★メディアのツボ-23-
前回の「メディアのツボ」でNHKが東京都内の48の世帯・事業所について今月中に支払いがない場合、11月に簡易裁判所に支払い督促を申し立てることについて関連して述べた。で、また不祥事である。
作り手の人格と番組
6日、NHK富山放送局の54歳の局長が富山市内で万引をしていたことが明らかになった。事実関係を詳しく読む。局長はことし5月20日(土)午後5時ごろ、富山市内のホームセンターで、ボールペンやひげそり、木工用のキリなど7点、5000円相当を万引し、上着のポケットや袖に隠して店外に出たのをホームセンターの保安係に発見された。駆け付けた警察官に万引の事実を認めた。警察は被害額が少なかったことから送検しなかった。おそらく素直に事情聴取に応じて、費用を弁済。示談で済んだのだろう。が、万引きは窃盗罪である。万引をした日は休みで、木彫り教室へ行った帰りだった。
そのことを局長は隠していた。最近になってその事実を嗅ぎつけた地元のメディアから取材を受けた局長が慌てて、本局に報告した。局長は去年6月から富山に赴任していた。予断は禁物だが、54歳の万引きは手癖が悪い。初犯なのか。NHK本局ではニュース番組「おはよう日本」などのプロデューサーだったという。
これは私の経験則での解釈であるが、番組は作り手の人格そのものである。取材が甘ければ番組の構成も甘くなる。心に欺瞞性があれば、「やらせ」を生む。つまり詐術が含まれる。作り手の人格と番組は表裏一体なのだ。だから、この局長が名プロデューサーであって、今回のことを「出来心だった」あるいは「魔が差した」と弁明しても、私はその人が過去に制作してきた番組そのものを疑ってしまう。過去にその心の緩みや欺瞞が含まれる番組をつくってきたはずと解釈するからである。
NHKが簡易裁判所に支払い督促を申し立てると言っているが、そんなことより信頼の回復が先だろう。業務上横領、放火、万引き(窃盗)…NHKの番組プロデューサーや記者の犯罪は枚挙にいとまがない。NHKの局内には危機感とか倫理性を重んじる雰囲気が欠けているのではないか。どこか組織のタガが緩んでいるに違いない。
NHKは局長職を解いて停職3ヵ月の懲戒処分にしたが、局長は6日のうちに退職願を提出し、受理された。局の名誉を著しく傷つける行為であり、報告義務違反でもある。本来なら懲戒免職に相当するのだろうが、懲戒処分にした。その代わり辞表を提出させたとも取れる。退職金のことを考えた「温情」と言えなくもない。
⇒7日(土)午前・金沢の天気 くもり