☆ペーパーナイフ付の月尾本

地方の疲弊が新聞メディアなどで取り沙汰されている。しかし、「鄙には稀なる」という一見、都を中心にした発想は文面からは感じられない。全国を歩く月尾氏にとって、都市とは全く違う斬新な発想が生まれる場が鄙だといわんばかりに、地域の人々に秘める力強さや情熱、心意気が行間からにじみ出ている。
月尾氏とは遠巻きながら2度、宴席でご相伴させていただいたことがある。酔うほどに笑顔で、講演でのシャープな語りとは違って寡黙になる。おそらく翌朝、趣味のスポーツであるカヤックをこぐためのエネルギーを蓄えておられるのだと察した。
そして、この著書の最大の特徴はカヤックのパドル型のペーパーナイフがついることだ=写真=。ページの上部をナイフで切ってページを開く。木製のペーパーナイフなので切り開くときに少々力が要る。ところで、パドルとオールはどう違うのか。調べてみると、パドルはシートに座って前向きに進む船を漕ぐ場合にパドルを使用します。後ろ向きに進む船を漕ぐときにはオールを使うのだという。大学の職場で、私はこのペーパーナイフを「逸品だろう」と見せびらかしたところ、女性スタッフが横目で「バターナイフにいいかも」とさりげなく…。
挿画は日本画家の平松礼二氏画伯。平松氏とは高校時代の同級生にして、カヤックの弟子だとか。ナンバー付きの限定本、超有名な画伯による挿絵画、パドル型ペーパーナイフ…。おそらく2度手にすることはない稀本である。
⇒15日(木)午後・金沢の天気 くもり