2007年 4月 26日の投稿一覧

☆メディアのツボ‐50-

☆メディアのツボ‐50-

 能登半島地震(3月25日)の被災地・輪島市門前町を訪ねて、被災者から話を聞いている。中には何度かマスメディアから取材された人もいる。被災者から語られるメディアを紹介する。

         報道の二面性

  現在は無職の32歳の男性の話だ。震災では自宅が全壊した。9時41分、母親はたまたま愛犬をシャンプーするため、風呂場に入っていて被災した。家は全壊したものの、ユニットバスというある意味で「シェルター」に守られ、九死に一生を得た。男性は、全壊した自宅や地域の惨状をなんとかしてほしいと思い、取材に来た新聞記者に惨状を訴えるつもりで上記の話をした。

  ところが、数日して大阪から匿名で現金封筒に入った1万円の見舞金が送られてきた。「愛犬に好物を食べさせてあげてください」と手紙が添えられていた。文面を読むと、どうやら惨状を訴えたつもりが、愛犬の世話をしていて命拾いをしたという「美談」として新聞記事に紹介されていたことが分かった。

  男性は苦笑する。「美談に仕立てられたという複雑な思いです。記事を読んで、見舞金として気持ちを寄せてくれる人もいるので、うれしいのですが・・・」

  メディアの取り上げ方には二面性があり、問題提起と話題性に分類される。一物二価ともいえるかもしれない。震災が起き、マスメディアがリアリティを持って被災地の様子を取り上げれば、その映像なり記事が行政や国を動かし、復興作業の大きな原動力になる。事実、能登半島地震では、4月13日に安倍総理が来訪し、その1週間後の20日には局地激甚災害に指定された。復興に国の大きな支援を得ることになったのである。

 その一方で、観光地でもある能登は大きな風評被害に見舞われている。震災発生から3日間だけでも、和倉温泉を中心として4万人の宿泊のキャンセルがあったとされる。輪島市のツーリスト会社の代表は、「能登半島地震ではなく、能登門前地震と命名してくれた方がよかった。能登半島全体が被災したイメージだ」とこぼしていた。新聞の見出しやテレビに「能登半島地震」と繰り返されるたびに風評被害が広がる、というのだ。

  このマスメディアの二面性の溝は簡単には埋まらないし、埋める妙手もいまのところない。

⇒25日(木)朝・金沢の天気  はれ