのは、半分に当たる1兆5千億ドルを富裕層や石油会社などに対する増税による歳入の増加で賄い、さらにイラクやアフガニスタンからのアメリカ軍撤退によって軍事費を1兆1千億ドル削減するというのだ。結局のところ、これまでの、「ばらまき」で経済を刺激しても景気が回復する兆しは見えない。そこで、増税と軍事費の削減で財政の立て直しをやると宣言したようだ。ただ、大規模な増税を実施すれば、経済成長は望めず、財政赤字の削減にはつながらないというのは本来の見方なのだが。
私見だが、アメリカにしてもヨーロッパにしても、政治家に悲壮感が漂っていて、気が気ではない。オバマにいたっては、最近言葉に張りすらなくなっているようにも思える。かつてのクリントンのように明るくなれないのだろうか。アメリカの魅力を世界に伝えれば、世界中からお金を集めることは可能だろう。たとえば、当時のアル・ゴア副大統領が情報スーパー・ハイウェイ構想をブチ上げた。だから新しい時代のアメリカに期待して金が集まった。ところが、「国が大変だ」と叫んで、ゼロ金利にしてお金をばらまくから逆にお金が逃げいていった。そんな感じだ。
もちろん、日本も同じだ。失われた20年で経済はデフレに陥っている。金利を上げれば、お金は国債から離れるので、国はじっとしている。座して死を待つようなものだ。そして、「増税」の新聞見出しが日増しに大きくなっている。出口が見えないから国民は憂うつだ。マクロの視点から見た世界と未来はかくも暗い。それに比べ、「それはそれでええじゃないか」と個人の頑張りで輝いているミクロの動きが面白い。次回からそんな特集をつづってみたい。
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