2006年 8月 12日の投稿一覧

★メディアのツボ-09-

★メディアのツボ-09-

 「メディアのツボ-03-」でも取り上げた、TBSの報道番組「イブニング5」の中で旧日本軍731部隊映像に内容とは関係のない安倍晋三官房長官の写真パネルが一瞬写った問題で、TBSに対し行政指導が行われた(11日)。しかし、その一瞬のナゾは解けていない。

       総務省と放送局

  行政指導を行ったのは放送局の監督官庁である総務省だ。竹中大臣がTBSの社長を呼んで注意文書を手渡し、再発防止を要請した。大臣名の最も重い厳重注意だ。

  この問題を振り返る。「イブニング5」の問題シーンは7月21日日午後6時13分ごろ。池田裕行キャスターが「旧日本軍の731部隊の石井隊長の日記の中に、終戦直後、上陸するアメリカ軍を細菌兵器で攻撃しようと計画していた記述があったことが分かった」と前ふりをしてVTRがスタートする。カメラマンがドーリー撮影をしながら、小道具置き場から数㍍離れて電話取材をする記者がいるブースまでの数秒間を移動する途中で、床にある安倍晋三官房長官の写真パネルが映っている。1秒間ほどだが、安倍氏とはっきり認識できる。

 この映像で何点か疑問がわく。第一、なぜ雑然とした道具置き場でドーリーショットで撮影しなければならなかったのか、という点だ。電話をする記者を強調したいのならばムーズインでもよかったのではないか。それにいくら使用済みの写真パネルとはいえ、あれほど雑然と、うっかりすると踏みつけてしまいそうな場所に置くものなのだろうか。次期首相を狙う政治家の写真である。普通に考えれば、再度あるいは緊急にスタジオで利用すことも想定して、パネルに傷がつかないように保管しておくのが常識だろう。キー局だったら大道具小道具を整理し保管する担当者がいるはずだ。

  TBSの広報は今回の厳重注意を受けて、「決して意図的なものではなかったが、視聴者に誤解を与えかねない映像だったことを反省し、再発防止に努める」とコメントを出している。ということは、TBS、総務省ともにこの件は重大な過失という認識で一致したということだ。徹底して調査してほしかったのは意図があったかどうか、だ。

  というのも、同省は04年6月、テレビ朝日の番組「TVタックル」で、藤井孝男下運輸大臣が拉致問題に関する国会での野党の質問にヤジを飛ばしたかのような映像を流した。これは、「報道は事実を曲げない」とする「放送法」第三条に抵触するとして情報通信政策局長名で厳重注意した。今回は大臣名なのでそれより重いのである。明らかに事実を曲げたとする厳重注意よりさらに重い厳重注意となると、「限りなく意図的にだが、処分にいたるほどの確たる要素はなかった」とも解釈できる。言葉遊びはしたくない。最も重い厳重注意を行った総務省は事実関係を明らかにすべきだろう。

  何しろ、11日付の総務省の報道資料では「放送番組の適正な編集を図る上で遺漏があったと認められた」としか内容が記されていないのである。

 ⇒12日(土)午後・金沢の天気  くもり