☆メディアのツボ-22-
これはTVメディアの奇観である。時代にあえぐメディアの吐息が聞こえる。
テレビの奇観3題
10月3日、この日のニュースは画期的だった。「メディアの日」として日本新聞協会や民間放送連盟はどこかの機関に記念日の申請してもよいのではないか。なにしろ、最高裁が「事実報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障の下にあることはいうまでもない」(最高裁決定の全文から)とし、取材・報道の自由の価値を重く見る司法判断を初めて示したのである。
アメリカ企業の日本法人が所得隠しをしたとする報道に絡み、NHK記者が嘱託承認尋問で取材源にかかわる証言を拒んだことの当否が争われた裁判の決定である。このところ、人権擁護の名目で個人情報保護法などに押され、メディアの取材は萎縮でもしたかのように窮屈さをかこっていた。それが、今回の最高裁のお墨付きでメディアは「錦の御旗」を得たといえる。
奇観というのは、新聞メディアなどは一面でトップ扱いだったが、テレビ各社は「NHKが裁判に勝った」程度の扱いで、まるで他人事なのである。メディアがこの最高裁の決定をしっかり噛み締めないと、自分が拠って立つところの論拠を失うではないか。
TBS系の報道番組「筑紫哲也 NEWS23」の山本モナキャスターが番組をしばらく休むことになった。今月2日夜の放送で「体調不良のため」と発表された。山本キャスターは、民主党の細野豪志衆院議員との不倫を先週発売の写真週刊誌で報じられていた。「NEWS23」は先月25日にリニューアルされ、山本キャスターは起用されたばかりなのだ。
奇観に思うのは、写真週刊誌で報じられたくらいでなぜ休むのか。視聴者はキャスターに潔癖性を求めてはいない。不倫の相手が民主党の代議士であり、政治的に中立性を失っているではないかと糾弾する自民党寄りの視聴者もなかにはいるかもしれない。しかし、問題はキャスターの発言内容が中立性を保っているかどうかであり、不倫は大人の世界の別次元である。「キャスターが不倫をして何が悪い」くらいの小悪魔的なキャラクターがあった方がむしろ信頼がおける。
「みなさまのNHK」から「取り立てのNHK」に変身した。不祥事をきっかけに急増した受信料不払い問題で、NHKは5日、再三の説得にも支払いに応じない東京都内の48の世帯・事業所について今月中に支払いがない場合、11月に簡易裁判所に支払い督促を申し立てると表明した。不払い者が簡裁からの督促を放置すれば、財産を差し押さえることも可能だ。
奇観はNHKが相手を見誤っていることだ。受信料不払いが112万件となっているが、NHKも説明しているように、その理由のほとんどは番組プロデューサーによる業務上横領、記者の放火事件など一連の不祥事に拒否反応を示した「確信犯」だ。実際、私の周囲にいる不払い者は正義感が強い。つまり、レジスタンスなのである。
この人たちを納得させるには、地上波とBS波の6波に肥大化した組織を徹底的にリストラし、災害と報道に強いNHKに蘇生するしかない。その上で受信料を下げて、なおかつ「今後、不祥事が起きた場合は1件につき月100円下げる覚悟」くらいの厳しさを自ら課さなければ、不払い者は納得しないだろう。さらに未契約者989万件をどうするのかの指針も示すべきだ。
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