2007年 12月 19日の投稿一覧

★メモる2007年-4-

★メモる2007年-4-

 赤い腹巻のお猿さんはスターだった。どこへ行っても「カワイーッ」と子供たちから歓迎された。手を合わせて拝むお年寄りもいた。4月21日、能登半島地震(3月25日)の被害がもっとも大きかった石川県輪島市門前町の避難所で「猿回し」の慰問ボランティアを行った。私が所属する金沢大学社会貢献室の主催だった。

       お猿さんはスターだった

  金沢大学では震災後、医療のほか復興のためのボランティア活動を学生や職員に呼びかけた。避難所生活が長期化し、落ち着かない日々を過ごす人たちを元気づけようと、社会貢献室ではかねてから交流のあった山口県岩国市の「猿舞座」座長の村崎修二さんと連携して開いた。体長1.2㍍のサル「安登夢(あとむ)」が跳び上がって輪をくぐる「ウグイスの谷渡り」などの芸を披露すると、会場は歓声と拍手に包まれた。

  客席では、大学の市民ボランティア「里山メイト」の女性たちがお茶と草もちのサービスをし、「がんばってくださいね」と声をかけた。

  この慰問ボランンティアにはちょっとした仕掛けがあった。被災者へのアンケート調査も同時に実施したいという「魂胆」があった。というのも、4月下旬、被災者が寝泊りする避難所ではメディアの取材も学術調査も立ち入りが断られていた。避難所は生活の場でもあり、また当時、家屋リフォームや古物の買い入れと称したいかがわしいセールスなどが問題となっており、避難所の運営担当者らは警戒していた。でも、外に出てきた被災者にアンケートをするのは構わないと聞いていたので、それだったら猿回しを見に避難所前の広場に集まってきた被災者にアンケートをしようというわけ。お猿さんの人気にあやかって、避難所の外では110人もの被災者アンケートを得ることができた。そのアンケートが「メモる2007年-2-」で紹介した震災とメディアに関する調査だった。

  実はその後、「猿舞座」の一座の主役ともいえる安登夢は高齢のため引退することになる。代わって、若手の「夏水(なつみ)」が一座とともに全国を回っている。安登夢にとって能登の慰問ボランティア公演は、拍手を浴びながらダイナミックな芸を演じた晴れの大舞台でもあった。彼はいま岩国で静かに余生を送っている。

 ⇒19日(水)朝・金沢の天気  くもり