2005年 11月 4日の投稿一覧

★テレビの経営環境と近未来

★テレビの経営環境と近未来

  2日に大阪市で開かれた民間放送全国大会の会場に立ち寄る機会を1時間余り得た。民放大会は経営陣が集まる会合で、どちらかというと「大人(おとな)しい」というイメージだったが、2つの点でかなり熱いものを感じた。

   一つは、「ライブドアとフジテレビジョン」、そして現在進行形の「楽天とTBS」と続くIT企業とテレビ局(東京キー局)をめぐる株式の争奪戦、経営統合問題である。まさに経営の根幹にかかわる事態だ。民放大会では「テレビとインターネットの融合に向けて」と題するシンポジウムが開催され、ネット企業トップやテレビ局幹部らが議論を繰り広げたようだ。「ようだ」というのは私は直接この議論を聞いたわけではないので、翌日の新聞報道から内容を以下引用する。

   議論の中で、ヤフーの井上雅博社長は「技術的に通信基盤で番組を流せるようになった結果、情報の流通業でもあるネット企業がテレビ番組を使いたいと考えるのは自然な流れだ」と述べた。これに対し、フジの飯島一暢上席執行役員は「ITと放送は異なる文化。連携はあっても融合するのは難しい。ただ、ネットの色々なものを取り込もうと努力している」と企業文化の違いを中心に説明した。飯島氏が言いたかったのは、いきなり土足で上がりこんできて、「あなたが好きだ」とプロポーズされるようなもので、そのような発想は今のテレビ業界は到底受け入れられるものではない、と言っているようにも読める。

    私が直接見て感じた今大会の「熱さ」のもう一つが「ワンセグ」である。まもなく実用化される最新技術をいち早く体験できるあって随分とにぎわっていた。地上デジタル放送の電波を構成する13セグメント(区分)の1つを利用して、携帯端末向けに番組(簡易動画)を放送する仕組みで、地上デジタルとは違った内容で放送となり、「ワンセグ放送」と呼ばれる。いまでも一部の携帯電話でアナログテレビ放送を視聴できるものもある。が、テロップ(字幕)までは読めない。ところが、ワンセグ放送では携帯の画面サイズに最適化された放送が実現され、テロップも読める画質だ。テレビ局が「ケータイの世界」に入り込む突破口になると期待されているのだ。

   このようにテレビには「次ぎ」の可能性が広がっている。IT企業はそこを見込んで、業務提携や経営統合とプロポーズをかけている。テレビ業界の経営環境と近未来が凝縮された大会だったと言えるかもしれない。

⇒4日(金)午前・金沢の天気   はれ