2006年 9月 28日の投稿一覧

☆メディアのツボ-18-

☆メディアのツボ-18-

 この春に関東地方から転勤で金沢にやってきた男性会社員が当地の民放テレビを視聴した感想をこう述べてくれた。「金沢のテレビって、仏壇と和菓子、そしてパチンコのCMがやたらと多いね」と。

         危うさはらむパチンコCM

   これは去年、当地の新聞で掲載されたある民放テレビ局の3月期決算の記事。その中に、営業の収入の伸びを牽引している業種について書かれていて、「交通・レジャー、流通・小売り、自動車関連の広告収入が10%以上伸び」となっていた。金沢の視聴者ならおそらく想像がついたはずだ、「レジャー」が具体的に何を指すのかを…。パチンコのCMである。とくに、パチンコは「出玉、炸裂!」などと絶叫型のCMが多いので、見ている方が圧倒される。

  「売上アップのためには、背に腹は代えられぬ」とローカル局はパチンコのCMを受け入れてきた。何しろローカルスポンサーの取り扱い高のランキングではパチンコの会社が常連で上位に入っている。極端に言えば、パチンコ業界を抜きにしてはローカルCMは成り立たないのである。そしてパチンコ業界では、自社で広告代理店を持つ会社まで現れた。こうした系列の広告代理店のことを業界では「ハウスエージェンシー」と呼んでいる。

 ともあれ、パチンコ業界にすれば、ローカル限定の狭いマーケットでシェア争いに勝つにはテレビCMは欠かせない。そんな持ちつ持たれつの関係が続いているのである。

   しかし、ローカルのテレビCMを牽引してきたパチンコ業界も曲がり角にある。くだんのテレビ局の3月期決算の記事が掲載された同じ日、金沢市内のパチンコ店経営の会社が事業を停止し、自己破産を準備中との記事が出ていた。負債は7億円。かつて、この店の過激なテレビCMを見たことがある。企業業績が回復し経済の循環がよくなると、人の足は「身近なレジャー」であるパチンコに向かわなくなる。自己破産のニュースは小さい扱いながらも、パチンコ業界だけでなくテレビ業界にも衝撃が走ったはずだ。

  実は、テレビ局ともたれあっているように見えるパチンコ業界は「自主規制」という装置を持っている。過去に何度か、警察から「無用に射幸心をあおる」と自粛を求められると、すばやく自主規制に動いてきた。テレビCMがストップしてしまうのである。

  パチンコ業界に依存しないローカルのCM構築はテレビ局の課題だが、妙手がなく悶々としているというのが現状だろう。これまで何度か「メディアのツボ」で取り上げてきた消費者金融(サラ金)のCMも同様である。サラ金の方は政府の金利制限が強まれば利益率は落ちるわけで自ずとテレビCMは徐々に落ちてくる。しかし、パチンコのCMは突然止まるかもしれない。ローカルテレビ局にとっては、危うさをはらんだCMなのである。

 ⇒28日(木)朝・金沢の天気   くもり