☆NHKのディープインパクト
部下の不始末とは言え、次々と不祥事が起き、そのたびに頭を下げているNHKの橋本会長の姿を見ると気の毒になってきた。
きのう6日午前11時からの、総合テレビの番組「永井多恵子のあなたとNHK」に橋本会長が出演し、大津放送局の記者(24)が放火未遂容疑で逮捕されたことに関し、深々と頭を下げて謝罪した。心の中では泣いていたと思う。「もう勘弁してよ」と。私だったら、番組の後、職員を一堂に集め「いい加減にせいよ。オレに何度謝らせるんだ。全員辞めちまえ」と啖呵(たんか)を切る。
逮捕された記者の犯行の動機がよくつかめない。自ら放火し、それをスクープ映像として放送するのであれば、功名心を焦った「マッチポンプ屋」とでも言えるかもしれない。ところがこの24歳は通報したり、偶然発見したことを装って消火したりと、仕事にリンクしていないのである。5月15日(日)未明の火災現場近くで警察から任意で事情聴取を受けた際、本人は酒に酔っていた、と報じられている。また、別の紙面では、「休みがほとんどなく、泊まり勤務も大変だ」などと他社の記者に愚痴をこぼしていたらしい。つまり、プレッシャーに弱い24歳が酒の勢いで放火に及んだという割と単純な構図なのだろう。
事情聴取を受けた翌日から傷病休暇をとって、入院した。うがった見方をすれば、警察にマークされたのに気づき、あわてて病院に逃げ込んだのだろう。ところが、尾行がついているとも知らずに、6月5日(日)未明、性懲りもなく放火を繰り返した。この時の火は尾行していた捜査員が消したのだから動かぬ証拠となった。それが現行犯逮捕ではなかったのは、入院という状態だったからだ。警察は、10月末に本人が退院したのを見届けて、主治医と相談しながら本人の責任能力が問えると判断し、逮捕に踏み切ったのだ。
もう一つ、逮捕がこのタイミングだったのは第三次小泉改造内閣の組閣が終了するのを待っていたのかもしれない。ある意味で「大捕り物」である。何しろ各紙は1面あるいは社会面のトップで見出しを立てた。これが組閣といった大型のニュースとぶつかってしまうとその価値は相殺され、扱いは小さくなる。このため警察は逮捕のタイミングを十分に見計らっていたはずだ。
それにしても橋本会長は責任を取って辞めざるをえなくなるのではないか。 ことし1月25日に海老沢氏の後を引き継いで会長に就任して以降、つまり在任中のこれだけの不祥事である。今回の逮捕をきっかけに滋賀県ならびに関西を中心に受信料不払いという「うねり」が年末にかけて起こるのは目に見えている。今の状態では大晦日の「紅白歌合戦」の番組ですら危うい。今回の事件の衝撃は計り知れない。
⇒7日(月)朝・金沢の天気 くもり