2006年 8月 24日の投稿一覧

☆続々・ニュージーランド記

☆続々・ニュージーランド記

 ニュージーランドの南島の牧場では羊が飼われ、北島では牛が草を食む、それこそ牧歌的な光景をよく目にした。農業国といわれる理由なのだが、豚の放牧は1度しか見なかった。寝るための小屋が必要で設備投資に金がかかる、というわけだ。牛や羊とは違って病気にかかりにくく栄養価でも優れている家畜なのだが、酪農大国ニュージーランドは豚の輸入国に甘んじている。

      羊の毛刈り職人の深き悩み

 クイーンズタウンの空港からクライストチャーチ空港へ、さらに、飛行機を乗り継いで北島のロトルアに着いた(8月18日)。ロトルアには、温泉が数十㍍も吹き上げる有名な間欠泉がある。日本の別府市と姉妹都市だそうだ。

 ロトルアではもう一つ有名な毛刈りショーを堪能した。羊はおとなしい動物なのだが、中には暴れるのもいる。特にシェリオットという種は気性が荒いので毛刈り職人にとっては厄介者だったが、いまは品種改良されて随分とおとなしくなった、などと司会者が軽妙な語りでショーを進めていく。これを日本人スタッフが通訳しながら実況中継する。それをヘッドホンで聞く。台湾、韓国からの見学者もいるので、それぞれの言語のスタッフが中継する。ショーを終えた後で国際会議もできそうだ。

  ところで、ウール王国のニュージーランドで羊の毛刈り職人はさぞかし優遇されているのだろうと観光ガイド氏に訪ねた。すると「かつてはそうだったのですが…」と前置きし、内実を話してくれた。毛刈り職人の労賃は1匹につき1㌦40㌣(ニュージーランドの1㌦=76円換算で106円)である。電動バリカンだと一人前の職人は平均して37秒に1匹をさばく。1日に300匹ほどの毛を刈ることになる。つまり労賃は420㌦、3万2千円ほどだ。

  「でも、数年前までは2㌦から2㌦50㌣だったのです」とガイド氏。羊毛の重要が落ちているのだ。その証拠に、かつて数億匹といわれたニュージーランドの羊は今は4000万匹だ。

  その羊の毛刈り職人を窮地に立たせているのがポリエステルの繊維素材、フリースの登場だといわれる。フリースは高級ウールを目指してつくられた。保温性が高く、軽量、簡単に洗濯できるので、登山家らアウトドアの人たちの必需品だった。それが、アメリカのクリントン元大統領のヒラリー夫人も愛用しているなどと評判になり、一躍、タウン着として世界中から注目されるようになった。ペットボトルを再生して製造される道筋がついているので原材料には事欠かない。天然素材が化学素材に圧迫されている。羊の毛刈り職人の悩みは深いのである。

  ちなみに「羊の毛を刈る」という英語表現は「shear a sheep」あるいは「fleece a sheep」と書く。fleeceは名詞で「羊の毛」のことである。

 ⇒24日(木)夜・金沢の天気 はれ