★沖縄の風~続編~
鳩山総理の沖縄訪問の目的は一体何だったんだろう、と考えてしまう。きょうのメディアの論調と同じだ。各紙の一面見出しはおおむね「首相 県内移設を初表明」「普天間問題 理解求める」である。つい先日までは、「極力、県外に移設させる道筋を考えたい」(3月26日付・中日新聞)と述べていた。ところが、きのうの鳩山総理の会見(沖縄)で、「県外、国外」発言については「党としての発言ではなく、私自身の代表としての発言」と述べ、話をさらにややこしくしている。真意はどこか多くの有権者は図りかねているのではないだろうか。かつて、先達から「アマは問題を複雑化し、プロは問題を単純化する」という訓を聞いたことがある。この訓に照らし合わせれば、総理の一連の発言は少なくとも「プロの言葉」ではない。
普天間問題 ワジワジの風
3日午後、沖縄旅行の折、沖縄県名護市辺野古の在日米軍海兵隊の基地「キャンプ・シュワブ」のゲートで写真撮影をした。すると、門兵が駆け寄ってきたので、その場を速やかに立ち去った。その後、辺野古で住民が座り込むテント村も訪れた。笑顔で声をかけてくれたが、総理の沖縄訪問を前にピンと張り詰めた雰囲気がテント内に漂っていた。総理を迎えた沖縄は、その一挙手一投足を注視していたのではないか。その総理に対し、4日の現地では「恥を知れ」の罵声が飛んだ。
総理の記者会見(沖縄)でキーワードとなった言葉はおそらくこの一言でなないだろうか。
「学べば学ぶにつけて、沖縄におけるアメリカ海兵隊の役割は、全体と連携しているので、その抑止力が維持できるのだと理解できた」。これを素直に解釈すれば、海兵隊の基地であるキャンプ・シュワブは簡単に動かせるものだと思っていたが、その役割を考えるとはやり、普天間飛行場の代替施設は辺野古しかないということをようやく学んだ、ということだろう。「ようやく学んだ」ということの意味は、「これまでの発言は勉強不足からくるもので改めたい」と同義語だ。つまり、これまでの「県外、国外」発言を帳消しにしたい、という解釈になる。「恥を知れ」の罵声には、沖縄の人々にとって愚弄されたという怒りがあるのではないだろうか。
外交を司る総理の発言かと耳を疑って、きのうの会見をテレビで見ていた。誰もが聞いても、明らかに言葉が「浮いている」のだ。さらにきょうのテレビ朝日「ワイド!スクランブル」の激論で出演していた民主党の議員の言葉がさらに話をややこしくしていた。「沖縄県民から反対の声をもらって、『県外・国外』について、これからアメリカとの交渉が始まるんです。これが第一歩です」と擁護発言を。防衛と外交はある意味で政府の専権事項だと解釈している。政府が主導権を持って外交と防衛に当たらねば、その任務を誰が成し遂げるのか。「御用聞き」のような発言に、その自覚はないのかと、愕然とする発言だった。そう感じたのは私だけではないだろう。
バスガイド嬢から教わった沖縄言葉にワジワジがある。もともと南国のおだやかな性格から、ナンクルナイサ(何とかなるさ)という楽観的な人が多い。そんな人でも、腹の底からわき上がってくる怒りのことをワジワジと言うそうだ。沖縄はいま、普天間問題でワジワジしているのだ。(※写真は、辺野古の海とキャンプ・シュワブ)
⇒5日(祝)夜・金沢の天気 はれ
きょう午後、辺野古を訪れた。現地では普天間飛行場の代替施設の建設に反対する住民の座り込み行動「辺野古テント村」=写真=がきょうで2206日目となった。テントの中には5、6人が海を見つめながら話し合ったりしていた。記者と間違えられたのか、「どこの新聞社なの」と向こうから尋ねられた。ニュースの現場を見に金沢からやってきた旨を告げると、代替施設の建設計画地などを説明してくれた。人魚のモデルとして知られるジュゴンが生息するという辺野古の海は透き通った緑の海だ。砂浜を挟んだ陸地には在日米軍海兵隊の基地「キャンプ・シュワブ」が広がる。
沖縄の海の文化が紹介されているというので、本部(もとぶ)町の海洋博公園を半日ゆっくり回った。興味を引いたのが「沖縄美ら海水族館」で特別展「海の危険生物展」だった。中でも危険な静物して紹介されているのがハブクラゲ。初めて聞くおどろおどろしい名前の生き物だ。なにしろ、ハブと聞いただけで危険と直感するのに、それにクラゲがついている。写真のようにいかにもグロテスクだ。何が危険かというと、水深50㌢ほどの浅瀬にいて、カサの部分が半透明なため、接近されてもよく見えない。それでいて、触手は150㌢にもスッと伸び、刺胞(毒針が毒液が入ったカプセル)を差し出す。これ触れると毒針が飛び出し、毒を注入される。姿が見えない、それでいて超越した戦闘能力を持つ、まるでSF映画『プレデター』に出てくる異星人なのだ。
話はがらりと変わる。海洋博公園に屋台の店が出ていた。なにげなくのぞくと除くと「ヤギ汁」と手書きの看板が出ていた。きょうのバス・ツアーのガイド嬢の説明によると、沖縄ではヤギ(山羊)料理をヒージャーグスイ(山羊薬)と呼ぶほどの名物だという。新築とか出産のお祝いのときに、ファミリーが集まって食する。料理は「山羊刺し」が一般的で、ショウガとニンニクを乗せて、しょう油で食べるそうだ。ただ、「ヤギ汁」はウチナンチュ(沖縄の人)でも、その匂いで苦手な人も多いとか。ガイド嬢は「沖縄に来たら一度はチャレンジしてくださいね」と言っていた。そのヤギ汁が目の前にある。挑戦すべきか否か…。値段は「ヤギ汁(小)」が500円、「ヤギ汁(大)」は1000円もする。そこで、ささやかに挑戦することに意を決し、小盛を注文した。ヨモギの葉入り、ショウガ味で臭みが思ったほど感じられなかった。が、肉が弾力的で歯ごたえがある。ギュッと噛む。野ウサギの肉も、クマ肉、野鳥の肉も食したことがあるが、これら「けもの臭い」ジビエとは違った食感だ。薬だと思えば、気にするほどではない。
空港では恩納村のホテルまで送ってくれるタクシーを手配してあったで、空港では迎えが待っていた。せっかくだからと思い、高速道路「沖縄自動車道」を走ってもらい、オプションで名護市の「パイナップルパーク」と「ブセナ海中公園」に立ち寄ってもらった。現地までは60分ほどの時間があったので、タクシーの運転手と話が弾んだ。54歳だという運転手は子どもが4人、孫がすでに7人いる。「沖縄には大きな企業がなくて、息子のうち2人は本土(東京と山口)で会社員をしている」「企業といえば、オリオンビールぐらいかね」と。高速道路から見える家並のほとんどが2階建て、あるいは3階建てのコンクリート造り。守り神として有名なシーサーが乗る赤い瓦の屋根は少ない。「沖縄は台風が強くてね、かつて私の家は茅葺屋根だったんだけれども、吹き飛ばされることもあって、台風のたびに親戚の家に避難したものでしたよ。いまは瓦屋根の家でさえ、立て替えてコンクートの家にするのが当たり前ですよ」