2005年 10月 24日の投稿一覧

★デジタルの進歩と判決

★デジタルの進歩と判決

  きょう(24日)、大阪地方裁判所で著作権をめぐる、ある意味で重大な判決があった。マスコミ各社はもっと大きく取り上げてもよいと思ったのだが、以外に扱いは小さい。マンションに住民共用のサーバーを設置し、住民が予約したテレビ番組を一括録画して好きな時間に視聴できるシステムは著作権を侵害するとして、大阪の民放5社が東京のシステム開発会社に販売差し止めなどを求め、訴訟を起こしていた。判決は、民放側の訴えを認め、この会社に5社の放送エリア(近畿2府4県)で販売しないよう命じた。

  このシステムは裁判沙汰になるほど画期的だ。開発した会社は「クロムサイズ」。このシステムの名称は「選撮見録(よりどりみどり)」、名前からして振るっている。システムはこうだ。マンション内の共用サーバーと各世帯がLAN回線でつながり、マンションの住人が事前に録画予約をした番組を好きな時間に配信を受けて視聴する。1台の共用サーバーで最大1000時間の録画が可能。住人は予約した番組しか視聴できないが、「全局予約」でセットすればすべての番組を見ることができる。まさに選撮見録なのだ。この装置は大阪市内のマンションに設置される予定だった。

  大阪の民放5社が「待った」をかけた理由は、著作権法で例外的に録画(複製)が認められている「私的使用目的」を逸脱しているとの言い分だ。言い方を変えれば、「録画代行サービスと変わらない」というわけだ。これに対し、クロムサイズ側は「あくまでも予約した番組を見るので私的複製と変わらない」と反論した。

  で、判決は冒頭の通り。ク社側の違法性を認めた理由は明快だった。「システムの設置者と使用者が異なり、私的使用に当たらない」と。つまり、装置を設置する管理組合が録画の主体であって、個人ではない、という判断だ。この判決は視聴者にはなかなか分かり難いかもしれない。なぜなら、管理組合は住人で構成する閉じた組織で、管理組合と住人を全く別の主体とみなすことに違和感を感じる人も多いだろう。「装置は共同管理というだけのこと、実態は私的使用目的ではないのか」と。

   かつて著作権法に私的使用目的が盛り込まれて、ビデオの録画装置が一気に家電の成長株となった。しかし、デジタル技術は日々進歩している。大容量の1台のサーバーで1000時間録画の時代だ。VHSでちまちまと録画をする時代はもう終わる。法と現実が乖離(かいり)しないためにも、著作権の新しい解釈や理念が必要なのかもしれない。

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