2006年 9月 の投稿一覧

★メディアのツボ-11-

★メディアのツボ-11-

 9月20日の自民党総裁選の結果を見越して、すでに各メディアは「安倍シフト」で走り出している。「安倍氏、政治資金がこの1年で急増」といった見出しが新聞1面で踊っているのも、当面のご祝儀記事の後は政治資金関連で攻めますよと宣言しているようなものだ。

       小泉政治とメディア①

 総裁選の結果がどうなれ、小泉総理はおそらく「無傷」で引退する歴代総理でも数少ない一人ではないか。前総理のように支持率が10数%という結果であえなく退場ということではない。小泉内閣支持率は各世論調査で今でも40-50%を維持している。なぜ高支持率を維持できているのだろうか。

 小泉総理が誕生した01年4月はITバブルが弾けて株価が1万4千円のころ、さらに景気は下り坂だった。同じ年の9月にアメリカで同時多発テロが発生し、それこそ「世界同時うつ病」になった。03年3月にイラク戦争が始まったころは株価が7千円台の底に落ちた。本来ならば経済の不振だけでも退陣だったろう。それが何とか持ったのも、前年02年9月で北朝鮮を訪問し拉致問題の存在を認めさせた、いわゆる「小泉サプライズ」があり、何かやってくれるとの期待を抱かせたからであろう。その期待は今でもずっと有権者の心の奥底に残っている。それが支持率50%なのだ。

  この数字をメディアはどう評価するのか…、である。結論から言えば、正面切って分析なり評価をする新聞あるいは放送メディアはおそらく出てこない。マスメディアは政治権力の腐敗や暴走を監視する機関と自らを任じている。それは正しい。だから、その小泉政権の流れが総裁選以降も続くとすれば、「小泉さんの政治手法は素晴らしかった。だから支持率50%を維持できた」などと礼賛するような論調は張れないし、その必要もないというのが編集局のスタンスだろう。つまり、政権交代がない限り小泉氏は過去の人ではなく政権の奥の院の権力者の一人、だから監視を続ける、という論法になる。

  ただ、ストレートに小泉政治を評価しないにしても、それとなく婉曲に評価するメディアもある。オヤっと思ったのは9月10日付の朝日新聞で掲載された「“総裁選劇場”様変わり」という企画記事。要するに今回の総裁選の最有力・安倍氏は小泉総理が01年4月に総裁選出馬したときに比べると、ワイドショーも取り上げないほど人気がないと酷評している。それは「安倍氏は育ちが良くてイケ面という以外に茶の間に訴える、刺激する情報が少ない。要は人間味の問題です」と芸能リポーターのコメントを引用して分析している。

  が、よく読むと逆に「小泉さんは首相という公人であることのほか、生身の人間としてのサブ情報があふれている」というコメントが際立つ。そして、20日の総裁選直前の18日に日本テレビ系で放送される小泉総理を主人公にしたドキュメントドラマ(日本テレビ)の紹介までしている。両者を比べて一方を酷評することで、もう一方を肯定する「噛ませ犬」的な手法で、結果として、小泉総理が高く評価されているのである。

 ⇒11日(月)夜・金沢の天気  はれ

☆メディアのツボ-10-

☆メディアのツボ-10-

 同時多発テロ「9・11」ほどその後のメディアのあり方を変えた事件はないだろう。あす11日を前にこれまでのメディアの論調に触れてみたい。

     9・11とメディアの論調    

  国家VS国家の戦いではなく、アフガンで展開したようにテロ集団と国家の図式である。国際法にもとづく定義とか、もちろん戦争作戦でもなく、紛争あるいは掃討作戦という地域限定の争いである。その延長戦上にイラク攻撃もあった。実はこれならメディアは乗りやすい。国家と国家の争いならイスラエルとパレスチナのようにそれぞれの言い分がある。しかし、テロは絶対悪である。その理由はどうであれ報道しやすい。そのことに反発する世論が形成されないからである。

 その事例がある。2001年のテロの翌年、「テロ支援国家」「悪の枢軸」とブッシュ大統領が決めつけたイラクへの攻撃を想定してアメリカ国防省が02年10月から軍とメディアの合同演習を開き、これにメディアも参加した。翌03年2月には500人以上の記者とカメラマンが参加する一大イベントとなった。いわば「従軍」である。アメリカ兵と寝食を共にして、食料も移動車も提供される。分担金はあったにせよ丸抱えだった。

  その後のメディアの論調は、「テロが発生」「報復攻撃」「市民が犠牲」「アメリカ兵が合計で何人死亡」と発表文を基にした報道の繰り返しだった。イラク人捕虜の虐待などのスクープはあったものの、この報道パターンはいまも同じである。そのうち読者や視聴者の感覚は段々と麻痺してきた。それは人が死ぬということが特別なことではなく日常の紙面であり、あるいは自爆テロということに遠い国の日本人も恐怖心を抱き、JR駅からゴミ箱が撤去されても当たり前という感覚にいつの間にかなってしまった。

  そして、テロに対しては「やられる前にやりかえせ」という風潮がいつの間にか醸成される。03年1月、北朝鮮が日本にミサイル攻撃を仕掛けてきた時の対応が論議された際、時の石破防衛庁長官は「(北がミサイルに)燃料を注入し始めたら(攻撃に)着手する」と答え、物議をかもしたが、それも一時的だった。その延長線上で、ことし7月5日の北朝鮮ミサイル発射問題が起きた。額賀防衛庁長官も同じ発言を繰り返した。が、その時は物議にすらならなかった。韓国の盧大統領が「北東アジアの平和をかき乱すような事態を引き起こす可能性がある」と思いつきの日本政府批判を展開したものの、逆に韓国内で「攻めるべきは北であって日本ではない」と反発を招いた。

  日本のメディアの中で、この先制攻撃論について論陣を張った社はあるだろうか。アルカイダ、イラク、北朝鮮の延長線では斬り込み難いと思っているメディアが多いのだろう。そして「北朝鮮がミサイル再発射か」というニュースが流れる度にドキリとしている我々である。01年9月9日から06年7月5日の5年間で心理の底に堆積したテロ、戦争の膨大なニュースのおかげで、「身構えること」だけが本能となったかのようである。

⇒10日(日)午後・金沢の天気   あめ

★トキが能登に舞う日

★トキが能登に舞う日

 国内のトキは環境省が佐渡保護センターで集中的に飼育していて、その数は現在98羽に増えている。しかし、1カ所に集めた飼育では鳥インフルエンザなどのリスクも大きいとして、分散飼育の方針を打ちしている(03年)。環境省では100羽になるのをめどに国内の複数の動物園で分散飼育して繁殖させる計画。さらにその先には放鳥による野生化計画も視野に入れているようだ。

  こうした環境省の動きを見越した「いしかわ動物園」(石川県能美市)ではトキ類人工繁殖チームが発足し(04年)、近縁種のクロトキで繁殖方法のノウハウを磨いている。石川のほか、東京の上野動物園や多摩動物園なども、環境省が公募した分散飼育先に名乗りを上げた。その公募がこのほど打ち切られ、飼育先の決定を待つばかりとなっている。

  石川が熱心になっているのも、本州最後の1羽は能登半島に生息していたオスだったからだ。「能里(のり)」という愛称まであった。佐渡のトキ保護センターに移され、1971年(昭和46年)に死亡した。その後、剥製となって里帰りし、毎年の愛鳥週間(5月10日から)には県立歴史博物館で展示されている。最後の生息地としては、何とか分散飼育で「トキよ再び」の夢をつないでいるのだ。

  こうした機運を盛り上げようと、石川県立自然史博物館(金沢市銚子町)では特別展「トキを石川の空へ2006」を開いている。県内で所蔵されているトキの剥製4体のうち2体を並べて展示。トキの複数展示は珍しいというので、きょう訪れた。係りの人は「トキのくちばしは湾曲しているので、ドジョウをついばむのは苦手だったかもしれない」などと熱心に説明してくれた。

  能登半島にトキが舞う日を夢見ている人がいる。半島突端の珠洲市で小学校の校長をしている加藤秀夫さん。「トキの野生化計画が進んで仮に放鳥が始まれば、佐渡から真っ先に飛んでくるのは奥能登なんです。何しろ佐渡から能登は見える距離なんですから。飛来したときに田んぼに水がはってあれば必ず舞い降りるはず」と熱く語る。そこで、冬の田んぼの水はり運動を農家に呼びかけている。その効果があってか、実はことし1月にはコウノトリの飛来が1羽観測されている。

  加藤さんの試みはまだ孤軍奮闘の状態。分散飼育が具体化して機運が盛り上がれば、加藤さんの運動の輪も広がるのかもしれない。

 ⇒9日(土)夜・金沢の天気  はれ  

☆トイレットペーパーと豆腐の考察

☆トイレットペーパーと豆腐の考察

 既成概念にとらわれてはいけないと日ごろ思っている。そう思っている割には、意表をつく商品デザインがあったりするとドキリとしたり、思わず笑ったりする。そんな話題を2つ。

  広告入りのトイレットペーパーを見たことがあるだろうか。先日、家人が金沢市内の電気店に用事に行って、サービス品として2本もらってきたものだ。普通の巻紙タイプのトイレットペーパーなのだが薄いブルーで文字とイラストがプリントがしてある。その内容は「地上デジタル放送のご案内」である。2011年7月24日をもって現行のアナログ方式が終了する。そして、「お使いのテレビは今のままではタダの箱。他人事ではありません」と。デジタル放送が始まりますよというキャンペーンであり、要は当社のテレビを買ってくださいというPRなのだ。

  ところが、家の者はだれも使いたがらない。「お尻にブルーのインクがつくのではないか…」などといぶかっているのだ。使用する側に「トイレットパーパーは白色」という既成概念がある限り、せっかくのアイデア(PR}商品も使ってもらえそうにない。

  豆腐といえば四角とだいたい相場は決まっている。中に、能登の「ちゃわん豆腐」のように丸型もある。この豆腐はなんとサーフボード型なのだ。ネーミングが面白い。「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」。2パック入っていて298円だ。受け狙いの流行商品だろうと思ったら、商品開発に5年も費やしたこだわりの味だという。味は濃厚でまるでクリームチーズかプリンのようだ。

  この「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」を調べるといろいろなことが分かってきた。ブランドの豆腐は現在、京都の「男前豆腐店」と、茨城の「三和豆友食品」の2社が製造販売している。西と東でメーカーが違うのである。ちなみに我が家が買った「ジョニー」は東のものだった。男前豆腐の社長が三和豆友時代に開発したヒット商品だが、 三和豆友を辞め05年9月に京都で独立店舗を構えた。その後、ことし5月に三和豆友は大手の「篠崎屋」と業務提携を結び、大手の傘下に入った。どうやら、男前豆腐の38歳のヤリ手社長が独立したのはこの業務提携を嫌って、自分は西で独立し「棲み分け」をしたということらしい。

 その三和豆友は現在、ホームページすらつながらない。つまり豆腐をつくっているだけのようだ。それに比べ、男前豆腐は斬新な切り口のHPで勝負している。そして、雑誌のインタビューに38歳の社長は「ことし夏にアメリカ西海岸で販売網を構築する」と、「ジョニー」の海外戦略を語っている。豆腐の味も人生の波乗りもうまい…。

 ⇒5日(火)夜・金沢の天気  はれ