☆長崎旅記~下~
22日正午、ハウステンボスの入り口から歩いてJRハウステンボス駅に移動中に大粒の雨が。傘の用意を怠っていたので急ぎ足で駅に駆け込んだ。実は「長崎」にはちょっとした思い入れがある。宴席でカラオケの順番が巡ってきて、「何か歌って」とせかされて歌うのが、内山田ひろしとクールファイブの「長崎は今日も雨だった」だ。前川清のボーカルをまず歌って、カラオケの喉ならしをするのがすっかり定番になった。最近では、リクエストをする前に「長崎、入れときましたよ」と周囲が気を利かせてくれる。長崎の雨を恨むどころか、旅情に浸り軽く口ずさみながら、福岡・博多に向かった。
「屋台の出勤風景」に博多の勢い
博多の駅は2011年の完成を目指し、リニューアル工事が行われている。完成予想図を見ると、京都駅のイメージがわいた。宿泊はグランド・ハイアット福岡。ホテルの立地が面白い。この一区画が「キャナルシティ博多」と呼ばれる、ビジネスとエンターテイメント(映画館など)、ショッピングセンターが渾然一体となった再開発エリアになっていて、その中心にホテルがある。ホテルの玄関は駅に背を向けた格好になっているので、博多駅から歩いてくると、建物と入り口が実に分かりにくい。恥をしのんで別のホテルに入り、フロント係りの人に場所を尋ねたくらいだ。
ようやくたどりつくと、大音響に迎えられた。たまたま「キャナル・アジアン・ウイーク」というイベントがホテル隣接の野外ステージで行われていて、早業で次々と顔が変わる「変面」や、陶器のツボを頭上で自在に動かす「壷回し」といった中国雑技が会場を沸かせていた。「アジア最高峰のテクニック」と銘打ったこのショーもさることながら、毎時定時に音楽に合わせて踊る噴水のダンス「ダンシング・ウオーター」=写真・上=に技というものを感じた。リズムに乗って、30メートルも水を吹
き上げるかと思えば、小刻みに腰を振るイメージの演出もあって、大技小技の利かせた噴水ショーなのである。人出も多い。あれやこれやで、エンターテイメントを生み出す「博多の勢い」というものを感じた。
一方で、変わらぬ勢いも垣間見た。夕方、ホテルの近くを散歩していると、後ろに屋台を連結させて中州の方向へ走る何人ものバイク乗りの姿が目についた。空き地に折りたたんだ屋台が整然と並べてあって、それを運び出しているのである。焼き鳥、ラーメン、一杯飲み屋などの屋台がそれこそ次々と。その姿はさながら「屋台の出勤風景」のようでもあり、これから稼ぎに行くぞとの意気込みにも感じられたくましい。
⇒23日(水・秋分の日)朝・博多の天気 くもり
17世紀のオランダの街並みをモチーフに設計されたというハウステンボスを歩く。石の道は何度歩いても歩きにくい、これもヨーロッパたたずまいかと思うと妙に納得したりする。前回ハウステンボスを訪れた2006年3月とは何が異なるか、自問自答すると一点ある。それは中国語と韓国語の人たちがめっきり減ったということだ。前回は四方八方に2つの言語が飛び交い、日本語は肩身が狭いほどだった。
プライベートでの長崎旅行は1994年8月、2006年3月と今回の3度目となる。空から海へのアクセスはこれが初めて。これまでは小松空港から博多空港に、それからJRに乗り継いでの陸路だった。波しぶきを上げて走る高速船の窓から湾の風景を眺めながら、ふと、「この高速船はどうなのだろう」と脳裏をよぎった。
すでに実施されている「ECT搭載車の通行料上限1000円」の割引制度でフェリー業界はどこも経営が青息吐息の状態といわれる。高速道路の無料化で観光客は増えるかもしれないが、フェリー業界の淘汰や再編が加速しそうだ。
同じく31日、かつて広告業界にいた知人との会話から。「自民よりましだと思って民主党に入れた人が多かったと思う。でも、民主が本当に日本の政治を変えるかは疑問だね。小沢さんたちは自民の大幹部だったしね。労組が応援しているとなると政治がちょっと左に動く程度じゃないかな」「当選者の数を見ると面白い現象が現れている。自民党が強いところほど当選者が多い。石川は7人もいる。福井も7人。これって自民と民主が互角で惜敗率が高かったせいで、比例で上がったんだね。石川に7人も代議士がいるんだから、使い倒さなきゃな。次の選挙のために、みんな必死に地元のために働くよ。これからが本当のドブ板だね」
この話を聞いて、今回の総選挙を連想した。政権というカメがどちらの方向に向くかをじっと観察している有権者が静かに手を動かす(投票)。これまでの選挙は、闘牛やスポーツを観戦するかのごとく国民は熱狂した。お祭り騒ぎをした。だから、誰が、どんな世代が何を政治に求めているのかが見えやすく、実感でき、論議もでき、そして自らの投票行動の基準が分かりやすかった。ところが、今回の選挙は政権交代で誰が何を求めているのか見えにくい、分かりにくい、可視化できなかった。