☆メディアのツボ-44-
情報番組「発掘!あるある大事典2」の捏造問題は随分と面白い展開になってきた。きょう21日、関西テレビの千草社長が自民党通信・放送産業高度化小委員会に出席した後、記者団に対し、番組を制作した番組制作会社に損害賠償を請求する可能性を示唆したという(日経新聞インターネット版)。
「賠償請求」の意味を考える
記事を引用する。関テレの社長は、自らの責任問題を尋ねた記者の質問には直接答えず、「責任は重く受け止めている。再発防止、原因究明に努め信頼回復を図る」と話し、さらに「制作会社との契約では賠償責任があり、検討する」と語った。これが「賠償請求の可能性」として報道された。
今回の問題の一連の報道で見えてこないのは、関テレ自身が番組の欺瞞性に気づいていたのかどうかという点である。放送法第四条(訂正放送)の2項に「放送事業者がその放送について真実でない事項を発見したときも」、訂正放送をしなけらばならないと記している。要は、当事者から指摘を受けなくても、常日ごろから放送の内容に留意し、事実の誤りや人権侵害などは自ら見つけ、糾(ただ)すよう求めているのである。このため、各テレビ局は「考査」というセクションを置いている。
この考査セクションでは、編成あるいは業務局に置かれ、CMや番組の表現内容をチェックして、時に営業から持ち込まれた誇大表現が含まれるCMなどをストップさせたりする。問題視したいのは、このセクションが520回にも及ぶ番組でいささか疑問を感じなかったのだろうか。あるいは、番組づくりの手の内を知り尽くしている制作部からは何の疑問の声も上がらなかったのだろうか。このテレビ局内のいわば自浄機能を伏して、制作会社の責任だけを問うのは無理がある。放送の最終的な責任はテレビ局にある。
社長が述べた「制作会社との契約では賠償責任があり」云々は本来、納品が間に合わず番組にアナを開けた場合などであって、番組の構成やつくりにはテレビ局のプロデューサーやディレクターが参加し、チェックしゴーサインを出しているのだから、これも話の筋が間違っている。日本語の吹き替え捏造などはオリジナルのVTRをチェックすれば簡単に分かる。
それでも関テレが制作会社の賠償を問うのであれば、相当の返り血を浴びる覚悟でやらなければならない。裁判の過程では「関テレ側の黙認」あるいは「暗黙の了解」という、番組の「闇」の部分があぶりだされるはずである。ウミを出し切るためにはむしろ裁判をやったほうがよいのかもしれない。
⇒21日(水)午後・金沢の天気 はれ
「テレビ難民」問題化に国の先手
関西テレビの番組「発掘!あるある大事典Ⅱ」で捏造問題が発覚して以来、テレビ業界全体の信頼度が落ちたように思える。そしてついにというか、きょう13日の閣議後の記者会見で、菅義偉総務相は「捏造再発防止法案」なるものを国会に提出すると述べたそうだ。その理由は「公の電波で事実と違うことが報道されるのは極めて深刻。再発防止策につながる、報道の自由を侵さない形で何らかのもの(法律)ができればいい」と。放送法第三条と第四条は、放送上の間違いがあった場合は総務省に報告し、自ら訂正放送をするとした内容の適正化の手順をテレビ局に義務付けている。さらにこれ以上の防止策となると、罰則規定の強化しかないのではないか。個別の不祥事イコール業界全体の規制の構図は繰り返されてきた負のスパイラルではある。
捏造問題で、関テレの社長が2月7日、総務省近畿総合通信局を訪れ、捏造についてまとめた報告書を提出した。ところが、近畿総合通信局側は納得しなかったと、報じられている。なぜか。疑惑が次から次と出てきて、7日の説明は説明にならなかったからである。どとのつまり、「520回すべてを調査し報告しなければ、調査したことにはならない。これはあくまでも途中経過説ある」と監督官庁である近畿総合通信局側から灸を据えられたに違いない。こんなことは素人でも想像がつく。
先日、あるテレビ局から金沢大学に取材の申し込みが電話あった。ニュースリリースなどの詳細をメールで送る旨を伝え、教えてもらったメールアドレスに送り、届いたら返信をくださいとお願いしたが、それがない。果たして送信できたのかとこちらが心配になって電話で確認すると、相手は「受け取りました」と。それだったら、受け取った旨の返信をくれればよいのにと思うことはしばしばある。その点、地元紙と呼ばれる新聞社は割とこまめに返信をくれる。
比べれば、ほぼ奇跡に近い。