2007年 7月 26日の投稿一覧

☆選挙を冷やす装置

☆選挙を冷やす装置

 参院選挙が今一つ盛り上がらない。それを立候補者側の話題の提供の少なさに求めるのはいささか酷だと思う。それより、選挙のあり方に問題があるのではないか。公職選挙法142条は、選挙活動のツールとして官製はがきと公定ビラの使用に限っている。インターネットによるパソコンの画面は文書図画(とが)とみなされ、使用禁止なのだ。「IT国家」を自認する国で、である。

  2002年8月に政府の「IT時代の選挙運動に関する研究会」が報告書を出し、インターネットの選挙利用を促進するよう方向付けをした。そして、04年に公選法の改正案が国会に出されたが、葬り去られてしまう。阻んだのは誰か。地盤(支持団体)、看板(知名度)、鞄(選挙資金)の「3バン」と呼ばれる古いタイプの選挙運動で選挙を勝ち抜いてきた候補者たち。与野党、老若男女を問わず、新しい選挙のやり方に抵抗感がある人たちだ。

  匿名の誹謗中傷や、何万通という大量のメールなどでホームページが攻撃されるなど疑心をもたれているようだ。ならば、選挙用のサーバーを党が構築してセキュリティを万全にする、あるいは選挙管理委員会が選挙掲示板を設けているように公設のサーバーで候補者のホームページをつくったらどうか、とも思うが話はそこまで進んでいないようだ。

  今回の選挙から海外の在留邦人は比例代表だけでなく、選挙区の投票も可能になった。これは2005年9月、選挙区選挙の投票を認めていなかった公選法は違憲とする「在外選挙権訴訟」で、最高裁が違憲判決を出したからだ。その中で、「通信手段の発達で候補者個人の情報を在外邦人に伝えることが著しく困難とは言えない」と指摘した。つまり、インターネットを使えば海外であろうと、有権者が判断できる選挙情報が得られると判断したのである。だから、本来ならば公選法の改正は、在留邦人の選挙区投票とインターネットの選挙利用はセットで行われるべきであった。ところが今回もネットの選挙利用は「抵抗勢力」の厚い壁に阻まれてしまうのである。こうして、民主主義の基盤である日本の選挙はIT化から阻害されている。

  で、ブログサイト「goo」では、このようなブロガーに対するお知らせが掲載されている。要約すると、選挙に関する記事を投稿の際は、公職選挙法違反(刑事罰の対象)に注意してほしい。その1は特定の候補者を「応援したい」といった表現、その2は単に街頭演説があったという出来事を記述、その3は街頭演説を撮影した写真や動画を投稿すること、その4は特定の候補者の失言シーンだけを集めた「落選運動」…など。要するに、選挙に関する記事は慎重に、と。

  街では候補者の「お願いします」のスピーカー音が日増しに大きくなっているが、インターネットの世界は静かだ。インターネットの選挙利用が進まなければ、選挙はいつまでたっても盛り上がらない。

⇒26日(木)朝・金沢の天気   くもり