2010年 5月 2日の投稿一覧

★沖縄の風~中~

★沖縄の風~中~

 沖縄の海の文化が紹介されているというので、本部(もとぶ)町の海洋博公園を半日ゆっくり回った。興味を引いたのが「沖縄美ら海水族館」で特別展「海の危険生物展」だった。中でも危険な静物して紹介されているのがハブクラゲ。初めて聞くおどろおどろしい名前の生き物だ。なにしろ、ハブと聞いただけで危険と直感するのに、それにクラゲがついている。写真のようにいかにもグロテスクだ。何が危険かというと、水深50㌢ほどの浅瀬にいて、カサの部分が半透明なため、接近されてもよく見えない。それでいて、触手は150㌢にもスッと伸び、刺胞(毒針が毒液が入ったカプセル)を差し出す。これ触れると毒針が飛び出し、毒を注入される。姿が見えない、それでいて超越した戦闘能力を持つ、まるでSF映画『プレデター』に出てくる異星人なのだ。

            海のプレデターと「山羊薬」

  刺されると激しい痛みがあり、ショックで死亡するケースもある。このハブクラゲだけで年間200件余りの被害が報告されている(沖縄県福祉保健部のリーフレット)。そこで、沖縄県は本島だけで「クラゲネット」という防護ネットを33ヵ所も設けて、ネットで中で海水浴を楽しむように呼びかけている。ちなみに英単語「predator」は動物学用語で「天敵」「捕食者」の意味である。沖縄のハブクラゲは日本海のエチゼンクラゲと並んで、人の天敵と化している。

  「人と海は近かった」と感じた展示物があった。海洋文化館にある「バジャウの家船(えぶね)」だ。フィリピン南方のスルー諸島を航海するのに使われ、「レパ」とも呼ばれ、現地の人にとって移動手段だけでなく、食事や就寝という生活全般に使われていた。展示されている船は1975年まで実際に漁師の一家が住んで漁を営んでいたものだと説明されていた。日本でも、能登半島の輪島市の海女たちが「灘(なだ)回り」といって、魚のヌカ漬けなどを冬場の行商で売り歩くときに乗っていた家船とそっくりであることを思い出した。私は実際に見たことはない。25年ほど前、新聞記者時代に同市海士町を取材した折、昭和20年代の写真を見せてもらったことがある。それを連想したのだ。

  波の音、風の音、そして揺れ、寒さ、すべてを受け入れる生活である。もともと人はサルから起源を発した「森の動物」だった。それが海上で暮らすのだから、相当の肉体的、精神的な負荷を伴ったろうことは想像に難くない。

  話はがらりと変わる。海洋博公園に屋台の店が出ていた。なにげなくのぞくと除くと「ヤギ汁」と手書きの看板が出ていた。きょうのバス・ツアーのガイド嬢の説明によると、沖縄ではヤギ(山羊)料理をヒージャーグスイ(山羊薬)と呼ぶほどの名物だという。新築とか出産のお祝いのときに、ファミリーが集まって食する。料理は「山羊刺し」が一般的で、ショウガとニンニクを乗せて、しょう油で食べるそうだ。ただ、「ヤギ汁」はウチナンチュ(沖縄の人)でも、その匂いで苦手な人も多いとか。ガイド嬢は「沖縄に来たら一度はチャレンジしてくださいね」と言っていた。そのヤギ汁が目の前にある。挑戦すべきか否か…。値段は「ヤギ汁(小)」が500円、「ヤギ汁(大)」は1000円もする。そこで、ささやかに挑戦することに意を決し、小盛を注文した。ヨモギの葉入り、ショウガ味で臭みが思ったほど感じられなかった。が、肉が弾力的で歯ごたえがある。ギュッと噛む。野ウサギの肉も、クマ肉、野鳥の肉も食したことがあるが、これら「けもの臭い」ジビエとは違った食感だ。薬だと思えば、気にするほどではない。

  立って食べていたので、最後の肉片を食べ終えたときに肉に付いていた骨を地面にうっかり落とした。そのときにカチッと金属のような音がした。数㌢の骨だが、手に取ると硬く重い感じ。ヤギの存在感が伝わってきた。

 ⇒2日(日)夜・沖縄県恩納村の天気  くもり